特集『隠れ優良企業のCEO達 ~事業成功の秘訣~』では、日本を支える「隠れ優良企業」をピックアップし、そのトップにインタビューを実施。「オーナー社長」に事業を立ち上げるに至った背景や想い、今後の挑戦などを聞くと共に、事業を成功に導く秘訣に迫る。
今回は、近畿圏から不動産業をスタートし、2022年に東証スタンダードに上場を成し遂げた、ヤマイチ・ユニハイムエステート株式会社代表取締役の山田茂氏にお話を伺った。
(取材・執筆・構成=齋藤一美)
2018年6月、ユニハイムエステート株式会社(2021年3月にヤマイチエステート株式会社に吸収合併)の取締役、株式会社ウェルネス・コートの取締役(現任)に就任し現在に至る。
2021年3月にユニハイムエステート株式会社(旧:株式会社ユニチカエステート)を吸収合併し、商号を現在のヤマイチ・ユニハイムエステート株式会社へ変更。本社機能も大阪市中央区に移転した。2022年6月、東京証券取引所スタンダード市場に新規上場および関東圏への進出を果たす。
創業して数年で体験した「バブル崩壊」
――ヤマイチ・ユニハイムエステート株式会社様の事業内容について、お聞かせください。
ヤマイチ・ユニハイムエステート株式会社代表取締役社長・山田 茂氏(以下、社名・氏名略):弊社は、1989年6月に和歌山県で創業した不動産会社です。近畿圏を中心に幅広い分野の不動産事業を手がけており、分譲マンション開発販売や高齢者住宅の企画開発販売を中心とする分譲マンション事業、ロードサイド店舗や法人向け事業用地を取り扱う不動産賃貸事業、居住用不動産の賃貸事業、不動産開発販売事業などを行っています。
――御社の沿革について教えてください。
私は理系の大学を卒業後サラリーマンとして不動産仲介業に従事し、28歳の時に独立して不動産業を始めました。しかしそのほんの数年後、バブルが崩壊してしまったのです。弊社は不動産仲介業務がメインだったため大きな被害を受けずに済みましたが、不動産売買をメインとしていた多くの不動産会社が倒産しました。
そんななか取引先の弁護士事務所や金融機関から「不良債権となってしまった収益物件を買い取ってもらえないか」というご提案をいただき、いくつかの収益不動産を手にすることができました。その収益不動産でコツコツと賃貸収入を得て来られたことが、今でも弊社の基盤となっています。
高利回りの不動産で安定収益を得る
――他社にない御社の強みは何でしょうか。
土地を入手し、建物を建てて貸す……この入口から出口までのすべてを自社で一気通貫して行えることが強みです。弊社では、農地や山林など開発されてない未利用地を自社で買収し、権利関係を調整し、必要な許認可を取ったうえで宅地を作り上げ、建物を建てて賃貸しています。
一般的には、各工程に業者が介在するのですが、私はもともと土地を探して許認可を取るビジネスを行っていたため、そこを一気通貫して行えるのです。
間に業者が入るとコストがかかり、収益不動産としては利回りが落ちますが、弊社はこの中間コストがかからないため、ファンドが4~5%の利回りで留まるところを10%超の利回りを上げることができます。このような高利回りの収益不動産を20年、30年と長期で持ち続けることで、継続的に高い賃貸収入を得るビジネスモデルが弊社の強みです。
▼ビジネスモデル図解
土地の特性を活かして新たな価値を創造
――未利用地を活用する独自のノウハウもお持ちだそうですね。
基本的にマンション業者さんは、マンションに適した土地を仕入れますし、建売屋さんは建売に適した土地を仕入れます。最初に事業の目的があって、その目的に沿った用地を仕入れるのが一般的です。しかし弊社は、目的を定めずにさまざまな未利用地を仕入れ、土地の特性に合わせて活用方法を考えています。
「この土地はホテル用地として開発すると価値が上がりそうだ」とか、「この土地は規模が小さく分譲マンションには向かないが、投資用のワンルームにすれば採算が合うかもしれない」といった具合に、その土地にあった価値を見出してビジネスにするのです。土地の持つ特性を最大限に引き出し、新たな価値を生み出すことが、弊社独自のノウハウといえます。
また「今は収益不動産として賃貸に出しているけれど非常に立地がいいから10年間は収益不動産として運用し、その後は分譲マンションにして販売しよう」など10~20年単位で土地活用計画を立てる場合もあります。このあたりも一般的な不動産会社と大きく違うところかもしれません。
弊社は、2022年6月、東証スタンダードに上場しました。上場企業は毎年決算して配当を出す必要があるため、安定して利益を出し続けられるように3年、5年といった短期投資から10年、20年といった長期投資までバランスよく行うよう心がけています。
上場で企業価値を高め、優秀な人材を確保
――御社の事業において課題だと思われることはありますか?
