インジケーターとは何かを一言で表すと「為替相場の値動きを『見える化』するツール」です。(なお、インジケーターを直訳すると「指標」という意味になります。)
インジケーターを使う一番のメリットは、テクニカル分析に役立つことです。テクニカル分析とは、過去の値動きのパターンを元に将来の値動きを予測する分析です。為替相場の値動きは複雑で、未来を予測することは難しいものです。インジケーターを使うことで、複雑な値動きを予測することができます。
簡単にいえば、視覚的にチャートの「売り時」「買い時」「トレンドの転換点」等が分かるようになるということです。
トレーディングにおいて、トレーダーは時として感情的になったり、思い込みや先入観に捕らわれて、冷静な判断が下せなくなることがあります。
しかしインジケーターを使いこなすことができれば、冷静な判断のもと、トレードの成功確率を高めることができます。
インジケーターを使いこなすことができれば、次のようなメリットがあります。
- 客観性と再現性のある「勝ちパターン」を身に着けられる
- その結果、感情に左右されずに勝率の高いトレードができる
勝ち続けるFXトレーダーは、テクニカル分析による相場判断が確立されています。インジケーターを使いこなして、自分に合ったトレードスタイルを確立しましょう。
インジケーターを使いこなすことはマグレや幸運に頼らず、継続して勝ち続けるための第一歩です。
インジケーターの選び方
代表的なものから使ってみる
インジケーターには数多くの種類がありますが、まずは代表的なインジケーターから使い方を覚えていくことをおすすめします。代表的なインジケーターには下記のようなメリットがあるからです。
- 多くのトレーダーから意識されている
- ノウハウに関する情報が集めやすい
- 検証が繰り返されている。(そのため勝率が高い)
特に1点目は重要です。現実の相場は、大勢の人間や、大口のトレーダーが参考にしているインジケーターに沿って動く傾向があります。多くのトレーダーから意識されているということは、それ自体が大きなメリットなのです。反対に、マイナーなインジケーターは利用者が少ないため、なかなか予想どおりには動かないこともあります。
自分の感覚に合ったものを少数ずつ使う
インジケーターには様々な種類があります。「トレード手法はトレーダーの数だけある」と言っても過言ではありません。実際に使ってみながら、自分の感覚に合ったものを選ぶとよいでしょう。
デモトレードなどをしながら、自分が「順張り」「逆張り」どちらの考え方が肌に合うか、といった基本的な取引スタンスも合わせて、使うインジケーターを決めていくとよいでしょう。
ただし、使用するインジケーターを次々と変えていると、初心者のうちは混乱してしまう危険があります。目安として、1カ月~数か月程度は同じものを使い続けて検証を重ねてみると良いでしょう。
また、一度に仕様するインジケーターは、多くし過ぎないように注意しましょう。欲張って「あれも、これも・・・」と多くのインジケーターを表示させるトレーダーがよくいますが、おすすめできません。一度に目に入る情報が多くなりすぎると、混乱するからです。
トップトレーダーほど、意外と使用するインジケーターの数は少なく、分析手法もシンプルな傾向があります。(トレーディング手法は人それぞれなので一概にはいえませんが)
少なくとも初心者のうちは、代表的なものから、まずはトレンド系とオシレーター系を1つずつ選んで並行して使ってみるのがおすすめします。(トレンド系とオシレーター系については、次の項目で解説していきます。)
「トレンド系」と「オシレーター系」
インジケーターを漫然と使っているだけで成功が約束されているわけではありません。重要になるのは「それぞれのインジケーターの性格を理解して活用する」ということです。
インジケーターには、大きく分けて「トレンド系」「オシレーター系」の2種類があります。一概にどちらが優れているというわけではなく、トレード手法や相場の状況に応じて使い分ける必要があります。
