信用取引とは、「保証金」として現金や株式を証券会社に預け入れておくことで、保証金の約3.3倍までの金額の取引ができる取引方法です。これから株価が上がると思ったら「買い」、下がると思ったら「売り」を行い、その後反対売買(買いから始めたときは「売り」)を行い、その差額が利益となります。株価と同等の金額を準備せずに株取引ができるため、株投資の中上級者から人気です。

これから信用取引を始める際に、どのような点を見て証券会社を選べばいいのかを3つの視点から見ていきましょう。

信用取引で証券会社を選ぶ際のポイント

(画像=PIXTA)
 

信用取引では、保証金の約3.3倍の取引ができる点がメリットです。しかし売買する際はコストがかかるため、できるだけコストが安い証券会社を選んだほうがコストパフォーマンスがよいでしょう。なお信用取引でかかる主なコストは、「売買手数料」「金利」「貸株料」です。2023年以降、主要ネット証券では売買手数料の無料化が進んでおり、現在は「金利」「貸株料」が証券会社選びの重要なポイントとなっています。

手数料の安さ

現物株取引同様に信用取引でも証券会社の売買委託手数料がかかります。手数料は、各証券会社が自由に設定できるため、かつては証券会社を決定する際の重要な比較ポイントでした。

しかし、2023年以降、SBI証券の「ゼロ革命」(電子交付設定が条件)、楽天証券の「ゼロコース」(SOR利用が条件)をはじめ、主要ネット証券が相次いで信用取引手数料を無料化しました。2025年にはGMOクリック証券やDMM株も条件なしで無料化に追随し、現在では主要ネット証券のほとんどで信用取引手数料が無料となっています。※各証券会社で適用条件が異なる場合がありますので、詳細は公式サイトでご確認ください。

そのため、信用取引の証券会社選びでは、手数料よりも「金利」や「貸株料」の比較がより重要になっています。

金利の低さ

信用取引を「買い」から始める場合、証拠金の約3.3倍の金額を借りて株を買うことができます。お金を借りて信用取引を行った場合は、返済期限までに「お金+金利」を返済しなければなりません。金利は証券会社が自由に設定できます。

返済方法は以下の2通りありますので、参考までに覚えておきましょう。

・返済売:信用取引で買った株を売却。売却代金から証券会社に返済する(差額が利益になる)
・現引:借りたお金を自分で用意して返済。信用取引で購入した株式は自分のものとなる

また信用取引には、2つの種類があり、金利が異なる場合があります。

一般信用取引 ・証券会社から資金を借りて株を購入する
・返済までの期日は原則無期限(証券会社が決められる)
・取引対象銘柄は証券会社が指定したもの
制度信用取引 ・証券金融会社から証券会社を通じて資金を借りて株を購入する
・返済までの期間は原則6ヵ月
・取引対象銘柄は東証・名証の上場しているもので取引所が選定したものに限られる

貸株料の安さ

信用取引を「売り」から始める場合、証券会社から株を借りる必要があります。そのときに発生するのが「貸株料」です。貸株料も金利同様に証券会社が自由に設定できます。返済までの期間が長くなるほど貸株料が高くなる点は、金利と同じです。また一般信用取引と制度信用取引とでは、貸株料が違う場合があるため、その点も確認してください。

「手数料」で選ぶおすすめの証券会社5選

信用取引を始める場合、証券会社で「信用取引口座」を開設します。2023年以降、主要ネット証券では信用取引手数料の無料化が進み、現在では多くの証券会社で手数料無料で取引できます。各証券会社の最新状況を確認してみましょう。

SBIネオトレード証券

SBIグループの証券会社の一つ「SBIネオトレード証券」は、2019年12月から条件なしで信用取引手数料を完全無料化しています。頻繁に信用取引をする人には、おすすめの証券会社と言えるでしょう。

SBI証券

SBI証券は、2023年9月から「ゼロ革命」により信用取引手数料を完全無料化しました。電子交付設定を行うことで、約定代金にかかわらず手数料が0円になります。従来の「スタンダードプラン」「アクティブプラン」といったプラン選択も不要となり、よりシンプルに取引できるようになりました。

DMM株

DMM株は、2025年4月2日から信用取引手数料を完全無料化しました。従来は約定代金に応じた手数料がかかっていましたが、現在は条件なしで無料で取引できます。

GMOクリック証券

GMOクリック証券は、2025年9月1日から信用取引手数料を条件なしで完全無料化しました。従来の「1約定ごとプラン」「1日定額プラン」の手数料体系は廃止され、すべての取引が無料となっています。

楽天証券

楽天証券は、2023年10月から「ゼロコース」を導入し、信用取引手数料を無料化しました。SOR(スマート・オーダー・ルーティング)を利用することで、約定代金にかかわらず手数料が0円になります。

「金利」で選ぶおすすめの証券会社5選

信用取引を「買い」から始めた場合、金利が発生します。5社の金利について見比べてみましょう。

GMOクリック証券

GMOクリック証券の金利は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.00%
制度信用取引 通常プラン:2.75%
VIPプラン:1.80%

