近年注目を集めるつみたて投資。今回のコロナショックでも口座開設者が急増したという。では、そのつみたて投資で成功する人はどんな人なのだろうか?『いちばんカンタン つみたて投資の教科書』(あさ出版)の著者で経済アナリストの森永康平氏にそのポイント教えてもらった。

※2020年11月26日に配信した記事を再配信しております。
 

森永康平(もりなが・こうへい)
金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO、経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとしてリサーチ業務に従事。その後はインドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、各社のCEOおよび取締役を歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。

著書に『いちばんカンタン つみたて投資の教科書』(あさ出版)、『MMTが日本を救う』(宝島社新書)、父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(新書/ KADOKAWA)などがある。
twitter:@KoheiMorinaga

若い世代へと広がりを見せる「つみたて投資」

PIXTA

日本人は投資をする習慣がないとよく言われますが、実は日本でも着実に投資文化は根付き始めていることをご存じでしょうか。

金融庁が2020年2月21日に発表した『NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査(2019年12月末時点 速報値)』によれば、一般NISAは約1,177万口座、つみたてNISAは約189万口座、ジュニアNISAは約35万口座が開設されています。

総務省統計局によれば、2019年11月1日時点における日本の人口(確報値)は1億2,616万人ですから、NISA口座の合計数が1,401万口座ということを考えると、まだ日本人でNISA口座を開いているのはわずか11%に過ぎないと思うかもしれません。

しかし、それでも日本における投資文化はこの数年で急速に成長しているのです。下の図はつみたて投資に特化した「つみたてNISA」の口座数を年代別に分けて、その推移をグラフ化したものです。

 

これを見れば分かるとおり、30代と40代が利用者の半数を占めるなど、幅広い年代で「つみたてNISA」という非課税制度を活用する人が急速に増えていることがわかります。中でも伸び率が一番高いのは20代。若い年代の人たちも将来の資産形成のためにこの制度を活用し始めているということです。

コロナショックで口座開設急増

コロナショック直後の2020年4月、インターネット証券大手5社でNISA口座の新規開設数が急増しました。報道によるとその数は11万件にのぼり、これは前年同月と比べて2.8倍、ネット証券によっては5倍も増えたというところもあったようです。

つみたて投資は機械的に投資信託を購入する「ドルコスト平均法」を使った投資法なので、価格が高い時には口数が少なく、安い時には多くを購入できます。そのため、コロナショック時に始めた人たちは、株価が2万2,000円台まで戻っている今(2020年8月11日現在)、相場の下落時に「多くの口数を買う」というメリットを十分に享受できたと言えるかもしれません。

このように何かと注目が集まるつみたて投資ですが、ではどんな人が成功するのでしょうか。大きく分けて5つのポイントがあります。それぞれについて見ていくことにしましょう。

成功するための5つのポイント

ポイント1.つみたて投資はやめてはいけない

まず、最初に挙げるのは「続けることが大事だ」ということです。そんなこと簡単じゃないかと思うかもしれませんが、実はこれが一番難しいことといえます。

 

上の図は、ここ20年間の日経平均株価とNYダウ推移になります。ジワジワと右肩上がりになっています。将来のことは誰にもわかりませんが、少なくともこの20年間に限っていえば日米ともに株価指数は右肩上がりのトレンドで、時間をかけて投資を続けていた人は、かなりの運用成績を収めたことでしょう。

しかし、今回のコロナショックのように、時折訪れる急落局面に多くの個人投資家は驚いてしまい、先の見えない恐怖に襲われてつみたて投資をやめてしまいます。

でも、冷静になって考えてみてください。株価指数が右肩上がりの時は気分よく続けられるかもしれませんが、じつは平均購入単価も上昇していくため、実はそれほどのリターンは期待できません。それに対し、株価指数が下落すればするほど平均購入単価は下がるため、上昇局面に転じた時に大きなリターンを得ることができる可能性が高まるのです。つまり、急落局面にこそつみたて投資をやめてはいけないのです。

ポイント2.相場の変動を気にしない

次のポイントは「相場の変動を気にしない」ということです。投資をしていると、どうしても相場の変動が気になってしまいます。そして相場が大きく動き出すと、ついつい長期的な視点を忘れてしまい、目先の動きに心を揺さぶられて、次第に冷静な判断ができなくなりがちです。