「トレンド系」は、相場の方向性(トレンド)を教えてくれるものです。トレンドとは、相場が一定方向(上昇トレンド、または下降トレンド)に動いている状態のことです。トレンドの発生に対して、引き続き同じ方向に進む想定で、流れに乗る形で行うトレード(これを順張りトレードといいます)と相性が良いといわれています。
オシレーター系は、「買われすぎ」「売られすぎ」といった売買判断に必要なシグナルを発してくれるものです。オシレーター系は、値動きが一定の範囲内で上下を繰り返している相場(レンジ相場)での逆張りに威力を発揮します。レンジ相場の下限で「買い」、上限で「売り」をすることで、効率的に利益を得られるためです。
分類 | 特徴 | 代表的な例 |
---|---|---|
トレンド系 | 相場に方向性(トレンド)が発生しているとき、その流れの強さや方向性を示します。相場が上昇傾向のときに買い、下降傾向のときに売る、相場の流れに逆らわない「順張り」取引でよく使われます。 | ・移動平均線 ・ボリンジャーバンド ・一目均衡表 ・パラボリック |
オシレーター系 | 相場の過熱感(「買われすぎ」や「売られすぎ」)等を示します。相場が一定の範囲内で上下するレンジ相場で強みを発揮します。「逆張り」取引に向いているといわれています。 | ・RSI ・RCI ・ストキャスティクス ・CCI ・DMI |
なお、明確な分類があるわけではなく、「どちらかに分類されるか微妙なもの」「中間に位置しているようなもの」も存在します。(例:MACD)
トレンド系インジケーターの例① 移動平均線(SMA)
最も基本的なインジケーターである「移動平均線(SMA)」の例を見てみましょう。移動平均線とは、「当日を含めた過去数日間の価格の平均値を表す折れ線グラフ」です。(何日間の平均値を表すかによって、5日移動平均線、20日移動平均線などの種類があります。)
移動平均線が上向きの状態では相場は上昇トレンドにあると判断されます。(逆に下向きの状態では相場は下降トレンドにあると判断されます。)
「20日移動平均線を現在の価格が上回っている」状態は、「過去20日間に買ったトレーダーは儲かっている」ことを表します。(逆に現在の価格が下回っているときは、損をしています。)
順張りでトレードをする場合、次のように判断することができます。
- 移動平均線が上向きで、価格が移動平均よりも上にあるときは上昇傾向にある⇒買い時
- 移動平均線が下向きで、価格が移動平均線よりも下にあるとき下落傾向にある⇒売り時
【価格が上向きの移動平均線の上を推移⇒買い時】
【価格が下向きの移動平均線の下を推移⇒売り時】
また、移動平均線の有名な売買ポイントとしては「ゴールデンクロス」「デッドクロス」があります。
ゴールデンクロスとは、下降トレンドにあった価格が上昇することで、期間の短い移動平均線が、期間の長い移動平均線を下から上に抜けることをいいます。
相場が上昇傾向に転換する可能性が高いことを示すため、買いシグナルとしてよく利用されます。
デッドクロスは、逆に期間の短い移動平均線が、期間の長い移動平均線を上から下に抜けることを指し、売りシグナルとしてよく利用されます。
【ゴールデンクロス】
【デッドクロス】
トレンド系インジケーターの例② ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドは、1本の移動平均線の上下に複数のライン=バンドを描くことにより相場を判断するインジケーターです。
上下のバンドは、特定の移動平均線の計算期間について「標準偏差」(※σシグマ)を求め、移動平均線にσの整数倍を加減算して描いたものです。
※価格がどれだけ動く可能性があるかを示す統計学上の値です。
ボリンジャーバンドは、「相場価格が、一定の確率で上下のバンドの範囲内に収まる」という考えを基本にしています。
