コロナ禍の影響により、特典などを使いこなすことができず、使用しているクレジットカードを見直す消費者の動きも出てきているという。新たにクレジットカードを選ぶ際には、どのような点に注目すれば良いのだろうか。30年以上にわたり、クレジットカードについて情報収集・発信を行ってきた消費者ジャーナリストの岩田昭男氏に話を聞いた。

岩田昭男
岩田昭男
同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。主力はクレジットカード&電子マネーの研究で、すでに30年間に渡って業界の定点観測をしている。主な著書としては、「Suica一人勝ちの秘密」(中経出版・現カドカワ)「信用格差社会」(東洋経済新報社)「信用偏差値」(文春新書)「クレジットカード・サバイバル戦争」(ダイヤモンド社)「ドコモが銀行になる日」(PHP)「キャッシュレス覇権戦争」(NHK出版)、また、クレジットカードのムックも50冊以上監修しキャッシュレスの生き字引として情報発信を続けている。
HP:岩田昭男の上級カード道場
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ポイ活もいいが、それ以外の特典の魅力も知ってほしい

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―岩田さんは30年以上、消費者ジャーナリストとして活躍されており、クレジットカードの専門家として知られています。この業界や分野に興味を持ったきっかけから教えて下さい。

日本におけるクレジットカードの歴史は、1960年ごろに、ダイナースクラブが上陸したのが始まりだと思いますが、当時クレジットカードを使用する人は限定的でした。大きな転機となったのは、1987年にVISA、Masterがアメリカから日本へ進出してきたことだと思います。日本のカード会社がこの2社のフランチャイズになったことで、広く普及するようになりました。

そして、1990年代~2000年代にかけて、インターネットが登場し、ポイント制度が始まりました。その頃、私は先進的なクレジットカード事情・ビジネス・業界を視察するためにアメリカに渡り、クレジットカードの多様化が進んでいる様子を目の当たりにしました。そして、日本に帰ってきてからは、クレジットカード関連の書籍を出版したりしていました。

現在では、楽天カードに代表されるような「年会費無料」のカードが一般的ですが、一方で、ゴールドやプラチナのような年会費はかかるものの、特典が豪華で、普通なら一生体験できないような経験をさせてくれるワンランク上のカードも存在します。世の中のリテラシーが高くなってくると、年会費無料のカードでは満足できない人も出てくるはずです。そう考えて、そうした人たちに情報を紹介するためのサイト「上級カード道場」を作ったのです。

―数年前まではポイント還元率が重視されていましたが、最近では還元率の差がなくなりつつあります。

最近では、「ポイ活」という単語が生み出されたことからもわかるように、今でもポイントは根強く人気があり、主婦の方などを中心に多くの方が取り組んでいます。

ポイ活は、もともとはポイントが貯まりやすい楽天カードの利用者が増えたことがきっかけの一つだと思いますが、私は、ウエルシア薬局とTポイントの組み合わせなどにも注目していますね。ポイ活は、形は変わるかもしれませんが、おそらくいつまでもなくならないものでしょう。

―ポイント還元は、やはり「楽天カード」が一番良いのでしょうか?

確かに楽天ポイントは貯まりやすいので私自身も使っていましたが、より良いものがあれば、そちらを使います。楽天のデメリットは、楽天関連でしか貯まらない・使えないということですね。ただ、最近は楽天でんきなどの登場により公共料金でもポイントをためやすくなっています。楽天はもともと女性ユーザーが多く、ポイントを熱心に貯めていましたが、最近は男性のポイ活をするユーザーが目立っている印象があります。

ただ、一方で、「ポイント疲れ」のようなものもあって、ポイント以外のところでの「お得さ」を求めるニーズも高まっていると思います。プラチナカードは年会費がかかりますが、所有することで特別な体験ができるイベントや特典があるので、面白いですよね。

―そうした特典を得るためには、やはりプラチナカードを保つ必要があるのでしょうか。

プラチナだけでなくゴールドでも、そのようなイベントを体験できる場合があります。例えば、ラグジュアリーカードであれば、レストランに行くときにリムジンでお迎えなどをしてくれますよね。このように生活の中で「特別な体験」を楽しむことができるのも、ゴールドカードやプラチナカードの大きな魅力だと思います。

岩田さんが実際に使っているのは「ビューカードプラス」

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―岩田さんはカードを20枚くらい持っていて、メインで使っているのは2~3枚とお伺いしました。具体的にはどのようなカードを使っていますか?

