次代を担う成長企業の経営者は、ピンチとチャンスが混在する大変化時代のどこにビジネスチャンスを見出し、どのように立ち向かってきたのか。本特集ではZUU online総編集長・冨田和成が成長企業経営者と対談を行い、その経営戦略に迫る。今回は株式会社きちりホールディングスの平川社長にお話を伺った。

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(画像=株式会社きちりホールディングス)
平川 昌紀(ひらかわ まさのり)
株式会社きちりホールディングス 代表取締役社長CEO 兼 COO
1969年大阪府生まれ。甲南大学卒業後、大手リゾート開発会社勤務、 家業の不動産開発会社勤務を経て、27歳で起業、ファーストフードのフランチャイズ店を開業。 1998年株式会社きちり(現:株式会社きちりホールディングス)を設立し、 外食事業をチェーン展開。2007 年の大証ヘラクレス(現JASDAQ)上場。2014 年東証第一部へ指定替え。 現在、国内外で約130店舗の飲食店を展開。イタリアのグローバルブランドのグローサラントの事業再生や、 香港の高級スーパーのグローサラント事業に携わる。 大手計量器メーカー、海外ファッションブランド、プロサッカーチームや長野県との恊働事業として レストランのプロデュースも手がける。 グループ会社による動画面接サービス「ApplyNow」の提供や 生産性向上のための外食×DX化、地方創生事業の取り組みを進めている。

目次

  1. これまでの事業変遷について
  2. 経営判断をする上で最も重視していること
  3. ご自身の強みについて
  4. 自社が今後関連していくテーマ、思い描いている未来構想
  5. ZUU online ユーザーならびにその他投資家へ一言

これまでの事業変遷について

冨田:創業からのこれまでの事業変遷について教えてください。

株式会社きちりホールディングス 代表取締役社長・平川 昌紀氏(以下、社名・氏名略): 学生時代に日本マクドナルドの創業者である藤田 田氏の「ユダヤ商法」とナポレオン・ヒル氏の「思考は現実化する」いう本に出会ったことが起業のきっかけです。

その本の中で、ユダヤ人はビジネスのターゲットを金・口に入る物・女性の3つに絞るという言葉が自分に刺さりました。私は、女性が新しいトレンドやニーズを作っていく存在になると読み解きました。そして最も親近感があったのが外食だったため、女性が入りやすいデザイン性の高いおしゃれなダイニング(居酒屋)を始めたいと考えました。

そこから、独自で外食市場の研究を行い、日本の外食産業の創造期が1960年代で、私が20代後半から30代の1990年代には企業30年説で言うところの、市場の大きな転換が起こると考え、外食産業の新しいスタンダードを作ろうと決めました。ただ、私は外食産業で働いた経験がなかったので、1997年にモスバーガーのフランチャイズからスタートしました。

冨田:その後、多店舗展開された「KICHIRI」を始められましたが、どのように拡大されたのでしょうか?

平川:まずは、外食産業の中でも比較的参入障壁の低い居酒屋から始め、規模拡大をしていこうと考えました。そこで、当時若い層に人気であった、デザイナーズマンションをコンセプトにしたダイニング(居酒屋)業態を大阪の郊外で始めました。結果的に話題の人気店となり関西圏で約40店舗を展開しました。そして、創業当初から目標としていた、2007年に大阪証券取引所ニッポン・ニュー・マーケット-「ヘラクレス」市場(現東京証券取引所JASDAQ(グロース))へ上場しました。

冨田:上場後も事業拡大が続いていますが、どのような変化がありましたか?

平川:上場の翌年、2008年にリーマンショックが起こり、非常に苦労しました。上場を前提だったので居酒屋一業態だけで急成長を目指し、多店舗展開をしていたため、長らく続く自粛により倒産の危機に陥ったのです。この経験から、アルコール中心の業態だけに依存をしていると想定外の出来事が起こった際に影響を受けやすいということを学びました。そこで、外食産業の中でも、食事性が強くて汎用性が高い業態を展開していこうと、駅ビルやショッピングモールに「いしがまやハンバーグ」という業態を始めました。繁華街型の居酒屋から立地と動機を変え展開したことで、今回のコロナ禍でも急速に業績回復をし、韓国料理の「VEGEGO」などの複数業態で新規出店をすることができました。

冨田:リーマンショックの苦労があったからこそ、業態転換や事業の安定性を築くことができたのですね。

平川:そうですね。私は「脅威とも思われる事態を発展の機会と捉え、それをチャンスに変える。」と決めています。これに則って、今回のコロナ禍をチャンスと捉えて新たな成長曲線を描くことができたと考えています。

経営判断をする上で最も重視していること

冨田:平川社長が経営判断をする上で最も重視されている点は何ですか?

