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町田 萌

FPサテライト株式会社 町田 萌

日本大学商学部在学中よりファイナンシャルプランナー(FP)として独立を志し、外資系損害保険会社、資格試験対策等のeラーニング講座を手掛けるIT企業に勤務。卒業後、税理士法人勤務を経て、24歳で保険などの金融商品を取り扱わない中立中正なFP事務所を開業する。26歳で法人化し、FPサテライト株式会社を設立、代表取締役に就任。20名以上の所属FPを束ねている。20代~30代前半の婚約中・新婚世帯を中心とした相談実績多数。家計・生活設計、保険、資産運用から、起業や経理支援まで、個人法人問わず広い視野からの問題解決を得意とする。
HP:FPサテライト株式会社

国民の資産所得倍増を目指す政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げるなか、資産形成や資産運用に取り組みたいと思いつつも何から始めればよいかわからない、という方も多いだろう。お金と上手に付き合うためにまず始めるべきことは何なのか。初心者がまず始めることは?今回はファイナンシャルプランナーの町田萌さんにお話を伺った。

まず「行動してほしい」ということを伝えたい

― 20代、30代の資産形成、資産運用に興味あるものの何から始めてみればいいか、第1歩として何をやるべきか悩んでいる方へアドバイスをいただけますでしょうか。

町田萌さん(以下、町田):「よくばりに気分よく生きたい私たちに都合のいい お金の教科書」でも紹介させていただきましたが、まず「行動してほしい」ということを伝えたいです。FPとしてはある程度投資や資産運用の基礎を理解してから行動していただくと望ましく思いますが、やはり勉強から入ると、その段階で少し面倒だなって感じてしまう方もいらっしゃると思うんです。そういった方は、証券口座を開設するところから始めるといいと思います。

お金の教科書
お金の貯め方・稼ぎ方・増やし方が丁寧に解説された町田さんの著書「よくばりに気分よく生きたい私たちに都合のいい お金の教科書 (クロスメディア・パブリッシング)」

― 最近だとネットで口座を開設する方も多いですが、おすすめでしょうか?

町田:弊社のスタンスとして何が1番おすすめかという発信はしないようにしてますが、気軽に始めたいのであれば、ネット証券の口座はいいかと思います。 窓口がある総合証券口座にも証券の担当者から話を聞けるというメリットもありますので、両方比較してみて、自分に合ったものを選んでいただければと思います。

― ある程度投資や資産運用の基礎を理解してから行動していただくとありがたい、とさきほどおっしゃられていましたが、どのような勉強方法がおすすめでしょうか。

町田:先程も紹介した著書は、ある程度網羅的に学べるような構成になっているのでぜひ読んでいただきたいです。ただ今はYouTubeやInstagramなどでもさまざまな方が発信されていますので、インターネットでも基本的なことはある程度学べるかと思います。

― 投資への関心を持ち始めた方におすすめの投資はありますか?やはり今だとつみたてNISAでしょうか。

町田:来年新NISAも始まりますが、税金がかからないという点ではメリットがあり、始めやすいかなと思います。つみたてNISAや新NISAの「つみたて投資枠」では投資先が投資信託に限られますが、国が設けた基準に沿った銘柄のみ買えるものなので、選択肢がある程度絞られているという点も初心者の方には始めやすいポイントかなと感じます。

流行りものに飛びつかない

― 逆に、投資や資産を運用する上で逆にこれはやらないほうがいいというものはありますか?

町田:総括して言うと、流行りものに飛びつかないということですね。少し前だと、仮想通貨(暗号資産)やFXなど。そういう商品を基礎知識が無いまま始めてしまうのは危険です。新しい投資商品は法整備がされていなかったり、値動きが激しかったりします。投資に関しては新しいものにいきなり飛びつくのは避けたほうが無難かと思います。

ー ほかにも注意点はありますか?

