デジタルマーケティングの世界は絶えず変化しています。その最前線で活躍する企業の一つが株式会社デジタリフトです。同社の業績と技術力は、2012年の設立以来、急速に成長を遂げ、その結果は2021年の東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)への上場という形で現れました。

デジタリフトは、あらゆるデジタル領域のマーケティング施策を統合的に提供・最適化する統合デジタルマーケティング事業で、顧客を支援し、その成果を実現しています。本企画では、デジタルマーケティングの領域で急速に進化を遂げるデジタリフトの創業者であり、代表取締役の百本正博氏に、同社のビジョンや戦略、そしてこれからの展望についてお話しいただきます。

(執筆・構成=川村 真史)

デジタリフトアイキャッチ
(画像=株式会社デジタリフト)
百本 正博(ひゃくもと まさひろ)
株式会社デジタリフト代表取締役社長
1995年大学卒業後、株式会社大広に入社。営業局にて総合流通業(GMS)、通信事業、メガバンク、自動車メーカー、総合飲料メーカー、信託銀行等を担当し、ブランド開発、VI開発、コミュニケーション構造構築、メディアプランニング及びバイイング、イベント企画立案及び実施管理に従事。2005年に退社の後、IT企業のコンサルタントにて新規事業開発等を担当。 同時にサラブレッドの輸入販売育成業の立ち上げに参加する。その後、2012年11月、株式会社デジタリフト(旧株式会社電子広告社)を設立、代表取締役に就任。2021年9月に東京証券取引所グロース市場(旧マザーズ)に上場を果たした。
株式会社デジタリフト
株式会社デジタリフト(DIGITALIFT INC.)は、東京都港区西麻布に本社を置くデジタルマーケティングエージェンシーで、2012年に設立。長年WEB広告とコンサルティングを強みとして成長し、現在ではSEO、アフィリエイト、クリエイティブ、インフルエンサーなど、デジタル領域のマーケティングサービスを幅広くワンストップで提供できる体制を築いている。フリークアウト・ホールディングスの持分法適用関連会社でもある。

起業と事業変遷について

冨田:百本さん、よろしくお願いいたします。株式会社デジタリフトは、2021年の9月28日に上場されてから1年半が経とうとしていますが、最初の立ち上げからの事業の変遷についてお伺いできればと思います。単一事業をずっと続けてきたのか、それとも拡大をいろいろとされてきたのか、そういったところをまずお話しいただければと思います。

百本:承知しました。当社は2012年の11月に創業し、当初はDSPという広告配信システムを取り扱う会社という形でスタートしました。簡単に言うとトレーディングデスク事業ですね。さまざまなクライアントとのお取引をさせていただく中で、ありがたいことに信頼をいただき、当初事業領域を越えた要望をいただくことが増えてまいりまして、その要望にお応えしていく形で事業領域を広げてきました。もともとはディスプレイ広告がメインでしたが、リスティング、さらにはSEO、アフィリエイト、バナー・動画などのクリエイティブ制作、インフルエンサーなど、デジタルマーケティング周り一式をパックで提供するような形に変わっていきました。

もう一つ、マーケティング全般に関してもご要望をいただくことが多く、予算策定、戦略策定から関わらせていただくコンサルティングスタイルは初期から一貫して継続しております。マーケティング手法は実行前段階での戦略が非常に重要ですし、さらには、施策の実行により収集した様々なデータをどのように見てどう戦略に活かすかも、とても重要でそこには知見とノウハウが必要です。

デジタリフトの強みとは

デジタリフト

冨田:ありがとうございます。非常に競争が盛んなマーケットだと思うのですが、自社の事業の強みはどこにあるとお考えでしょうか?

