虫とり小僧

虫とり小僧

金融・格闘技・筋トレ・爬虫類・竹原ピストルなどが得意分野。18年前からインデックス投資家として世界中に分散投資をしています。金融庁のコラムに登場したり、ブロガーとしての各種メディア等の掲載履歴は50回以上。温泉ソムリエです。Twitter ブログ

「損をしたくない」という気持ちと好奇心があったから投資を始めることができた

ー最初に、投資を始めたきっかけを教えていただけますか?

虫とり小僧さま(以下、虫とり小僧):理由は大きく2つあります。1つ目は、2005年頃の好景気です。当時、小泉改革の後半戦が行われ、経済は活況を呈していると言われていました。

しかし、その恩恵が我々一般市民に届く実感はあまりなく、リストラの話や就職氷河期の終わりが見えにくいなど、社会問題が続出していました。一方で、新聞で見る日経平均株価のグラフは右肩上がりで、ここに好景気の真実があると思いました。

好景気というものは、資本家や株式を所有している人々が恩恵を受けやすい仕組みだと気づいたんです。普通の人々が経済の恩恵を受けるには、株式や不動産などのリスク資産を持つ必要があると感じました。

投資を始めたもう1つのきっかけは、保険の勧誘です。職場の先輩から保険屋さんを紹介されたことから、終身保険について勉強しました。毎月5万円を払い続ければ2,200万円の死亡保障がつき、30年後にはその金額を受け取ることもできるという話に興味を持ったのですが、保険会社がどのように運営しているのか疑問に感じ、調べてみたんです。すると、保険会社は集めたお金を原資として運用し、収益を上げていることを知りました。

その後、インデックスという株式市場の平均値が存在し、個人でも投資が可能であることを学びました。その指数が30年間で10倍になっていたことを知り、終身保険による増益よりも自分で投資するほうが有益だと理解したんです。こうした理由から、自分自身がなるべく資本家側に立つという選択をし、投資を始める決意を固めました。

ー保険会社にその話を持ちかけられたとき、最初に疑問を抱き、最終的にインデックス投資にたどり着くまでの過程が素晴らしいですね。
多くの人がそこまで深く考えずに保険に加入してしまう現状を考えると、何がその差を生んだのでしょうか?

虫とり小僧「損をしたくない」という気持ちと好奇心があったからだと思います。 何かうまい話には裏があると疑っていましたし、保険会社の人もおそらく、もっと良い方法があることを知らないんでしょう。だから彼らは善意から提案しているのですが、私は全体像を見ないと納得できない性格なので「Win-Winなんてないだろう」と思っていました。

ひょっとすると、何も知らずに加入していたならWin-Winだったかもしれません。でも、裏側を知りたかったんですよね。

世界中の株式を中心に幅広く保有し、なるべく手間をかけない投資スタイル

ーインデックス投資を知ったあとの投資歴についてお聞きしたいと思います。初めて購入した銘柄や商品について教えていただけますか?

虫とり小僧:いくつか投資信託を試しに買ってみた記憶があります。たとえば「ステートストリート外国株式インデックス・オープン」といったものは、当時購入手数料が無料で、信託報酬も1%と比較的安かったんです。基本的には先進国の株式指数に連動するインデックスファンドを多く購入した記憶があります。

ー当時は今ほど投資商品の種類も多くなかったのでしょうか?

虫とり小僧:そうですね。そのアセットクラスで普通に買えるものだと最も低い信託報酬が1%で、今とは違い0.1%という選択肢はありませんでした。手数料無料で購入するためには特定の証券会社、つまり買いたい投資信託を取り扱っている複数のネット証券でそれぞれ口座開設する必要があったんです。

先進国の債券やREIT、あるいは日本のREITなど、それぞれファンドを買うためには別の証券会社を開設しなければなりませんでした。また、目玉商品は手数料無料でしたが、ほかの商品は高かったですね。

ーなるほど、今とは全く異なる投資環境だったんですね。現在の投資方針については、当時から変わらないという理解でよろしいですか?

虫とり小僧:基本的には変わっていません。世界中の株式を中心に、債券やREITなどを幅広く保有し、自動積立をしています。 基本的には放置するスタイルで、3ヶ月に1回程度、資産状況を確認し、最初に決めた配分からズレていればリバランスします。

なるべく手間をかけないようにしているので、月あたり数分の時間を費やす程度です。1年間に投資にかける時間は、1~2時間かもしれません。

ー仮想通貨の登場など、心が揺れるような投資商品も存在すると思いますが、それらに対しては一切関心を示さなかったのでしょうか?

