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世界には約200の国があり、それに合わせて数多くの通貨が存在します。その中からペアを選んで取引するのがFXです。FX初心者の中には、どの通貨ペアを選べばよいのかわからないという人もいるでしょう。

この記事では、FX会社で一般的に取引されている通貨の特徴や通貨ペアを選ぶときのポイント、FX初心者向けの通貨ペアについて紹介します。

FXで取引される通貨の特徴

FX,主要通貨
(画像=PIXTA)

FX取引で利益を上げるカギは情報量です。まずは通貨に関する基本情報をしっかりと把握しましょう。主要通貨とマイナー通貨を含めた合計15の通貨の特徴や、値動きを予想するためのポイントなどを紹介します。通貨ペアを選ぶときの参考にしてください。

USD(米ドル)

USD(米ドル)

アメリカの通貨である米ドルは世界で一番取引されている通貨で、世界の基軸通貨とみなされています。基軸通貨とは国際為替市場や貿易などで広く使用される通貨のことです。

基軸通貨ゆえに、戦争などの有事の際に買われやすい傾向があります。為替相場の値動きが不安定になることに伴い、一時的に他国の通貨から資金を移動させて米ドルを買おうという動きが活発化するからです。

米ドルの値動きを予測するために注目すべきポイントは、アメリカの景気動向です。特にアメリカの雇用統計に注意が必要です。雇用の増加に伴い個人消費が増えれば景気は良くなります。雇用情勢はアメリカの景気動向に大きく影響しているのです。

EUR(ユーロ)

EUR(ユーロ)

ユーロはEU(欧州連合)27ヵ国中19ヵ国で使用されている通貨です。外国為替市場における取引量は米ドルに次ぐ第2位なので第2の基軸通貨ともいわれています。

ユーロの取引で注目すべきことは、ユーロ圏の失業率や消費者物価指数、GDPなどです。さらにユーロ圏内でも経済規模の大きいドイツとフランスの経済指標にも注意しましょう。

GBP(英ポンド)

英ポンドは米ドル、ユーロ、日本円に次いで外国為替市場での取引量第4位の位置にあります。

ユーロ圏で景気が悪化すると、資金の逃避先としてポンドが買われる傾向があります。ポンドの値動きを予測するためにはユーロ相場の動向や、イングランド銀行の発表する政策金利や失業率、消費者物価指数などに注意しましょう。

AUD(豪ドル)

AUD(豪ドル)

オーストラリアの豪ドルは金利が高くFXトレーダーに人気のある通貨です。オーストラリアや南アフリカ、カナダなどの鉱物資源やエネルギー資源を産出する国は「資源国」、その通貨は「資源国通貨」と呼ばれています。

豪ドルのような資源国通貨の取引では、金や石炭や鉄鉱石などの資源価格や、こうした資源を多量に輸入している中国の景気に注意しましょう。

NZD(ニュージーランドドル)

ニュージーランド経済は貿易依存度が高いのが特徴で、輸出先の最大手は中国です。そのため、ニュージーランドドルの値動きを予想するためには中国の景気動向にも注意する必要があります。

さらにオーストラリアと経済や政治面で関係性が深いことから、豪ドル相場と似た動きをするのも特徴です。

酪農製品が主要輸出産業なので、農産物価格の値動きにも留意しましょう。

JPY(日本円)

JPY(日本円)

円は金利が低いのが特徴です。市場が安定している場合、低金利の日本円を売って高金利の通貨を買う「キャリートレード」が行われます。アメリカ経済の先行きが不透明になると、ドルを避けて日本円が買われる現象が起きます。日本円の「安全通貨」「避難通貨」という呼び方はこうした特徴を踏まえたものです。

円の値段に大きく影響するのは日本銀行の金融政策です。

CHF(スイスフラン)

永世中立国スイスの通貨であるスイスフランは、戦争などの有事が発生したときのリスク回避目的の避難通貨として買われるケースがあります。超低金利政策をとっているので、スイスフランは金利が高い国とのキャリートレードでも使われる通貨です。

スイスの経済指標に加えて、スイスの最大貿易相手であるドイツの経済動向にも注意しましょう。

CAD(カナダドル)

カナダは地理的関係から経済的にアメリカとの結びつきが強いため、カナダドルは米ドルと似た値動きをします。値動きを予想するためにカナダ中央銀行の政策金利発表やアメリカの経済指標に注意しましょう。