今回のコロナショックでも“ろうばい売り”をした人が少なくないようですが、複利効果が失われてしまい、それまで頑張ってつみたててきた投資が水の泡になってしまいます。毎日相場を見ながら精神をすり減らすのではなく、新聞や経済学・統計学などの書籍を読んで知識を蓄えた方がよほど将来のためになります。相場に一喜一憂するのではなく、機械的に淡々と毎月同じ金額を投資することで投資効果が得られるのです。

ポイント3.しっかりと分散する

株式の個別銘柄を見ると、大きく値を上げている銘柄が数多くあり、ついつい投資信託など買わずに、個別銘柄に投資して一発当ててやろうと思ってしまいがちです。しかし何も知識がない初心者が個別銘柄に手を出すのはギャンブルです。

確かに、1年で50%以上値上がりしたり、2倍になったりする銘柄もありますが、その一方で、大きく値下がりしている銘柄があるのも事実です。自分だけは値上がりする銘柄を見抜くことができるなどという都合のいい話はありません。

老後資金のために運用しているお金を、うまくいけば儲かるが、失敗したら多額の損失を被ってしまうギャンブルに使ってはいけません。じれったさはあるかもしれませんが、派手なニュースに惑わされることなく、しっかりと投資先を分散できる投資信託を活用してコツコツ積み立てましょう。

ポイント4.無駄な手数料を払わない

私は、調査や取材、分析を重ねて、投資家が注目した方がいいポイントや、見落としがちなポイントをお伝えすることはありますが、「将来、必ずこうなる」と断言することはありません。なぜなら、投資の世界に絶対はありませんし、将来のことなど誰にも分からないからです。

しかし一つだけ、投資を始める前から確実にわかることがあります。それは「手数料」です。

投資信託を買う時の手数料(買付手数料)、保有している間の手数料(信託報酬)、売る時の手数料(信託財産留保額)といった各手数料は、全て開示することが義務づけられています。こうした手数料は、投資をする際には確実にかかってくるものですから、極力低く抑えることが重要です。

手数料だけが商品を選ぶ際のポイントではありませんが、買付手数料がかからない「ノーロード」と呼ばれる投資信託で、かつ信託報酬が低く、信託財産留保額がかからないものを優先して選びましょう。

ポイント5.レバレッジをかけない

最近、投資信託の中でも、レバレッジをかけているものがランキング上位にくる傾向があります。レバレッジとは、「てこの原理」の「てこ」からきている言葉で、少しのお金でその数倍の投資をすることができ、投資成績を増幅させる仕組みのことをいいます。

レバレッジ型の投資信託が人気なのは、一瞬で多額のリターンを出せる可能性があるからでしょう。例えば、日経平均株価が1日で5%上昇した日に、「日本株4・3倍ブル」という投資信託を買っておけば、1日で約22%も投資資産が増えるのです。

しかし、気を付けなければいけないのは、その逆も起こり得るということ。そして、これらのレバレッジ型投資信託は商品の性質上、保有期間が長くなれば長くなるほど減価していくので、長期保有には適しません。

さて、つみたて投信の優れている点や、投資商品を選ぶポイントについてみてきました。いずれも、当たり前のことように感じられるかもしれません。しかし、いざ投資を始めてみると、そんな簡単なことさえ続けられなかったり、いつの間にか忘れてしまったりするのです。

コロナショックの今こそ、20年後、30年後にしっかりとした資産を築くため、明日からでもつみたて投資を始めてみてはいかがでしょうか。

いちばんカンタン つみたて投資の教科書
小額から投資ができるとあって近年若者を中心につみたてNISA口座開設数が増加中。さらにコロナショックで新規口座開設数が急増するなど、不況時にも強い投資法として、今、つみたて投資に人気が集まっている。

本書は森永卓郎氏を父に持ち、金融教育家で若手経済アナリストとして今注目の森永康平氏が、わかりやすくつみたて投資のメリット・デメリットから始め方、続けるための考え方やコツ、さらにはプロから見たお勧めの投資信託までを紹介する、投資初心者にはうってつけの一冊。先行き不透明な時代だからこそ、投資の王道であるつみたて投資で資産を築こう!
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