特集『隠れ優良企業のCEO達 ~事業成功の秘訣~ 』では、日本各地に存在し日本経済を支える優良企業の経営トップにインタビューを実施。CEO達は何を思い事業を立ち上げ、ムーブメントを起こしてきたのか、どのような未来を思い描いているのかなどを会社のトップである「オーナー社長」に聞き、企業のルーツと今後の挑戦に迫る。
株式会社近畿住宅流通は、大阪府吹田市に本社を構える不動産会社。土地・建物を売買するだけでなく、その時の時世をいち早くキャッチし、最も有効な活用法を提案することで成長してきた。本稿では代表取締役の米良久仁弘氏に、今日までの変遷や事業の特長、将来の展望などについて伺った。
(取材・執筆・構成=大正谷成晴)
近畿住宅流通は、土地買取を主軸として、活用、購入支援をおこなっております。ロードサイド物件をメインに、全国でさまざまな土地の買取実績があります。少数精鋭での組織づくりを体現化しており、老舗企業ながらお客様のご要望に合わせたな柔軟な対応が可能です。それに加え、スピードも強みなので最短即日での査定もおこなっております。
ロードサイドを中心とした土地活用事業で成長
―― 株式会社近畿住宅流通の事業内容とその特長をお聞かせください。
近畿住宅流通代表取締役・米良久仁弘氏(以下、社名・氏名略):弊社は1988年に大阪府吹田市で創業しました。事業内容は国内外の不動産の売買・賃貸・保有、管理の仲介、不動産運用のコンサルティング、オフィスビルや賃貸マンション、商業・医療モールなどの企画・管理・運営などです。
現在力を入れているのは、弊社で所有した土地を20~30年の長期契約でコンビニやガソリンスタンドにお使いいただく土地活用の事業で、16都道府県で展開しています。祖業は不動産の仲介ですが、規模の拡大とともに主力事業も変わり、今日に至ります。
土地活用事業の対象エリアは全国です。中小規模の不動産会社は地場を中心に営業し、他エリアに進出することはあまりありません。一方で弊社は、北は北海道から南は沖縄までカバーしています。なぜかというと、地方になればなるほどライバルが少なく、穴場が見つかりやすいからです。そういった土地を購入して活用を提案するのがビジネスモデルであり、遊休地をご活用いただくことで人が集まるため、地域の活性化にも貢献できると考えています。
――近年は人口減少も影響して、地方では未活用の土地が多いと聞きます。
一方、人口は少なくても近くに観光地があり、車の通行量が多い道は全国にいくつもあります。その沿道にコンビニがあると便利です。近年はECサイトの普及によって地方に物流拠点が増え、そこで働く方たちも増えていますから、通勤途中に何らかの商業施設があると助かります。
例えば、温泉は日本各地にありますが、温泉施設を建てるだけでは不十分です。そこに至るまでに施設があることで、より多くの人が集まります。道の駅は1991年に山口県に設けられたのが最初ですが、特産・物産店があるだけでなく、温泉を活用した宿やトラックの運転手の休憩施設としても活用でき、今では全国各地に広がっています。人気の施設もありますから、今後は私たちもそういった活用を提案したいと考えています。
――最近では、どういった事例がありますか。
3月27日に北海道石狩市で取得した土地に、飲食店がオープンしました。お相手は地域の若い経営者ですが、建物だけでなく土地も買うためには相当な資金が必要です。そこで、土地は弊社が貸すことになりました。我々は地域の中小企業に頑張ってほしいと考えていて、例えばレストランを開くのに良い場所が見つかれば、経営者にアドバイスして相場より少し安い賃料でお貸しすることもあります。
▼石狩市にオープンした飲食店「ファイヤーバーグ」
我々は先ほど申し上げたコンビニやガソリンスタンドの他に、ロードサイドでチェーン展開している飲食店やスーパーマーケット、ドラッグストアにも土地を貸しているので、立地ごとの見込み客をある程度想定することができます。そういったデータをもとに出店の提案ができるのは喜ばれる点であり、弊社の強みでもあります。単に土地を貸すのではなく、出店までの計画にも携わっていることも特徴でしょう。
――目ぼしい土地はどのように探すのですか。
