信用取引とは、「保証金」として現金や株式を証券会社に預け入れておくことで、保証金の約3.3倍までの金額の取引ができる取引方法です。これから株価が上がると思ったら「買い」、下がると思ったら「売り」を行い、その後反対売買(買いから始めたときは「売り」)を行い、その差額が利益となります。株価と同等の金額を準備せずに株取引ができるため、株投資の中上級者から人気です。

これから信用取引を始める際に、どのような点を見て証券会社を選べばいいのかを3つの視点から見ていきましょう。

信用取引で証券会社を選ぶ際のポイント

(画像=PIXTA)
 

信用取引では、保証金の約3.3倍の取引ができる点がメリットです。しかし売買する際はコストがかかるため、できるだけコストが安い証券会社を選んだほうがコストパフォーマンスがよいでしょう。なお信用取引でかかる主なコストは、「売買手数料」「金利」「貸株料」です。

手数料の安さ

現物株取引同様に信用取引でも証券会社の売買委託手数料がかかります。手数料は、各証券会社が自由に設定できるため、証券会社を決定する際は比較することが重要です。

信用取引の手数料は、主に以下の2つのタイプがあります。

・1回の約定金額ごとに手数料がかかるタイプ
・1日の約定代金の合計額で手数料が決まっているタイプ

1回当たりの取引金額が大きくなくても毎日繰り返し取引をする人は、1日の約定代金の合計額で手数料が決定するタイプの会社がおすすめです。さらに1日の約定代金合計額が一定金額以下の場合や「25歳以下」など一定年齢以下の顧客取引の場合に手数料を無料にする証券会社もあります。「大きな金額の信用取引はしない」「若年層」といった場合は、このようなサービスの証券会社を探してみてください。

金利の低さ

信用取引を「買い」から始める場合、証拠金の約3.3倍の金額を借りて株を買うことができます。お金を借りて信用取引を行った場合は、返済期限までに「お金+金利」を返済しなければなりません。金利は証券会社が自由に設定できます。

返済方法は以下の2通りありますので、参考までに覚えておきましょう。

・返済売:信用取引で買った株を売却。売却代金から証券会社に返済する(差額が利益になる)
・現引:借りたお金を自分で用意して返済。信用取引で購入した株式は自分のものとなる

また信用取引には、2つの種類があり、金利が異なる場合があります。

一般信用取引 ・証券会社から資金を借りて株を購入する
・返済までの期日は原則無期限(証券会社が決められる)
・取引対象銘柄は証券会社が指定したもの
制度信用取引 ・証券金融会社から証券会社を通じて資金を借りて株を購入する
・返済までの期間は原則6ヵ月
・取引対象銘柄は東証・名証の上場しているもので取引所が選定したものに限られる

貸株料の安さ

信用取引を「売り」から始める場合、証券会社から株を借りる必要があります。そのときに発生するのが「貸株料」です。貸株料も金利同様に証券会社が自由に設定できます。返済までの期間が長くなるほど貸株料が高くなる点は、金利と同じです。また一般信用取引と制度信用取引とでは、貸株料が違う場合があるため、その点も確認してください。

「手数料」で選ぶおすすめの証券会社5選

信用取引を始める場合、証券会社で「信用取引口座」を開設します。手数料から見ておすすめの証券会社を探してみましょう。

SBIネオトレード証券

SBIグループの証券会社の一つ「SBIネオトレード証券」の信用取引の手数料は、全銘柄無料です。頻繁に信用取引をする人には、おすすめの証券会社と言えるでしょう。

SBI証券

SBI証券には、1注文の約定ごとに手数料がかかる「スタンダードプラン」、1日の約定代金合計額で手数料が決まる「アクティブプラン」の2つの手数料プランがあります(信用取引の取引状況や預かり資産が一定の条件を満たした顧客は「大口優遇」で手数料は0円)。手数料プランは1日1回、変更が可能です。

月~金曜(23時29分)の間に変更した場合は翌日から、土日に変更した場合は火曜日から新手数料プランが適用されます。

【スタンダードプラン】

1注文の約定代金 手数料(税込)
10万円まで 99円
20万円まで 148円
50万円まで 198円
50万円超 385円

【アクティブプラン】

1注文の約定代金 手数料(税込)
100万円まで 0円
200万円まで 880円
以降100万円増加ごとに 440円ずつ増加

DMM株

DMM株の信用取引手数料は、シンプルで分かりやすいのが特徴です。1約定ごとに手数料がかかります。

1注文の約定代金 一般コース手数料(税込)
~300万円以下 88円
300万円超 0円

「当日の信用新規建約定代金合計5,000万円以上」「1ヵ月の信用新規建約定代金合計5億円以上」などの条件をクリアした「VIP」になると、手数料は無料です。

GMOクリック証券

GMOクリック証券の信用取引手数料は「1約定ごとプラン」「1日定額プラン」の2通りです。

【1約定ごとプラン】

1注文の約定代金 手数料(税込)
~10万円 97円
~20万円 143円
~50万円 187円
50万円超 264円

【1日定額プラン】

1注文の約定代金 手数料(税込)
~100万円 0円
~200万円 880円
~300万円 1,320円
300万円超
(100万円ごとに加算)
440円

「判定日の新規建約定代金合計が3,300万円以上」「判定日の大引け時点での信用建玉残高が3,000万円以上」のいずれか一つの条件をクリアしたら「VIP」に認定され、信用取引手数料が0円となります。 ※VIP期間は判定日の翌営業日から30営業日(約定日基準)

