
自営業者や小規模企業の経営者にとって、事業資金や生活費の不足は大きな課題です。
小規模企業共済の共済貸付制度を活用すれば、掛金を担保に低金利で資金を確保できます。
本記事では小規模企業共済でお金を借りる方法を詳しく解説します。緊急時の資金繰りや事業拡大を目指す方はぜひ参考にしてください。
小規模企業共済とは?
小規模企業共済は、小規模企業の個人事業主や会社役員のための退職金制度です。事業主が毎月一定額の掛金を積み立てて、将来の生活の安定や事業の再建に備えるものです。
しかし、小規模企業共済の魅力は退職金制度だけではありません。共済貸付制度を利用することで、事業資金や緊急時の資金調達も可能となります。
ここで、小規模企業共済の共済貸付制度について詳しく解説します。
積み立てた掛金を担保にお金を借りられる
小規模企業共済の共済貸付制度は、加入者が積み立てた掛金を担保として、低金利でお金を借りられる仕組みです。
通常の銀行融資とは異なり、事業の業績や個人の信用力に関係なく、積立金の範囲内で融資を受けられることが大きな特徴です。
日々の事業運営で資金が必要になった場合や、予期せぬ出費に直面した際、自分が積み立てた掛金を活用して資金を調達できます。万が一の備えとして、小規模事業者にとって心強い味方となるでしょう。
即日融資で高い事業資金を借りられる
小規模企業共済の共済貸付制度では、即日融資が可能なことも大きな特徴です。それだけでなく、高額の事業資金も借りられます。
一般貸付の場合、最大で2,000万円まで借入れが可能です。
事業経営においては、急な設備投資が必要になった場合や、大型の受注に対応するための運転資金が必要になった場合など、即座に高額の資金が必要となるシーンは少なくありません。
小規模企業共済の共済貸付制度を利用すれば、万が一の非常事態にも、迅速かつ柔軟に資金調達を行えます。
小規模企業共済の共済貸付制度で借入れする条件
続いて、小規模企業共済の共済貸付制度で借り入れるための条件を見てみましょう。
12カ月以上の掛金積立が利用条件
共済貸付制度を利用するには、小規模企業共済において最低12カ月以上の掛金積立が必須です。
また、借入れの最低額は10万円からとなっており、5万円単位での借入れとなっています。そのため、加入後すぐの利用は難しいので注意しましょう。
ある程度の掛金積立がなされた後に、初めて融資を受けられるようになっています。
借入可能額は積立金の最大7~9割
共済貸付制度の共済貸付制度では、借入可能額は加入者自身の掛金総額に基づいて決定されます。これは、加入者自身の積立金を担保として借入れを行うためです。
借入額は契約者の掛金状況によって異なりますが、積立金の最大7割~9割までの借入が可能です。長期間にわたって多くの掛金を積み立てている加入者ほど、より多くの借入れができます。
借入用途は事業資金・生活費など幅広い
借入用途が幅広いことも、小規模企業共済の共済貸付制度の特徴です。
一時的な資金不足や急な設備投資の必要性が生じた場合など、予期せぬ事態に対応することが可能です。たとえば、事業資金や運転資金のほか、緊急資金や生活費の補填としても活用できます。
小規模企業共済貸付の利用手順
小規模企業共済貸付は、ほかの融資制度と比較して手続きがスムーズなことも特徴です。ここでは、小規模企業共済貸付の利用手順について解説します。
申請書類は中小機構のウェブサイトまたは支部窓口から取得
まずは、申請に必要な書類を準備しましょう。申請書類は、中小企業基盤整備機構(中小機構)のウェブサイトからダウンロードするか、各支部窓口で直接入手できます。
申請時には掛金証明書や事業関連書類が必要
申請の際には、掛金証明書や事業関連書類が必要も準備する必要があります。
- 共済契約者の印鑑証明書
- 共済契約者の実印
- 身分証明書(運転免許証やパスポートなど)
- 借入金額に応じた収入印紙
- 共済契約者番号と氏名が掲載されている中小機構からの送付物
小規模企業共済の貸付制度は自分で積み立てた掛金からお金を借りる仕組みであるため、特に審査はありません。申請後、最短で即日の貸付が可能です。
小規模企業共済を利用するメリットとデメリット
小規模企業共済の利用にあたって、以下のメリットとデメリットも押さえておきましょう。それぞれ解説していきます。
【メリット】低金利で利用できるため返済負担が少ない
小規模企業共済の貸付制度では、低金利でお金を借りられることが大きなメリットです。
一般貸付では年利1.5%、特別貸付では年利0.9%で借入が可能です。返済時の負担が少なく、利用しやすい点が魅力です。
一般貸付 | 特別貸付 | |
---|---|---|
金利 (実質年率) |
1.5% | 0.9% |
