特集『Hidden unicorn企業~隠れユニコーン企業の野望~』では、各社のトップにインタビューを実施。今後さらなる成長が期待される、隠れたユニコーン企業候補のトップランナーたちに展望や課題、この先の戦略について聞き、各社の取り組みを紹介する。

今回は、データ統合自動化SaaSやデータソリューション事業を提供する、primeNumber社の田邊CEOにお話を伺った。

(取材・執筆・構成=井澤梓)

田邊 雄樹
株式会社primeNumber 代表取締役CEO

慶應義塾大学経済学部卒業後、日本総合研究所にて製造業向けシステムコンサルティング、それに伴うプロジェクトマネジメントに従事。その後、インターネット広告企業にてビジネス・プロダクト開発に携わる中で、広告プラットフォームの開発・事業運営を担う関連会社役員を経て、株式会社primeNumberを創業。
株式会社primeNumber
「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える」データテクノロジーカンパニー。データが爆発的に増えていく時代に、誰もがすばやく、簡単にデータを使える環境を構築し、データ活用までのプロセスを最適化。高度なテクノロジーと独自のアイデアで、世界中のビジネスを支援している。

目次

  1. データ統合自動化SaaSを提供、200社超に導入
  2. 初期の成功事例が成長を促進
  3. エンジニアリングファーストの会社でありたい
  4. さらなる成長を目指し採用を強化していく

データ統合自動化SaaSを提供、200社超に導入

ーー御社の事業について教えてください。

データ統合自動化SaaS「trocco®」を運営しています。また「trocco®」提供の過程で求められる、データ関連のお悩みに対するソリューションサービスの提供や、データ活用全般に関する啓蒙活動も行っています。

データの有効活用は、経営方針全般からマーケティング・営業戦略策定、商品改良など、あらゆる事業活動において非常に重要です。しかしながら、多くの企業は多種多様なデータをバラバラに所有しており、そのままでは活用できません。また、効果的なデータ活用を実現するエンジニアも多くの企業で不足している状況です。そのような中で、データ活用に悩む企業からの引き合いが増え、「trocco®」はアウトバウンドでの営業開拓はほぼせずに、200社超に導入されるサービスに成長しました。

一方では、データ活用は近年特に重視されるようになりましたが、その有用性はまだ十分に認識されていないと感じています。加えて、データを活用できる人材も不足しているため、啓蒙や教育と言った裾野を広げる活動も、当社の重要なミッションだと考えるようになりました。

そこで、1年半ほど前から「データエンジニアリングワークショップ」と称してデータリテラシーを高め、データ活用のインハウス化を目的とした教育サービスの提供を開始しました。こうした取組みの延長として、横浜国立大学様と共同でデータサイエンス教育プログラムの開発も行っています。

初期の成功事例が成長を促進

ーー200社以上に導入されているとのことですが、現状はどのようなお客様が多いのでしょうか?また、成長の要因を教えてください。

55%がベンチャーを中心とした非公開企業で、残りの大半が売上100億円超の企業と二極化しているのが特徴です。メルカリさんやSHIFTさんといった初期のお客様の事例を、セミナー等を通じて積極的に発信したことが功を奏し、データ活用に取り組む企業に注目していただくことができました。

最近は大阪ガスさんなどエネルギー関連の企業様や、ユニークなところでいうと牛の酪農業を営む企業様など、IT以外の企業様にも導入いただくケースも増えました。

一方で、中小企業の多くは未開拓で、なかなかデータ活用に手が回っていない企業様が多い印象です。もしくは、そもそもデータ統合やデータ活用が必要ではない企業群なのかもしれません。今後は、膨大なデータを保有し、データ活用を重要視している企業様を中心に、導入先を広げていきたいと考えています。

エンジニアリングファーストの会社でありたい

ーー 起業にいたるまでのキャリアを教えてください。

新卒では日本総合研究所に入社し、システムコンサルテーションとプロジェクトマネジメントを経験しました。その後、広告テクノロジーの会社に転職し、ビックデータをバックボーンにしたプロダクト開発や事業、製品開発に取り組みました。その過程で感じたビッグデータビジネスに対する可能性や、「もっとこうであるべき」という組織や働き方への考えが、その後創業したprimeNumberに大きく還元されています。

trocco®とデータソリューションサービスの提供に事業が収斂されていったのは、自身や順にジョインしてくれたメンバー達の経験・得意分野の延長線に、世の中のニーズが合致したからです。今後も変わらずに守っていきたいと思っているのは、primeNumberは「エンジニアリングファースト」であるということです。エンジニアをはじめ、顧客に必要な価値を提供し続けられるメンバー達がなにより評価される会社であろうと考えています。

投資家の方々からは、私は、「起業家」というよりは「経営者」と評されることが多いです。私の一存で引っ張るのではなく、チーム全員が力を発揮できる環境を整え、会社を成長させることが私の役割だと考えています。

さらなる成長を目指し採用を強化していく

ーー御社の事業は順風満帆に見えますが、何か課題はありますか。

今後さらに会社を成長させるためにも採用と組織形成に注力しなければと考えています。

エンジニアの採用においては、経験や技術力ももちろんチェックしますが、人柄やお互いの相性も非常に大切です。これまで「trocco®」の開発メンバーは業務委託や副業からリファラルで採用することで、お互いのミスマッチを減らすという工夫をしてきました。ただ、エンジニアの採用は年々難しくなっており、今後はリファラル以外での採用も進めていかなければと考えています。

また、設立当初はエンジニアばかりの組織でしたが、今後上場を目指すにあたってカスタマーサクセスや営業といったビジネスサイドやバックオフィスの体制も強化していかなければなりません。とにかく、採用とその先の組織形成が急務ですね。

ーー今後の目標を教えてください。

海外展開を成功させていきたいと考えています。データマネジメントの市場は世界で急速に拡大しており、評価額が数千億円規模の企業も出てきています。エンジニアの領域はグローバルに開かれていますから、当社も国内に固執せず、活動の範囲を大きくひろげていきたいと考えています。まずは北米からスタートし、インドや東南アジアなどでも話を進めていきます。海外で得た知見を日本企業のデータ活用に活かすといった相乗効果も得られると思いますので、成し遂げていきたいですね。