百本:まずWEB広告の運用は、お客様にも分かりづらい部分があるため、お客様と会社の組み合わせによっては正しい実行がなされていない場合もあると思っています。この業界の中で当社は、お客様がどのような知識レベルであっても誠実に取り組むことを担保してきた会社であり、デリバリーの品質が安定していることが特徴の一つです。また、実行前段階での相談相手としても当社を活用いただけるため、配信成績だけでの評価ではなく、デジタルマーケティング戦略、戦術の企画を一緒に作り上げていくパートナーとしても活動しており、デリバリー品質と合わせて評価をいただけています。これにより、お取引が比較的長期になることも多く、そこが当社の強みの一つだと自負しています。

さらに、当社が創業後の早い段階からナショナルブランドなど様々なお客様との取引を行ってきたことや、特定の業種に寄らず幅広い業種のお客様と取引できていることも強みです。特定の業種に絞っている企業もありますが、当社は初期から様々な業種のお客様と取引できたことで、そのドメインを狭める判断をせずに済んでいます。

冨田:コロナ禍でどのような強みがあったと感じますか?

百本:特にコロナ禍では先ほどのメリットを強く実感しました。特定の業種が非常に厳しくなり、広告配信をすべて止めるお客様もいらっしゃいましたが、当社は取り扱い業種が広かった事により比較的傷口は浅かったです。多岐にわたる業種のクライアントとの取引を継続していたため、好調な業種に営業リソースを再配分するなど、リスク面においても多業種での取引スタイルが良かったと思います。

また、比較的小規模のお客様でも適切なサービスを提供させていただくことが、同じ規模の会社の中では圧倒的に多く、これも当社の強みの一つと言えます。小さな規模から成長させていくことにマーケティングの本質が詰まっているからです。

冨田:上場の時の成長可能性の資料を拝見していると、上流の代理店を挟まない直取引率が当時上がっていっているという形だったと思うんですが、これは現在も増えていますか?

百本:現在も直接取引率は継続して増え続けていますね。

冨田: ありがとうございます。直取引モデルと間接的な代理店モデルは、広告系だけではなくシステム系のお仕事やDX支援系でも共通していると思いますが、これが実現できるのはどういった要因があるのでしょうか。

百本:まず、当社での直接取引の場合、一度取引が開始されると継続しやすい傾向にあります。ですから、早い段階で直接取引に力を入れていく意思決定をしました。そのため、直接クライアント様に提案する力や実行力を磨いてきたことが今に大きくつながっていると思います。

また、社内の評価制度設計でもこれを意識しており、売上高が同程度の場合、直接取引案件を取る方が人事評価上有利になる仕組みも導入しています。もちろん代理店経由の案件にもメリットがあるため、代理店案件にも最大限コミットすることでそのメリットを享受しつつ、経営戦略上は、直接取引を重視する方針があります。

経営判断で重視していること

冨田: 百本さんが様々な経営判断をする上で最も重視していることや観点は何でしょうか?

百本:当社の特徴としては、どんな意思決定に対してもメリット・デメリットをきちんと洗い出す傾向があります。例えば、「これは余裕でできるよね」という場合でも、当社ではデメリットは何かを洗い出します。社内ではよく「その企画のメリデメは?」という言葉が使われます。特段、デメリットを重視しているわけではありませんが、大失敗が起きにくい状況を作ることができると思います。

冨田: なるほど、デメリットを検証しておくことで、踏み込む場合はフルスイングしやすいということですね。

百本:そうですね。メリットとデメリットをきちんと把握した上でフルスイングしていくのが、当社のスタイルです。

また、決定しないことが一番よくないと思っています。すべてに正解は出せませんが、思い切って進んだ結果、失敗したとしても学びが残ります。「意思決定がないと何も起こらない」とよく言っていますね。私自身かなり失敗を経験してきたので、多分体が覚えてしまったのだと思います。

冨田: 経営者としての百本さんのルーツや、過去の経験から積み上がったご自身の特徴や強みをどのように自己分析されていますか?

百本:まず、経営者になったのは、私の家が商売をやっていたことが一つの要因だと思います。父が空調設備業を経営していたので、家と事務所が合体しているようなところで育ちました。子供心に経営者の辛さや、社員が経営者に対して思うことなど、普通の子供が接することのない角度から物事を見ていたと思います。また、広告代理店の営業時代でも、プロジェクトメンバーを選ばせてもらったり、予算管理を任せていただいたり、自分で裁量を持てる業務に非常に面白みとやりがいを感じていましたね。

今後の方向性について

冨田: それでは、過去の話から未来の方向性についてお伺いしたいのですが、自社が今後どのような世の中のテーマに関連していくとお考えですか?