DMM株

DMM 株の金利は、以下のとおりです。一般信用取引と制度信用取引の金利は同じです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.7%
一般信用取引
(デイトレ信用)
1.1%
制度信用取引 2.7%

DMM 株では「デイトレ信用」という当日が返済期日の一般信用取引があり、最も金利が低くなっています。

SBIネオトレード証券

SBIネオトレード証券の信用取引金利は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.75%
制度信用取引 2.30%

auカブコム証券

auカブコム証券の信用取引金利は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.79%
制度信用取引 2.98%

楽天証券

楽天証券の信用取引金利は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 2.80%
優遇金利:2.10%
一般信用取引
(いちにち信用)
1.80%(1注文の約定代金50万円未満)
0.00%(1注文の約定代金50万円以上)
制度信用取引 2.80%
優遇金利:2.28%

当日が返済期日の一般信用取引「いちにち信用」は、通常と別の手数料が設定されています。1注文の約定代金が50万円以上になると、金利が0.00%になることが大きな特徴です。

また以下のいずれかの条件を満たすと優遇金利が適用されます。優遇金利期間は、月初第1営業日から月末最終営業日までです。

・判定月における信用新規建取引の約定金額の合計が5億円以上
・判定月の25日時点での未決済建玉残高が5億円以上
・判定月の日々における未決済建玉残高の平均が5億円以上

「貸株料」で選ぶおすすめの証券会社5選

信用取引を「売り」から始めたときに必要な「貸株料」から選ぶおすすめ証券会社を5社紹介します。

DMM株

DMM 株の貸株料は、以下のとおりです。

信用取引の種類 貸株料(年率)
一般信用取引 取り扱いなし
制度信用取引 1.1%

SBIネオトレード証券

SBIネオトレード証券の貸株料は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 取り扱いなし
制度信用取引 1.10%

楽天証券

楽天証券の貸株料は以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 (無期限) 1.10%
一般信用取引
(いちにち信用)
1.80%(1注文の約定代金50万円未満)
0.00%(1注文の約定代金50万円以上)
一般信用取引
(短期)
3.90%
制度信用取引 1.10%

株主優待を実施する銘柄中心に取引する「一般信用取引(短期)」は、返済期限14日の信用取引です。売りから始める「売建」のみ取引可能となっています。

GMOクリック証券

GMOクリック証券の貸株料は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
一般信用取引 0.80%
一般信用取引
(短期)
3.85%
制度信用取引 1.10%

株主優待を実施する銘柄が中心の「一般信用取引(短期)」は、返済期限が15営業日となっています。

松井証券

松井証券の貸株料は、以下のとおりです。

信用取引の種類 金利(年率)
無制限信用取引
(一般信用取引)
2.0%
制度信用取引 1.15%

松井証券では、一般信用取引のことを「無制限信用取引」と呼んでいます。

信用取引のメリット・デメリット

信用取引を始める前にメリット・デメリットについてもチェックしましょう。

信用取引のメリット

信用取引のメリットは、以下の3点です。

・「買い」「売り」どちらからでも始めることができる
株価が上昇すると思ったら「買い」、下落すると思ったら「売り」とどちらからでも始められるため、市場動向に左右されずに利益を得ることが期待できます。買い・売りどちらも行う「両建て」も可能です。

・自己資金以上の金額の取引ができる
保証金の約3.3倍までの金額の取引ができます。自己資金が少なくても大きな取引が可能です。ただし、信用取引口座は、開設時点で最低差入れ保証金30万円を証券口座へ入金されていることが条件となることが多いようです。

・1日に何度も売買を繰り返すことができる
信用取引は同日に同銘柄を何度でも売買できます。現物株と異なり、資金を新たに入れる必要もありません。

信用取引のデメリット

メリットだけでなく、信用取引のデメリットも確認しましょう。

・利益も大きいが損失も大きくなる
信用取引は、保証金の約3.3倍の取引ができるため、大きな利益が狙える半面、損失も大きくなる可能性があります。

・返済期日がある
制度信用取引は6ヵ月の返済期日があります。その日までに反対売買や現引・現渡しで返済が必要です。損をしている状態でも待ってもらうことはできません。
※一般信用取引の返済期日は原則無制限です

・コストがかかる
信用取引では、金利・貸株料といったコストがかかります。なお、主要ネット証券では売買手数料は無料化されています。

自己資金以上の取引ができる信用取引!コストについてもよく調べておこう

信用取引は「これから本格的に株投資を行いたい」という投資家におすすめの投資方法です。自己資金の数倍の取引を行うため、同じ値動きでも現物株と比較して利益・損失が大きくなる仕組みについても熟知してから取引を始めましょう。

2023年以降、主要ネット証券では信用取引手数料の無料化が進み、手数料での証券会社選びの差は小さくなりました。一方で「金利」「貸株料」など、現物株取引にはないコストは引き続き発生します。これらのコストは証券会社によっても異なるため、信用取引専用口座を開く前に確認することをおすすめします。