価格が各バンドの範囲以内に収まる確率は、次のとおりです。
バンドの種類 | 相場価格がバンドの範囲以内に収まる確率 |
---|---|
1σ | 約68% |
2σ | 約95% |
ボリンジャーバンドは、基本的にトレンド判定用の指標として使います。
すなわち、価格が高い確率で収まるはずの2σを抜けたら、抜けた方向にトレンド発生と判断します。トレンドが発生すると、バンドの幅が広がる特徴があります。順張りでトレードをする場合、は下記の通りです。
- 価格がバンド内から+2σを上に抜ける
- バンドの幅が広がる
- 価格がバンド内から-2σを下に抜ける
- バンドの幅が広がる
【ボリンジャーバンド トレンド発生】
一方で、ボリンジャーバンドは、レンジ相場にも使えます。
すなわち、価格が2σの範囲内に高い確率(95%)で収まることから、逆張りの手法を用います。
- 価格が+2σにタッチ
- 同時に上ヒゲ出現(ヒゲが出現すると、価格が押し返されたことがわかります。)
- 価格が-2σにタッチ
- 同時に下ヒゲ出現
ただし、2σを突き抜けてトレンドが発生した場合は急いで損切りし、逃げることが肝心です。
【ボリンジャーバンド レンジ相場】
オシレーター系インジケーターの例① RSI
RSIは、最も有名なオシレーター系テクニカル指標といえるでしょう。一定期間の「値幅」をもとに「買われすぎ」「売られすぎ」の局面を見極めようとするものです。
「買われすぎ」「売られすぎ」といった認識は、見る人によってバラバラです。そうした感覚的になりがちな判断を数値化し、客観性を持たせようとしたのがRSIです。
RSIは、0~100%で表されます。一般的に、売買タイミングは次のように判断されます。
- 70~80%で「買われすぎ」⇒買われすぎゾーンを抜けたところで「売り」
- 20~30%で「売られすぎ」⇒売られすぎゾーンを抜けたところで「買い」
【RSI】
- 売られすぎゾーンから50%を上抜けるとき⇒上昇トレンドが継続しやすいため順張りで「買い」
- 買われすぎゾーンから50%を下抜けるとき⇒下降トレンドが継続しやすいため順張りで「売り」
- 短期と長期2本のRSIを用いて、RSIのゴールデンクロス⇒買い
- 短期と長期2本のRSIを用いて、RSIのデッドクロス⇒売り
- 2本のラインの離れ具合で買われすぎ、売られすぎを判断
【2本のRSIによる判断】
30~70%の範囲内でゴールデンクロスやデッドクロスが出現しても、「だまし(※)」が多いため、エントリーは見合わせます。
(※)インジケーターが売買シグナルを発したものの、その後、相場が理論通りの動きとならずに反対の動きをしてしまうことです。
オシレータ系インジケーターの例② ストキャスティクス
ストキャスティクスも広く利用されているオシレーター系インジケーターです。一定期間における価格の範囲(最高値から最安値の幅)の中で現在価格がどのような位置にあるかを表す指標です。
ストキャスティクスは、メイン(%K)とシグナル(%DまたはS%D)の2つのラインが0~100%を移動します。シグナルはメインの移動平均値をとったもので、メインの方がシグナルより相場に素早く反応します。
また、ストキャスティクスは次の2種類に分けられます。
- ファースト・ストキャスティクス
値動きに対する反応が早いが、「だまし」が多い - スロー・ストキャスティクス
反応がやや遅いが、「だまし」が少ない
相場の上昇局面ではメイン、シグナルのラインともに上限に近づき、下降局面では下限に近づきます。ラインが上限に近づくと「買われすぎ」、下限に近づくと「売られすぎ」と判断されます。
- ラインが70~80%を超えて上がれば「買われすぎ」状態⇒買われすぎゾーンを下抜けたところで「売り」
- ラインが20~30%を超えて下がれば「売られすぎ」状態⇒売られすぎゾーンを上抜けたところで「買い」
【ストキャスティクス】
2本のラインとゾーンによる判断
- メインがシグナルを下から上に抜ける(ゴールデンクロス)
