清掃作業員から億トレーダーへと大転身を遂げた個人投資家として知られるwww9945さん。100万円から株式投資を始め、様々な試行錯誤を重ねて億を超える資産を築いたwww9945さんにこれまでの歩みや投資初心者へのアドバイスなどを聞いた。

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1992年頃、あるマネー誌の記事に触発され株式投資をスタート。掃除夫として働きながらコツコツと投資を続け、2013年に資産が1億円の大台を突破。2014年に仕事をやめ専業投資家に転身。バリュー株投資や高配当株を資産の礎としながら、信用取引で高成長株を狙う投資手法で資産を増やし、現在の資産額は5億円を突破。

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消費者金融で借金をして株を購入

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(画像=PIXTA)

――www9945さんはこれまで色々なメディアに登場されていますので、すでにご存知の読者も多いと思いますが、株を始めた当初はかなり苦労されたのですよね。

はい。26歳の時にそれまで勤めていた会社を辞め、次の会社に勤めるまで9カ月くらい期間が空いたのですが、当時はかなりお金に困っていました。それこそ、アルバイト雑誌を買うための100円も惜しんで、立ち読みしていたくらいです。次に、茨城県の納豆製造会社の営業職に就いたのですが、全く肌に合わず、1年半ほどで辞めてしまって。その後は東京アルバイト生活をしていました。

――そんな苦しい状況の時、なぜ株式投資を始めようと思われたのでしょうか。

茨城にいた当時、たまたま書店で手に取ったマネー誌の中に、邱(きゅう)永漢さんという台湾出身の実業家が書いた記事を読んだんです。邱さんは実業家以外にも経済評論家、作家と色々な顔を持っているかたですでに亡くなられているんですが、その記事の中で邱さんは「株を勉強すれば経済にも明るくなり、お金も稼げる」と言っていました。それで、「これだ!」と思ったわけですね。

ただ、当時は取引単位が1000株単位で、いまみたいに数千円、数万円で株式投資ができる時代ではありませんでした。そこで生活を切り詰め、1年以上かけて100万円を貯め、ようやく株式投資を始めました。茨城県のある証券会社の支店で口座を開設し、よくわからずに宇部興産などを買いましたね。今だから言えるのですが、営業担当の女性が「実はおすすめ銘柄は当たりませんよ・・・」などと涙ながらに耳打ちしてくれたのを覚えています(笑)

――それは正直なかたですね(笑) 当初はなかなか上手く行かなかったと聞いています。

茨城の会社を辞めた後はアルバイトで掃除会社に勤務したのですが、たまたま欠員が出て、正社員になることができたんです。それで生活が安定してきたので、投資に資金を割けるようになりました。総収入の3分の1程度、年間で約100万円を追加で入金して株を続けていたのですが、それから10年ほどは勝って負けての繰り返し。年100万円を入金していましたから、始めてから10年間で資産は1000万円前後になりました。

――なぜ、あまりうまく行かなかったのでしょう。

相場が基本的に右肩下がりだったこともありましたが、1つの銘柄にほれ込んでしまい、ポートフォリオが偏ってしまったことが原因のひとつだと思います。1000万円のうち、半分を1銘柄に注ぎ込んでしまったり。しかも、その主力銘柄は株価が下がっても損切りをせず、持ち続けていたんです。そのため、保有株数が少ない銘柄で利益を得ても、トータルではなかなか資金が増えませんでした。

一時は、株を買いたくても資金が足りず、消費者金融に借りてまで株に投資していたこともあります。ある消費者金融会社では、借りてから1週間は利息ゼロだったんですよ。まずその会社で借りて、その1週間後に別の消費者金融で借り直し、最初の会社の借金を返済するということもしていました。そうすると、支払う利息が少なくて済むので(笑)

「配当金600万円」確保で専業投資家に

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――本当に株がお好きなんですね(笑) 転機となったのはいつ頃でしょうか?

最初に資産が大きく増えたのは2005年です。小泉純一郎元首相が郵政民営化を唱え、衆議院を解散した年ですね。その年は、いわゆる“郵政相場”で相場全体が噴き上がり、投資していた不動産関連銘柄が2、3倍に値上がりしました。

この頃はインターネットもだいぶ普及して、大手株式掲示板などを見ていたのですが、あるトレーダーさんがバリュー株投資について詳しく書いているのを目にしたんです。以降、そのトレーダーさんとやり取りをするようになり、ウォーレン・バフェットやベンジャミン・グレアムといったバリュー株投資で有名な投資家の手法をひたすら勉強しましたね。これが今でも自分の投資の基礎になっています。次に資産を大きく伸ばせたのは、2012年の年末からスタートした「アベノミクス相場」の時ですね。

――そうは言っても、アベノミクス相場が本格的に始まる前に資産1億円の大台を突破したんですよね。

そうですね。2012年の11月末頃に突破しました。株を始めた当初は郵便局の定期預金の利回りが6%くらいだったので、1億円あれば年間の利息は600万円。年収600万円あれば十分に生活できるという計算だったので、1億円が目標でもありました。しかし、ご存知のように金利は下がり続けましたし、キャピタルゲイン(値上がり益)の税率が10%から20%に上がってしまったんです。当然、それによってもらえる配当金も減りますから、当初の計画は完全に崩れました。ところが、アベノミクス相場によって資産が1億円から割と短期で2億円にまで増えたので、「ラッキー!」と(笑)

