学生投資連合USICの副代表を務める慶應義塾大学商学部2年生の峰慶多さん。株式投資の世界に飛び込んで、本格的にはじめたのはまだ2年弱とその経験は浅い。しかし、ロスカットや逆指値を利用して損失を抑える手法を重視する投資スタンスは、今後投資を考える投資家にとっては一つの指針となる部分もある。

今回は、峰慶多さんに投資をはじめたきっかけや投資方針などについて話を聞いた。

峰慶多(みね・けいた)
峰慶多(みね・けいた)
慶應義塾大学 商学部2年 学生投資連合USIC副代表
大学入学を機に投資をはじめる。国内株、デリバティブ取引がメイン。現在は短期~中期取引で経験を積んでいるが、将来的には長期投資に移行したいと考えている。趣味は柔道、艦艇、アニメ。USICの活動を通し、学生のうちから投資をはじめるメリットを広めていきたい。

株式投資のきっかけは「フォーブス」の長者番付

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「お金持ちになりたい!」――そう考えたときに、何を参考とするだろうか。峰さんは中学生のときに米国で発行されている世界的な経済誌『Forbes(フォーブス)』にたどり着いた。『フォーブス』は毎年恒例の「世界長者番付」を発表している。

「この長者番付のランキング上位は、企業の社長もしくは投資家がほとんど。起業家の社長も株式で資産を構成しています。さらに、学生のうちに社長で財を成すのは難しく、投資家が結論となりました」と峰さん。まずは本を読んで独学で準備を進めたが、高校時代は何かと忙しく投資の勉強は小休止。大学に入ってから先輩のアドバイスやUSICに入って投資をスタートさせた。大学生でアルバイトをはじめて自己資金ができたことも大きかった。

峰さんの株式投資のスタンスは、中期投資を主流に短期投資も状況次第で行うというもの。長期投資は行わないという。潤沢な資金を持てない学生のうちは、長期投資だとどうしても機会損失が生まれてしまう。学生のうちに、たくさんの投資経験を積んだほうがいいと考えたわけだ。今は経験重視と割り切っている。

そして、中期投資のうえでの銘柄選別の視点は、売上高の連続増収と事業投資に積極的な企業としている。事業投資といっても、設備投資の場合はその効果が表れるのは中長期のスパンとなってしまうので、M&A(企業の合併・買収)に着眼している。実際に、これまでの投資実績もM&Aのほうが効率よい結果が出ているそうだ。

短期売買はリスクコントロールを優先

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(画像=PIXTA)

一方、投機的な要素もある短期売買だが、「リスクを限定した取引手法を取れば、それなりに継続して安定的な利益を追求できる」という。チャートの形や業績予想のいい銘柄で割安の銘柄を探し、決算前に買って、決算をまたいで上方修正のときに利益を確定させる。ファンダメンタルズとテクニカルを組み合わせての銘柄選別だ。

ただ、決算またぎの場合、決算発表を受けて材料出尽くしと捉えられて株価が下げるケースも多い。その場合、「いかに早く手仕舞うことができるかがポイント」という。好決算だと「明日は上がる」と期待が先行して損失が拡大してしまうケースがある。そうしたことを回避するために、逆指値注文を出して、損失を最小限に抑えている。また、材料出尽くしから決算発表で下げたとしても、買いのタイミングが早ければ、結果的に利益が出るケースも多い。

「5回売買して4回負けたとしても、4回の負けによる損失を限定できれば、1回の勝ちによる利益でカバーすることができます。トータルで収支がプラスになればいいという発想です。そのためにも、繰り返しになりますがロスカットラインを決めて逆指値を入れておくことが重要です」(峰さん)

買いと同時に峰さんは、逆指値を同時に入れてロスカットを準備する投資手法を実践している。「数でいうと失敗例が多い。ただ、どこで切るかのロスカットを決めており、自分の想像を超える形での損失を出すことはない」という。