虫とり小僧:そうですね。マーケットにいるからには、ほかの目新しい商品も多少はチェックしています。ただ、18年間で年間平均7%ほどのリターンが出ている自分の現状を見ると、投資を始めたての頃のように毎日ログインして資産状況をチェックし、わずかな変動に対して調整を加える行為には意味がないと思っています。

最初の頃は新たな商品を試したり、自分で投資方針を何度も作成したりと、時間をかけていました。しかし、時間をかければかけるほど色々な商品に手を出したくなり、購入した直後に価格が下がったり、売った直後に価格が上がったりすることが気になって仕方ありませんでした。気に病む時間が増える一方で、コスパが下がっていくことを実感したんです。その経験から「手間をかけないほうがいい」と考えるようになりました。

仮想通貨については、リスクとリターンのバランスが問題です。短期間で大きく儲かる商品は、同じように短期間で大きな損失を生む可能性があります。仮想通貨は資産としての裏付けが特に何もなく、法的な保護もありません。ブロックチェーン自体は素晴らしい技術かもしれませんが、その素晴らしさを十分に理解して活用するための知識が自分にないため、手は出しません。

インデックス投資の魅力はとにかくコストパフォーマンスが優れている点

ーインデックス投資の魅力を教えてください。

虫とり小僧:とにかくコストパフォーマンスが優れていると思います。世の中にはさまざまな投資が存在しますが、インデックス投資のように手間が少ない投資は稀だと思います。先ほどもお伝えしたように、私が投資に費やす時間は1月あたり1~2分程度です。それでいて20年近く年率7%で増えていくというのは、本当に驚くべきことです。

もう1つの要素として「再現性」があります。仮想通貨や短期売買、不動産投資など、さまざまな投資で成功した人はいくらでも存在します。しかし「その成功が誰でも達成可能なのか?」と考えるとそうではなく、時間、能力、運など複数の要素が必要です。一方インデックス投資は、自分でも子供でも、基本的に同じ投資をすれば同じ結果が得られます。こうしたコストパフォーマンスと再現性の高さが、インデックス投資の大きな魅力だと考えています。

ーありがとうございます。続いての質問に移ります。投資の失敗談や成功談を伺いたいと思います。インデックス投資の場合、大きな失敗は少ないかもしれませんが、もし何かあればお聞かせください。

虫とり小僧:失敗談として挙げられる話は2つあります。1つ目は、インデックス投資を始めた当初に時間をかけすぎてしまったこと。インデックス投資は基本的に放っておいても効率よく運用が進むものなのに、初めて投資をした時の感情に振り回されてしまいました。AppleやAmazonなど、全世界の有名企業を保有していることに対する謎の全能感のような感覚に浸り、つい時間をかけてしまいたくなったんです。間接的な投資先企業について調べたり、自分の資産状況を毎日ウォッチしたり、細かな投資戦略を何度も練り直してみたり、と。

私が投資を教えた友人や同僚がただ単純に積立していたのに対し、私は詳しいと過信し、無駄に資産配分を工夫しようと考え、細かな投資比率の微調整を何度も加えたりしました。しかし、結局何も手を加えずただ積み立てていた友人たちのほうがパフォーマンスが良かったのでこともあり、自分のその行動の愚かさを痛感しました。

もう1つの失敗は、リーマンショック時の経験です。通常、インデックス投資はほったらかしで比率を維持するだけなのですが、リーマンショックの時に資産がどんどん下がっていきました。その時期に「これは下がったからこそチャンスだ」と考え、リバランスと称してどんどん追加投資したのですが、結果、資産価値はさらに下がりました。

当時はインデックス投資家としての心構えができていなかったため、調子に乗り失敗してしまったという話です。

ー結果的に、現時点では増えていませんか?

虫とり小僧:低かった時点から見れば何倍にもなっているので、結果的には良かったですね。ただ、2007年初頭と2008年の1番低い時期とでは、大きな価格差がありました。もっと粘り強く待っていれば、最安値付近でリバランスできたと思います。しかし、私の場合はチャンスのタイミングですでにリバランス資金をほぼ使い果たしていました。

投資で失敗しない秘訣は、自分を凡人と認識し、相場を予想するなんて無理だという前提に立つこと

ー欲が出ると判断を誤ることもあるということですね。
続いての質問です。初心者が陥りやすい失敗とその対策についてご教示いただけると幸いです。

虫とり小僧:もし過去に戻って自分にアドバイスできるとしたら、「自分は投資において無能だと自覚し、自信を持つな」と伝えたいです。自分を凡人と認識し、相場を予想するなんて無理だという前提に立てば、インデックス投資はうまくいくと思います。