実は、私が全国各地を車で回っています。例えば、北海道で何らかのプロジェクトがある場合、現地まで飛行機や鉄道を使うのではなく、20日~1ヵ月かけて車で移動しながらリサーチします。その際も、すでにサービスエリアがあるなど出店の余地のない高速道路はできるだけ使わず、一般道を通って街や村の様子を見たり、地域の郷土料理店や日帰り温泉などの施設を利用したりして、人が集まるポテンシャルを確かめます。北海道に辿り着くまで、10ヵ所くらいは土地や物件を見ますね。気になるものがあると、飛び込みで営業をかけることも珍しくありません。現地に行くと「この土地を活用してほしい」「この物件を買いませんか」といった生の情報が入りますが、施設を建てても働き手がいないと困りますから、若い人はどれくらいいるのか、どういった施設が必要かといったこともヒアリングします。昨年は高知県以外、すべてを回りました。
時代の変化に合わせて主力事業も変化
――2023年で設立35周年を迎えます。
創業前は地域の不動産会社で働き、主に住宅の売買に携わっていました。当時は現在の倍の年間120万戸の新築分譲住宅が供給されていたので、おかげさまで良い成績を残すことができました。その頃からお付き合いのあるお客様も多いのですが、今後は建て替えの時期に入るので、住宅市場でもチャンスはあると思います。弊社の社員はグループ4社を合わせても8名しかおらず、人件費が少ない分、家を安く建てられるのも強みです。
1988年に独立してから売買や賃貸の仲介業を始めますが、省エネ性能に優れた高性能住宅の企画・立案・分譲、分譲地・分譲マンション販売の請負、駐車場の管理、コインパーキングの運営など、事業はどんどん広がっていきました。そして医療モールの企画・管理・運営、次第に全国を対象としたロードサイド店舗の企画・運営など、土地活用事業のウェイトが大きくなっていったわけです。
――全国を見て回るのは、米良社長の役割ですか。
そうですね。ですから、大阪にはほとんどいませんね。ただし、新型コロナウイルスの拡大期は地方に行くことがかなわず、その経験から今はリモートでも仕事をできるようにし、私が移動中でも大阪にいる社員に指示を出せば対応できるような仕組みづくりを始めています。
業界初のキャッシュバック型の不動産売却サービス「トチカツプロ」は、その一つです。今までは私が日本全国を車で回っていましたが、社員で構成されるリモートチームが中心となり、土地の情報提供や活用の相談に乗るオンラインサービスを作りました。時代の流れを読んで最適なビジネスモデルを構築するのも大切なことで、DXに関しては社員の活躍に期待しています。
▼近畿住宅流通の「トチカツプロ」
土地活用の事例を増やし組織を盤石にする
――さらなる成長を実現するための、目標をお聞かせください。
都市部だけではなくもっと足を延ばし、地方創生をお手伝いすることに尽きます。必ず、素晴らしい場所があるはずです。また、日本はますます高齢化が進むので、医療モールにしても縦に高いのではなく移動しやすい平面タイプのものを造るなど、時代やニーズに合わせた施設づくりに努めたいと思います。芝生が敷き詰めてあり、野菜や花を育てられるといった、シニアが外でも快適に過ごせる高齢者施設も造りたいです。今後日本の人口は減っていきますが、その分土地活用の幅は広がります。数字を追いかけるのは苦手ですから、とにかく利益を確保して社員に還元したいと思います。これからは、社員を成長させて業績を伸ばすフェーズです。
弊社の収益源のほとんどは保有する土地の賃料で、その管理に人はあまり必要ではありません。だからこそ少数精鋭でやっていますが、そのような姿勢はあまり変わらないと思います。また、融資の返済が終わると賃料はすべて収益になりますから、仮にある店舗が撤退したら家賃を下げて、出店先を探すこともできます。建物も持つと、災害や老朽化による修繕に手間がかかるだけでなく入居者探しも大変ですが、土地だけだとそのような心配はありません。もちろん、集客できる場所を見極める力は必要ですが、それをクリアすれば長期的な賃料収入が期待できます。出店者が契約満了で撤退しても、融資を完済している土地なら安く貸せるため、むしろ借り手は増えるでしょう。大切なのはコツコツと事例を増やし、組織として持続性を高めることです。
活用に悩む土地をお持ちの方は、日本全国にたくさんいると思います。ZUU onlineの読者の中にそのような方がいらっしゃれば、ぜひご相談ください。