その成長速度や高配当株の多さから新たに参入する人が増えているという米国株。そんな米国株に関する情報をブログやSNSで積極的に発信しているのが、もみあげさんだ。2018年頃から投資を始めたというもみあげさんに、これまでの投資スタイルの変遷や、情報収集法、初心者へのアドバイスなどを聞いた。

もみあげ
もみあげ
日系サプライチェーン企業に勤務し、数年前に米国駐在員に。2018年ごろから米国株投資を始めた、兼業投資家。投資ブログ『もみあげの米国株投資─お金で幸せになる!─』やTwitterで、米国株や米国経済にまつわる情報を積極的に発信している。著書『もみあげ流 米国株投資講座』がある。
Twitter:@momiage0088
ブログ:もみあげの米国株投資-お金で幸せになる-

「ETFだけだとつまらない」ので個別株にも挑戦

米国株
(画像=PIXTA)

―最初に投資を始めたきっかけを教えてください。

実は、自分自身も家族も浪費家で、30代後半になるまでお金が全然なかったんですよね。自分は現在、アメリカに来て8年目になるのですが、日本を離れてから3~4年経った2018年くらいに初めてお金が貯まってきたんです。そのタイミングで「お金がない生活から抜け出さないといけないんじゃないか」ということを考え出して、友人に相談したことがきっかけです。

アメリカには、CD(Certificate of Deposit)と呼ばれる定期預金のような制度があるのですが、それが「場合によっては2%くらい利息がつくのを知ってるか?」と言われて、興味を持ちました。その時に、「それ以外にも株式投資とかもちゃんとやってるの?」と言われたんです。

それまで、株式投資に対してギャンブルのようなイメージをもっていたのですが、ETFや著名投資家であるバフェットのことなども教えてもらって、一気にのめり込んでいきました。もともと凝り性で、始めたらとことん追求するというタイプなので、そこから書籍やブログを読み漁ったりして、経験を積みながら今に至るという感じですね。

―投資の勉強をする際に、特に参考にしたものや、印象に残っているものはありますか?

最初は、「インフルエンサー」と呼ばれるような人のブログなども読んで、勉強になることもあったのですが、徐々にそういったものは読まなくなっていきました。

現在も読んでいて良かったと思えるのは、プライベートでも仲良くさせてもらっているたぱぞうさんのブログですね。今では、時々一緒に食事をしたりもしているのですが、たぱぞうさんのブログには結構影響を受けたと思います。

―現在の投資スタイルにたどり着くまでには、どのような紆余曲折があったのでしょうか?

最初はVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF:米国の株式市場を幅広くカバーしているETF)や新興国ETFを買って、値動きを見ていたのですが、2週間くらいで「ETFだけだとつまらない」と思ってしまって(笑)。そこからP&Gやコカ・コーラといった個別銘柄も購入するようになりました。P&Gは2020年くらいまでは保有して、それなりに利益も出たと思います。

2018年クリスマスごろ、当時は20%程度下落するような相場状況だったのですが、そこからの反発を見込んで高配当株を買いました。ただ、全然反発してこず、周囲の人が買っているアップルのような銘柄がぐんぐん上昇しているのを見て、「自分のやり方が間違っているんじゃないか」と思い、VTIと高配当株の一部以外は全部投げ捨てて、マイクロソフトやユナイテッドヘルスなどある程度成長が見込める企業にシフトしていきました。

2020年にコロナショックによる相場の下落が起きた際には、それまでは「長期で保有して、余ったお金で買い足していけば良い」という考えから、「このタイミングで成長・上昇する株には乗らないといけない、もう少し柔軟に」と思い直すようになりました。これを機に、もう少しマクロ経済を見て、トレンドにあった銘柄に投資するようになっていったのですが、現在はそれほどリスクを取りたくないので、保有する銘柄を最小限まで減らしています。

注目はアメリカのフィンテック業界

GAFA
(画像=PIXTA)

―注目している業界や銘柄はありますか?