さらに、カナダは資源国で原油価格の影響を受けやすいのが特徴です。原油価格が上昇すればカナダドルもそれに合わせて上昇し、反対に原油価格が下落すればカナダドルも下落する傾向があります。

HKD(香港ドル)

香港ドルはドルペッグ制度(固定相場制)を採用しているので、米ドルに追随して変動するのが特徴です。

値動きの予想にあたってはアメリカの経済指標に注目すべきなのはもちろんですが、中国への返還以降、香港の景気は中国の景気動向に連動する傾向も強まっています。中国本土の経済指標にも注意しましょう。

ZAR(南アフリカランド)

南アフリカは金やダイヤモンド、プラチナ、鉄鉱石などの鉱物資源が豊富な資源国で、南アフリカランドは資源国通貨です。

南アフリカランドは高金利通貨なので日本のトレーダーにも人気です。ただし新興国通貨なので市場での取引量が少なく、信用力もそれほど高くないという特徴があります。政情不安などの影響で価格が暴落する危険性も考慮しなければなりません。

南アフリカランドの値動き予想では、南アフリカの政治状況や金相場の動向に注意しましょう。

SGD(シンガポールドル)

シンガポールドルは通貨バスケット制度を採用しているのが特徴です。通貨の変動幅が一定の枠内で収まるようにシンガポール通貨当局が調整しているので、安定性の高い通貨と言えるでしょう。

シンガポールは強固な一党独裁体制で政治リスクが低い国です。通貨価値も安定しているので、短期で利益を狙う投資よりも中長期の経済成長に期待して投資するというスタイルの人に向いています。

NOK(ノルウェークローネ)

ノルウェーの長所は経常収支、財政収支ともに黒字で安定している点です。さらに北海油田を所有しているので原油・天然ガスの産出国でもあります。資源を輸出して得た利益をもとに政府年金基金を創設し、その資金を世界の金融市場で運用しています。

ノルウェーはEUに参加していません。しかし、地理的にはユーロ導入国と近いので、値動きを予想するためにユーロ圏の経済指標に注意しましょう。また、石油や天然ガスの価格にも気を配りましょう。

TRY(トルコリラ)

1990年代から2000年代初頭に起こった経済危機を脱したトルコは、今後の経済成長が期待できる新興国グループ「VISTA」(ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチン)に含まれています。

トルコリラは高金利通貨として日本のFX会社でも取り扱うところが増えています。

しかし、トルコは、地政学的リスク(特定の地域における政治的・軍事的・社会的緊張の高まりが、その地域もしくは世界全体の先行きを不透明にするリスク)が高くなっています。トルコリラの取引にはトルコ周辺地域の政治情勢に注意しましょう。

MXN(メキシコペソ)

中南米でブラジルに次ぐ経済規模を誇るのがメキシコです。メキシコでは銀などの鉱物資源、メキシコ湾岸で採掘される石油や天然ガスが輸出されているので、メキシコペソは資源国通貨とみなされています。

メキシコはアメリカと国境を接しているので、経済的にアメリカへの依存度が高くなっています。メキシコペソの取引では、メキシコ中央銀行の金融政策に加えて、アメリカの経済指標やメキシコとアメリカとの関係にも注意しましょう。

CNY (中国元)

GDP(国内総生産)がアメリカに次いで、世界第2位なのが中国です。中国元は政策金利が高いのが魅力で、「CNY/JPY」の長期保有で高いスワップ収入を狙うことができます。

「CNY/JPY」のレートは「USD/JPY」や「EUR/JPY」のレートと比べるとレートが低いという特徴があります。そのため取引に必要な証拠金を抑えることができます。少額から投資できることも中国元の魅力でしょう。

中国元を取引するときに注目すべきポイントは中国のGDPやCPI(消費者物価指数)です。 中国は国際市場から中国元が取り残されないために、その一部を国際市場で取引できるように規制緩和をしています(国際市場で取引される元はオフショア人民元と呼ばれます)。

将来的に中国元の規制が完全になくなる可能性もあるので、将来性の高い通貨と言えるでしょう。

通貨ペアとは?

FXでは2つの通貨銘柄を選んで取引します。その際に使われるのが「通貨ペア」という表現です。

「米ドル/日本円」や「ユーロ/トルコリラ」のように「/」で2つの通貨を左右に分けて表示します。左側は「基軸通貨」、右側は「決済通貨」と呼ばれます。

基軸通貨は支払う通貨を指しており、決済通貨は購入する通貨のことです。FX会社によって、取り扱っている通貨ペアの種類や数に違いがあります。

クロス円とは?

