『人生を逆転する10倍株入門』という書籍が発売された。著者は、西野匡氏。経済評論家の朝倉慶氏が運営する「アセットマネジメントあさくら」に勤務する敏腕アナリストだ。

証券会社で勤務したのち、14年間に渡って自らの資金を株式市場で運用し、巨額の資産を手に入れた株式投資の成功者でもある。その西野氏が、証券会社は決して教えてくれない株式投資のテクニックの一部を紹介してくれた。

西野匡
西野匡(にしの・ただす)
アセットマネジメントあさくら
高知県出身。1990年から太平洋証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社。13年間営業職に従事したのち退職。その後14年間、日本株で自らの資産を運用。2017年5月より現職。中小型株の成長株を中心に投資することを主眼に置き、ファンダメンタルズとテクニカルの両面から需給を予測して銘柄を選別している。
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テンバガー候補はIPO銘柄に隠されている

株価,上昇,
(画像=PIXTA)

「相場が乱高下しやすいマザーズのIPO銘柄を初心者に進めるべきではない。(中略)上場して間もない新規公開企業を紹介、推薦するあなたは不届き千万だと思う。1回も決算発表をしていない銘柄をすすめるとは何事か!」――。

これは、西野氏のセミナーに参加した同業者が、アンケートに記載したコメントだ。これに対し、西野氏は「株式投資の初心者や個人投資家を“馬鹿”にしているのかな」と、強い憤りを感じるとともに、この言葉こそが一般的な証券会社に勤務する人たちの考え方だと思ったという。

いわゆる「セルサイド」といわれる証券会社のアナリストは、顧客に株を購入してもらうことで手数料収入を得るために買い推奨銘柄のレポートを出す。しかし、そこには上場直後の銘柄はあまり見当たらない。というのも、上場直後の会社を推奨したり、目標株価を付与したりすることを幹事証券会社は協会に禁じられているからだ。しかし、そんなIPO(株式の新規上場)だからこそ大きな魅力があると、西野氏はいう。

「IPOは、上場が決定して日が浅いため取材できず真の姿が伝わってこないことがあります。上場後、日が経つにつれて理解が進み、上場前の評価と上場後のその会社の真の姿にはギャップがあることがあります。このギャップを埋めに行くときに株価は大きく上昇します。実際、毎年IPO銘柄の中からテンバガーといわれる10倍株が出ていますし、3倍以上になる銘柄は2ケタにのぼります。ですので、IPO銘柄を避けることは、せっかくのチャンスを逃すことにもなりかねないのです」(西野氏)

では、テンバガーを見つけるポイントはどこなのか?

ポイントは売上高。営業利益にはこだわらない

「一番大切なことは高成長企業であること。なかでも売上が伸びていることが重要です。売上の伸び率は最低でも15%以上、できれば20%以上が望ましいでしょう。なお、営業利益に関しては、業種によって見方を変えたほうがいい。もちろん、無計画な赤字は困りますが、極端な話、インターネットを使ってクラウドでサービスを提供しているSaaS企業をはじめとする高成長企業であれば、営業利益が黒字にこだわる必要はありません」(西野氏)

また、IPO銘柄を買うときには、公開規模について注目してもらいたいとのこと。公開規模と時価総額は上場後の株価の動きなど需給関係を計るうえで重要に指標になるからだ。特にテンバガーが出そうな規模は、15億円未満の公開規模の小型IPOだという。

「ただし、15億円未満の小型IPOの場合、テーマ性のある銘柄だと、最初から実態以上に株価が上昇してマネーゲームになりやすいので要注意です。その後、時間の経過とともに株価が下落していくことも少なくありません。ですので、小型のIPOの初値は基本的には見送りたいところです。もしも、その銘柄が調整後、上場後の高値を再び奪回するような動きを見せ始めたとき、ここに株価の違和感が生まれてくるわけです。そのときにあらためて業績などのファンダメンタルズを確認し、新しい発見や自分なりの成長シナリオが描ければ、そこで打診買いするのです」(西野氏)

