常に相場に張り付かずとも、短期間で資産を大幅に増やせるチャンスがあるFX。先生とFXトレーダーの二足の草鞋を履く斉藤学氏は、そのFXドリームを地で行く人物だ。1年で50万円の元手を6900万円に増やし、その過程で見につけたトレード知識を「マナブ式」として書籍化。

このコロナ禍ではYouTubeの自身のチャンネルを通じて、テクニカル指標の使い方などに関する解説動画も多数アップ。専門学校でパソコンの先生として働く傍ら、マナブ式のトレード手法を多くの投資家に伝授してきた。兼業投資家として成功するまでの経緯を追った。

斉藤学
斉藤学
1980年、神奈川県生まれ。専門学校でパソコン講師として働く傍ら、2006年から投資を開始。テクニカル分析を研究し、本格的にFXを開始した2009年には50万円の元手を6900万円にまで増やすことに成功。以降、ギリシャショックやトランプラリーなどで大きな損失を被りながらも着実に資産を増やし続けている。『50万円を6900万円に増やしたマナブ式FX』(誠美堂出版)、『マナブ式FXトラッキングトレード入門』(実業之日本社)など著書多数。ブログ「FX為替レート予想ブログ」やYouTubeチャンネル「FX&投資研究所」も運営中。
Twitter:@kamiturejp_
 

スタートで躓き投資スタイルを変更

斉藤学さん
(画像=PIXTA)

――専門学校のパソコン講師として働きながら、FX関連の著書も数多く出していますね。なぜFXをやるようになったのでしょうか?

投資を始めたのは2005年だったと思います。その頃から専門学校の先生として働いていて、社会人の生徒から投資の話を聞かされて興味を持ったのがきっかけでした。ただ、最初は株式投資を始めたんですけど、1年弱で100万円以上の損失を出してしまいました。2006年1月にライブドアショックに巻き込まれて、保有してる株が軒並み急落しちゃったんです。

――それでFXに転向したと?

株は買って値上がりを待つのが最もポピュラーな投資法ですけど、FXなら売りで入るのも一般的。上昇や下落といった相場の状況に合わせて投資スタイルを選べる点が魅力的に感じました。ただ、最初は専門学校の生徒が実践していた南アフリカランド/円の買いから始めてしまいました。スワップ金利も入ってくるし、値上がり益も期待できるだろうと。ところが、ここでもサブプライムショックに巻き込まれて100万円近くの損失を出してしまったんです。

――FXでもスタートに躓いてしまったのですね。

高金利通貨で高いスワップ金利が入ってくるのをいいことに、値下がりしたら買い増して平均購入単価を引き下げるようにしていたらポジションがどんどん膨らんでいって、瞬間的に急落したタイミングで強制決済されてしまいました。“コツコツドカン”の典型ですね。

――それから投資スタイルを変えたんですか?

買い一辺倒はやめました(笑)。それと、情報が乏しく値動きが読みにくい新興国通貨には手を出さないようにしましたね。トレードするのはほぼドル/円とユーロ/ドルのみ。直観に頼らず、チャートを吟味して投資する方法を模索して、さまざまなテクニカル分析の研究も行いました。

私はサラリーマンなので、昼間は相場をチェックする暇がありません。だから、時間があるときにチャートを分析して、エントリーポイントを探し、高確率で値幅が取れそうなタイミングのみトレードしようと思ったんです。

さまざまなテクニカル指標を駆使して利益を獲得

斉藤学さん
(画像=PIXTA)

――具体的にはどんなトレードをしているのですか?

買われすぎや売られすぎの状況を知らせてくれるオシレーター系テクニカルで相場の状況を確認してトレンド転換のポイントでトレンド方向についていく。オシレーターはストキャスティクスでもRSIでもいいんですけど、私はMACDを主に見ています。ローソク足が高値を切り上げながら上昇しているのに、オシレーターが高値を切り下げていたら「ダイバージェンス(逆行現象)」といって、トレンド転換のシグナルになりやすい。

ただ、ダイバージェンスは繰り返し発生しやすいという傾向もあるので、MACDとストキャスティクスの両方でダイバージェンスが発生したら、強力なトレンド転換のシグナルだと判断して、エントリーのタイミングを探すようにしています。

――ダブル・ダイバージェンスですか。

ローソク足が高値を切り上げているのに、MACDとストキャスティクスが高値を切り下げていたら売り目線。上昇トレンドなら陽線、下降トレンドなら陰線が続きやすい平均足というローソク足チャートの法則を利用して、陰線が表示されたら売りで入るというかたちです。