- 両方のラインが20~30%を下から上に抜ける
- メインがシグナルを上から下に抜ける(デッドクロス)
- 両方のラインが70~80%のレベルを上から下に抜ける
インジケーターは2種類以上を組み合わせて使おう
インジケーターは、できるだけ2種類以上を組み合わせて使いましょう。インジケーターはとても便利なものですが、1つひとつは万能ではありません。相場は予測不能な動きを見せることもあります。1つだけでは、いわゆる「だまし」に合ってしまうケースがあるのです。
また組み合わせる場合は、トレンド系とオシレーター系を組み合わせることが望ましいでしょう。同じ系統のインジケーターは弱点も似通っています。どちらか一方のみの指標を使用していても、判断に限界が生じてしまうのです。
2つの系統を組み合わせていれば、トレンド相場とレンジ相場のどちらにも対応することができます。トレンド系とオシレーター系の両方の売買サインが一致すれば、「だまし」も少なくなります。
また、動きがゆっくりなインジケーター(例:移動平均線)と速いインジケーター(例:ストキャスティクス)のように、特徴の異なる組み合わせも良いでしょう。
系統 | 弱点 |
---|---|
トレンド系 | 売買のタイミングが早かったり、遅れたりすることがある。 |
オシレーター系 | トレンドが把握できていないと、売買シグナルに「だまし」が多くなる。 |
ただし、インジケーターだけを過度に信用することはやめましょう。
特に、オシレーター系のインジケーターは長期的な相場判断には向いておらず、「だまし」の確率も高くなります。また、相場が一定の範囲を超えて強いトレンドが発生すると、機能不全に陥ってしまいます。このことから、テクニカル指標がインジケーター2つ(トレンド系とオシレーター系を1つずつで計2つ)だけでは万全とはいえません。
極めて有効な手法は、インジケーターと各種のライン(サポートライン、レジスタンスライン、トレンドライン、チャネルラインなど)を組み合わせることです。
ほとんどのインジケーターは、過去の相場の値動きデータが算出基礎になっていますが、ラインは過去の値動きデータというより、過去の相場の軌跡を基に描画したもので、捉え方の次元が異なります。また、各ラインの上下には、新規売買、損切売買、利益確定売買などの注文がひしめき合って集中しているため、ラインが相場に及ぼす影響は非常に大きいものとなります。
【サポートライン・レジスタンスライン】
【トレンドライン】
【チャネルライン】
単発のテクニカル指標で判断すると機能不全や「だまし」で失敗することがあるため、相場は、必ず複数の根拠を持つ売買サインで判断する必要があります。過去の値動きデータから求められたインジケーターと各種注文が集中しているラインの両方に売買サインが出れば、売買が成功する確率は格段に上がります。
(例)価格がレジスタンスラインを上に抜け、2種類のインジケーターも買いサインが出現⇒レンジ帯を上にブレイク⇒「買い」
【根拠が3つ揃った売買サイン】
価格はレンジ帯を上抜けた後 、旧レジスタンスライン(※)で支えられたのを確認できたポイントが、買いサインとなります。
(※)レジスタンスラインが上抜けされた後は、そのレジスタンスラインがサポートラインに転換します。=サポレジ転換
ストキャスティクスは、メインがシグナルを下から上に抜け(ゴールデンクロス)、両方のラインが20~30%を下から上に抜けると買いサインです。
ボリンジャーバンドは、価格がバンド内から+2σを上抜け、バンドの幅が広がると買いサインとなります。
- 価格がレンジ帯を上抜けた後 、サポレジ転換で支えられたのを確認⇒買いサイン⇒待機
- ストキャスティクスで買いサイン⇒待機
- ボリンジャーバンドで買いサイン⇒エントリー
(※)本記事に掲載した画像は、FX取引ツールであるメタトレーダー4(MT4)を使い、過去の米ドル/円相場をチャート表示したものを引用しています。