なまずん

20代から夫婦で全世界に分散投資を始めて6年目。FI(経済的自立)をめざしてインデックス投資を実践中。長期・分散・低コストを徹底し、全世界の株式に積立投資をしている。FP2級。2022年より確定給付企業年金の運営にもかかわっている。
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お金を少しでも効率的に活用したいという思いが、投資を意識したきっかけ

ー なまずんさんが投資を始められたきっかけは何だったのでしょうか?

なまずんさん(以下、なまずん):大学への入学とともに上京し、奨学金を借りて生活していたこともあり、学生のころからお金のことを考える機会は多くありました。生活が苦しかったことと、将来への漠然とした不安もあって、お金を少しでも効率的に活用したいという思いがあったのが投資を意識したきっかけですね。投資を通じて収益を上げ、お金を増やそうと考えたんです。

いまのようなインデックス投資を始めたのは社会人になってからです。お金を貯めているだけではほとんど利息もつかないので、将来を見据えてお金を有効活用する必要性を感じて取り組んでいます。

ー 投資の経験は学生時代からあったのでしょうか?

なまずん:学生時代に、起業を志す人たちが集まる研究会に参加していました。興味本位で参加していたのですが、そこで初めて「株式会社の仕組み」について知りました。

出資者の資金を元手に事業を行い、そして出資者に事業収益の一部を還元するというのが、資本主義の基本的な形です。その仕組みは「面白いな」と思いました。ただ、学生時代はほとんど資金を持っておらず、すぐに儲かるというわけでもないので、この時点では株式投資を選んだわけではありませんでした。

当時はお金が増える可能性があればと思い、10万円ほどを元手にFXにチャレンジしたことがあります。でも、本を読んだり、自分でも研究したりと時間を使って試行錯誤したにもかかわらず、最終的に1万円ぐらいの損失が出てしまい、2か月ほどで嫌になってやめてしまいましたね。

また、就職後には、暗号資産を少し購入してみて運良く100万円程度の利益が出た一方で、ソーシャルレンディングに手を出して十数万円の損失を出したりしていました。

いま考えると、当時は「すぐにお金が増える可能性があるか」ばかりを考えて、収益の期待値や実現性、将来にわたる計画性について軽視していましたね。

ー FXや株式などに没頭し、趣味のようになっていく人もいますよね。なまずんさんがそうならなかったのは、ご自身の性格が関係しているのでしょうか?

なまずん:性格もあると思いますが、調査を重ねて「こうすればうまくいくかな?」と思って実践しても収益が得られなかったり、逆によくわからないけど収益が上がることもあったりして、「結局よくわからないな」と感じたのもありました。

ー おそらくほとんどの人が最初は失敗から入ると思うのですが、中には優れたトレーダーとして成功したり、個別株の投資で巨額の利益を上げたりすることもあります。なまずんさんがそこを目指さなかったのはなぜでしょうか?

なまずん:そうなれればなりたかったのですが、「どうしたらそこまでいけるのか?」という方法が見えてこなかったのと、そのために時間をいくらでも使えるような状況ではなかったからだと思います。

長期的な計画で資産運用ができて、上場企業を広く投資対象とする「インデックス投資」に惹かれた

ー 現在のスタイルであるインデックス投資に落ち着いた理由と、現在の投資方針について伺えますでしょうか?

なまずん:直接的なきっかけは、社会人になってからiDeCoNISAといった制度に関心を持ったことです。生活資金に余裕ができてきて、長期的な資産形成について考え始めたときに、SNSや検索サイトなどで調べている際に知り、制度を活用してみようと思いました。

その後、実際にインデックス投資で資産形成を実践している人のブログや、インデックス投資の根拠を論じている本を読んで勉強しました。長期的な計画を持って資産運用できることや、上場企業を広く投資対象とすることのメリット、そして個別の企業について1つ1つ調べる必要性も低いと知り、インデックス投資に惹かれました。その方法を今も継続しています。

ー 再現性が高い投資方法と感じたのですね。

なまずん:そうですね。株式全体を保有する感覚で投資するため、同じことをしている人と同じ結果が生まれる傾向があります。

ー 現在は、月にいくら程度運用されているのでしょうか?

なまずん:夫婦で合計して、毎月約45万円を定期的に買い付けています。急な支出があったときや、株価の変動に対する心理的な安心のために、生活費の約2年分を預貯金で保有しています。

ー なるほど。毎月ごとの判断はされていないのですね。

なまずん:そうですね。積立投資の設定を毎月変えるのは面倒ですし、リアルタイムに把握するのも難しいので。

特定の月に大きな支出が発生する場合もあるため、月ごとの判断ではなく、積立設定は年に一度ぐらい見直すようにしています。具体的に言うと、たとえば年末にその年の余剰資金を確認し、その12分の1を毎月に分けて積立投資するような感じです。

ー なまずんさんほどの知識をお持ちなら、積立投資だけでなく、相場感も徐々にわかってくるのではないでしょうか?

