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福永涼子

FPオフィスあしたば 専務取締役 ファイナンシャルプランナー(CFP®)福永涼子

兵庫県神戸市出身。神戸大学経済学部経済学科卒。長女が幼少の頃、縁あって知り合ったママFP仲間とグループを作り、子供の金銭教育をテーマに小学校や地区センター等で約5年間、イベントやセミナー活動に携わる。銀行での渉外業務(お金に関する相談や運用アドバイス)を経て、若い世代から老後を迎えている世代まで幅広い方々のライフステージに合った資産づくりについて、フラットな視点でアドバイス&サポートを実現したいという想いから、現職にたどり着く。将来のみなさんの笑顔を増やすことがミッション。
HP:FPオフィスあしたば

国民の資産所得倍増を目指す政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げるなか、資産形成や資産運用に取り組みたいと思いつつも何から始めればよいかわからない、という方も多いだろう。お金と上手に付き合うためにまず始めるべきことは何なのか。初心者がまず始めることは?今回はファイナンシャルプランナーの福永涼子さんにお話を伺った。

その人の人生に寄り添えるのが仕事の醍醐味

― 初めに福永さんのこれまでの経歴やファイナンシャルプランナー(以下、FP)になろうと思ったきっかけを教えてください。

福永涼子さん(以下、福永):元々は大学を卒業後メーカーに勤めていました。食品メーカーで営業をしており、金融業界にいた訳ではなかったのですが、出産のタイミングで会社を退職する間際に、教育訓練給付制度を活用して、将来有望な資格だと当時言われていたFP資格を取得しました。

取得したあとは、資格を生かせればと思って最初は育児のすきま時間にFPとしてボランティア活動をしていました。その後、金融機関でも勤めて個人のお客さまを対象に投資信託の提案・販売をしていたのですが会社として勧めたいものを勧めざるを得ない空気や、一定のノルマ等に違和感を覚え始めて、もう今後は金融業界の仕事はしないと決めて、その会社を退職したのですが、たまたま今の職場にご縁があって、金融で自分が本当にやりたいことをしたいという思いを汲んでもらい今の仕事を始めて8年になります。

― 今のオフィスでのやりがいや、FPという仕事の魅力を教えていただけますでしょうか。

福永:やはりFPはお金の相談を受ける立場なので、相談に来られる相手の方にとって何がベストかというのを自分で考えて、提案やサポートでき、その人の人生に寄り添える醍醐味はとても感じます。

ある程度数字もつくらないとビジネスとして成り立たないことはわかってはいるものの、ノルマ優先ではなく、いかにその相手にとっていいものを提供できるかという相手目線で仕事ができているのは、精神衛生上もいいですね。

もちろんお客さまそれぞれに悩みがあるので、正解が一つではないという部分で大変ではありますが、とてもやりがいのある仕事だなと感じています。

投資運用をしっかり活用して将来に向けて上手に資産を増やしていってほしい

― 資産形成、資産運用に興味あるものの何から始めてみればいいか、まず何か手をつければいいのか悩んでいる若い方も多いかと思います。アドバイスをいただけますでしょうか。

福永:そうですね、やはり今だと国としての方針も考えると、NISAiDeCoといった制度を使った長期投資を資産形成のひとつとしてぜひ若い方に取り入れていただきたいです。

なんとなく投資運用というとギャンブル的なイメージを持たれる方が多いですが、決してそうではない方法や考え方があるということを知ってほしいです。

例えば、つみたてNISAなら、証券会社によっては100円から始められたり、ポイントを使った投資も増えてきていて、投資を手軽に経験できるようになってきていますね。

昔は貯金をしていれば増える時代もありましたが、今の時代はまったく違います。物価もどんどん上がる中で、貯金だけだとそれに追いつきません。むしろ物価が上がっていくことを考えると貯金の価値は目減りしてしまう状況なので、投資運用を活用して将来に向けて上手に資産を増やしていってほしいです。

― 始める前にしっかりと勉強したほうがいいのでしょうか?

福永:やはりちょっと投資は怖いなと思われている方はいろいろ調べたり、本を読んだりして、細かいところまで十分納得しないと踏み出せなかったりすることも多いと思います。しかし、 その間にもどんどん時間は過ぎていきます。何事でもそうですが、経験してわかることってすごくたくさんあると思うんですよね。

― まずは始めてみよう、ということですね。

福永:そう思います。もちろん無理な金額で開始する必要はまったくないのですが、まずは一歩、何か始めてみて、「あ、こういうものなんだな」というのがわかってもらえればいいなと思います。そこから少しずつ自分に合ったやり方も見えてくるはずです。

もちろん、毎日気になって何も手につかなくなるような投資に向かない方もいると思うので、 その場合は無理にする必要はないとは思いますよ。

― 逆に資産形成やお金を増やそう、と思っている方にこれは注意したほうがいいというものはありますでしょうか?

