昨年から今年にかけて、ムック本や書籍を立て続けに手掛けるなどブレイク中の馬渕磨理子さん。経済アナリストとして日々、個人投資家に有益な情報を発信し続けています。現在はテレビや雑誌などのメディア、多くの媒体から引っ張りだこの馬渕さんですが、投資との出会いはかなり厳しいものだったようです。

そんな馬渕さんに、投資との向き合い方やお薦めの投資手法などをうかがいました。

馬渕磨理子
馬渕磨理子(まぶち まりこ)
経済アナリスト
京都大学公共政策大学院で法律、経済学、行政学、公共政策を学び、修士過程を修了。法人の資産運用・管理を行い、そこで学んだ財務分析・経営分析を生かして2016年からアナリスト業務を担当。個別銘柄の分析を手掛けるほか、フィスコ・シンクタンク研究員としてマクロ経済や世界情勢などの研究を行っている。現在はアナリストとして『フジテレビ「LiveNewsα」レギュラーコメンテーター、Yahoo!ニュース公式コメンテーター、ラジオ日経で自身の番組を持つなどメディア活動に力を入れている。ほかに、プレジデント』(プレジデント社)や『週刊SPA!』(扶桑社)、『日経ヴェリタス』(日本経済新聞社)などへの寄稿や日経CNBCへの出演など、各メディアで活躍中。著書に『株・投資ギガトレンド』(プレジデント社)、『5万円から始められる!黒字転換2倍株で勝つ投資術』など   

全くの初心者でいきなり数千万円の資産運用を任される・・・!

馬渕磨理子
撮影=末松正義

――いまでは経済アナリストとして、多くのメディアで引っ張りだこの馬渕さんですが、そもそもの投資との出会いはどのようなものだったのでしょうか。

キャリア官僚、特に経済産業省に入りたくて、大学院では公共政策や政策提言について勉強をしていました。ただ、就職活動は全敗。たまたま関西の在宅医療を手掛ける会社に就職することができたのですが、その医療法人から、「政治や経済を勉強していたことだし、資産運用をやってくれないか」といきなり言われたんです。

――え?投資経験がないのに、いきなり会社のお金の運用を任されたのですか・・・?

そうなんです。当時はアベノミクス相場が始まったばかりで株式相場が勢いよく上昇していましたから、その影響もあったと思います。本格的に資産の運用を始める前に、まずはFX(外国為替証拠金取引)を始め、その後、株式投資ではデイトレードで資産運用をスタートしました。FX、ETF(上場投資信託)、個別銘柄のデイトレで、運用資金の総額は5000万円程度。会社側は、それを10倍くらいに増やして欲しい感じでしたね。

――初手がデイトレで、資産10倍を求められたのですか・・・。

いま考えるとかなり酷な話ですが、当時の私はデイトレと中長期投資の違いさえわからず、どれだけ大変なことであるかもわかりませんでした。悩んでばかりいても仕方ありませんし、これは「投資を学べるチャンスなんだ」と自分に言い聞かせ、朝から晩までひたすら投資について勉強しました。売買の仕方から、企業業績の研究からチャート分析の仕方、情報収集のやり方など、ほぼ365日を勉強に費やしていたと思います。9時から15時は株式相場と向き合い、それ以降はトレードの予習復習、情報収集、戦術の構築など。時間がいくらあっても足りませんでした。

――それは本当に過酷ですね。

実際、顔はニキビだらけ、頭は白髪だらけになってしまいました・・・幸運にもアベノミクスで相場が大きく上昇していたこともあって、約2年で資産を3倍程度に増やすことができました。とはいえ、デイトレは精神的にはきつかったですね。私は損切りが下手で、一時は損切ってばかりで資産がどんどん減ってしまって、株式市場から退場しかけたこともあります。

一番苦労したのが「相場はセオリー通りに動かない」こと。企業が業績の上方修正を発表したのに、株価は「材料出尽くし」などを理由に下がることもあります。ただ、経済、金融の知識や金融のモノの考え方などを知っていれば、相場が想定外の動きをした場合でも、ある程度は理解することができることに気付きました。

――多くのことを学べた2年だったわけですね。

実は、放置していた銘柄で利益が出たりしたこともあって、「デイトレよりも中長期投資のほうがいい」と思うようになりました。専業のデイトレーダーとして利益を積み重ねていけるのは、才能のある一握りの人たちだけであって、私を含めた大半の人たちには、日々の値動きに右往左往する必要がない中長期投資が適していると思います。もちろん、この時期に学んだことが現在のベースになっているのは確かです。

初心者でも再現しやすい「黒字転換2倍株」。的中率は70%!