私は、以前からビュー・スイカカードを使っています。通勤を中心に鉄道利用でポイントを獲得することがメインの目的ですね。以前、楽天カードも楽天ペイとSuicaの組み合わせで使っていましたが、あまりピンときませんでした。

なので、メインカードは、「ビューゴールドプラスカード」です。これは、今年の7月からSuicaにチャージすると3.5%のポイントが貯まるようになっており、貯まったポイントはまたSuicaにチャージできるため、とても合理的なのです。

さらに、ビューゴールドプラスカードは、ポイント還元が1.5%から最大10%になります。もちろん使えるものは限られますが、基本的にクレジットカードのオートチャージを使っているので、ポイントを貯めるのに重宝しています。

他には、「ラグジュアリーカード」などのハイステータスカードも利用しています。あまり使う機会は多くありませんが、出すと驚かれるので使うシーンも選ばないといけないですね(笑)。

ラグジュアリーカードにはチタン(年会費:5万円)・ブラック(年会費:10万円)・ゴールド(年会費:20万円)の3種類があります。

ゴールドは年会費がもっとも高く使い勝手も良いですが、ブラックの方が見栄えは良いと個人的には思います。チタンは重量があって信頼が感じられるので、ステータスカードの中でも、ラグジュアリーカードはおすすめですね。

岩田さんおすすめのクレジットカードを世代や属性ごとに紹介

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―若い方におすすめのクレジットカードはありますか?

学生カードは最近少なくなっていますが、とくに、JALの20代限定カード「JAL CLUB EST」が良いですね。年齢制限があり期間も限定ですが超高級ラウンジが使える特典が魅力です。

似たようなものでは「JCB CARD W」や「dカードゴールド」なども挙げられます。特に、「dカードゴールド」は、もっとターゲットの年齢が高かったように思いますが、最近はCMなどを見ても20代の若者向けのアピールが目立つ印象です。

ただ、ドコモユーザーであればメリットは多いものの、年会費11,000円は若者にとって高い印象を受けます。最近では、買い物のポイント還元率を限定的に10%にするなどのキャンペーンも始めるようなので、こうしたサービスで若者にアピールしていくのかもしれません。

―法人カードやビジネスカードでおすすめはありますか?

法人ならTOMOWELの法人プリペイドカードがおすすめですね。個人事業主・フリーランス向けでいえば、「NTT ファイナンス BIZ」が年会費無料でポイントも貯めやすいのでおすすめです。

また、アメックスの法人カードも有力な候補だと思います。以前は私もアメックスのビジネスカードを持っていましたが、あまり使っていませんでした。ただ、これからカードの材質がチタンになるので、またビジネスカードを作ることも検討しています。

―最近、注目しているカードや面白いと感じているクレジットカードはありますか?

最近だとホテルカードでしょうか。私のYouTubeでも紹介していますが、代表的なのが、ヒルトンのホテルのカードです。年会費が66,000円とやや高めですが、家族カードが無料で4~5枚作ることができるので、家族でポイントを貯めることができる仕組みが面白いですよね。他にも、「スターウッドプリファードカード」も魅力的です。

ただ、業界全体についていえば、何か新しいサービスを始めるなど抜本的な改革に取り組んでほしいという思いもありますね。

―最後に、富裕層におすすめのカードを教えて下さい。

投資家・富裕層向けでいえば、ラグジュアリーカード・チタンのような大人のカードがおすすめです。ラグジュアリーカードは、カードが不要になったら破棄するのではなく返送できるなど、コロナやSDGsの対応も早くて好感が持てます。このような取り組みを続けていけば、クレジットカード事業にとどまらない発展ができる会社になる可能性を感じます。

やはり、特別な体験を楽しむことができる大人向けのカードが良いですね。海外では宇宙旅行などのスケールが大きなイベントを提供していて、非常に夢があると思います。 20~30年ほど前は、こうした分野は、ダイナースクラブの一人勝ち状態でした。ポイントを貯めるとアフリカのサファリパークにあるコテージに1年間滞在できるなんていう特典があり、実際に行った人もいました。

こういうのこそ本当の富裕層向けの特典でしょうし、日本のカード会社も、これくらい面白いことをやってほしいですね。