ほったらかしでも稼げるのか?誰もが夢見る手法を一人で開発したのが専業FXトレーダーの川崎ドルえもん氏だ。売りと買いの自動発注ツールを使用して、レンジ相場でもトレンド相場でも着実に利幅を稼げる「グルグルトレイン」を考案。2016年の運用開始以降、安定して年10~20%程度の利益を稼ぎ出しているという。いかにして、その手法は生まれたのか?

川崎ドルえもん
川崎ドルえもん
自称「底辺高校」を卒業後、建築現場などで働き始め、2010年からFXを開始。裁量トレードでの失敗を糧に、2016年に“ほぼ”ほったらかしで運用できる「グルグルトレイン」を開発。以降、年率10~20%のリターンを安定的に稼ぎ続けている。その手法の詳細は「川崎ドルえもんのFXブログ」や『話題のFX新手法 底辺高校卒業生と最強の為替サイトザイFX!が作った【1日5分で稼ぐFX】グルトレ完全ガイド!』(ダイヤモンド)などで公開中。
Twitter:@kawasakidoruemo_
 

レンジ相場でもトレンド相場でも値幅を取っていける手法

川崎ドルえもんさん
(画像=PIXTA)

――“ほぼ”ほったらかしのトレード手法「グルグルトレイン(通称グルトレ)」は今や多くのFXトレーダーに知られています。どういったきっかけで生まれたのでしょうか?

裁量トレードで負けがこみ、ほったらかしでも運用できるシステムトレードに興味を持ったのが出発点ですね。そのときに発見したのが、魚屋さんという有名な投資家さんが考案した「くるくるワイド」という手法。通常、上昇トレンドが続くと予想したら買いで入りますが、くるくるワイドでは予想と反対に下げるリスクをヘッジするために、細かく売りの指値注文を置いていく。その売りポジションは一定の値幅で自動決済する“トラップトレード”を利用して一時的な下落局面では自動的に利確されていく。

このように買いと売りの両建てポジションを形成して着実に稼ごうという手法がくるくるワイド。これならほったらかしでも稼げそうだと思ったんですけど、裁量の要素が強くて私にはハードルが高いと感じました。それで、くるくるワイドをアレンジして自分に合った手法をつくってみようと考えたんです。

――そのグルトレの手法を説明してもらえますか?

簡単に言うと、注文から決済までを自動執行するイフダン注文と指値注文の集合体で、レンジ相場でもトレンド相場でも値幅を取っていける手法です。私はグルトレにおけるイフダン注文を「子」、指値注文を「サポート」と呼んでいます。仮に現時点の豪ドル/円が80円ぴったりだとしたら、下は75円、上は85円まで上下に10銭刻みで売りと買いのイフダン注文(子)を並べるんです。

売り・買いどちらも50銭の値幅が取れたら利確するように設定して。すると10銭動くたびに、新規の売りと買い注文が約定して、さらに40銭動いたら一方のポジションが利確される。レンジ相場なら、勝手に売りと買いのポジションが決済されていって、利益が積み上がっていくことになります。

――トレンドが発生すると売りと買いのどちらかのポジションの含み損が増えていってしまうと思いますが。

だから、子のイフダン注文のほかに、「サポート」の指値注文を入れておくんです。10銭刻みのイフダン注文を1000通貨単位で入れていたら、この指値注文は1万通貨にして1円刻みで入れておきます。売りと買い、どちらのサポートを入れるかは、そのときの相場から判断する。上昇トレンドが続くと判断したら、買いサポートを入れる。そうすると、レンジの状況では子のイフダン注文が繰り返し決済されて利益を積み重ねて、上昇トレンドが発生した場合には売りのイフダン注文が含み損になるけど、その損失を補うかたちでサポートの利益が伸びる。

当然、逆に下落トレンドが発生したらサポートの買いが損失になるので、急激に下落する場合には損切りが必要になってきます。ただ、上げ下げを繰り返しながらの下落トレンドなら、わずかな損失で済むはずです。

――子がグルグル回転してコツコツ利益を稼ぎ出し、トレンド局ではサポートでトレンドに乗って利幅を稼ぐわけですね。

FX会社のマネースクエアさんが似た手法として「トラップリピートイフダン®」という自動売買システムを提供していますが、一定の値幅ごとに新規注文と決済を繰り返すトラップトレードはレンジ相場で抜群のパフォーマンスを発揮する一方、強いトレンドが発生すると売り・買い、どちらか片方のポジションの損失が膨らみがち。

グルトレはサポートを取り入れることで、その課題をクリアしたわけです。

負けトレードを繰り返した後に生まれた「グルトレ」

川崎ドルえもんさん
(画像=PIXTA)

――よく練られた手法だと思いますが、確立するまでには時間がかかったのでは?