初心者が一番入りやすいのは、やはりGAFAMのどれかを買うことだと思います。Amazonは別にして、Facebook、Google、Apple、Microsoftはすべて自社株買いがあるため、株価が崩れにくいのです。現状では、「GAFAMが崩れたら米国が崩れる」といえるぐらいの勢いがあると思いますね。個人的には、Microsoftを一番推しています。

業界でいうと、皆さん注目していると思いますが、アップスタートやアファームが挙げられます。アファームはBNPL(Buy Now Pay Later)という後払いサービスを提供している企業で、アップスタートは融資プラットフォームプロバイダです。BNPLやローンといったように、消費を後押しする企業が今のアメリカでは伸びています。

ETFでは、「QYLD」(グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF)が注目されていますね。「QQQ」をカバードコール(株式、債券などの原資産を保有しつつ、コールオプションを売る戦略)する仕組みのETFなのですが、非常に高配当なんです。そのため、米国株投資家の中で高配当が好きな人の多くがポートフォリオに入れていると思います。

また、今名前が上がった「QQQ」(インベスコQQQトラスト・シリーズ1:NASDAQ100指数の値動きに連動するETF)は一般的になりつつあり、若いミレニアム世代の人たちも買いだしていると言われているぐらいです。これらに加えて、最近では、「VIG」(バンガード・米国増配株式ETF)という連続増配10年以上の企業しか組み入れていないETFも人気です。ここから経済が再開して正常化し、金融緩和が縮小していく方向になると、どうしても企業の本来の強さ、自社株買いや増配ができる企業が評価される傾向になってくると思うので、「QQQ」と「VIG」の組み合わせはトレンドにもあっていると思います。

「SPYD」(ポートフォリオS&P 500 高配当株式ETF)も一時期注目が集まっていたETFで、最近も増配するということで喜んでいる方も多かったようです。今年はエネルギーと金融が大当たりの年で、ハイテクのパフォーマンスを2~3倍上回っています。こうした業界の小型企業をたくさん組み込んでいるのがSPYDなので、今から買うのは怖いかもしれないですが、コロナショックの後でも我慢して持ち続けていれば、SPYDは結構良い状況になっているのではないでしょうか。

米国株に投資するなら一次情報を自分で確認することが重要

投資,情報
(画像=PIXTA)

―ブログやTwitterで精力的に情報発信されていますが、情報発信を始められたきっかけはあるのでしょうか。

身もふたもないですが、最初は「ブログってお金になるんだ」というところがスタートでした。収入を得る手段が本業だけであることに、不安を感じていたので、「頑張れば成果が出て収入が増えるかも」というのが始めた理由です。

ただ、現在は少し考え方が変わってきています。というのも、自分自身でYouTubeなどもやってみて気付いたのですが、どうしてもある程度煽ったりしなければいけない部分が出てきて、それが非常に嫌だったんですよね。視聴回数を稼ぐために大げさに言ったことが、大きな間違いを生んでしまう可能性がありますし、自分自身にも視聴者にも良くないと思うようになったんです。

なので、現在は可能な限り米国株をやる人が地に足をつけて、マーケットの観察や銘柄選定のための知識を身につける手助けができればと思って情報発信をしています。

―現在、日本でも米国株を始める人が増えているという話をよく聞きます。ここ数年はコロナショックなどもあったものの、比較的順調な市場環境だったため、今後下がってきたときへの対応は重要になりますね。

自分自身も、情報発信する際には「下げとはこういうものだよ」「こういうリスクがあるよ」といったように、リスクをメインでお伝えする機会が多いですね。自分自身も2020年のコロナショックの時でさえ、1ヶ月間程度我慢すればポーンと上がったので、あまり苦労していないなと思うので。

