初心者の方は、まず少額からFXを始めるべきだとよく言われます。
少額からFXを始めることには、一度に大きな資金を失うリスクをなくせたり、気軽にFXを始められたりなどのメリットがあります。
しかしたとえ少額からFXを始めたとしても、FXの危険性が0になるわけではありません。
特に少額からFXで稼ぎたいという方は、レバレッジが高い取引を繰り返してしまう傾向があり、追証や強制ロスカットとなるリスクが高まるのです。
この記事では、少額から始めるFXについて、FXで損をする仕組みや、実際にFXを少額から始めるとどのような結果となるのか、以下の3つの項目で詳しく解説していきます。
そもそもFXではどのように損するのか?FXの危険要素とは?
FXでは、強制ロスカットになってしまうと、ポジションが強制的に損切りとなり、大きく資産を失ってしまうことはご存じの通りでしょう。
国内FX会社では強制ロスカットだけでなく「追加証拠金」、いわゆる追証(おいしょう)という制度が設けられています。
追証も強制ロスカット同様、FXでの危険要素の1つです。ここでは、FXで損をする仕組みから、追証がどのように危険であるのか詳しく解説していきます。
FXで損をする仕組み
FXで大きく資産を失う仕組みの1つが、強制ロスカットです。FXでは、証拠金を使ってポジションを保有します。
例えば、1ドル = 100円の場合、1万通貨のドル円のポジションを保有するには、100万円(100円 × 1万通貨)の証拠金が必要です。
国内FX会社では、レバレッジが利用できます。レバレッジとは、預けた資金に対して最大25倍相当の取引が可能になる仕組みで、最大レバレッジを利用すると4万円(100万円 ÷ 25倍)の証拠金で、1万通貨のドル円ポジションを保有できます。
そして「証拠金維持率」と呼ばれる概念も重要です。証拠金維持率とは、ポジションを保有するのに必要な証拠金に対する有効証拠金の割合を表しています。
例えば、5万円を証拠金として使う場合、証拠金維持率は125%(5万円 ÷ 4万円 × 100)となります。
証拠金維持率が、各FX会社で定められているロスカット水準を下回ると強制ロスカットによりポジションが全て損切りされてしまうのです。
FXの危険要素である追証とは
FXの危険要素として挙げられるのが「追加証拠金」、いわゆる追証です。
追証とは、価格が保有ポジションと逆方向に動き、証拠金維持率が100%以下となった場合、ポジションを保有し続けるために追加入金が求められる制度です。
そして追証の指定期日までに追加入金が完了しないと、ポジションは強制決済となってしまいます。
通常国内FX会社では、ロスカット水準以上の水準において「追加証拠金発生レート」という追証が発生するレートが定められています。
例えばGMOクリック証券では、ロスカット水準は50%、追加証拠金発生レートは100%です。
また強制ロスカットは基本的にはリアルタイムで実施されますが、休日明けや急変動によりロスカットの発動が遅れてしまうことがあります。
ロスカットの発動が遅れてしまった場合、証拠金以上の損失を被る可能性もあり、その損失分は追証としてFX会社から支払いが求められるのです。
したがって場合によっては証拠金以上の借金を背負う可能性があることが、追証制度がFXの危険要素にある理由の1つです。
少額からFXを始めると追証の危険性が高まる
少額でFXを始めると、追証が必要となるリスクがさらに高まります。
少額だとリスクも少ないですが、利益も少なくなってしまいます。したがって多くの利益を得ようとすると、どうしてもレバレッジの高い取引をしなければいけません。
しかしレバレッジを引き上げれば引き上げるほど大きな利益は狙えますが、少しの値動きで追証発生レートまたは強制ロスカット水準に達してしまう可能性が高まるのです。
また為替市場は、経済指標の発表や金融政策の変更などで価格が急変動することもあります。
したがってレバレッジの高い少額取引では追証や強制ロスカットにならないように特に気をつけなければいけません。
少額から始めるFXは危険なのか
少額から始めるFXで稼ごうとすると、レバレッジを高めなければならず、追証や強制ロスカットとなってしまう可能性が高まります。
しかし大きな値動きを活かせれば、少額からでも大きな利益を狙うことが可能です。
ここでは、FXを少額から始めるのがどれくらい危険なのか、10万円から始めた場合の具体例を挙げて詳しく解説していきます。
10万円からFXを始めた場合は?
