本業は会社員だが、別の収入源を確保する目的で始めた投資で優待株と配当株の魅力を知り、YouTubeチャンネル「株主優待と配当大好きわっけ」を開設したわっけさん。
現在も会社員とユーチューバーの二足の草鞋を履きながら、優待株と配当株にまつわる様々な情報の発信に力を入れる。わっけさんの銘柄選別法や、YouTubeでの情報発信の意義とは?
ブログ:わっけブログ
YouTube:株主優待と配当大好きわっけ
当初はキャピタルゲイン狙いも値動きに神経を減らし、優待株へ
−−まずは、株式投資を始めた経緯についてお聞かせください。
始めたのは2015年で、副業を探していたのがきっかけです。会社員は着実に給与をもらえるとはいえ、けっして将来が安泰というわけではなく、早いうちに別の収入源を確保しておく必要があると思っていました。
そこで、いろいろと試していたところ、友人がアベノミクス相場でユニチャームの株を買って200万円の利益を出したことを知りました。株を始めたばかりの頃は、キャピタルゲイン狙いばかりでしたね。
好決算の銘柄を狙ったり、IPO(新規公開株)のセカンダリー(二次流通)を狙ったりと、あれこれ試してみたものの、損することのほうが多かったです。ただ、含み損を抱えたまま放置していた銘柄がいつの間にかプラスに転じていて、S&P500よりも高いパフォーマンスになったこともありました。
とはいえ、僕にはキャピタルゲイン狙いの投資が合わなかったようです。2017年にはビットコインに投資して「濡れ手で粟」の利益を得ましたが、気が気ではありませんでした。保有中は価格の動向が気になって仕方がなく、すっかり神経を減らしてしまったのです。最大では投資額の7倍まで高騰しましたが、さすがにそのタイミングでは売れず、それでも3倍に増えたとはいえ、精神的にかなりハードでした。
−−どのようなきっかけで、優待株や高配当株にシフトしていったのでしょうか?
当初の僕は、1つの銘柄を長く保有し続けるのが苦手でした。多少の上昇ですぐに利益を確定していましたし、逆に下落した場合は深傷を負う前に損切りしていたのです。
けれど、買っていた銘柄の中にたまたま株主優待を実施していたものがあり、それらは売らずに保有し続けました。やはり、定期的に優待品が届くのはうれしいことで、まだ持っておこうと思うのです。
結局、投資を始めてから2~3年後には、優待株や配当株に銘柄にターゲットを絞るようになりました。現在も多少の入れ替えはあるものの、30銘柄程度の優待株・配当株を保有しています。
キャピタルゲイン狙いの投資とは違って、優待株や配当株は日々の値動きを追いかけなくてすみます。また、配当として支払われた利益が積み上がっていくので、株価変動が激しい銘柄に手を出さない限り、長く保有し続ければ着実にプラスとなる可能性が高いとも言えるでしょう。優待株や配当株は株価の推移も比較的安定しているので、心が穏やかになります。
YouTube開始をきっかけにインプット量が増加
−−有望な優待株や高配当株を選別する際には、どういった尺度を用いていますか?
まず、「優待利回り+配当利回り」が4%以上に達していて、なおかつ業績も伸びている銘柄をスクリーニングによってピックアップします。そして、目先の推移を表す日足チャートとともに長期的なトレンドを示す月足チャートを見て株価の底値を確認し、できるだけ割安に放置されている銘柄を拾うようにしています。
また、優待投資家のみきまるさんが書いた本で知った「グレアム指数(PER×PBR)」も参考にしています。バリュー投資の父といわれるベンジャミン・グレアムが考案したもので「ミックス係数」とも呼ばれ、本には「この指標が10倍以下なら優秀、5倍以下なら自分の経験上損をしたことがない」といった趣旨のことが書かれていて勉強になりました。
日頃の情報収集については、楽天証券なら日経テレコンが利用できるので、一通り目を通すのが習慣となっています。また、注目している約100銘柄をリスト化しており、それらの株価推移も観察しています。さらに、単月ごとの売上推移などで業績の変化を読み取るとともに、優待の適宜開示情報も必ずチェックするように心掛けています。
これまでに培った自分の知識や経験だけでは、週に3~4本のペースで動画を作るのは困難です。ネタを探すためにネット上であれこれ調べたり、本を読んで勉強したりする作業が不可欠となります。
間違ったことは伝えられませんから、YouTubeを始めてから勉強量は格段に増え、大幅に知見が広がったと実感しています。決算書も今までは上っ面だけを見てわかった気になっていましたが、動画を配信するようになってから分析の精度がかなり高まりました。
やはり、知識を深めるうえでは、アウトプットが一番ですね。これから株式投資を始める人も、積極的に情報発信してみるといいと思います。そのほうが知識を吸収しやすいし、フォロワーとのコミュニケーションを通じて得られるものも多いでしょう。
−−わっけさんがYouTubeを始めたのは、いつ頃のことでしょうか?