上場前に課題視していたのが、人材の確保です。私は和歌山県出身なのですが和歌山県は1978年度から高校生の県外流出率が41年連続ワースト1位となっています。しかも大都市に出た若者がUターンで戻って来ることはほとんどありません。弊社も長年新卒採用を行ってきましたが、苦戦続きでした。
弊社はロードサイド店舗開発で20年、30年という長期契約を締結しますので、私の次の世代に事業を託す必要があります。また企業として生き延びていくためにも、やはり優秀な人材を採用し、育てていかなければなりません。
そのためにも会社の名を売り、規模も大きくしなくてはならないことから手段の一つとして“上場”という戦略を取りました。2023年の採用からは、優秀な人がたくさん集まって欲しいと期待しています。
――これまで大きなブレークスルーはありましたか?
弊社が大きく飛躍するきっかけになったのは、バブル崩壊と2008年のリーマンショックです。冒頭でお話したとおり、バブル崩壊時にいくつかの収益不動産を手にすることができました。またリーマンショックの際にも大手不動産会社が不動産を半ば投げ売りするような形で換金した時期があり、優良な不動産を安く買い取ることができたのです。
この2つの時期に入手した収益不動産は、その後も弊社の基盤となっています。
関東圏に進出し、市場拡大を目指す
――今後の目標や展望についてお聞かせください。
2020年に開催した弊社の忘年会で2030年に売上高1,000億円、純利益100億円、賃貸収入100億円を目指すと宣言しました。「大きな話をしているな」と思われたかもしれませんが、人間、大きな目標を持たないと努力しませんし成長もしません。そのためこうした具体的な目標を掲げることは、非常に大切だと考えています。
弊社はもともと2020年に上場を予定していましたが、コロナ禍があったため2022年に延期となりました。これにより目標達成時期も2年ずれて2032年になってしまうかもしれませんが、この売り上げ1,000億円、純利益100億円、賃貸収入100億円という目標は必ず達成したいと思っています。
これだけの目標を達成するためには、営業エリアや事業分野を広げることが必要です。そのため現在は、近畿圏から首都圏に進出し首都圏での用地取得や収益不動産の開発を進めています。2023年1月には、埼玉県を中心にロードサイド店舗の開発を行っている会社をM&Aで買収いたしました。
▼エリア拡大イメージ
こちらと現在の東京支店を拠点に首都圏でのマンション開発や店舗開発、収益物件開発を積極的に展開していきたいと考えています。当然ライバル企業も多いと思いますが、それ以上に市場が大きいので、弊社のノウハウを活かせば十分太刀打ちできると自信を持っています。
▼『ユニハイム横浜神之木台』(完成イメージ)分譲マンション事業の関東進出
― 最後に投資家に向けてメッセージをお願いします。
弊社には、不動産の開発・販売による「フロー収益」と不動産賃貸による「ストック収益」という大きな2つの柱があります。景気が右肩上がりで伸びているときにはフローを重視し、景気が傾いてきたときは安定したストックを重視する形で、時代の流れを読みながら2つのバランスをうまく取っていきたいと考えています。
投資家の方は、配当も気になるところかと思いますが、弊社は利益の30%の配当性向を目指していく予定でおります。ヤマイチ・ユニハイムエステートグループは「不動産が持つ価値を最大化する」というビジネスでこれからも大きく成長していきますので、今後もぜひご期待ください。