――さまざまなテクニカル指標をチェックしているわけですね。

それもマルチ・タイム・フレーム(MTF)分析のために、1分足、15分足、1時間足、4時間足、日足、週足もチェックします。長い時には1年以上もポジションを持ち続けるスウイングトレードをメインにしているので、短い時間軸の足から長い足までチェックして、大きなトレンドには逆らわないようにエントリーするのがポイント。短い時間足のダブル・ダイバージェンスで押し目や戻りの形成を確認してトレンド方向にトレードするわけです。

このほか、海外の投資家が開発した「THVシステム」というテクニカル分析も参考にしていますね。平均足に加えて、値動きの予測に役立つピボット、移動平均線に似た動きをするCoral、MACDに似たオシレーターのTRIX、それと日本ではよく知られた一目均衡表をセットにした分析ツールです。無料チャートソフトのメタトレーダー4(MT4)向けに無料公開されているので、このTHVを参考に相場の状況を分析するのも有効でしょう。

――そのようなトレードで勝てるようになったわけですね?

2009年に現在のトレードスタイルを確立して、その年だけで50万円を6900万円に増やすことに成功しました。その翌年の2010年5月にはギリシャショックを食らって1000万円近くの損失を出してしまいましたが(苦笑)。ただ、それ以降はファンダメンタルズ分析にも力を入れるようになりました。それと、ポジションを持ったらすぐに損切りの逆指値注文を入れるようにしました。含み益が増えると楽観的になりがちですが、常に相場に対してマイナス思考であることが重要だと思っています。それでも3~4年に一度の割合で大負けしていますが……。

現在は投資詐欺ウォッチャーのユーチューバーに?

斉藤学さん
(画像=PIXTA)

――最近の失敗トレードはありますか?

トランプ相場では1500万円近くやられました。これはFXではなくオプショントレードですが……。2016年の米国大統領選挙でトランプ氏が勝利したらNYダウは下がり、日経平均も下がるだろうと予想していたんです。それで、日経オプションのプット(売る権利)を何度も買って暴落する日を待っていたのですが……。結局、暴落することはなく、すべてのプットオプションが無価値になってしまいました(苦笑)。

――為替以外もチェックされているんですね。

NYダウやS&P500、ナスダック指数、日経平均などの主要株価指数はもとより、金(ゴールド)や原油のチャートは必ずチェックするようにしています。必ず、為替の動きは別の商品の値動きと連動しますので。最近で言えば、米国のテーパリング(量的緩和の縮小)を受けて米10年債利回りが上昇して、ドル高が進んでいます。ドルの動きと逆相関になりがちな”有事の金“は下げトレンドにあり、WTI原油先物価格の上昇を受けて資源国通貨のカナダドルや豪ドルは上昇に転じています。為替だけでなく、さまざまな金融商品や指数の値動きを見ることで、FXの値動きが読みやすくなるんです。常にこれらのチャートをチェックする必要はなく、1日1回見て大きな流れをチェックしておくだけでもトレードの精度は大きく変わってくるでしょう。

私はGMOクリック証券をメインに使っていますが、GMOならFXだけでなく、金や原油、主要株価指数のCFD(差金決済取引)も扱っているので、チャートの確認もラク。資金移動も簡単にできるので、FXでエントリーチャンスが見つからない場合は、CFD口座に資金を移して原油をトレードすることもあります。

――コロナの影響はありますか?

トレード成績はそれほど変わりありませんが、専門学校が休校になるなどして、とにかくヒマになりました(苦笑)。その時間を有効活用するために、昨年からYouTubeに力を入れています。

――それは新しい挑戦ですね。

実は、「FX&投資研究所」というチャンネル名で、10年近く前からやっていたんです。でも、あまり視聴者が増えなかったので放置していました。それをコロナをきっかけにテコ入れしたかたち。基本的には、ドル/円の相場予想やボリンジャーバンドや平均足、MACDなどのテクニカル分析の使い方の解説がメインなのですが、最近は投資詐欺事件の解説動画も増えています(笑)。

――斉藤さんが詐欺にひっかかったんですか!?

実は、専門学校の生徒から「〇〇〇という仮想通貨を勧められているんですけど、先生はどう思いますか?」と相談されたのがきっかけです。その金融商品について調べてみたら、ポンジスキーム(集めた資金を運用せず、配当に回すタコ足配当仕組み)が疑われたので、その仕組みを細かく解説する動画を公開したら、それ以降、いろんな方から「こんな詐欺的金融商品に引っ掛かってしまいました」と相談を受けるようになりまして……。

今では、FX系ユーチューバーというよりも、投資詐欺ウォッチャーのユーチューバーとして認知されてきています(苦笑)。