なまずん:なんとなくは理解できるかもしれませんね。

ー たとえば、現在の相場が下がっているので、本来10万円で買いたかったのに20万円で買わなければならなくなった、ということはありませんか?

なまずん:そういうことはもちろんあります。新型コロナウイルス感染症が発生した2020年の春にも、「そのうち戻るだろう」と思って購入する人がいましたよね。私もそう考えていましたが、積立投資では一部だけ機動的な判断をしても、あまり意味がないんです。

たしかに、あとから高い価格で購入するよりも、前に安く購入できればプラスになります。しかし、たとえば10万円の追加投資で1割ほど安く買えたとしましょう。「1万円分ぐらい儲けたな」というわけですが、その1万円で人生が大きく変わるわけではありません。

逆に、追加で買ったあとに1割下がって、「このタイミングで買えば良かった」なんて後悔することもあると思います。でも、それも結局、人生における資金計画に与える影響はほとんどないんです。

そうした理由から、相場には振り回されず、計画性を重視した運用スタイルを貫いています。

ー きちんと最初に決めた投資方針を守り続けることも、戦略の一環ということですね。

なまずん:そうですね、最初は経験不足から試行錯誤もありましたが、大きく変わることはなく今の自分のスタイルに落ち着いてきたという感じです。

ー なるほど、ありがとうございます。それでは、投資先の商品の魅力についてお伺いできますか?

なまずん:現在は日本、先進国、新興国のインデックスファンドにそれぞれ投資しています。 分配金を出さずに再投資するタイプの投資信託で、運用が非常にシンプルであることが魅力の1つです。

配当金を再投資してくれるため手間がかからず、これは税金面でも有利です。特に、NISA口座などの投資金額の上限が決まっている口座に最大限投資する際には、投資信託のほうが内部で再投資してくれるので便利だと思います。

もちろん課税口座でも税金を繰り延べてくれるのでメリットがあります。

ー 分配金をもらわずに複利で資産を成長させたいという考え方でしょうか?

なまずん:そうですね。それに、分配金が出てきても再投資するだけなので。

過去の失敗から特定の要素によって価格が大きく左右される商品を選ぶのはハイリスクだと学んだ

ー 続いて、失敗談についてお伺いできるでしょうか?

なまずん:大きな失敗はあまりありませんが、最初の頃に商品選びで失敗したことがあります。当時はなるべく広く分散しようと、新興国の不動産投資信託(REIT)にも少額投資していたのですが、結果的にその商品はずっとマイナスで推移し、最大でマイナス40%まで下落しました。

幸い、購入期間は半年程度で、投資額も数万円ほどだったため比較的小さな損失で済んでいます。

分散投資の一環としては、先進国株式などが上昇している状況であれば、新興国REITの下落も受け入れられるという考え方も存在します。しかし、政策や他国からの影響を受けやすい新興国という要素や、さらに株式市場に比べてREIT市場の規模はかなり小さいという点を考慮すると、将来はどうなるかはわからないとはいえ、あまり魅力的な投資先ではなかったように思えます。

この経験から、 なにか特定の要素によって価格が大きく左右される商品を選ぶのはハイリスクで、とくにこういったものに集中投資するのはよくないと学びました。今も持っているのですが、新しいNISAに移行する際には売却して、全世界株式などに変更するかもしれません。

ー 20年後に大化けする可能性もありますよね。

なまずん:可能性はありますが、数万円しか買っていないんですよね。

ほかにも、聞いたことのある失敗例として、似た名前の高コストのファンドを誤って積立設定し、継続的に購入されていたりした話があります。私も一度やりかけたことがありました。

同じインデックスファンドのカテゴリーの中でも投資する範囲やコストが異なるため、インデックスファンドならどれも安心というわけではありません。

ー ほかにも失敗はありますか?

なまずん:実際に起こった失敗例としては、NISA口座で積立設定をして安心していたところ、なぜか5万円分だけ購入できていなかったという事例がありました。

正確な原因はわかりませんが、結局、気づかずに翌年になっており、その年はもったいないことに非課税投資枠を使い切れていません。

運用中に放置することは問題ありませんが、購入できていないと意味がありませんよね。そのため、定期的に積立投資が正しく行われているかを確認する必要があります。

ー 利便性ゆえに見落としやすいということですね。

なまずん:そうですね、しかもその時はちょうどコロナ禍の下落相場でした。

ー それはショックですね。

なまずん:たしかにショックでした。その後、市場が回復したので、さすがに「あの時に購入できていたら」と残念に感じました。

ー それを防ぐとしたら、証券会社から積立設定完了のメールなどを確認するとよいのでしょうか?