10万円からFXを始めた場合、どのような価格水準で追証や強制ロスカットが発動するのかみていきましょう。
為替レートが1ドル = 140円のドル円を、最大レバレッジ25倍を利用して取引するとします。すると10万円の証拠金では、最大1万7,000通貨まで保有可能です。
そこで1ドル = 140円のレートで1万通貨のドル円のロングポジションを保有するとします。
そしてGMOクリック証券のような追加証拠金発生レートが100%、強制ロスカットレートが証拠金維持率の50%の取引所を想定します。
この場合、1万通貨を保有するのに必要な証拠金5万6,000円を下回る水準である約135.4円が追加証拠金発生レートです。
追加証拠金発生レート以降相場が逆行するたびに、有効証拠金から5万6,000円に足りない金額を追証として支払わなければいけません。
また証拠金が2万8,000円を下回る水準である約132.7円、つまり約7.3円幅の逆行が発生すると強制ロスカットとなります。
実際の相場における追証と強制ロスカット水準
1ドル140円のレートで1万通貨のドル円のポジションを保有した場合、約4.6円幅逆行すると追証水準となり、約7.3円幅逆行すると強制ロスカットとなることがわかりました。
つまり証拠金10万円で1万通貨のドル円ポジションを保有する場合、強制ロスカット額8万4,000円に加えて、ポジションを維持するために入金した追証が最大の損失となります。
強制ロスカット水準である約7.3円幅の逆行は、どのくらいの頻度であり得るのか実際の相場をみてみましょう。
以下の画像はドル円の日足チャートです。
2023年3月24日に129.643円の安値を付けた後、2023年5月30日には140.932円まで、約11.3円幅の上昇をしました。
129.643円付近でショートポジションを保有してしまった場合、約2ヵ月後の5月30日の高値まではポジションを保有できず、高値到達前に強制ロスカットとなってしまいます。
ちなみに追加証拠金発生レートは134.273円(2023年4月17日に到達)、強制ロスカットレートは136.905円(2023年5月1日に到達)です。
少額だと価格の急変動を活かしてもうけられる可能性がある
為替相場が急変動した例として、コロナショックやフラッシュクラッシュを思い出す方も多いのではないでしょうか。
コロナショックやフラッシュクラッシュのような価格の急変動は、少額で始めるFXでは値動きを活かして大きな利益を得られるチャンスでもあります。
以下の画像は2020年2月に発生した、コロナショック時におけるドル円の日足チャートです。
コロナショックでは、2020年2月20日に112.224円だった為替レートが、2020年3月9日には101.168円と、約11円幅の下落を記録しました。
10万円の証拠金で1ロットのドル円のショートポジションを保有していた場合、約20日間で最大11万円の利益を獲得できていたことがわかります。
またこのような急変動は中期的に強力なトレンドを発生させることもあり、さらに利益を得られていた可能性があります。
しかし価格が下落し続ける相場において、ロングポジションを保有し続けていると、追証や強制ロスカットとなっていたことでしょう。
したがって強制ロスカットや追証となる前に損切りをしたり、資金管理としてレバレッジを抑えたりすることが大切です。
少額から始めるFXで安全に稼ぐための3つの注意点
FXを少額から始める際、なるべく安全に稼ぐためには、以下の3つの点に注意しなければいけません。
それぞれについて詳しく解説していきます。
その1:損切りラインを事前に設定しておく
1つ目の注意点は、損切りラインを事前に設定しておくことです。
ハイレバレッジを利用した少額のFXでは、少しの価格変動で強制ロスカットや追証となるため、チャートの値動きに対して瞬時に判断を切り替える必要があります。
少しでも判断が遅れてしまうと、心理的に損切りができなくなる水準になってしまったり、急変動により気づかぬうちに強制ロスカットとなってしまったりするのです。
したがって、ポジションを保有する前に損切りラインを設定しておき、判断が遅れてしまうことを防ぎましょう。
可能であれば決めた損切りラインを逆指値として設定しておくことがオススメです。
その2:必要証拠金を把握してトレードする
2つ目の注意点は、必要証拠金をしっかりと把握してトレードすることです。
必要証拠金を把握せずにポジションを保有しすぎてしてしまうと、意図しない強制ロスカットとなることもあり、利益を得られるチャンスを逃すことになりかねません。
必要証拠金の計算方法は以下の通りです。
必要証拠金 = 現在の為替レート × 取引数量 ÷ レバレッジ
計算を簡易的に行いたいという方は、各FX会社が提供している計算ツールをぜひ利用してみてください。
その3:経済イベントを把握しておく
3つ目の注意点は、経済イベントを把握しておくことです。
特に為替相場は、経済指標の発表や金融政策の変更などのファンダメンタルズをきっかけに相場が急変動することが多々あります。
またファンダメンタルズによる急変動は時に中長期的なトレンドにつながります。
したがって少額から大きな利益を狙いたい場合は、価格の急変動や中長期的なトレンドを活かすために、経済イベントの時期や内容を把握しておくとよいでしょう。
しかし経済イベントによる大きな値動きは今までのトレンドを転換させることもあり、場合によっては損失になることもあり得ます。
経済イベントを事前に把握してポジション保有を避けたり、保有ポジションを決済したりすることは、ファンダメンタルによるトレンド転換のリスク回避にも役立ちます。
詳細はこちら
大学卒業後にFXトレードを開始し、その経験を活かした金融分野のライターとして活動。 トレード手法の開発のためだけに1年を費やし、リアルトレードでは4か月で10万円を400万円にまで増やす経験をした。 現在は、金融メディアのディレクションを行う一方で、トレード手法のさらなる開発のためにMQL4でのプログラミングを行っている。
この著者のプロフィールへ >>