一番苦労したというか結構強烈だったのは、2021年の2月ですね。2月末までグロース株が「持っていれば何でも上がる」というような状態で、私自身もその雰囲気に飲まれていて、良いタイミングで銘柄を手放せなかったんです。結局1,500万円程度の損失を出してしまったのですが、自分自身が周囲と同じようにムードに流されてしまったことが、凄く恥ずかしかったですし、「全然市場の状況を理解していなかったな」と痛感しました。

本来であれば、下げ相場のときに備えてポートフォリオの組み方を変えておくべきだったのですが、「もう一段反発するだろう」という甘い考えが出てしまい、ズルズルいってしまったので、結構きつかったですね。

―逆にこれは上手くいったというエピソードはありますか?

2020年の大統領選挙前の10月31日は、選挙結果がどうなるかわからないという懸念から株価が下落していました。その際に、私は「今の状況で下げることは考えられない」と思ったので、成長株に相当額を入金して1日~2日で50%プラス、1ヶ月間でダブル・トリプルになったというような銘柄に投資できたということはありましたね。

―現在、日本ではFIREなど目指して投資を始める方が多いんですが、今後の目標を教えて下さい。

「お金に苦労したくない」「お金に人生を左右されたくない」ということを目的にしていて、投資はそのためのツールという考え方だったのですが、最近は投資を通じて、「自分の人生の幅を広げていきたい」と考えるようになりました。

現在は会社員との兼業投資家としてやっていますが、FIREは考えていないですね。私は仕事が好きですし、まだまだやりたい事は沢山ありますので、やれるところまでは兼業でやる予定です。また、現在は海外で仕事をしている立場なので、こういう経験ができるところも兼業のメリットだと思います。ただ、投資の方が好きだなので、「こっちに集中したいな」と思うこともありますね(笑)。

―好きというだけあって、かなり広範にわたって情報収集されているイメージがありますが、普段はどのような媒体を見ているのでしょうか。

Twitterでシンクタンクなど濃い情報を出してくれているところや債券の専門家などをフォローして、専門的な情報をタイムリーにつかめるようにしています。また、ブルームバーグやウォールストリートジャーナル以外にも、シーキングアルファなどの株式専門サイトは見ていますね。

また、FRBのサイトを直接見に行って、CPIなどの一次情報は自分でチェックするようにしています。二次情報は誰かが解釈したものなのでバイアスが入りますし、自分で理解したことにならないので、一次情報を大事にしています。米国株に投資するのであれば、できる限り一次情報、あるいはしっかりとした分析がされているメディアを参考にすることが重要だと思いますね。今の米国市場は右肩上がりですが、必ずディフェンシブに動かないといけない状況は来るので、そのときに備えて情報を精査することが大切だと思います。

さらに自分の場合、最近では、ファンドのお金がどこに向かっているか、というのをチェックしています。「今週はETFにどれくらいのお金が入ったのか」「MMFからどれくらいのお金が抜けたのか」といった情報を一週間ごとに出してくれる無料サイトがあるので重宝しています。

―最後に、これから米国株を始めるという初心者の方に、アドバイスをお願いします。

米国株の良いところは1株から買えることなので、まずは1株で良いので買ってみることが重要です。そして、しばらくの間保有して、「自分が値動きに対してどれくらい耐性があるのか」をチェックして欲しいですね。その耐性が分からないまま投資して、ちょっとした値崩れで、売ってしまうのが一番もったいないと思います。

今は、様々なメディアが米国株を取り上げていますし、こうした盛り上がりは確かなものだとも思います。本当に勢いがありますし、金融緩和が縮小したとしても、これまでほどではないものの緩やかな上昇か、横ばいが続くと思っています。

そのような中で、「じゃあ今、大金を米国株にボーンと入れちゃえ!」ではなくて、できれば1歩ずつ進むことが重要だと思います。今は時間を急がなくても良いタイミングなので、スタートは早くして、その後は自分のリスク許容度を見極めながら、じっくり考えながら増やしていけば良いんじゃないかと思いますね。

武器としてのFX
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