わずかな元手で“億り人”の仲間入りを果たす――。約10年かけてそんなFXドリームを実現したのが、ぶせな氏だ。

テクニカルアナリストの資格を有するマーケット分析のプロでもある専業トレーダーは、いかにしてFXで利益を稼ぎ続けているのか?

ぶせな
ぶせな
認定テクニカルアナリスト。
商品先物会社、資産運用会社で働く傍ら、2007年からFX投資を開始。サブプライムショックで1100万円の損切りを経験して、秒単位で値幅を抜くスキャルパーに。その後10年あまりで50万円の元手を1億6000万円まで増やした。2015年頃からデイトレードも開始し、近年では不動産投資にも進出。『最強のFX 1分足スキャルピング』(日本実業出版)などの著書がある。
Twitter:@busena_fx
 

「無謀なトレード」で、ほぼ全財産を失うことに

(画像=PIXTA)

――ぶせなさんは専業トレーダーでありながら、テクニカルアナリストの資格も取っていますね。なぜ、資格を取ろうと思ったのですか?

何度も投資で失敗したからですね(苦笑)。2005年に株を始めたのが個人投資家としての原点ですが、翌年のライブドアショックに巻き込まれて、すぐに資金を溶かしてしまいました。

それで、少額で始められるFXに移行したのですが、ご存じのとおり、2007年にはサブプライムショックが起こりました。クロス円の買いポジションを持っていた私は、このとき下がるたびにナンピンを繰り返してしまい、最終的に1100万円の損切りを経験しました。その当時のほぼ全財産を失って初めて、自分が無謀なトレードを繰り返していたことに気づいたんです。ずっと金融関係の仕事をしていたのに……。

――金融機関で働いていたんですか?

新卒で入社した先が商品先物取引の会社だったんです。右も左もわからない状況でいきなり商品先物のディーラーを任されて。誰も相場について教えてくれないし、精神的にはおいこまれるしで、わずか2年で辞めてしまいました。

そのあとJ-RIET(不動産投資信託)の運用会社に転職したのですが、お給料がかなりよかったので1100万円も吹き飛ばすような無茶なナンピンを繰り返してしまったのです……。

――その苦い経験をどう生かしたんですか?

そこからは徹底的にマーケットを分析しました。さまざまなテクニカル指標の研究もしました。その結果、行き着いたのがスキャルピングです。数秒で決済することもある超短期売買なら、少額でも回転を利かせて増やしていける可能性があると感じました。当然、損切りも早いので、サブプライムショックのような大やけどを負うリスクは抑えることができるわけです。それでスキャルピングに集中するようにしたら、50万円の原資を約10年で1億6000万円に増やすことに成功しました。

50万円を10年で1億円超にしたトレードスタイルとは?

(画像=PIXTA)

――10年で300倍!? 具体的にはどうトレードされていたのですか?

私が使用していたテクニカルはEMA(指数平滑移動平均線)とエンベロープという、2つのテクニカル。EMAはSMA(単純移動平均線)よりも振り幅が小さく、反応が早いため、トレンドの転換点をSMAよりも早く知らせてくれる傾向にあります。1分足チャートに、20EMA、75EMA、200EMAという3本のEMAを表示させ、200EMAで大きなトレンドをチェック。そのうえで、移動平均線の乖離率を視覚化してくれるエンベロープを逆張りエントリーの参考指標として利用していました。

――エンベロープは、あんまり聞いたことのないテクニカルですね。

私も「使っているよ」という人にはほとんど会ったことがありません(笑)。ただ、エンベロープは非常にシンプルなテクニカル。移動平均線を上や下にズラしたものですから。私は20EMAに対して±0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.4%乖離したエンベロープを表示させていました。

急にローソクが下げ始めて、-0.15%のエンベロープに到達して長めの下ヒゲをつけたら逆張りの買い。値動きは移動平均線に収束する傾向があるので、急落後の反騰、急騰後の反落をエンベロープを参考に狙うんです。仮に、-0.15%で反発せず、突き抜けてしまうようならすぐに損切りして、-0.2%到達したタイミングで再度買いで入る。こうして3~5pipsの利益を重ねていくんです。

――逆張りのスキャルピングなんですね。

ただ、大きなトレンドにはなるべく逆らわないように心がけてきました。20・75・200のすべてのEMAが上向きだったら、強めの上昇トレンドが発生している証拠なので、押し目買いを狙います。そのトレンドに逆らって売りで入る場合は、+0.15%ではエントリーせず、+0.2%や+0.25%に噴き上がるのを待つ。エントリーの回数は減りますが、それなら踏み上げられて損切りを余儀なくされるリスクは抑えることができます。

――ずっと相場に張り付いてエントリーチャンスを探しているわけですか?