福永:投資については、「美味しい話」は本当に無いので気をつけてください。仮に良さそうな話があった時は、本当に大丈夫なのか?一度踏みとどまってしっかり確認してほしいです。そこで、しっかり納得した上でどうするか判断していただきたいですね。

また、生活上の話でいうと、クレジットカードのリボ払いを使う方も増えているようですが、個人的には使ってほしくありません。一度使い始めると抜け出せなくなる危険性もありますし、気がついた時には返済額が膨らんで、返済が滞ると信用情報に履歴が残ることでその後の生活に影響が出る場合もあるので、気をつけてほしいです。

― 最近だとネットでも楽に稼げるといったような情報もありますよね。

福永:本当にそうですね。詐欺的なものもあったりもするので、そこはしっかりと見極めていただきたいです。

子どもにかかるお金の管理は、共通のお財布を用意

― 福永さんは以前に子どもの金銭教育をテーマにセミナーなどもされていらっしゃったとのことですが、子育て世代向けにお金の管理についてアドバイスいただけますでしょうか?

福永:今は共働きのご夫婦が増えてきていることもあり、夫婦別財布で管理されている方が多いかと思います。私は決して1つの財布にしなくてはいけないとも思っていませんが、例えばお子さんが生まれたら子どものお金は夫婦のどちらがどのように負担するかみたいな話が出てくることになるでしょう。できれば、家庭として共通のお財布もつくって、そこからお子さんにかかるお金や家族共通の出費などを考えていかれたほうがいいと思います。

あとは子どもが小さいときは、そんなにお金がかからない時期なんですよ。実は子どもが小学校の高学年になるぐらいまでの間がお金の貯めどきだったりします。

― 中学生以降にかかる費用が増えてくるんですね。

福永:そう思っておかれたほうがいいですね。小さいうちはお稽古事をさせたり、いろいろ買ってあげたいという親心もあって、つい子どもにお金をかけてしまいがちですが、この時期に使いすぎてしまうと、その先のお金がかかる時に足りなくなって困ることになる可能性も出てきます。

私の家には大学生がいるのですが、経験上ものすごくそこは感じたことでもあります。例えばは中学生からは電車賃や宿泊費が大人料金になりますよね。そして、体も大きくなってくるので、男の子だと特に食費も増えたり。部活に入れば部活の道具や遠征費が必要になったり。塾の費用など、教育費も大きくかかってきます。

― そうなってから貯めようとしても難しい、ということですね。

福永:そうですね。また、よくあるパターンとしては、子どもにお金がかかり始める時期に、住宅ローン返済がまだ大きく残っていたり、夫婦の親御さんが高齢になり、介護費用の負担が生じることもあります。

子どもにお金がかかる時期というのは、他の出費が重なる時期でもあるんです。 なので、子どものお金は絶対にかかるものなので、必ず別枠で準備しておいてほしいと思います。コツコツ貯蓄するのもいいですし、つみたてNISAなどを使って積立投資で増やしていく方法の併用もお勧めします。

― 子どもの金融教育にも注目が高まっていますが、どのようにお金の使い方などの勉強をさせていけばいいのか福永さんのご意見を伺ってもよいでしょうか。

福永:小学生ぐらいの年齢であれば、まずはお小遣い帳を使って、お金の出入りを体感することからでしょうか。ただ、これも時代が変わってきていて、最近は現金のやり取りする機会も少なくなってきていますよね。便利なことですが、お金の出入りが見えないという怖さもあります。

― 電子マネーなどはお金を使っている実感が湧きづらいですよね。

福永:そうなんです。だからこそ、それも考えた上で、あえて現金を使う機会を設けるのもいいかと思います。

例えば、すでに取り組まれているご家庭も多いかと思いますが、何かお手伝いをしてくれたら、お駄賃を渡すのもひとつの金銭教育だと思います。お金って何をしたら手に入れられるのか、いわゆる労働に対する対価、お金は感謝のしるしでもあるということを理解してもらいながらお金の大切さを伝えていくのがよいのではないかと思いますね。

― 最後にこれから資産形成を始めていこう、という読者に一言いただけますでしょうか?

福永:膨大な情報があふれる今、何が自分にとって一番最適なのかを選択することはなかなか難しいと感じています。とはいえ、考えすぎて何もできないままでいれば、現状は変わらず時間だけが過ぎていきます。

人生における時間は有限です。豊かな将来のために何らかのアクションを起こしていただき、そこから自分に合ったやり方を探っていっていただければと思います。 悩まれたり不安な時には、あなたとしっかり向き合い資産形成の伴走者になってくれるFPを見つけて相談してみてください。