概要 | もしものときに、迅速に事業資金等を借入れできる | 特別な事情がある場合に限り借入れできる (緊急経営安定貸付、傷病災害時貸付け、福祉対応貸付など) |
【メリット】融資の使用用途が自由
小規模企業共済の貸付制度は、融資の使用用途に制限がない点が大きなメリットです。事業資金はもちろんのこと、生活費の補填など、幅広い用途に利用できます。
そのため、急な出費が必要になった場合や、他の公的な貸付制度の条件に合わない場合でも、小規模企業共済の貸付制度は非常に有用な選択肢となります。
【デメリット】掛金が少ない場合は利用できる金額が限定的
小規模企業共済の貸付制度を利用する際のデメリットは、借入可能額が掛金総額に基づいて決定されることです。
最大で積立金の7割~9割までの借入れとなるため、掛金の積立額が少ない場合は希望する額を借りられない可能性があります。もし、それ以上の金額を借りたい場合は、別の方法を検討しなければなりません。
小規模企業共済貸付を利用する際の注意点
小規模企業共済貸付は資金調達にとても便利ですが、利用の際は以下の注意点も押さえておきましょう。
積立金の範囲内でしか借入できないため過剰な借入はできない
小規模企業共済の貸付制度では、担保が掛金の総額に限定されています。そのため、積立金の範囲内でしか借入ができません。つまり、掛金以上の借入は不可能です。
過剰な借入を防ぐ仕組みである一方、多額の資金調達には対応できない可能性もあるため、他の融資制度との使い分けが必要となります。
借入金は解約時に相殺される可能性がある
借入金は解約時に相殺される可能性がある点にも注意が必要です。
例えば、解約時に未返済の借入金がある場合、掛金と利子分の金額が解約手当金から差し引かれることになります。
将来受け取る予定だった退職金が減少してしまう可能性があるため注意しましょう。
返済が遅延すると信用情報に悪影響が出る可能性がある
貸付金の返済が遅延したり、滞納が続いたりすると、新たな借入ができなくなるだけでなく、信用情報に悪影響が出る可能性があります。
将来的な融資利用に支障をきたす可能性があるため、返済計画は慎重に立てることが重要です。
また、返済が遅延した場合は返済日の翌日から入金があった日までの期間につき、返済が遅れた元金に対して年14.0%の損害金を支払わなければなりません。
小規模企業共済貸付の代替手段と比較
小規模企業共済貸付のほかにも、緊急小口資金貸付や消費者金融、掛金の現金化などの資金調達方法があります。小規模企業共済貸付との違いや比較ポイントについて、それぞれ解説していきます。
緊急小口資金貸付は無利息で利用可能
小規模企業共済を利用できない場合、緊急小口資金貸付の利用を検討するのもひとつです。緊急小口資金貸付は、一時的に生計の維持が困難となった場合に少額の費用を借入れできる制度です。
小規模企業共済貸付では利息が発生しますが、緊急小口資金貸付は無利息で利用できるのが大きな特徴です。貸付上限は少額ですが、保証人不要で借りられます。
消費者金融や銀行ローンと比べた際の優位性
小規模企業共済の貸付制度は、消費者金融や銀行のカードローンと比較して年利0.9%~1.5%という金利の低さが魅力です。また、審査不要なので事業者にとって申込のハードルも低く、最短即日で融資を受けられることもメリットです。
掛金を解約して現金化する選択肢もある
小規模企業共済の掛金を解約し、一括で現金を受け取るという選択肢もあります。これにより、急な資金需要が生じた際などに、掛金を活用して資金を調達できます。
具体的には、掛金を解約することで、それまで積み立ててきた金額に応じた解約手当金を受け取ります。
ただし、この方法を選ぶ際は解約控除に注意が必要です。特に加入期間が20年未満の場合、受け取る金額が掛金総額を下回る可能性があるため、解約を検討する際には、将来受け取れるはずだった共済金との比較や、他の資金調達手段との比較を行い、慎重に検討するようにしましょう。
小規模企業共済に関するよくある質問(Q&A)
- 掛金総額が少ない場合、融資を受けられますか?
- 小規模企業共済の掛金総額が少ない場合でも、融資を受けることは可能です。ただし、借入可能額は積立額に比例するため、高額融資は難しいと言えます。
- 解約時に借入分が引かれるのはなぜですか?
- 未返済の借入分は積立金から差し引かれるという契約条件に基づくためです。これは、小規模企業共済の貸付制度が、加入者の積立金を担保とした融資制度であるためです。つまり、解約時には、未返済の借入金は、将来受け取るはずの解約手当金から相殺される仕組みとなっています。
- 借入を事業資金以外に使うことは可能ですか?
- はい、生活費や緊急資金としても利用可能です。小規模企業共済の貸付制度は、事業資金に限らず、共済契約者やその家族の生活を支えるための幅広い用途に利用できます。