スキャルだけやっていた頃は1日15時間ぐらい、チャートに張り付いていましたね。外に出る時間がもったいないと思って、ほとんど外出しない時期もありました。でも、今はチャートを見ているのは7~8時間程度です。

――トレードスタイルを変えたわけですか?

2015年頃から感じていたのですが、ずっとスキャルを続けるのって本当に大変なんです。精神的にも肉体的にもすり減ります。ドル/円のボラティリティ(変動率)が歴史的低さを記録した2017年は特にキツかった。値動きがなさすぎてエントリーするチャンスがないのに、チャートを見続けるわけですから。その頃から、デイトレードを取り入れ始めて、少しずつスキャルの回数を減らしていきました。

――より長い時間軸でトレードするようになったわけですね。

日を跨いで決済することはありませんが、数時間はポジションを保有し続けるので、デイトレは順張りを徹底しています。スキャルのように逆張りエントリーはしません。15分足チャートの200EMAが上向きなら、買い目線。75EMAとゴールデンクロスして、直近高値を抜いてくるようなタイミングで買いで入る。このとき強い上昇トレンドが発生すると20EMAに沿って上げ続けますが、勢いが弱まると75EMAまで落ちてくるので、その値動きを見ながら利益確定する。

FXトレーダーから不動産投資家へ

(画像=PIXTA)

――スキャルからデイトレをメインに切り替えて、生活は変わりましたか?

とにかく気分が楽になりましたね(笑)。毎日、外出するようになったせいか、体調もよくなった。稼ぎは減りましたが、投資効率は上がったと感じています。スキャルピングは回転を利かせた複利運用が可能だという点で資金効率はいいのですが、一定のスプレッド(買値と売値の差)が何度もコストとして発生する。

同じコストが発生するなら、なるべく大きな値幅を抜いたほうが効率いいに決まってます。投資効率の面でいうと、数pips抜くスキャルピングよりも、数十pipsの値幅を狙うデイトレのほうがいいんです。

――どれぐらい稼ぎが減ったのでしょうか?

最近は年間で400万~500万円程度しかFXで稼いでいません。より大きな値幅を狙うデイトレは、その分だけ損切り幅も大きくなりがちです。だから、スキャルと比較して1回あたりのトレード枚数をグッと抑えているんです。スキャルのときは500枚を超えるポジションを当たり前のように立てていましたが、今は100枚を超えるポジションを持つことはほぼありません。今年はトレード回数が大幅に減っているから、月のFX収入が10万円程度しかないこともありました(苦笑)。

――そんなに収入が減って大丈夫ですか?

実は数年前から、不動産投資を始めたんです。少しずつ物件を増やしていって、今では自宅兼賃貸マンションを1棟とコインパーキングを2つ保有しています。2021年9月に物件が増えたばかりなので、あくまで予想リターンになりますが、今後は月80万円以上の賃貸収入が入ってくるはずです。

――FXトレーダーから不動産投資家へ転身したわけですね。

若い方は身体が丈夫なのでスキャルを続けられるでしょうが、私はもう43歳。体力勝負のトレードはいつまでも続けられません。FXを辞めることはありませんが、今後は不動産投資を柱にしていくつもりです。

――億り人を目指す投資家にアドバイスはありますか?

資金効率を優先するのか、投資効率を優先するのかはっきりさせたほうがいいでしょう。ただ、資金効率の高いスキャルピングは、長時間相場に張り付いていられる専業トレーダー向きのトレードスタイル。

サラリーマン投資家は投資効率を優先し、限られたチャンスで大きな値幅を取るトレードを目指すべきだと感じています。トレンドに沿った順張りトレードを徹するべきでしょう。