立教大学社会学部産業関係学科(現:経営学部)卒業。グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了。新卒で株式会社アイルに入社し、人事採用チームの立ち上げやIPOを経験。その後、2009年に株式会社アシストに参画。経営企画室マネージャーとして組織変革プロジェクトを主導した後、2017年に株式会社ツクルバに参画。人事総務部長などを経て、2022年2月より現職。
目次
人的資本経営に対する基本方針とこれまでの取り組み
まず当社の概要からお伝えします。当社のビジネスの中核は、中古リノベーションの流通プラットフォームである「カウカモ(cowcamo)」を通して、お客様との関係値を築きながら、中古マンションの仲介やリノベーションを通じた理想の暮らしの実現をサポートすることです。このようなサービスを提供するにあたって、お客様に対してのサービスマネジメントと従業員のエンゲージメントマネジメントには一定の連関があり、従業員がどれだけ価値を発揮できるかが、当社のビジネスの成功に繋がります。
特に最近、「カウカモエージェント」として不動産仲介を担当するメンバーの採用が増えています。当社では、物件の仲介をベースにお客様の理想の暮らしを実現することを重要視しているため単に家を売るのではなく、暮らしを実現するためのコンサルティングや仲介以外も含めた幅広い知識が求められます。
従業員の教育部分に関しては、カウカモエージェントとして入社してくるメンバーのうち、半数ほどは不動産業界未経験のため、お客様との接し方や知識の習得に力を入れています。具体的には、前職経験に合わせ2-5ヶ月かけてカスタマーエクスペリエンスのプログラムを100項目ほど学ぶのですが、このプログラムは毎期更新しています。カウカモエージェントのフロント業務を経験した後は、マネージャーになりチームとして成果を出していくか、エージェントとして専門性を究めるか、2つの道を選べます。専門職を究めるコースには「ライフスタイリスト」という認定制度があり、レベルに合ったより高いスキルを習得でき、専門性を高めていける人事制度を整備しました。このようにメンバーのキャリアアップのステップや継続的なやりがい創出のために、多様な人事制度の整備に取り組んでいます。
人的資本経営の取り組みで苦労した点と、乗り越えるための施策
人材の部分では上場前後を含めて多くの試行錯誤を繰り返しました。まず、採用人材像として本当に不動産経験者が適しているか、またサービス業の方でも、接客業に近すぎて不動産への対応が難しい場合がないかなど、採用ごとに検討を繰り返してきました。
また、社員が入社してからのプログラムにおいても、研修内容を常に改善してきました。最初は簡素な研修プログラムから始めましたが、徐々に社内での知識が蓄積され、現在ではオンボーディングプログラムとして確立し、情報共有ツールやオンラインも活用し、より効果的に学び、業務に取り組めるようになったと考えています。
取り組みを行う前後の変化や取り組み後の反響
不動産業界未経験のメンバーを含め、現在実施している研修制度は、内容が充実している、と高い評価をいただいております。私たち自身も、納得のいく研修を受けていただけるよう努めております。また、直近で強化しているマネジメント層の研修に関しては、昨年から本格的にスタートし、今後も引き続き力を入れていく予定です。
今後の人的資本経営の展望
従業員の勤続年数を伸ばし、会社に長く貢献していただくことが、人的資本においてナレッジ面や利益面で非常にインパクトが大きいと考えております。そこで、ライフスタイリストを含めた人事施策や報酬的な側面に関して、会社の利益の中から従業員に還元していく方法を複合的に取り組んでまいります。
また、今年度から新卒採用の枠を拡大しており、社内比で3倍程度の新卒を採用することを考えています。そのメンバーの早期戦力化という短期的な目標もあるものの、将来のツクルバをリーダーとして担っていく人材をどれだけ増やしていくかが中長期的に必要であるため、人材育成や組織拡大への環境づくりにさらに注力していかなくてはならないと考えています。
ステークホルダーの皆様へのメッセージ
まずは業績を着実に向上させ続けることが、何より重要であると考えています。また、ステークホルダーの方々に対しても従業員が中長期の価値を生み出す重要な資産であることを理解していただくことが大切です。そのため、人的資本をどのように戦略上位置づけるかについて、中身を伴ったうえで開示することが、本質的に会社を強化していく上で最も重要で有益であると考えています。ぜひ当社の今後の活動にご注目いただければと思います。
- 氏名
- 藤田 大洋(ふじた たいよう)
- 企業名
- 株式会社ツクルバ
- 役職
- 執行役員CHRO 人事本部長