特集『隠れ優良企業のCEO達 ~事業成功の秘訣~ 』では、各地から日本経済を支える優良企業の経営トップにインタビューを実施。CEO達は何を思い事業を立ち上げ、ムーブメントを起こしてきたのか、どのような未来を思い描いているのか。これらを会社のトップである「オーナー社長」に聞き、企業のルーツと今後の挑戦に迫る。

株式会社アイム・ユニバースは2004年の設立以降、首都圏と沖縄を中心に、屋上にテラスがある新築・分譲住宅を手がける住宅会社だ。「&RESORT」という考えに基づき、日常を過ごす家をリゾートの様な特別な時間を過ごせる場所として提供している。本稿では、代表取締役の藍川眞樹氏に今日までの変遷や事業の特長、将来の展望などについて伺った。

(取材・執筆・構成=大正谷成晴)

藍川 眞樹(あいかわ まさき)――株式会社アイム・ユニバース代表取締役
18歳で不動産業界に入り、23歳で株式会社アイム・ユニバースを設立。不動産仲介業からマンション販売まで幅広いセールスを経て、現在の自社一貫体制の戸建て販売スタイルを確立する。持ち前のバイタリティと行動力で、以降も戸建て販売だけに留まらずマンション施工や公共事業などに参画し、グループ全体で年商225億円以上の総合デベロップメント企業に成長させた。これまでのノウハウとコネクションを活かし、今後は国内外問わず、さらなる事業展開を予定している。
株式会社アイム・ユニバース
当社リゾート邸宅ブランド『&RESORT HOUSE』は仕事や子育て・家事などの慌ただしい日常を過ごす自宅を、リゾート地での極上の時間『リゾートタイム』の場所に変えたいとのコンセプトのもと、一都三県・沖縄で戸建て住宅『&RESORT HOUSE』シリーズを展開している。
社会貢献事業の一環として2011年からプロ野球チーム「東京ヤクルトスワローズ」のオフィシャルスポンサーを務め、地域社会・地域経済の発展に貢献できるデベロッパーとして、今後もさまざまな支援を続ける方針。

目次

  1. マンション販売代理店を経てデベロッパー事業に参入
  2. ジェットバスやミストサウナ、浴室用テレビを標準装備
  3. 家を中心にライフスタイル全般を支えるプラットフォームカンパニーへ

マンション販売代理店を経てデベロッパー事業に参入

―― 株式会社アイム・ユニバースの創業までの経緯や事業内容についてお聞かせください。

アイム・ユニバース代表取締役・藍川眞樹氏(以下、社名・氏名略):私は18歳で不動産業界に飛び込み、20歳の時にホテルやテナントビルを経営する会社に転職し、そこでは部長・支配人として理念の策定や人事管理、備品の発注など何から何まで任され、不動産経営の基礎を学びました。例えば数万個単位の発注なら、価格を1円間違えるだけでも大変な金額になります。このような交渉術やコスト管理といった経営ノウハウを身に付けられましたし、20歳から23歳までの間にこのようなことを経験できたのは大きいと思います。

―― 具体的にはどのようなことを学びましたか。

当初は部屋をチェックすると髪の毛が落ちていて、リネンが行き届いていないとわかればスタッフと一緒に掃除から始め、ボイラーやフロント、タオルの入れ方まで、すべて現場で学びました。ホテルは電気代と水道代がコストの大半を占めますが、コストダウンのための地下水を軟水にする機械を入れたり、電気代のプランを見直したりした結果、月60万円のコストが10万円ぐらいになるなど、さまざまなことを現場レベルで学びましたし、多くのことを試しました。

―― 部長として活躍していたにも関わらず、なぜ起業に至ったのですか。

22歳の時、最初に働いた不動産会社の元上司から独立を勧められたのが直接的なきっかけです。私は自立心が旺盛で、高校時代からスーパーや飲食店でアルバイトをしていました。その経験から、大きなお金を扱わないと大きなビジネスはできないと思っていました。不動産はすでに経験を積んでいて、大金を扱うことから「これだ」と決断し、2004年に弊社を立ち上げました。

―― 現在は東京と神奈川、埼玉、千葉、そして沖縄で分譲・注文住宅を企画から建築、販売までワンストップで提供しています。

当初は従業員の給料を稼ぐため、不動産業と並行して携帯電話ショップも運営しました。たばこ販売の免許も取って、店舗の前に自販機を設置するなどあの手この手で稼ぎましたね。本業の不動産は、賃貸事業と仲介事業から始めました。3期目を迎えるまではこういった調子で、収入の基盤が何になるか、まったく見えていませんでした。

常に意識していたのは、がむしゃらに全力疾走することでした。今年の3月はWBCが盛り上がりましたが、億万長者のメジャーリーガーですら試合になるとそうですし、これは社会で活躍する人の共通点だと私は思っています。皆さんいつも一生懸命で、何事にも手を抜きません。私も若い時からそう心がけ、中古物件の買取再販など徐々に業容を拡大させていきました。

会社員時代に貯めた資金や、多くは借りられないものの信用金庫さんからの融資で地道に事業を進める中、3期目に入ったタイミングで大手マンションデベロッパーさんと販売代理契約を締結したことは大きな転機となりました。限られた資金で収入の柱を作るには販売力を発揮するのが有効で、これが収益の安定確保につながったわけです。この時は取引先に私を含めて7名がアイム・ユニバース部として入らせていただき、私も新卒の営業社員と同じ研修を受けた上でセールスに励みました。私たちの収益が減るので値引きはしないと決め、商品の良さや真心を伝えることを徹底的に学び、半年後にはアイム・ユニバース部の実績がトップになり、これを機に複数の販売代理を行うことで4・5期目に事業が軌道に乗りました。