たとえば、私が投資を始めたのは2005年頃で、その初期の1年半ほどはパフォーマンスが非常に良かったんです。株価も上昇していて、「REITを増やそうか、新興国への投資を増やそうか」と思っていたほどでした。しかし、これは運が良かっただけです。リーマンショック後は投資家のほとんどが利益を上げており、結局のところ無理な投資を手がけなければ誰でも利益を得られたという話です。

実力のある人もいたかもしれませんが、それを確認する手段はありません。だからこそ、自分はただの凡人で、投資においては無能だと自覚することが重要です。細かなことにこだわらず、適度に満足する気持ちを持つことが、インデックス投資を安心して続けるための方法だと思います。自信は投資以外のことに持ちたいと私は思っています。

ー2023年に注目しているトピックスについて伺えるでしょうか?

虫とり小僧:インデックス投資家の観点から見ると、特に注目するトピックはありません。さまざまな出来事がありますが、1つのトピックを一途に注目するのではなく、市場全体の動きを把握することが重要です。世界中に投資の網を張り巡らせておくというのが、インデックス投資家としての姿勢です。

インデックス投資とは、具体的な相場を追わない投資方法なので、私自身もそれに従っています。ただ、最近は日本株の調子が良いように見えます。たとえばTOPIX(東証株価指数)が高値で、バブル以降の最高値を記録していますよね。一方で、しばらく好調だったアメリカはやや調子を落としており、アメリカの金利にも動きがあります。とはいえ、これらはどれも過去に経験したことのあるシーンのように思えます。

だからこそ資産を分散させ、時には上昇しているものを少し売却し、下落しているものに投資するという行動(リバランス)を継続的機械的に実施することが重要だと思っています。

新しいNISAは素晴らしい制度なのでフル活用していく

ー2024年から新しいNISAが始まりますが、これを利用して買い増しはされますか?

虫とり小僧:当然活用します。新しいNISAは素晴らしい制度だと思っています。長期にわたりインデックス投資を行い、リスク資産に自分の資金を投入してきた人たちにとって、新しいNISAの活用で資産が増える可能性は高いでしょう。

その可能性は、投資期間が長ければ長いほど高まります。だからこそ、自分の投資可能な範囲で使うといいと思います。現在保有しているリスク資産を売却してでも早く利用可能枠を埋めたほうが、確率的には利益を生む可能性が高いはずです。私もNISA制度はフル活用するつもりです。

ただし、新制度の場合、非課税保有期間が無期限になることに多少の懸念がなくもありません。いや、もちろん、無期限化は待望していたことなのですが、これまでのNISA制度では、たとえば「つみたてNISA」の場合、20年間の非課税保有期間が明確に設けられていました。そのため、投資初心者でも「20年間は売らないほうがいい」というルールが理解しやすい状態でした。一方、新しいNISAでは、いつ売ってもその枠が再利用できるようになるため、逆に自己制御が難しくなるかもしれません。

私個人としては、NISAに合わせて投資戦略を変えるつもりはありません。誘惑に負けて色々と手を加えてしまうと、投資初期のような失敗を繰り返す可能性があるからです。

ーおっしゃる通りですね。ありがとうございます。
続いての質問に移ります。「これはずっと持っておきたい」というお気に入りの銘柄があれば教えてください。

虫とり小僧:私が1番好んで保有しているのは、8資産均等型のインデックスファンドです。これは、先進国株式、新興国株式、国内株式、先進国債券、新興国債券、国内債券、先進国REITおよび国内REITを均等に保有するバランスファンドです。

おそらく理論的には、世界中の株式のみに分散投資するタイプやアメリカ株だけを持つという戦略のほうが、よりリターンを見込める可能性があります。しかし、インデックス投資をしている時点で「ほどほどでオッケー」という割り切りがあります。だからこそ、投資を始めた時の投資スタイルを崩さず、このままのやり方で進めていこうと思っています。

ほとんどのリスク資産はこの10年ほどずっと上昇を続けています。しかし、このようなマーケット状況は珍しいですね。歴史的には、上昇期や下降期、停滞期などは循環しながら訪れるので、そのうち低迷期もあるでしょう。そのような時期でも、投資の分散により心理的な影響をは抑えられるので、ほどほどの投資という考え方は大切だと思っています。

精神的なストレスを抑えることも、投資においては重要な要素だと考えています。

ー投資初心者におすすめしたい書籍とその理由を教えていただけますか?