馬渕磨理子
撮影=末松正義

――その後は、金融情報サービスを展開するフィスコに移られました。

これまで、私はほぼ独学で経済や金融の勉強をしていたのですが、フィスコでは中村孝也さん(現フィスコ取締役)に師事するかたちで、アナリストとしての下地を作る勉強をさせていただきました。実は先日、「黒字転換(クロテン)2倍株で勝つ投資術」という書籍を出させていただいたのですが、この投資法はもともと師匠の中村さんが考案されたものなんです。この投資法は多くの投資家にとって大変有効だと思ったので、本やセミナーなどで広めていくよう務めています。

――“師匠の技”を受け継いだわけですね。「クロテン2倍株投資術」の優れた点はなんでしょうか?

一番優れている点は、「再現性が高いこと」でしょう。投資の世界って、専門性が高くて難解な用語が多く、プロフェッショナルな人たちが言っていることを理解するのが難しいこともありますよね。世の中には多種多様な投資手法があり、初心者がマネするのは難しい手法もありますが、この「クロテン2倍株投資術」は、初心者でも再現しやすいですし、勉強を進めていけば自分なりのアレンジもしやすい投資手法だと思います。

――本を読ませていただいたのですが、銘柄数が絞れるのはすごくいいですね。

確かに、「クロテン2倍株」は、文字通り赤字決算から黒字決算に転換するタイミングを見計らって投資する手法なので、候補となる企業の数が多くないのが魅力ですね。全上場会社3800社くらいのうち、年や四半期などによって数字に変化はあるでしょうが、条件に当てはまる企業はおよそ150~200社くらい。その中から、通期の業績予想だったり利益の進捗率だったり、事業の内容などを見てフェイクの銘柄を除外すれば、数十銘柄くらいいまで絞り込むことができます。

――投資初心者が最初にぶつかるハードルが「どの銘柄に投資すればいいのか」だと思いますから、銘柄数がかなり絞れるのは助かりますね。しかも、特別なツールは不要と。

大手ネット証券の無料スクリーニングツールで十分対応できます。「株価2倍を狙う」と聞くとハイリスクな手法なのではないかと思われるかもしれませんが、実はかなりマイルドな投資法なんですよ。というのは、業績が赤字に低迷している企業は株価も低迷しているケースが多く、それ以上は下がりにくくなってます。もちろん例外はありますが、値がさ(株価が高い)のハイテク株などと比べると、下値リスクが小さいのはポイントのひとつです。

業績も株価も低迷しているときに買って、業績の浮上とともに株価が上昇していく銘柄を狙うわけなので、株式投資の基本中である「安いところで買って、高いところで売る」を示現する手法なんです。私自身がこの投資法によって予想した株価の的中率は約70%。手堅く着実に利益を伸ばせる手法だと思います。

大切なのは、それぞれの手法の本質を理解すること

馬渕磨理子
撮影=末松正義

――ファーストリテイリング(ユニクロ)や任天堂のように、1単元買うのに500万円以上も必要な銘柄がありますが、クロテン2倍株ではそこまでの資金は必要ないのですね。

株価が低迷しているタイミングを狙うので、株価が1000円以下、つまり10万円以下で買える銘柄もあります。もちろん、資金に余裕がある人は2単元(200株)以上買ったり、複数のクロテン銘柄に分散投資するのもアリですが、最初は10万円の資金を2倍の20万円、さらにそれを40万円、80万円と“倍々”を狙うのがいいと思います。