一方、株式投資で負けないためには、ときとして潔い撤退も重要だという。西野氏の損切りのルールは2通り。1つ目は、保有銘柄が買った価格より10%値下がりした場合。2つ目は、25日移動平均線を下回った場合だという。

「損切りのルールで気をつけなければならないことは、プラス目標のほうを高く設定すること。利益目標がプラス5%なのに、損切りメドがマイナス10%では、勝率が5割だとすると資産は減っていきます。ちなみに、1回損切りした銘柄をもう買わないという考え方もありますが、私はそうは思いません。あらためて良い銘柄だと判断したなら、もう一度買えばいいと考えています。その証拠に、過去にはメドレーという銘柄を2度損切りし、3度買って成功したこともあります。このときは8カ月で株価は4.6倍になりました」(西野氏)

高いから買えないという発想は今すぐ捨てる

(画像=PIXTA)


上昇トレンドが確実になったときに買うのが西野流だが、そのため「いくら良いといっても、そんな高いところでは買えない」とか「もっと安いときに教えてよ」といわれることがたびたびあるという。「しかし大化けする株は、最初の上昇は大きく動くことがよくある」と西野氏。

「その銘柄が高いのか安いのかを決めるのは今の株価ではなく、“その後”の株価なのです。単純に『この株は高いから買えない』という発想は、やめたほうがいいでしょう。たとえば、BASEという銘柄では、私が買いと判断したのは、株価が2000円のときでした。上場直後の高値1950円をはっきりと上抜けときでしたが、そのタイミングでは25日移動平均線を50%も上方乖離していたのです。しかし、その後、BASEの株価は1万7240円台まで駆け上がり、2000円の株価水準はあきらかに安値圏となっていました。これがチャートのマジックなのです」(西野氏)

前述した西野氏の『人生を逆転する10倍株入門』には、これ以外にも西野氏ならではのさまざまな銘柄分析手法が、実際の銘柄に当てはめて分析、検証してある。また、西野氏が厳選した「最強の日本株」も銘柄名を挙げて紹介されているので、参考にしてみてはどうだろうか? 

証券界の常識が株式投資においては足かせになることも

最後に西野氏から株式投資初心者にアドバイス。

「株式投資に絶対はありません。誤解を恐れずに言ってしまえば、証券会社の営業社員は営業のプロであって投資判断のプロではありません。そのことは次のエピソードからも伺い知れます。

山一證券が倒産した際、某米大手証券が日本のリテール営業に進出してきたときのことです。その外資証券会社の営業員の想定質問では、『なんかよい銘柄はありますか?』という顧客の質問に対して『そんな銘柄はありません』と答えるように指示していたことがありました。個別銘柄を買ったり売ったり、いわゆる昔の株屋のようなことはしないで、プロの運営する投資信託を勧めなさいということだったと思います。今の国内の大手証券も基本的には同じ考えだと思います。このエピソードから見てもわかる通り、証券会社の営業員は営業のプロであっても投資判断のプロではありません。もちろん以前は私もその一人でした。

では、プロのファンドマネージャーやアナリストが優秀かというと(もちろん非常に優秀ですが)、社内規定やファンドの規定などがあって、実際には本当に自由な投資判断はできないと思います。上司や会社の判断や会社の都合も関係してくるでしょう。またアナリストの方は企業分析には長けていらっしゃいますが、株価というものは需給関係など業績以外の部分で動くことも多いのです。

初心者の投資家の方は安心してください。インターネットで株式取引ができる現代においては、みなさんはすでに自由という武器を手にしているのです。証券界の常識が株式投資においては足かせになることも実は多いのです。目に見えている業績だけで株価が動いているわけではないのです。自由な発想で、自分で勉強して株式投資にチャレンジしてください。株式投資の常識を疑ってください。成功している個人投資家の多くは証券関係者ではありません。私の本が個人投資家の方の成功のヒントとなることになればと願っています」

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