川北 英隆 (かわきた ひでたか)教授
 

川北 英隆 (かわきた ひでたか)教授

京都大学名誉教授。2016年に同大学を定年退職後の現在も研究活動をおこなっている。産官学連携本部証券投資研究教育部門の客員教授も兼任。
1974年に日本生命へ入社し、ニッセイ基礎研究所や資金証券部(部長)、財務企画部(取締役部長)を経る。2003年、中央大学の国際会計研究科の教授に、2004年、同志社大学の政策学部の教授に、2006年、京都大学大学院の経営管理研究部の教授に就任する。

ー現在、京都大学にて、金融リテラシーや「企業価値創造と評価」についての授業を受け持っていらっしゃると伺いました。何年生の学生に対して、どういうことを教えていらっしゃるのでしょうか。

川北教授
2年生、3年生、4年生対象に、実際の市場分析や投資に役立つ実践的な金融リテラシーの講義をおこなっています。今年度は講議していませんが、過去には「企業価値創造と評価」について授業をおこなってきました。いわゆる一般的な金融リテラシーといわれる講義とは少し色合いを変えています。

それを受講した学生には、まずは企業経営の本質や、理想的な企業の経営方法について知ってもらいます。そのうえで素晴らしい企業に投資をすれば、株式の高リターンになる可能性があることを知ってもらおうという趣旨です。

また、経営について知ることで、どういう企業に就職すればいいか考えるのに役に立ちます。

株式投資で重要なのは経営者の考え方に共感できるかどうか

ー大学の授業では、株式投資などについて、実践も含めた内容を教えていらっしゃるのでしょうか。

川北教授
具体的な実践については教えていません。たとえば、こういうタイミングに株式を売ったり、買ったりするのがいいというのは教えていないです。一般的に個人の投資家は就業している方が多く、株式を短期で売買する時間的余裕はありません。短期売買では成果は得られません。

長期的に何年間も株式を持ち、その株式を持った企業が利益をあげることによりリターンが得られるわけです。そういうスタイルの投資を実践するよう学生に伝えています。

ーありがとうございます。講義への学生さんの反応はどうでしょうか。

川北教授
経営者による講義に対して興味を持ってくれています。15回講義のうち、5回ほど経営者に登壇してもらい、 60分ほどの話のあとに30分ほど質疑をおこなっています。実際に経営者の声を聞ける点に学生は価値を見出しているためか、その講義はすごく人気が高いです。

ー自分で資産を増やさないといけないというフェーズに移った今、先生はどういったことを意識して授業をしているのでしょうか?

川北教授
経営者の考え方に共感できるかどうかが一番大きなポイントであると、生徒たちに伝えています。株式投資の場合、ただ単に利益を得ている企業に投資するのではなく、長期的な成長性がある企業に投資することが良い投資手法です。生徒には、それを目指そうというメッセージを送っています。

しかし、どの企業が良い企業なのかは一概には言えません。企業への具体的な評価ポイントは、成長性があることと、ほかの企業が未着手の分野でユニークな内容があることです。きちんと見極めることで、安心かつ納得して投資できるでしょう。

ー大学における金融教育は、学生の今後の人生にどのような役割を果たすでしょうか。

川北教授
金融教育の役割の果たし方は、それぞれの学生によって異なります。ただし、金融機関や証券会社に就職するのであれば、比較的ダイレクトに役に立つと思います。一方で、直接関連性のない企業に就職する学生であっても、今後の人生で役に立つこともあるでしょう。

たとえば授業を受けたことにより、金融関連のニュースを見てもきちんと理解できるようになると思います。

企業とお金との関係性について学んでほしい

ーそうですよね。続いての質問に移らせていただきます。2022年度から、学習指導要領が改訂されて高校で金融教育が必修化されました。今後、金融に対してどういう知識が求められるのかを、理由とあわせてお聞かせください。

川北教授
まずは、お金への意識を強く持ち、お金の動きを理解することが大事です。世の中、お金がないと回りません。しかし、 現代は現金に接する機会が少なくなり、お金に対する感覚が薄れてきています。

特に若い人は現金払いをせずに、クレジットカードやQRコードで決済する人が少なくありません。そのため、お金について考えたり、意識したりしなくなってしまうのです。自分の身の周りのこととお金の関係性について、常に考えるようにしてほしいと思います。

そのベースづくりの一端として、中学校、高校で金融教育が必修化されたのだと思います。ただし、高校で教わった内容をきちんと理解したからといって、それで十分というわけではありません。学校で教わった内容が、お金に関する考え方への大きなヒントにつながればいいと思います。

たとえば、企業とお金との在り方についてです。企業とお金との関係性について学ぶことは非常に大きな課題だと思います。どういう風にしてお金が回って経営が成り立っているのかを、高校教育で十分に教えることは難しいです。

興味があるのであれば、大学に入ってからさらに学んでほしいと思います。たとえ興味がなくても社会人になれば、いずれ企業の一員としてお金に関する知識が必要になるでしょう。その際に、身につけておいた知識が役に立つと思います。

金融教育は、社会人になったとき必ず役に立つ

ーありがとうございます。最後の質問をさせていただきます。金融教育を大学で学びたい学生さんたちに、メッセージをお願いします。

川北教授
金融教育というか金融は、非常に面白い学問領域だと思います。お金の仕組みについて学ぶことで、自分たちが社会人になったときに、必ず何らかの形で役立ちます。お金は、社会活動や企業活動、政府活動などを支えているわけです。

お金について学ぶことで、社会活動や経済活動の舞台裏でどういう風に支えているのかを知ることができます。そういう意味では、学生のときはもちろん、社会人になってから勉強するのもいいと思います。

ー素敵なメッセージをありがとうございました。