次に進出したのは、売れ残ったマンションをグロスで安く買い取って販売する、在庫買取再販です。例えば、本来なら1棟3億円のものをまとめて仕入れることで1棟2億円で買い取って販売するのですが、それまでに培ったセールス力を活かすことができ、このビジネスも順調に伸ばすことができました。

ところが、しばらくするとこの事業に大手デベロッパーも参入し始め、我々のような中小企業は太刀打ちできなくなりました。そこで、次のビジネスモデルを模索しようと在庫を一掃したころ、2008年にリーマンショックが起きました。不幸中の幸いでしたが、このタイミングで新たに参入したのが、オリジナル設計・施工の戸建てデベロッパー事業です。その際は我々で土地を買い、建設は工務店に一括発注するのではなく、プレカットや基礎、クロス、塗装などを細かく分離発注するなど、弊社が工務店の役割を担い、徹底的にコスト管理を行うとともに、建設会社も設立して収益性を確保。土地の仕入れから建築、販売までの自社一貫体制を構築しました。本来なら中古物件を買ってリフォームし、仲介会社に販売してもらうほうが簡単で、そういったビジネスモデルの会社はたくさんあります。ですが、難しいところを攻めないと生き残れない、成長できないと考え、この道を選んだのです。

ジェットバスやミストサウナ、浴室用テレビを標準装備

―― 御社の物件の特長と、他社との差別化要素を教えてください。

乱暴な言い方になりますが、お金をかければ良い建物を建てることはできます。その中で突出するには何らかの特長が必要ですが、弊社のそれは「お風呂」です。私自身が幼少期に祖父母と一緒にジェットバスに入って楽しかった記憶があり、購入者の皆さんにも自宅でリラックスできる場が必要だと考えました。そのため、弊社オリジナル住宅ではジェットバスやミストサウナ、浴室用テレビを標準装備にするなど、お風呂を中心とした「リゾートのような暮らしの家」をコンセプトにしています。家族でバーベキューやキャンプなどの非日常が体験できる屋上テラスを設置できるのも、弊社物件の特徴です。価格は平均タイプ(敷地30坪)で3,000万~6,000万円ですが、他社の場合はオプション扱いなのでこの価格に収まりません。そのため、価格面でも優位性があります。

▼リゾート仕様のバスルームや屋上テラスが特長の『&RESORT HOUSE』シリーズ

(画像提供=株式会社アイム・ユニバース)

今は共働き世帯が多いため、子どもと過ごす時間が少なくなりがちですが、ジェットバスにするとバスタイムが子どもとのコミュニケーションの時間になりますし、もちろん1人でゆっくり過ごすこともできます。「家に帰るのが待ち遠しく、家族の雰囲気が良くなった」といった声をたくさんいただいています。

東日本大震災以降は、震度7の揺れを70%軽減する制震装置も導入しました。時代のニーズに合わせながら、とりわけ災害に強い住宅を造ることに使命を感じています。「進化する住宅を造っている」というのも弊社の特徴であり、他社との差別化要素です。今は『&RESORT HOUSE』シリーズとして、年間約240棟を販売するまで成長しました。

―― 御社は沖縄でも事業を展開しています。

弊社は13年前から東京ヤクルトスワローズのオフィシャルスポンサーを務めていて、そのキャンプ地が沖縄県浦添市であることがきっかけです。

▼東京ヤクルトスワローズのオフィシャルスポンサー

(画像提供=株式会社アイム・ユニバース)

一方、沖縄では戦後に米軍キャンプ地が作られたことからRC造の建物が多いのですが、それ以前からあった木造の古民家は台風に強く、今も現役です。近年は木造のシェア率が伸びていることや、県内の住宅展示場を確保できたこともあり、注文住宅と建売住宅の事業を展開しています。このようなご縁もあることから、2019年8月には浦添市が運営する「浦添市てだこホール」のネーミングライツを取得し、「アイム・ユニバースてだこホール」と命名させていただきました。ちなみにANAが同市で「ANA SPORTS PARK 浦添」の命名権を取得していることがきっかけで、2021年6月にはANAグループで不動産関連事業と保険代理店事業を行うANAファシリティーズ様と業務提携を結んでいます。

家を中心にライフスタイル全般を支えるプラットフォームカンパニーへ

―― さらなる成長を実現するための未来構想をお聞かせください。

住宅には生活とライフスタイルのすべてを賄う力があるからこそ、私たちはそれらを支えるプラットフォームカンパニーになりたいと考えています。デベロッパー事業を全国に拡大することはもちろん、単に住宅を造るのではなく、家具などのコーディネイトのお手伝いから引っ越しの準備、インフラの手配まで、住宅にまつわるお客様のニーズに応えるサービスを充実させたいと思います。弊社は沖縄でレンタカー事業の他、美容室や飲食店も展開していますが、オーナー様向けのアプリを通じてさまざまなサービスを提供するなど、生活に付随するビジネスもさらに広げる方針です。将来はデベロッパー機能を活かして、より良い住宅設備を安価で販売するといった商社機能も視野に入れています。

木造戸建てのノウハウを活かした高級ヴィラといった、宿泊事業も展開する予定です。観光名所に順次建てていき、横のつながりができると素晴らしい力を発揮すると思います。また、日本の住宅には24時間換気といった素晴らしい設備・仕様がたくさんあり、これらを武器に海外展開も始めたいところです。広い視野を持ち、さまざまなビジネスにチャレンジしていきますので、今後も弊社にご注目ください。