業界トップの日本製鉄で成功した背景

5G
(画像=PIXTA)

峰さんの最近の投資の成功例は、日本製鉄(5401)。今年初めに買ったという。ちなみに、日本製鉄の大発会終値は1321円だった。投資の視点はアフターコロナの需要回復を見込んで、景気敏感株の物色人気に乗る存在だったこと。また、バリュー株の中でも相対的に鉄鋼株が出遅れていると感じていたという。

「会社側の業績予想を見ても、上方修正の余力がありそうだと考えていました。その結果、5月上旬の業績発表で大幅に上方修正が発表されて決算またぎが成功した例として、割と高い位置で利益を確定することができました」(峰さん)

ちなみに、日本製鉄の5月11日高値は2354円。日本の業界トップ企業は企業体力も強い。同業他社の株価が下げて日本製鉄だけが上がるというということはあっても、同業が上げて日本製鉄だけが下がるということは一般的に多分ないだろうと考えたそうだ。リスクが一番低いのは鉄鋼株の中で日本製鉄という考えもあって、日本製鉄が投資対象となり結果、成功した。

それでは、峰さんは今後どこに注目しているのか。投資スタイルは中期・短期だが、企業の成長視点は長期でも見ている。その長期の目線から5G(第5世代移動通信システム)関連株がアツいと考えているという。5Gは映画を2秒でダウロードできるとか、高速通信ができるという個人消費にスポットが当たった点が今は注目されているが、今後は「B to B」の視点での5Gが魅力的だ。日本は自然災害も多く救助やインフラ復旧などで5G技術が活用される場面が出てくると期待しているほか、医療オペレーション、自動運転などでの活用が普及してくるだろう。

楽天の『スイープ(自動入出金)機能』を重宝

楽天証券
(画像=楽天証券HPより)

峰さんが利用しているのは楽天証券。手数料や機能などは大手であまり変らないが、その中でもスムーズさの魅力があるという。

「楽天には『マネーブリッジ』というサービスがあり、その中の『スイープ(自動入出金)機能』が優れていると感じています。楽天証券と楽天銀行に口座を持っていると、証券と銀行が連動して資金を動かす必要がありません。グループなので資金移動の手数料もかからない。買いたいときに、ひと手間加える必要がないのがメリットです。また、証券口座と銀行口座を一つの口座として扱えるので残高の管理がしやすいのが魅力的です。さらに額は少ないですが、楽天ポイントも投資に使えます」(峰さん)

若いうちに投資経験と少額リスクの経験を

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(画像=PIXTA)

これから投資をはじめることを考えている投資初心者に峰さんは「投資で身につく力は投資だけではなく、ビジネスの世界でも通用するものが多いと考えています。早く情報を手に入れようとすると英語の資料を読むため、英語力も磨くことができる」とアドバイスする。

さらに、学生のうちは20万円、30万円は大金だが、大人になったときに退職金などでの資産運用は1000万円クラスの場合もある。学生のうちに少額のリスクを経験しておくことができれば、投資の心理を理解することができるという。

「大学で投資をはじめて、初めて含み損を抱えたときは、夜も眠れないということがありました。こうしたメンタルづくりは投資に慣れておくことで、将来に役立つはずです」(峰さん)

なお、峰さんは、まだ確固とした目標はないとしながらも、投資ができる職業につきたいとも話す。できれば、自分の好きなアニメ業界の発展につながるファイナンス系の仕事に興味を持っているという。日本アニメの作品の魅力だけでなく経済的に強靭な業界構造にしていきたいという希望を膨らませている。

【学生投資連合USIC】
「日本を学生から金融大国に」というビジョンのもと「学生の金融リテラシー向上」のための活動を行う。全国28大学1000人以上で構成される日本最大の金融系学生団体。企業団体・官公庁との勉強会開催、IRコンテストの運営、金融情報誌SPOCKの発行を行う。現在、大学生対抗IRプレゼンコンテストに参加する上場企業を募集中。