なまずん:そうですね。積立予定日が大体決まっているので、定期的に確認しておくと安心です。

初心者が陥りがちな失敗と、その対策をお聞かせください。

なまずん:私も経験したことですが、計画を立てずに単に投資を始めたい、お金を増やしたいと思って調べた結果、具体的なアクションがわからず困ってしまうケースが多いと思います。

インデックス投資では、具体的にどの商品を購入するのがよいかが人によって異なるということはほぼなく、インターネットや書籍などで調べれば答えにたどり着くことができます。それは、低コストかつ、投資先がよく分散されているインデックスファンドで、純資産総額が増加傾向にあるものです。

しかし、いくら投資して、どれくらいの期間にわたって運用するかは個人で決める必要があります。投資をする目的や将来に対する考えなどを整理できていないと、どれだけ勉強しても不安が残ってしまいます。

ー 特にインデックス投資では、資産を膨らませるためには時間の長さが重要だと思います。やはり途中で投資をやめてしまうことは避けたほうがよいのでしょうか?

なまずん:運用期間を確保するのは大事なので、途中で投資をやめてしまうのは避けたいものです。やめてしまうのは、納得感を持てていないことが1つの要因だと思います。

そうならないためには、将来に必要な資金がどれくらいなのか、目標を整理することが重要です。また、今の収入が現在の生活費と将来の生活費を賄っていくもので、インデックス投資は将来の生活費づくりの1つの手段であることも考えたほうがいいですね。この配分を現在・将来のどちらかに寄せすぎず、ある程度の余裕を持って、バランスよく考えられると納得して取り組めると思います。

他の人の実践を参考にしながら、将来の目標を一定の目安として定め、年に1回ほど軌道修正していく。これを実践してみると、不本意にも投資をやめるという道を選ばないで済むはずです。

投資が将来的に増えるかどうか、100%の確証は誰にもありません。しかし、単に貯金するよりも、今ある余剰資金を投資に回したほうが、増える可能性は高まります。計画を立てておくことで不安が減り、現在そして未来の生活の充実に繋がっていく効果もあるでしょう。

計画を立てて定期的に見直していることが成功の秘訣

ー なまずんさんの投資がうまくいっている秘訣を教えていただけますか?

なまずん:繰り返しになってしまいますが、計画を立てて定期的に見直していることが大きいです。また、迷ったときは、「自分の今の行動は、将来の自分から評価されるだろうか?」という視点を持つことも大切です。

たとえば私も、株価の変動が荒いときにはいつもより気になりますし、流行りの商品に興味を持つこともあります。でも、そういう時は、30年後の自分になったつもりで、どう思うか自問してみるんです。そうすると、冷静な判断が下しやすくなります。

そうすると、失敗を最小限に抑えつつ、目標を認識しながら進められるのではないでしょうか。

ー なまずんさんは、どのような時に心が揺れ動くのでしょうか?

なまずん:上昇相場や下落相場では心が揺れ動くことはあります。ただ、どちらの場合でも、焦って起こしたアクションがよい結果につながる可能性は低いでしょう。

結局、私は「計画からは外れていないので、このままの運用方法で続ける」という判断を毎回下しています。ここでも、市場の波に左右されるよりも、自分の将来の目標達成に焦点を当てることを重視しています。

インデックスファンドへ投資することの魅力は、1本の商品で簡単に分散投資ができるところ

ー あらためて、インデックスファンドに投資することの魅力を総括していただけますか?

なまずん:インデックスファンドの魅力は、1本の商品で簡単に分散投資ができるところで、現在は全世界株式のファンドまでも活用できます。株式市場全体の成長を取り込めるため、資産形成に使いやすいツールです。

手間がかからず、かつ個別株とは異なり、個々の企業の事情を心配する必要がない点も魅力です。さらには税金に関するメリットもあるため、投資ツールとして非常に有力だと思います。

特に働いて得たお金で投資する方にとって、このような利点のあるインデックス投資は実践しやすい方法です。長期的な資産形成に成功した人も存在するため、参考にできる人も多いです。

ー インデックスファンドへ投資したいものの、リスクを恐れてためらっている方へメッセージをいただけるでしょうか?

なまずん投資商品を理解することだけでなく、自分自身の将来計画をたてることも意識してほしいと思います。また、情報の取捨選択も重要です。実践している人たちの意見を聞いたり、本を読んだりしてみるなど、ある程度の理論武装をしておくと安心して投資に取り組めます。

主にインデックスファンドが購入できるつみたてNISAの口座だけでも、2022年末時点で725万口座存在するなど、インデックス投資は国内でも多くの人に実践されている方法です。資産運用をこれだけで完結できる投資手法ですので、ぜひ活用してみてください。