楽天証券

楽天証券では、信用取引の場合、1日定額の手数料プランはありません。1約定ごとに手数料がかかります。

1注文の約定代金 手数料(税込)
~10万円 99円
~20万円 148円
~50万円 198円
50万円超 385円

「本日の新規建約定代金合計が3,300万円以上」「1ヵ月の新規建約定金額の合計が3億円以上」のいずれかを達成すれば大口優遇対象となり、3ヵ月間信用取引手数料が無料となります。

「金利」で選ぶおすすめの証券会社5選

信用取引を「買い」から始めた場合、金利が発生します。5社の金利について見比べてみましょう。

GMOクリック証券

GMOクリック証券の金利は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.00%
制度信用取引 通常プラン:2.75%
VIPプラン:1.80%

DMM株

DMM 株の金利は、以下のとおりです。一般信用取引と制度信用取引の金利は同じです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.7%
一般信用取引
(デイトレ信用)
1.1%
制度信用取引 2.7%

DMM 株では「デイトレ信用」という当日が返済期日の一般信用取引があり、最も金利が低くなっています。

SBIネオトレード証券

SBIネオトレード証券の信用取引金利は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.75%
制度信用取引 2.30%

auカブコム証券

auカブコム証券の信用取引金利は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.79%
制度信用取引 2.98%

楽天証券

楽天証券の信用取引金利は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.80%
優遇金利:2.10%
一般信用取引
(いちにち信用)
1.80%(1注文の約定代金50万円未満)
0.00%(1注文の約定代金50万円以上)
制度信用取引 2.80%
優遇金利:2.28%

当日が返済期日の一般信用取引「いちにち信用」は、通常と別の手数料が設定されています。1注文の約定代金が50万円以上になると、金利が0.00%になることが大きな特徴です。

また以下のいずれかの条件を満たすと優遇金利が適用されます。優遇金利期間は、月初第1営業日から月末最終営業日までです。

・判定月における信用新規建取引の約定金額の合計が5億円以上
・判定月の25日時点での未決済建玉残高が5億円以上
・判定月の日々における未決済建玉残高の平均が5億円以上

「貸株料」で選ぶおすすめの証券会社5選

信用取引を「売り」から始めたときに必要な「貸株料」から選ぶおすすめ証券会社を5社紹介します。

DMM株

DMM 株の貸株料は、以下のとおりです。

信用取引の種類 貸株料(年率)
一般信用取引 取り扱いなし
制度信用取引 1.1%

SBIネオトレード証券

SBIネオトレード証券の貸株料は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 取り扱いなし
制度信用取引 1.10%

楽天証券

楽天証券の貸株料は以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 (無期限) 1.10%
一般信用取引
(いちにち信用)
1.80%(1注文の約定代金50万円未満)
0.00%(1注文の約定代金50万円以上)
一般信用取引
(短期)
3.90%
制度信用取引 1.10%

株主優待を実施する銘柄中心に取引する「一般信用取引(短期)」は、返済期限14日の信用取引です。売りから始める「売建」のみ取引可能となっています。

GMOクリック証券

GMOクリック証券の貸株料は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 0.80%
一般信用取引
(短期)
3.85%
制度信用取引 1.10%

株主優待を実施する銘柄が中心の「一般信用取引(短期)」は、返済期限が15営業日となっています。

松井証券

松井証券の貸株料は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
無制限信用取引
(一般信用取引)
2.0%
制度信用取引 1.15%

松井証券では、一般信用取引のことを「無制限信用取引」と呼んでいます。

信用取引のメリット・デメリット

信用取引を始める前にメリット・デメリットについてもチェックしましょう。

信用取引のメリット

信用取引のメリットは、以下の3点です。

・「買い」「売り」どちらからでも始めることができる
株価が上昇すると思ったら「買い」、下落すると思ったら「売り」とどちらからでも始められるため、市場動向に左右されずに利益を得ることが期待できます。買い・売りどちらも行う「両建て」も可能です。

・自己資金以上の金額の取引ができる
保証金の約3.3倍までの金額の取引ができます。自己資金が少なくても大きな取引が可能です。ただし、信用取引口座は、開設時点で最低差入れ保証金30万円を証券口座へ入金されていることが条件となることが多いようです。

・1日に何度も売買を繰り返すことができる
信用取引は同日に同銘柄を何度でも売買できます。現物株と異なり、資金を新たに入れる必要もありません。

信用取引のデメリット

メリットだけでなく、信用取引のデメリットも確認しましょう。

・利益も大きいが損失も大きくなる
信用取引は、保証金の約3.3倍の取引ができるため、大きな利益が狙える半面、損失も大きくなる可能性があります。

・返済期日がある
制度信用取引は6ヵ月の返済期日があります。その日までに反対売買や現引・現渡しで返済が必要です。損をしている状態でも待ってもらうことはできません。
※一般信用取引の返済期日は原則無制限です

・コストがかかる
信用取引では、取引手数料や金利・貸株料といったコストもかかります。

自己資金以上の取引ができる信用取引!コストについてもよく調べておこう

信用取引は「これから本格的に株投資を行いたい」という投資家におすすめの投資方法です。自己資金の数倍の取引を行うため、同じ値動きでも現物株と比較して利益・損失が大きくなる仕組みについても熟知してから取引を始めましょう。

また「金利」「貸株料」など、現物株取引にはないコストが発生する点も注意が必要です。これらのコストは証券会社によっても異なるため、信用取引専用口座を開く前に確認することをおすすめします。