一方向に上昇するパターン、下落するパターン、下落してから上昇するパターン、上昇してから下落するパターンなどを想定しながら、100種類以上のポジションの取り方をノートに手書きしながら考えたので、確かに時間はかかりました(笑)。私は2010年からFXを始めたんですけど、当初はパソコンを持っていなかったんです。スマホだけでトレードしていました。

――どういったきっかけでFXを始めたんですか?

いつか自分のお店を持ちたいと思って建築系の会社で働きながらお金を貯めていたんですけど、当時の月収は10万円台後半でした。少ない元手でお金を増やす方法はないかと考えるなかで目にしたのが、SBI FXトレードのCM。FXなら少額から始められることを知って、30万円程度の元手で始めました。

――ただ、裁量トレードではうまく増やせなかったため、グルトレを開発するようになるわけですね。

実は、始めの頃は調子がよかったんです。2015年1月にスイス国立銀行がスイスフラン売り介入を半ばあきらめて、フランが急騰するスイスショックが起こったんですけど、このときに私はユーロ/スイスの売りで入って一気に資産を倍に増やすことに成功しました。その成功体験が忘れられなくなって、高値・安値をブレイクした後の急激な値動きを狙うトレードに取りつかれた(苦笑)。

仕事中にトイレに入ってはブレイクアウト狙いのポジションを取っていたんですけど、スイスショックのように一方向に値が動くことは頻繁にあるはずもなく、気づかぬうちにポジションが含み損を抱えてしまって、稼いだ利益を吐き出していってしまいました。そんな負けトレードを繰り返した後の2016年に生まれたのがグルトレです。

――グルトレ考案後は勝てるようになりましたか?

だいたい年利10~20%のペースで資産を増やせるようにはなりましたね。ポジションは、1日1回チェックするだけ。ただ、3週間から1カ月単位でトレードを仕切り直すようにしています。レンジ相場だけでなく、トレンド相場での値幅取りを狙うのがグルトレなので。

――そのためにはトレンドを読む必要がありますよね。

そうですね。だから、チャートには上昇トレンド時には陽線が続きやすい特徴のある平均足と、長期のボリンジャーバンドを表示させてトレンド分析の参考にしています。通常のボリンジャーバンドだと中央のラインが20日移動平均線で、その上下に標準偏差からはじき出された“バンド”が表示されますが、私は中央のラインを200日移動平均線にしています。そうすると200日移動平均線の傾きで大きなトレンド方向が確認できて、上下のバンドがエントリーの目安になる。具的にいうと、200日移動平均線が上向きで上昇トレンドを示唆しているときにローソクが下げてマイナス2σのバンドにタッチして反発し始めたら、“買いのグルトレ”のチャンス。買いの「サポート」を入れて、トレンドが変わるまでグルトレを続けるわけです。

――下落トレンドに変わったと判断したらすべて決済して、“売りのグルトレ”に切り替えるわけですね。

そのトレンド分析のために、ファンダメンタルズも参考にしています。たとえば、最近では中国の不動産大手・恒大集団の経営危機からリスクオフ相場が顕著になりました。急激に豪ドルが売られたので、こうした不測の事態のときには、いったんポジションを全決済して仕切り直すほうがいいでしょう。

あとは、アノマリー(法則・理論から合理的な説明ができない現象)も参考にしていますね。株の世界では「節分天井・彼岸底」などと言われますが、豪ドルは例年11月、12月に値上がりしやすい傾向がある。そのアノマリーを参考に、年後半は豪ドル/円で買いのグルトレをやったりします。

トレードで注意すべきは「資金管理」

川崎ドルえもんさん
(画像=PIXTA)

――グルトレで大負けすることはないんでしょうか?

実は2019年1月に起きた「フラッシュ・クラッシュ」のとき、豪ドル/円の買いのグルトレをやっていたのですが、一瞬で5円以上も下げたことで100万円ほど損してしまいました。でも、この経験を生かして、「封印両建て」という対応策を思いついた。トレンドに乗って値幅を稼ぐためのサポートの買いがフラッシュ・クラッシュで大きな含み損ポジションになってしまったので、急激な相場の変調に備えてサポートを相殺するための指値注文を入れるようにしたのです。

豪ドル/円で買いのグルトレをしていたら、3円ほど下にサポートの枚数と同等の売りの指値を入れおく。一気に3円以上値が動いても、その後は損失を相殺できるようにしたんです。

――どんな相場にも対応できるようトレードを進化させているようですが、実践するうえで気を付けるべきことはありますか?

資金管理に尽きますね。勝率80%のトレード手法でも10回中2回は負けるんです。10pipsの利益確定を8回できても、50pipsの損切りを2回やったらマイナスです。だから、少なくてもポジションを立てる際に、損切りと利益確定のポイントを決めるべき。その損切りの値幅と利益確定の値幅が見えれば、おのずと立てるべきポジションの枚数が決まってきます。

グルトレをこれから始めるのならば、まずは1通貨単位で売買できるSBI FXトレードや松井証券、100通貨単位のトレードができるマネーパートナーズなどで試してみるほうがいいでしょう。