百本:まず、私たちの会社は約10年間で成長してきましたが、その理由は、デジタルマーケティング業界の激変に適応できているからだと思っています。昨日までの成功体験が足かせになることもある変化の激しい業界なので、環境に適応し続けることが重要だと考えています。例えば、ChatGPTのような新しい技術を積極的に取り入れることも大切ですね。

私たちは多くの企業のマーケティングに関わる立場にあるため、新しいマーケティングツールや考え方をいち早く知ることができます。それら最新のツールや知見を当社のフィルターに通して、メリット・デメリットを検討し、投資や取り組みを行えることに当社の価値があります。

さらに、M&A戦略も重視しています。私たちの業界知見を生かしながら、企業の経営者と協力して成功に導くことができるよう、さらには、1+1を2以上にできるよう、引き続き取り組んでいきたいと思っています。

また、社員にとっても働きやすい環境を作りたいですね。新しい事業や役職を通じて、社員が当社での経験を充実させることができるよう、引き続き努力していきたいです。

冨田: 社員を大切にされているということが伝わりますが、具体的にどのような取り組みをされていますか?

百本:社員にとって、このグループに入って良かったと思える状況を作りたいですね。例えばですが、新規事業を展開していく中で、幹部社員がその社長になることなどもあるかもしれない。そういった社員のモチベーションが高まるような取り組みを目指しています。当然、IPOを経て事業成長を早めることで、資金調達がしやすくなり、M&A戦略も取り組みやすくなります。そういった取り組みを通じて、社員のためにも良い環境を作り上げていきたいと思っています。

未来構想について

冨田: 今後の未来構想について教えていただけますか?

百本:当社では、CdMOという標語を掲げています。事業会社のCMOやマーケティング責任者の業務は多岐にわたりますが、その中のデジタル領域(d)を担わせていただくプロフェッショナルがCdMOと当社では定義しています。クライアント企業のCdMO=役員と同じレベルの価値提供を本気で目指しています。

それを高いレベルで達成し、デジタル領域のコンサルティングファームになるというのが長い目標です。コンサルティングファームも先行企業がデジタルに進出していますが、デジタルが出自である強みは大いにあると思っています。ただし、それまでには様々なステップをクリアすることが必要です。今は、その1つ1つに対してチャレンジをしているところです。

例えば、物流もマーケティングに関わるひとつの手段ですが、現状では知見はありません。マーケティング全般をデジタルの観点からコンサルできる存在となれれば、グループとしてできることが飛躍的に大きくなると考えています。

冨田: そのようなモデルでは、かなりの人数が必要になるのでしょうか?

百本:人数が必要というのもありますが、人手をかけずにそれができる世界があれば最高ですね。そういったシステムを私たちが作るということではないですが、それをいち早く会社にアジャストさせて使っていけるような存在になれるかどうかで成長角度が変わってくる。そのためにはアンテナを張っておき、情報感度を高めること、また、その感度が高い人間が多く所属していて意見が飛び交う組織であることが重要だと思います。

読者へのメッセージ

冨田: 今回のインタビューで、非常に骨太な話を伺うことができました。本インタビューを投資家の方々に見ていただくにあたり、デジタリフトさんの魅力をぜひお伝えいただければと思います。

百本: そうですね。この変わっていくデジタル広告業界の中で生き残っていくためには、デリバリー力の安定が重要だと考えており、デリバリーそのクオリティとスピードには自信があります。それは、すべて自前主義でほとんどの工程を内製化して行っているからです。

ワンストップかつスピーディーにお客様のソリューションを実行できることが、当社の価値のコアだと考えています。揺るぎない意志で実行し、成長していく可能性が高い会社だと成長していく可能性が高い会社だと心から信じていますし、確実に叶えていきます思っていますし、損はさせません。これを広く知っていただきたいと思います。

冨田:なるほど。ありがとうございました。

プロフィール

氏名
百本 正博(ひゃくもと まさひろ)
会社名
株式会社デジタリフト
役職
代表取締役社長