虫とり小僧:まず1冊目は『金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論(朝日新聞出版)』 です。著者の北村さんは正体不明の人物なのですが(編集部注:2023年6月より本名である徳成旨亮名義での執筆活動を開始)、上場企業で財務のトップをやっているような人で、国にも専門的な意見を提供するほどの人物です。彼は2006年にアメリカの古典的なインデックス投資について日本語版でわかりやすく解説した本を出版しており、本書もそのベースを引き継いでいます。

北村さん自身も8資産均等型のバランスファンドでの投資を続けており、その理論が正しいと語っています。この本は、必ずしも1位を目指さないバランスファンド型の投資家にとって、理論的な支えになると思います。

2冊目は水瀬ケンイチさんの『お金は寝かせて増やしなさい(フォレスト出版)』 です。この本は、個人投資家がインデックス投資で資産を増やす方法を、理論的にも経験的にも詳しく説明しています。

水瀬さん自身も多少債券を含めながらも、やはり先進国の株式を中心としたインデックスファンドに投資しています。より実践的なアドバイスを求める方には、水瀬さんの本が適していると思います。

投資については「とりあえずやってみなはれ」と私は思っていますが、少なくとも1冊は信頼できる書籍を読むことをおすすめします。

ーインデックス投資に向いている人、向いていない人はどのような特徴があると思いますか?

虫とり小僧:「自分だけ成功したい」「他人より大儲けしたい」という人は、インデックス投資に向いていません。成長や面白みを追求するスタンスは、人生において重要です。ただし、投資においては「自分は無能なので、ほどほどでいい」と割り切る姿勢が必要だと考えています。

私自身も、投資以外の領域では自信満々に活動していますが、投資に関しては過信しないようにしています。少しのんびりしていて、ずぼらな人。こういう人のほうがインデックス投資には向いているのではないでしょうか。

また、投資の結果を確率や統計的な数値で理解できる人もインデックス投資に向いています。反対に、投資結果に対して感情的になりがちな人は、インデックス投資をやっても長続きしないかもしれません。

投資に興味がありつつも失敗が怖い人には、つみたてNISAを利用して無理のない金額で始めることをおすすめしたい

ー「投資してみたいけど、失敗が怖い」という人に対するアドバイスはありますか?

虫とり小僧まずは「つみたてNISA」を利用して、無理のない金額で全世界に分散する投資信託を毎月自動的に積み立ててみることです。 無理のない金額は人それぞれですが、月に1~2万円ぐらいを想定しています。

つみたてNISAでは対象商品に金融庁が一定の基準を設けているため、詐欺的な商品に手を出してしまうリスクはありません。この信頼性は投資初心者にとって、税制上の優遇よりも大きなメリットかもしれませんね。

ただし、投資はリスク資産であるため、価格の変動はそれなりにあります。まずはそれに慣れ、日本だけでなく全世界に分散投資することが大切です。

長期間続ければ資産は増えていくと思いますが、途中で価値が下がる時期は必ず訪れます。ただし、それがずっと続くことはありません。冬の時期を経験することで、投資の経験を深められるでしょう。

ーインデックス投資は長期的な資産形成に採用されることが多いと思うのですが、たとえば70歳になり、3,000万ぐらいの資金があるとして、その時に冬の時代が5年ほど続くケースもあるかと思います。そういったケースへの対処法はありますか?

虫とり小僧:それは少し難しい問題ですね。ただ、1つ考えていただきたいのは、私たちが何年生きるかという観点です。

2008年のリーマンショックで3割価値が下がったとしても、続けていればその時より資産は増えています。冬の時代が訪れ、そのまま一気に解約してしまうと、損失だけが残ります。しかし、長期間続けていると、年率平均で5~7%程度の増益が見込まれます。

70歳なら、女性であればさらに20年近く、男性でも10年以上の平均寿命があります。そのことを考慮すると、所有金額にもよりますが、資産の半分くらいをリスク資産にしてもよいのではないでしょうか。

半分に留めておけば、一方が崩れても他方が支えてくれます。全額投資しないというスタンスに加え、「価格が一時的に下がったとしても、それがずっと続くわけではない」という確率の理解があれば、最終的には適切な水準に収束していく理屈です。

ー最後にこれから投資にチャレンジする方へ一言お願いします

虫とり小僧:資産形成のために、「手間をかけず」かつ「再現性」が見込める投資をしようとすると、長期・積立・国際分散インデックス投資よりもベターなものを見つけるのは難しいと思います。大まかなスタンスがその方向性であれば、金融商品の違いや細かい資産配分などはあまり気にしなくてもいいでしょう。とにかく続けることが大切です。

そのあたりの心構えは、金融庁の公式サイト内の「教えて虫とり先生」というコラムにも詳しく書いてあるので、ご興味があればそっちも覗いてみてください。