――クロテン銘柄をそのまま持ち続けて、個人投資家の夢である「テンバガー(株価10倍株)」を狙うのはダメですか。

黒字に転換した後も四半期ごとに利益の積み上げが続いたり、時流に乗っている事業、将来性が高い事業を抱えていたりする銘柄であれば、テンバガーを達成する可能性がないわけではありません。ただ、コツをつかまないうちに欲張り過ぎると失敗を招きかねないので、着実に利益を確定していくことが大切です。

実は、私はデイトレをやっていた当時から「利益を伸ばしていく」ことが苦手で(笑) 我慢できずにすぐ利食ってしまうんですよ。2倍程度であれば、数週間から数カ月くらいでも達成できますが、10倍となると年単位で持ち続ける必要があります。

――自分は20%くらい上がっただけでもう売りたくてムズムズしてしまいます(笑) まずは数百万円、数千万円と利益を着実に積み上げてって、それに成功したら、資金の一部をテンバガー狙いに振り分けるというのもよさそうですね。

1000万円程度まで資産を増やすことに成功したら、私は資金の一部を米国の高配当株などに振り分けることを勧めています。そうして将来のための資産を固める一方、一部の資金を2倍以上を狙って高成長株に振り分けるのは問題ありません。

私は「本に書いたことが全て」とはまったく思っていません。先ほども言いましたが、世の中には本当にたくさんの考え方、手法があります。このクロテン2倍株投資術も、数ある投資手法のひとつでしかありません。大切なのは、その手法の本質を理解して、自分の中で噛み砕いてみることです。

――投資家の中には「儲かる銘柄さえ教えてもらえればいい」というスタンスの人もいそうです。

この本を読んで「これまでスクリーニングはやったことがなかったけどやってみました」とか、「自分なりにこうアレンジしてみました」という声をたくさんいただけたんです。「本に書いてあった銘柄を買ってみました」という声がほとんどなかったのは本当に嬉しいですね。

株式投資はそんなに難しいものじゃない!

馬渕磨理子
撮影=末松正義

――このクロテン2倍株投資術を活用するうえで、注意することはありますか?

株式相場において「黒字転換」はかなりプラスの材料なので、多くの投資家がそれに気付いたあとでは投資するメリットが薄まってしまいます。通期ベースではなく四半期ベースの黒字転換をチェックすることで、先行者メリットを得られる可能性が高まります。あとは、その黒字が常態化するかどうかも大事ですね。たとえば、第1四半期時点で黒字転換を達成できても、第2、第3四半期まで継続できず、結局は通期でも赤字になってしまったら、投資の根拠自体がなくなってしまいます。そういう場合は、利益が出ていようと損失が出ていようと、一度手放すべきでしょう。

基本的に、売買のタイミングは「トレンドラインを割り込んだら損切り」といった具合に、テクニカル分析で判断するのがいいと思います。といっても、そこまで高レベルなテクニカル分析は不要。移動平均線や特定のチャートの形など基本的なことを押さえれば、十分対処できます。

――もっとたくさんお話をうかがいたいのですが、あとは「クロテン2倍株」を読んで下さい・・・ということにします(笑) 最後に読者、特に投資初心者のかたにメッセージをお願いできますか。

株式投資や金融の世界に初めて足を踏み入れた時、「用語が難し過ぎてよくわからない」と感じるかたが多いと思います。足を踏み入れる前から「株式投資=難しい」という心理的な壁を感じているかたもいらっしゃることでしょう。でも、株式投資の本質はそんなに難しいものではありません。「業績が伸びているな。じゃあ事業の内容を見てみよう。あ、いい商品やサービスを提供しているな。じゃあ買ってみよう」。これでOKなんです。

半導体がいかに世界にとって重要なものであることを知ったのは、株式投資を初めてからでした。また、米国経済や米ドルがいかに巨大なものであることに気付いたときは、衝撃すぎて3日くらい何も手につかなかったほどです。経済や金融の仕組みを勉強することは、人生にとって決して無駄にはなりません。将来の資産を増やすことはもちろん、自分の人生のためにも株式投資を初めてみてください。

5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術
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