特集『Hidden unicorn企業~隠れユニコーン企業の野望~』では、各社のトップにインタビューを実施。今後さらなる成長が期待される、隠れたユニコーン企業候補のトップランナーたちに展望や課題、この先の戦略について聞き、各社の取り組みを紹介する。
今回は、働きがいをつくる人事DX「CYDAS PEOPLE(サイダスピープル)」を運営する株式会社サイダス代表取締役の松田晋氏にお話を伺った。
(取材・執筆・構成=斎藤一美)
1971年生まれ。大塚商会に勤務する中で「働きがい」の大切さを実感する。その後、人事・組織に関するコンサルティング事業の会社設立を経て、単身で渡米。そこで学んだタレントマネジメントのノウハウを生かし、株式会社サイダスを設立する。
目次
「働きがい」をつくる人事DX「CYDAS PEOPLE」
―― 株式会社サイダス様の事業内容について、教えてください。
株式会社サイダス代表取締役・松田晋氏(以下、松田氏):社名の「サイダス」は一人ひとりの才能を引き出すという意味の造語なのですが、弊社はこの言葉どおり、働く人の才能を最大限に引き出すためのタレントマネジメントシステム「CYDAS PEOPLE(サイダスピープル)を開発・販売している会社です。タレントマネジメントシステムというと、人事のためのプラットフォームをイメージするかもしれませんが、私は人事だけでなく、社員全員に使っていただき、その会社で働いている方全員をハッピーにしたいと考えています。
管理職の方も人間ですから、部下は可愛いですよね。それだけに、マネジメント上の悩みも多いと思うのです。「どうしたら仕事にやりがいを感じられるだろう」「どうしたらもっと成長を手助けできるだろう」と。そんな悩みにヒントを与えられたらと、開発したのが「CYDAS PEOPLE」です。
弊社のプラットフォームは人事データだけでなく、社員一人ひとりの価値観やキャリアプラン、ライフステージなどの動的データも集めているのが特徴で、採用・人事配置・人材育成・評価など、さまざまな人事施策に活用していただけるプラットフォームとなっています。
「一人ひとりが働きがいを持てる世界をつくっていきたい」という想いでプラットフォームを作るうちに、どんどん機能が増えていきました(笑)。そのためわかりにくい部分もあるのですが、真剣に人を育てていくためには、すべて必要な機能だと考えています。
▼CYDAS PEOPLE
あらゆる人材情報の「見える化」を実現
―企業様のニーズに応じて細やかなカスタマイズを行っているそうですね。
「CYDAS PEOPLE」は、クライアントの要望に応じて複数のモジュールを組み合わせることができる仕様です。そのモジュール自体もクライアントのご要望に合わせて新しくなっていますし、それに伴ってシステムもバージョンアップしています。
弊社では「CYDAS PEOPLE」のユーザー様を集めたユーザー会を行っているのですが、そこではさまざまな会社様が意見交換を行っています。弊社は新たな気付きをいただくたびにシステムに反映しているため、ユーザビリティも進化し続けています。
例えば、なかなかパソコンを開く時間がない方でも、「昨日頑張った人は誰か教えて」と聞けば、「#### #### さんと#### #### さんです」と答えてくれる。将来的にはそんなアレクサのような使い方が実現できるよう開発を続けています。データ入力画面もシンプルですし、データさえ入力すれば、必要な情報がわかりやすくグラフィック化されるため、さまざまな情報を「見える化」することができます。
グローバルに通用するプラットフォームを目指して構想を重ねた「CYDAS PEOPLE」
―創業から今日までの変遷を教えてください。
弊社は2011年に起業したのですが、その年に東日本大震災が起きまして、5,000万円を投資しても何も回収できないという事態に陥りました。そんな中、2012年にリリースしたのが「CYDAS HR」です。この時は目標管理と人材情報の見える化ができる程度の機能しかなかったのですが、有名企業や銀行などに導入していただき、弊社は大きく成長していきました。