平川: ベンチャー精神を忘れず、成長と発展を目指し、新しい挑戦をし続ける。既存事業の【深化】とともに、新規事業の【探索】を両軸で進める。時代のニーズを捉えたサービスの提供をしていけるように進化し続ける、ということをいつも意識しています。

冨田:どのような新規事業を考えているのですか?

平川:現在は2つの新規事業を展開しています。 1つ目は、HRテック系サービスの展開です。主力サービスは、24/7面接プラットフォーム『Interview Cloud』です。具体的には、アルバイト求人媒体からの応募者に対し、Interview Cloudが最短1日で面接調整と面接実施まで完了させ、導入企業はその録画された面接動画を見て採否判断するだけで人材採用が出来るというサービスです。 選考スピードが圧倒的に早まり、面接クオリティも高まるため、導入企業は採用率が高まったというお声を多くいただいています。

2つ目は、地方創生のためにふるさと納税の代理事業を展開しています。ユーザーの方には、プラットフォームシェアリング事業を活用すれば地方創生に有効な取り組みができる、と評価していただきました。現在は、ふるさと納税の納税額ランキングで、令和4年度に10位を獲得している福井県の敦賀市の代理事業者もやらせていただいています。

冨田:ありがとうございます。一つ一つのテーマや課題に対して横に縦に斜めに事業を広げていらっしゃっているため、非常に分散が効いているのだと感じました。

平川:そうですね。平面ではなく立体的に事業を考えることを意識しています。今後も基盤事業である外食に関してはより事業体制を強固にしていき、新規事業においては絶えず探索していきたいと考えています。

ご自身の強みについて

冨田: 平川社長はご自身の強みをどのように考えていますか?

平川: 創業者なので、0から1で事業を創り上げてきた経験により、大胆かつ冷静な判断ができる点かと思います。それにより、今回のコロナ禍のような逆境と言われるような状況でも、今までの経験から得た様々なリスクヘッジを図りながらも、新しい事業に臆せず、チャレンジできています。

冨田: 逆境をチャンスと捉えるという姿勢が強いですね。リーマンショックやコロナ禍などの危機が、平川社長をさらに強くしているようですね。

平川: そうですね。今がチャンスだということや、困難な時ほど楽しんでやろうよという口癖が多いです。 ベンチャー企業の創業者は事業化するまでのスピードや行動力が強みであると思っています。どんな時もチャンスと捉えることで、ダーウィンの進化論の「変化できるものだけが生き残る」という言葉があるように、既存事業の枠にとらわれず、様々な事業へ発展できたのかと思います。

自社が今後関連していくテーマ、思い描いている未来構想

冨田:思い描いている未来構想について教えていただけますか?

平川:外食産業では日本国内はもちろんですが、海外展開を積極的に行なっていきたいと考えています。現在の日本では外食産業は成熟しており、少子高齢化も進んでいます。そのため、海外への事業展開が重要だと考えています。

冨田:現在も海外展開されていらっしゃいますよね?

平川:はい、そうです。現在、インドネシアのジャカルタで3店舗の運営を行なっていますが、これからもジャカルタでの多店舗展開と同時に、東南アジアを中心に海外展開を積極的にチャレンジしていきます。

ZUU online ユーザーならびにその他投資家へ一言

冨田:最後にZUU online ユーザーならびにその他投資家の方々へ一言お願いします。

平川:コロナが終息し始めてから、業界に活気が戻ってきていると感じています。私たちはコロナ禍中でも基盤の外食事業では海外も含め、規模の拡大を目指し、新規事業では可能性を開拓することに取り組んでいますので、応援していただけますと幸いです。

冨田:非連続な成長の可能性が見えた時間でした。ありがとうございました。

氏名
平川 昌紀(ひらかわ まさのり)
会社名
株式会社きちりホールディングス
役職
代表取締役社長CEO 兼 COO