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山内 真由美

FPオフィス ライフ&キャリアデザイン 山内 真由美

北海道出身。ファイナンシャルプランナー(CFP®)大学卒業後、食品メーカー勤務。40歳で双子を出産。育児のかたわら、都市銀行にて資産運用相談部門を経験し、独立。 FP事務所「FPオフィス ライフ&キャリアデザイン」を東京都内で開業。
HP:FPオフィス「ライフ&キャリアデザイン」

国民の資産所得倍増を目指す政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げるなか、資産形成や資産運用に取り組みたいと思いつつも何から始めればよいかわからない、という方も多いだろう。お金と上手に付き合うためにまず始めるべきことは何なのか。初心者がまず始めることは?今回はファイナンシャルプランナーの山内 真由美さんにお話を伺った。

40歳での双子の出産がでファイナンシャルプランナーを目指すきっかけに

― 最初に山内さんがファイナンシャルプランナー(以下、FP)になられたきっかけを教えていただけますでしょうか。

山内 真由美(以下、山内):元々大学が商学部ということもあって金融経済には多少興味はあったのですが、最大のきっかけは40歳での双子の出産ですね。これは、自分の老後のお金と教育費の問題がダブルでくるぞ、まずいっていうところで、お尻に火がついて勉強を始めました。

― FPになってよかったことを教えて下さい。

山内:まずはなにより自分自身のライフプラン設計ができるようになった、ということですね。子どもたちの大学入学がいつで、お金がどのくらい必要かを見積もりすることによって、必要以上の不安に駆られずに済んでいます。

そういう点で、FPの知識は自分自身のためになりました。それをきっかけに、自分と同じような悩みを抱えている人の相談に乗れたらいいなと思い、今は都内区役所において、ひとり親家庭支援窓口でFPによる家計相談を担当しています。

ライフプラン表を書いて、早め、早めに準備が大切

― 20代、30代の資産形成、資産運用に興味あるものの何から始めてみればいいか、第1歩として何をやるべきか悩んでいる方へアドバイスをいただけますでしょうか。

山内:自分が行ったことと一緒ですが、まずはライフプラン表を書くのをおすすめしています。 自分の人生がどうなるかは、もちろん完璧に予想はできないですが、今後子どもは何人持ちたいとか、家を買うか買わないかというところなどは、必要なお金が大きく変わってくるのでライフプラン表を作成し、いつどのくらいのお金が必要なのかを見える化して、早めに準備するのがいいかと思います。

― 漠然と何をしていいかわからない状況から、何をしなくちゃいけないかを一度把握するということですね。

山内:そうです。ライフイベント表から逆算して、それぞれ大きなお金が必要なタイミングに向けて貯蓄するのか、保険なのか、積み立ての投資なのかを、その方のリスク許容度に応じて準備するのが必要です。

今だとつみたてNISAへの関心も高まっているかと思いますが、必ずしもつみたてNISAを活用するのではなく、個人のリスク許容度に応じて決めればいいと思います。

ただ、資産を増やしていくためには多少の資産運用はしたほうがいいと思います。

初心者におすすめなのは、半年分の生活費を貯めてからの少額投資

― 資産運用を始めよう、という場合まずはどういったアクションをすればいいのでしょうか。

山内:余裕資金があるならまず小額でいいから始めてみたほうがいいかと思います。ただし、余裕資金があることが前提です。無い場合、例えばコロナショックや病気になった際に困りますので、お客さんへは最低でも半年分生活費を貯めてから投資をスタートしてくださいね、とお話ししています。

― 逆に、資産を運用する上で逆にこれはやらないほうがいいことはありますか?

山内:FPの本によく書いてある話ですが、「お金が入った分だけ全部使わないように」と言うことですね。

まず先取りです。このぐらいは貯蓄を回しましょうというところで、年齢なり収入なり、家族構成によっても異なりますが、最低でも1割。理想は若いうち、子どもが小さいうちは2割は、収入から先取りで貯蓄し、残ったお金で生活するのがおすすめです。

ただ、無理のない金額を設定して、最初から飛ばしすぎてしまうと続かないでしょう。ダイエットと同じように続かないと意味がありませんので、 最初は少し頑張ればできそうな目標を設定して、それを徐々に上げていくのがいいです。

子どものためのお金の管理は子ども名義の専用口座で

― 子育て世代向けに、子どもが生まれてからのお金の管理をどのように変えていけばいいかアドバイスをいただけますでしょうか?

山内:人によって合う合わないがあるかとは思いますが、私がFPとしてやったことは、子ども名義の口座をつくりました。そこに児童手当や親戚からもらったお祝い金、 国から給付金とかはすべて入れました。これは生活費ではない、子どものためのお金だというのをはっきりさせるために口座を分けたんです。

― なるほど。その子どものための口座に大学にかかる費用などを逆算して、毎月貯めていくイメージでしょうか。

山内:そうですね。かかる費用は国立へ行くのか、私立へ行くのかにもよってきますが、東京に住んでる方であれば、 大学は私立文系に行くことぐらいは最低限見積もっておく必要があるかと思います。東京だと中学から私立も珍しくありません。

なので、早い段階からライフプラン表を書いて、必要なお金を貯めながら、都度修正アップデートしていくのが大切です。

三大支出とFPはよく言いますが、住居と教育と老後にかかる支出が大きく、教育にこだわりすぎてしまうと、それ以外にこだわれなくなってしまいます。全部を全部叶えることは難しく、後から修正するのは難しいので、だからこそ先に最初にプランを立てておかないといけないと思います。

― やはり、いかに最初にプランをしっかり立てるかが大切なんですね。

山内:そうです。我が家では年に1回、夫婦で今年1年間でこれだけ貯蓄貯まった、これだけお金が出ていったかを確認しています。それを踏まえて、このままでいいのか、変えていかないといけないのか話し合っています。特に若い方にやってみてほしいですね。

― 逆に、資産を運用する上で逆にこれはやらないほうがいいというものはありますか?

山内:個人的には、夫婦別財布は相手の貯金がどれだけ貯まっているかわかんないという点で怖いですね。夫婦の価値観次第ですが、できたら生活費の口座をつくって夫婦お互いにしっかりと状況の把握ができるようにしたほうがいいのでは、と思います。

どちらかに任せっきりにすると、やっていたと思っていたみたいなトラブルもありますので注意が必要です。

― 最後にこれから資産形成を始めていこうと考えている読者に一言いただけますでしょうか?

山内:老後に2000万円必要、というのが話題になりましたが、健康で長生きして働けるのであれば、2000万円は必ずしも必要ないんですよね。貯金や投資も大事ですが、趣味や自分が楽しく健康に生きていくための投資にもお金を使ってほしいです。

もちろん、考え無しに使うのではなく、しっかり計画を立てるのは大切ですが、お金を使わない方法や節約する方法の話ばかりにこだわらず、楽しくお金を使っていっていただければと思います。