通貨ペアに関連してよく使われるのが「クロス円」という用語です。クロス円とは、通貨ペアの中で米ドル以外の通貨と日本円のペアを意味しています。

例えば、「ユーロ/日本円」、「南アフリカランド/日本円」などです。

ドルストレートとは?

クロス円とともに通貨ペアに関連してよく使われるのが、「ドルストレート」という用語です。通貨ペアに米ドルが含まれているものをドルストレートといいます。

例えば、「米ドル/日本円」、「ユーロ/米ドル」、「英ポンド/米ドル」などです。

【初心者向け】通貨ペアを選ぶポイント3つ

FX初心者の中には、数多くの通貨ペアの中からどれを選べばいいのか迷う人もいるでしょう。次に、通貨ペアを選ぶときのポイントを3つ紹介します。

流動性の高さ

流動性が高い通貨は取引が頻繁に行われています。流動性が高い通貨を選べば、それだけトレーダーが希望するレートで取引できる相手が見つけやすいということになります。

逆に、流動性の低い通貨を選べば、買いたくても買えない、売りたくても売れないという状況が生まれます。

また流動性の高い通貨は値動きの方向性(トレンド)が見定めやすいという傾向もあります。買いもしくは売りのトレンドどちらに動いているのかが判断しやすい通貨は、初心者向きと言えるでしょう。

スプレッドの狭さ

スプレッドが狭い、つまり実質取引手数料が安い通貨ペアを選ぶのもポイントです。

初心者は相場を見て少しでも利益が出ればすぐに約定してしまう傾向があります。この場合、出た利益と取引コストを差し引けば、実質の利益はわずかになってしまいます。

FX取引に慣れるまでは各FX会社のスプレッドを比較して、スプレッドの狭い通貨ペアを選びましょう。

情報量の多さ

値動きを予想するための情報が乏しい通貨での取引にはリスクが伴います。地政学的リスクから来る損失を回避するためにも、政情や金融政策に関する情報を入手できる国の通貨を選ぶのがポイントです。

初心者におすすめの通貨ペア

3つのポイントを踏まえて初心者におすすめの通貨ペアを2つ紹介します。

USD/JPY(米ドル/日本円)

流動性の高さ、狭いスプレッド、情報量の多さの3つのポイントを完璧にクリアした通貨ペアです。

FXの取引スタイルには、デイトレードやスキャルピングなどの種類がありますが、どの取引スタイルでも使える万能型、王道の通貨ペアと言えます。

値動きも比較的緩やかなので、短期で莫大な利益を出すのは難しいですが、FX初心者におすすめの通貨ペアです。

EUR/USD(ユーロ/米ドル)

FX取引に慣れてきたので、クロス円以外の通貨ペアに挑戦しようという人におすすめなのが、「EUR/USD」の通貨ペアです。

この通貨ペアも取引量が多いので相場の動きが読みやすいという特徴があります。取引するトレーダーが多く、上昇する気配があると大勢の人が乗っかるのでレートが上昇しやすくなります。またその逆もあります。

しかし、この通貨ペアはアメリカとEU両方の情報に気を配る必要があります。さらにFX口座は日本円で入金しているので、イメージとしては「日本円でドルを買い、そのドルを売ってユーロを買う」ということになります。こうした点をしっかりと理解して挑戦しましょう。

まとめ

FXで取引されている通貨の特徴と初心者におすすめの通貨ペアを紹介しました。取引量が多い、スプレッドが狭い、情報量が多い通貨を選択することが通貨ペアを選ぶ3つのポイントです。

FX取引に慣れるまでは通貨ペアの定番である「USD/JPY」のペアがおすすめです。十分に慣れてきたら通貨ペアの数を増やして、分散投資も検討していきましょう。

記事の監修者およびコメントいただいた専門家

金子賢司
監修者・金子賢司(ファイナンシャルプランナー)
立教大学法学部卒業後、東証一部上場企業に入社。その後、保険業界に転身し、ファイナンシャルプランナー(FP)として活動を開始。FPの最上級資格CFP資格を取得し、個人・法人のお金に関する相談を受けながら、北海道のテレビ番組のコメンテーターなどとしても活動している。

■保有資格:CFP、住宅ローンアドバイザー、損保マスター
Twitter:@NICE4611
HP:ファイナンシャルプランナー(FP)金子賢司
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