町田:仮想通貨やFXなどの話ですが、そういう商品はネットでもさまざまな情報が出回っています。中には運営会社がブロガーさんなどに宣伝してもらっているものもあるので、世の中で「これがいい」「おすすめ」といった話が出回ってる時っていうのは、鵜呑みにせず、本当にいいのか、立ち止まって考えたほうがいいのかなと思います。

― 町田さんが経営するFPサテライトでは、地方移住のサポートもされていらっしゃいますが、地方移住を検討する際に押さえておいたほうがいいポイントはありますか?

町田:地方に移住を検討される方の中には、都心にお住まいの方もいるかと思いますが、一つ注意したほうがいいなと思うのが、地方に行けば生活費などの支出が抑えられるという話です。

確かに都心だと家賃が高い、生鮮食品が高い、ということはありますが、 地方へ行けばそれが全部下がるのかというと、確かに家賃は下がりますし、生鮮食品も安い地域が多いかもしれません。一方で、地方によっては車が必須になり、家賃が下がった一方で車に関連する費用が増えるということもあります。

北国だと暖房費もかかります。一概に地方に行けば支出がすごく抑えられるかというと、必ずしもそうとは限らないところは、 意識しておいたほうがいいですね。

― そういったリサーチはどのようにすればよいでしょうか?

町田:検討段階であれば、ネットで移住した方の体験談などを参考にするのがいいかと思います。その後、ある程度行き先の候補を絞って移住しよう、となったタイミングではやはり実際に現地に行ってみたほうがいいですね。お試し移住などを企画している自治体もありますので、上手に活用するといいと思います。

家計簿はつけることが目的になってしまわないように

― ありがとうございます。町田さんは著書で家計簿の活用法にも書かれていましたが、アプリと手書きそれぞれのメリットを教えていただけますでしょうか。

町田:前提として、アプリと手書き、どちらでもいいので自分に合ったものを使えばよいかと思います。その上でアプリは使いやすいものも多いですし、手書きは記憶に残るというメリットがあります。ただ、どちらでやるかよりも家計簿を始める際の注意点は「つけることが目的になってしまう」という点です。

目的はどれだけの支出をしているのかを把握することなので、それがある程度把握できるのであればきっちり1円単位に合わせる必要はありません。

― 著書の中でも家計簿をつけるのは1ヵ月で30分ぐらいと書かれていましたよね。

町田:私の事例としてはそのくらいですね。毎日時間をかけて細かくつけるよりは、大まかでもいいから、まずは全体像を把握して管理することが大切です。

私自身、最近は1ヵ月で30分すらかけてなく、何ヵ月分かまとめてつけてます。忙しい中で家計簿もばっちりやるのは続けるのが難しいので、無理のない範囲がおすすめです。

― 頑張りすぎると続かないということですね。

町田:そうです。自分が続けやすい方法を模索していただければと思います。

― 著書ではライフプラン表を書いてみよう、という話もありましたが、書く際に大切なポイントを教えていただけますでしょうか。

町田:まずは無料で使えるツールがさまざま出回っているので、使いやすいものを選んでいただくといいのかなと思います。

どのツールも画面に沿って入力していけば、自動的にグラフや表が出るような仕組みになっています。表をつくることよりもその後の活用が大事です。自分の将来がどうなりそうかある程度把握して、何をすべきか決める材料の一つとして使うのがいいかと思います。また、遠い先はどうなるかはわからない点も多いので、悲観的、楽観的になりすぎないほうがいいです。

― あくまで目安として見ておく、というのが大切なんですね。最後にこれから資産形成を始めていこう、という読者に一言いただけますでしょうか?冒頭の「行動してほしい」というのが結論なのかと思いますが。

町田:はい、そのとおりです。自分で決めて、自分で行動するというのが本当に大切になってきます。例えば、自分が納得して若いころにお金を使うのであれば、老後に贅沢ができなかったとしても納得できるでしょうし、後悔もないと思います。 あまり老後を気にしすぎて、今の生活が楽しめないっていうのは、幸せな人生ではないかもしれないので、そこはうまくバランスを取っていただきたいです。

どうしたら幸せにお金を使えるか、納得してお金を使えるかっていうところを、 自分で意識して、その上で投資したいということであれば、ぜひ一歩踏み出してみていただくといいかなと思います。