2019年の1月から始めましたが、一気に登録者数が増えたのはコロナ禍になってからのことです。勤務先ではCS(カスタマーサポート)部門の業務に従事しているので、音声を通じてわかりやすく説明することには慣れていました。
ただ、最初のうちは方向性がなかなか定まらず、「特定口座と一般口座の違い」などといった初心者向けのテーマをいろいろと作りながら試行錯誤を繰り返しました。最初のうちは台本を作っていたので、かなりの手間もかかっていました。
再生回数が大きく伸びたのはJTの動画でした。ひとえに、JTが高配当だったからですが、この回を機に、優待と高配当をテーマにした内容に舵を切っていきました
僕のチャンネルを登録してくれた人は、40~50代のファミリー層が多いですね。それなりに投資経験を積んでいる人が中心のようですが、「一時的に配当利回りが高くなった銘柄があったのですが、なぜでしょうか?」といった質問も寄せられます。特別利益が計上されたことがその一因として考えられますが、投資の経験がある人でも意外と知らないことは少なくないので、そういった意味でも情報発信が大切だと思っています。
−−わっけさん自身は、どのような優待がお気に入りですか? また、オススメの優待銘柄として、どういった企業が挙げられますか?
自分ではあまり使わないのですが、誰かにプレゼントすると喜ばれるのがカタログギフトですね。自分好みのものを選べるので、進呈したらとても感謝されます。
僕がお気に入りの優待銘柄はオリックスなのですが、今は株価水準的に悩ましいタイミングにあります。過去の推移を振り返ると2000円台が上値なので、自分自身ではいったん売って利益確定を行うべきかどうかで悩んでいます。
100株以上の保有で3月に5000円相当のカタログギフトをもらえ、3年以上に長期保有ならその内容がグレードアップされます。そして、9月にはホテルやレストラン、水族館などの割引券がもらえます。
間近に権利確定月を迎える銘柄の中では、ギグワークス(東2・2375)がオススメですね。優待は4月と10月の実施で、①1000円相当のこども商品券、②自社グループでマイニングしたビットコイン1000円相当、③公益財団法人などへの1000円相当の寄付−−のいずれかを選択できます。業績は過去最高益更新予想で増配が続いてますし、100株保有の場合の利回りも魅力的な水準です。
目標はチャンネル登録者数10万人!
−−ところで、2022年4月に東京証券取引所の区分が見直され、①プライム、②スタンダード、③グロースの3市場に再編されることは株主優待にも影響を与えそうですか?
現在の東証1部上場企業に対しては最低限必要な株主数を2000人と定めていますが、プライム市場ではこの基準が大幅に緩和されて800人になります。上場基準を満たすために無理をして株主を増やす必要がなくなるので、現時点では株主優待制度を導入している企業の中には、廃止に踏み切るところが出てくるかもしれません。
とはいえ、株主優待は個人投資家の間で非常に高い人気を誇る制度であることも確かです。市場再編に伴う優待廃止は、あくまでごく一部の動きにとどまるものと思われます。
一方で、市場再編とは関係なく、優待制度の廃止や優待内容の改悪が実施されることがあります。その予兆を察知するためにも、まずは業績の推移をきちんと確認しておくことが大事で、悪化する傾向がうかがえると経費削減などに踏み切る可能性が高まります。
特に個人の株主が非常に多い企業は優待の実施にかかる経費も膨らむので、業績の悪化には要注意です。なお、個人の株主数は各企業のホームページ(IRコーナー)上に格納されている有価証券報告書でチェックできます。また、極端に優待利回りが高い銘柄や、株価引き上げ対策で急きょ優待制度を導入した形跡がうかがえる銘柄も警戒したほうがいいでしょう。
−−最後に、今後の目標について教えてください。また、ユーチューバーに憧れている人へのアドバイスもお願いいたします。
“億り人”などには興味がなく、資産は5000万円程度まで増やせれば、それで十分だと思っています。それよりも、YouTubeのチャンネル登録者数を10万人まで増やすことをめざしたいですね。動画を作ることが好きですし、いろいろと調べることが勉強になるうえ、お金まで入ってきますから。たくさんの人たちから応援してもらえるのも励みになるので、たとえ広告収入が下がったとしても、ずっと続けたいと思っています。
ただ、キャピタルゲイン狙いにももう一度チャレンジしてみたいとは思っています。あまり欲を張りすぎず、株価が2倍になる株を発掘したいですね。成功したら、動画を作って配信します!
ユーチューバーに憧れている人には、最初はヒトマネでいいから、とにかく始めてみることをオススメしますね。再生回数で上位に入っている番組を参考にして、そのノリに近いタイトルをつけ、内容はちゃんと自分なりの見解をまとめたものにする。こうした作業を繰り返すうちに、自分なりの方向性や作り方のコツがわかってくると思います。