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インタビュイー
横川楓

やさしいお金の専門家/金融教育活動家。1990年生まれ。経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)などを取得。「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識を啓蒙、金融教育の普及に取り組んでいる。 2022年1月には一般社団法人金融教育推進協会を設立し、代表理事となる。マネーコンテンツ制作や企業や官公庁のアドバイザー、セミナー講師、雑誌・WEB・テレビなどメディア出演多数。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)Twitter:@yokokawakaede

投資や資産運用に取り組みたいものの、何から始めればいいかわからないという方も多いかと思います。今回は、「やさしいお金の専門家」として活躍する横川楓さんに、投資初心者でも始めやすい方法や、NISAのメリット、投資で気をつけたい点、情報収集する上でのポイントなどを伺いました。

不景気だからこそ、お金の知識をわかりやすく等身大で伝えたい

―最初に、横川さんがお金の専門家として活動を始めたきっかけや、活動への想いを教えていただけますでしょうか?

横川楓さん(以下、横川):母方の実家が会計事務所を経営していたことが、きっかけのひとつです。また、小学生の時に両親が離婚し、そのタイミングで会計事務所を経営している母方の祖父の実家に引っ越しました。それがすごい豪華な一軒家だったんです。しかしその後、私が中学生の頃に母が母子家庭として独立し、今度はすごく古いアパートに引っ越しました。

家族の形やお金の有無で住む場所が変わるんだなと、10代の頃に衝撃を受けました。

高校生になると、母が1人親家庭に対する支援制度を活用し、公営住宅に引っ越しました。母子家庭制度を利用することで、お得に引っ越せたんです。「制度を活用すると、環境が変わるんだ」と体感した出来事でした。

母方が会計事務所を経営していたため、母もお金に関する知識がありました。例えば、高校生の時に2か所でアルバイトしているなら「確定申告する必要があるかもしれない」ということだったり、「勤労学生控除」という制度の存在も教えてくれたりしました。周りの友人たちを見ると、お金のことに無頓着で制度も知らない人も少なくなく、お金に関するリテラシーの差があることを実感しました。

大学生になった頃には、自分でもっとお金について勉強してみようと思い始めました。ところが、国税庁や金融庁のサイトで一次情報を調べてみたところ、非常に難解に感じたんです。私は法学部だったので、法律の堅い文章に触れることには慣れていました。それでも省庁のサイトは難しいと感じ、普通にこれを見て理解できる人はいないだろうな、と思いました。

また、20代向けのお金のやりくりの本を読んでいても、女性が家庭に入って家計をやりくりするような本が多く見受けられました。ほかにも、不景気の時代にもかかわらず、書籍だと家や車を買うのが前提となっていることも。20代向け・若者向けと書いてあるけれど、私たちの現状に沿ったものではないと感じました。

不景気だからこそ、お金の知識をわかりやすく等身大で伝えることが重要。そう思ったことが活動を始めたきっかけです。

ポイント投資など、ハードルの低い投資から始めてほしい

― これから資産運用に取り組みたい方は、まずどのようなことを始めていけばいいでしょうか?

横川:資産運用や投資については、将来のことが予測できないため、どれだけ勉強してもその通りに行く保証はありません。そのため、まずは少額からでも始めることが大切です。

ポイント投資など、ハードルの低い投資から始めて感覚を掴むといいですね。いくら勉強しても、自分がその通りに実践できるかはわかりません。下落するタイミングもわからないため、自分で実践して感覚を掴むことが第一歩です。100円からでも始められますし、ポイントを利用すればお金を使う必要もありません。

ー とにかくやってみて、感覚を掴みながら学ぶことが大事なんですね。

横川:ちょっと始めて気になったことを書籍で確認したり、やっていくうちにプラスアルファで勉強していったりするのがいいと思います。やはり言葉の難しさが先行してしまい、手をつけられない方がすごく多いんです。したがって、なにより行動に移すことがポイントですね。

また、長期積立や分散投資が1番いいと言われていますが、やはり長期でやるなら早く始めないと意味がありません。そうした意味でも、早く始める姿勢が大事だと思います。

初心者向けのNISA。積立投資のメリットは放置できて、少額から始められる点

― 少額から投資を始めるにあたって、具体的に何から始めるのがおすすめでしょうか?

横川:お得という意味では、やはりNISAが初心者向けでおすすめです。特に積立投資は放置できますし、少額で始められるメリットがあります。

「自分のお金を使うのは不安」という方は、ポイント投資がいいかもしれません。いきなり大きな金額を使うのではなく、少額から始めてみてはいかがでしょうか。

― 周りで投資がうまくいっている人の傾向や、失敗している人の傾向はありますか?