しかし、次第に情報一元化やペーパレス化に留まっているシステムに疑問を感じるようになりました。「一度すべてをリセットして、グローバルに通用するプラットフォームをつくろう」と2017年に決意を新たにし、スタートしたのが「CYDAS PEOPLE」の構想です。
お金をかけないと良いものはできないと思い、開発コストをかなりかけました。外注費が月5,900万円を超えていたので、投資したお金はかなりの額になります。当初は社内で意見が対立するなど、決してすんなりとはいきませんでしたが、2022年にようやく「CYDAS PEOPLE」が完成しました。既存のクライアント様に丁寧にヒアリングをしたこともあり、ユーザビリティも細部にわたって改善しています。
苦労して作った甲斐があり、既存のクライアント様が「CYDAS PEOPLE」に移行してくださり、2022年から2023年で売上は130%に増えました。2023年から2024年にかけては、さらに拡大幅が大きくなると予想しています。
すべての人が職場でトップになれる
―「働きがい」を大切にするようになった理由は何ですか。
私は大塚商会の出身なのですが、そこで本当にさまざまな経験をさせていただきました。その時に「成長=働きがい」であることを強く感じたことがきっかけかもしれません。当時の大塚商会には厳しい上司がたくさんいたのですが、私は私が成長するために厳しく接してくれる上司が好きでした。一生懸命に作って持って行った提案書を捨てられるなど、かなりきついダメ出しをもらったこともありましたが、どこがダメなのかを丁寧に教えてもらえたので学びが多かったですし、自分自身もかなり成長できました。
やはり上司の愛情があったからこそ、頑張れたのだと思います。愛情がないと、部下は伸びません。スポーツの世界もそうですよね。監督が愛情を持って選手に接しているチームは、やはり強いです。私は愛情を持ってやりがいを与えることができれば、すべての人が働く場所でトップ選手になれると信じています。
― 今後の目標やビジョンについてお聞かせください。
今はデータが会社ごとに完結していますが、今後は会社という枠を超えて、会社にとって必要な人材を確保できる仕組みを作りたいと考えています。そのために必要な業務提携なども進めており、近々リリースなどでご報告できると思います。
また、グローバル対応も進めています。日本の企業はセキュリティや個人情報の問題があるため海外進出が難しいのですが、そこもクリアできる見込みです。その上で、5年以内に売上100億円を目指したいですね。そこに向けてのビジョンはしっかり見えているので、必ず達成できると考えています。
興味があるのは「社員のやりがい」
― 今、最も関心があるトピックは何でしょうか。
私が一番関心を持っているのは、会社の仲間の幸せです。いつも「どうしたらもっと楽しく働けるだろう」と考えています。今、上場を目指すにあたってさまざまな業務が発生しているのですが、遂行できたらオリジナルのコインをあげるなど、ゲーム感覚で楽しめるよう工夫しています。社員が「これは嫌だけど、我慢してやろう」と思うようなことでも、見逃さないようにしたいのです。
職場のDXというと業務効率化が思い浮かびますが、私は仕事が面白くなることが本当のDXだと思っています。お金をかけて業務効率化をしても、社員が楽しくないと嫌ですね。それなら、そのお金を使って皆でコンサートにでも行きたいです(笑)。
弊社は働きがいの定義を「自己成長と貢献実感」としていますが、何に成長を感じるのか、貢献したと実感できるのかは、人によって違います。ですから、社員一人ひとりを見て何に喜びを感じるのかをしっかり理解したいですし、そこにとても興味があります。
― 最後に、投資家に向けてメッセージをお願いします。
人的資本の開示がプライム市場で義務化されるにあたり、人的資本データをスピーディに可視化できる新サービスをリリースする予定です。こうしたサービスは価格が高くなりがちですが、弊社は低コストで多くの方に使っていただきたいと考えています。既存の「CYDAS PEOPLE」にあるデータも駆使し、さまざまなサービスを提供していきたいと思いますので、ぜひ注目してください。