――それで、清掃のお仕事を辞めて専業投資家になったんですね。

正直、専業になるには迷いがありました。確かに給料は安かったのですが、毎月ちゃんともらえる安心感がありますし、精神的にはそちらのほうがラクです。専業は株で生活費まで捻出しないといけないわけですから。ただ、当時はその会社で課長を務めていたのですが、それでも夜中に「鍵が開かない」などと電話がかかってきて叩き起こされたり・・・そうした突発的なトラブルが嫌だったんです。

結局、2014年に仕事を辞めました。当時の資産額は2億3000万円程度で、これなら配当利回りが4%でも、税引き後で年間600万円程度の配当は得られます。これならやっていけると判断し、専業になりました。

ピラミッド投資で資産の積み上げに成功。コロナで街歩き探索は休止状態に

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――そうなると、高配当銘柄が投資のベースになっているわけですか。

私の投資スタイルは、高配当株やバリュー株を担保に、信用取引で成長株へ投資するというものです。あるマネー雑誌では、これを「ピラミッド投資」「スカイツリー投資」などと呼んでいましたね。高配当の現物株だけだと、どうしても相場全体が低調だったり、日本が不景気な時には資産が減ってしまいます。その一方で、現物株を持ち続けるだけでは資金効率が悪い。高配当株を現物で保有し、それを担保に信用取引で成長株に投資すれば、安定配当を得ながら資金効率を上げることができます。

――成長株では、どのような銘柄に投資をしているのですか?

どうしても成長株というと値動きの荒い小型株に目が行きがちですが、私は食品卸売など地味なセクターやBtoC、つまり消費者の生活に密着している会社が好きです。値動きが荒いのは、メリットでもありデメリットでもありますよね。運よく当たれば大きく資産を増やせますが、外れると株式市場から退場することにもなりかねません。個人的には、そういう銘柄は資産をある程度増やしてから、資金の一部でやるべきだと思います。

――9945さんといえば、街を歩きながらヒット商品やヒットしているお店を見つけ、それを投資のヒントにする“街歩き銘柄探索”でも知られていますが、最近はいかがでしょうか。

それが、新型コロナで効果が見込めない状況なんですよ・・・。街を歩くこと自体が好きなので、今日も新宿を散策してきたのですが、お店が閉まっていたり、看板がなくなっていたりして、街を歩けば歩くほどマイナスな情報しか得られなくなっています。もちろん、コロナが収束して人々の生活が通常化すれば、また積極的に街歩き探索をしようとは思っています。

――それは確かにさびしい状況ですね・・・投資自体にコロナショックの影響はありましたか。

コロナショックの時は完全に油断していました。ちょうど京都を旅行していたのですが、お寺の境内で損切りする羽目に・・・邪念を持ち込んではいけない場所で邪念だらけでしたよ(苦笑) その後のリバウンド相場にもうまく乗り切れず、1%と比率は小さかったものの2020年はトータルでマイナスでした。いま思い返せば、損切りをせずにいればプラスだったかもしれません。

トレーダーさんによっては、コロナショック後のリバウンドで大きく資産を伸ばしていましたが、コロナショックの下げのスピードは本当に早かったので、その後も「一歩間違えたら大損してしまうかも」と考えてしまい、強気になり切れませんでした。マスクを買うために行列ができているのを見た後でドラッグストア株を買っても、十分間に合ったんですけどね・・・もっと単純に買い向かうことができていたら、2020年も資産を伸ばせていたでしょう。

最も重要なのは「長く相場にいること」

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――それ以降、投資スタンスに変化はありましたか?

昨年10月あたりから、キャピタルゲイン狙いの銘柄を大きく7つのテーマに分けて買うようにしました。7つのテーマとは、①高齢化社会や人口減少、②5G(第5世代移動通信システム)や動画配信、③美、④健康、⑤教育、⑥小型のバリュー株、⑦地銀再編です。それぞれ、今後の日本で確実に起こる現象だったり、人々がお金を惜しまず使ったりするテーマですから、そのテーマに関連する企業であれば、これから着実に業績を伸ばせると思ったんです。

ウィズコロナの世の中で何が起きているのか理解できずに買い向かえなかったので、それを反省し、自分の投資手法を見直そうと考えました。原点回帰ではありませんが、短期的な利益を狙いに行くのではなく、月足チャートでじわじわと上昇を続けるようなテーマに投資をしようと考えるようになりました。幸運にも資産が5億円を突破できましたし、短期で大きな値幅を狙う必要もありませんから。

――より長期的な目線で投資を捉えるようになったのですね。話は変わりますが、いま9945さんはどの証券会社を使っていらっしゃいますか?

日本株取引のメインは東海東京証券。制度信用取引の金利が0.9%と安いからです。万が一、メイン口座がシステムトラブルなどで一時的に使えなくなった時のために、サブ口座としてGMOクリック証券にも口座を持っています。1つの口座に資金を集中すると、信用取引の歯止めが効かなくなってしまいそうなのもありますが(笑) ほかに、ベトナム株などの外国株取引のために、SBI証券やアイザワ証券にも口座を開設しています。

――最後に、投資ビギナーの人たちにメッセージをお願いします。

私が株式投資を始めた頃と比べるとかなり売買手数料も安くなっていますし、一般NISA(少額投資非課税制度)や積立NISA、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)など投資家に有利な制度がたくさん整備されています。当初は最低単位の1000株を売買するだけで、数万円の売買手数料がかかっていましたから。

最初はそうした制度を活用したり、あるいは株主優待がもらえる銘柄を100株でもいいから買ったりして、知識と経験を積むほうがいいと思います。一番大事なのは、長く相場と向き合える状況でいること。個別株でドーンと勝負して、失敗して相場から退場というのは絶対に避けるべきです。長く株式相場にいられれば、その分、利益を伸ばせるチャンスが必ず訪れますから。