横川:長期積立で運用するつもりでも、値下がりが気になる人は多いですよね。しかし、できれば頻繁にチェックしないほうがいいと思います。チェックしすぎると、「下がってる!」と思って売ってしまい、結局長期で持っていたら上がっていたのに……といったケースも珍しくありません。長期で運用すると決めたら、思い切って放置するぐらいの気持ちで取り組んだほうがいい。投資がうまくいっている周りの人たちを見ていると、そう感じます。

私は結構値動きを見ます。値動きを見て気持ちが動かない人であれば、別に見てもいいと思います。ただし、減っていることに対してショックを受けてしまう人は、絶対見ないほうがいいですよ。

私はつみたてNISAが始まった当初からやっているのですが、結構いい利益率で増えています。積立に関しては、ずっと持ち続ける姿勢が大切です。

ただし、それは積立運用のケースにおいてです。株式投資で短期売買するとなると、しっかりテクニカル分析などを勉強した上でやったほうがいい。投資の種類によって挑み方が変わることを覚えておきましょう。

株式投資に関しては、知識ゼロで売買しても儲けを得られないケースが多いように思えます。また、社会人は忙しいため、取引所が空いている時間に取引できないことも。そのため、自分に合った投資方法を選ぶ必要があります。

― 自分の性格や生活スタイルに合わせて投資方法を選んだほうがいいということですね。

横川:そうですね。あとは、投資信託だったら100円から買えますが、株式だと必要資金がそもそも大きいため、注意が必要です。予算をしっかり設定することを心がけましょう。また、株の場合は1株の値段を見て安いと思っても、基本の売買単位である100株だと高くなります。こうした事情からも、株式投資だとより深い知識が求められるんです。

― 投資を始めるにあたり、収入のどのぐらいを目安に使ったほうがいいでしょうか?

横川:しっかり貯金している方であれば、好きな金額を投資してもいいかもしれません。貯金がまったく無い方には、まず貯金をしてから投資するように伝えています。株式投資などリスクのあるものは別ですが、積立運用など低リスクで投資できるものなら、換金もすぐできます。貯金で持っておくか、投資信託の商品で持っておくか、その違いですね。あとは、リスクをどれくらい取れるか考える必要があります。

― 横川さん自身は、これまで資産運用で失敗したことはありますか?

横川:私はあまりリスクを取らないタイプで、株式の短期売買もたまにやることはあるのですが、自分に合わない投資スタイルではやりません。そのため、大きく損したことはないかもしれません。分散投資にもしっかり取り組んでいるので。

― 儲けようと思って始めたらいけないんでしょうか?

横川:なくなっても大丈夫なお金で始める、という意識はどうしても必要だと思います。

― 資産形成の場合、証券投資以外にも保険や不動産投資などが選択肢として考えられます。そのなかでも証券投資をおすすめする理由はありますか?

横川:1番ハードルが低いからです。NISAなどのように、国が制度としてやりやすいものを設けているため、ハードルは低いと思います。

― NISAを始める場合、横川さんがおすすめする証券会社はありますか?

横川:ネット証券か大手証券会社のいずれかが、使い勝手がよくておすすめです。

― ネット証券の場合、初心者の方が不安に思うポイントとして「対面で相談できない」という点がありますよね。

横川:そうですね、対面かネットかは自分が何を望んでいるかで選んだ方がいいかと思います。個人的には、逆に対面のほうが商品を勧められるのでどうだろう?と思っています。

情報収集は一次情報にアクセスするのが1番

― 初心者の方へ向けた、おすすめの情報収集方法はありますか?

横川:やはり一次情報にアクセスするのが1番いいと思います。投資に関してはNISAを含め、金融庁が学生向けのわかりやすいパンフレットをホームページに掲載しています。そういったものを読んでみてはいかがでしょうか。

― Twitterなどで株のトレーダーが色々発信している様子も見受けられますが、あまりそういうのは鵜呑みにしないほうがいいでしょうか?

横川:その人の言う通りにやったからといって、ずっとプラスになるわけではありません。そのため、まずは自分で判断するリテラシーを身につけることが大切です。

―最後に、これから投資を始める若者に対して一言いただけますか?

横川:とりあえずやってみることです。貯金ひとつとっても、40代から50代で100万円貯めるのと、20代から50代で100万円貯めるのとでは、月々に必要な掛け金がまったく違ってきます。先送りするほど必要な金額が増えるため、早いうちから始めることをおすすめします。