昨年3月のコロナショックを経て、10月頃から本格化した“コロナバブル相場”。この世界的な株高を受けて、“億り人”の仲間入りを達成したのが兼業投資家の「あーる」氏だ。生活を除いて給与のほとんどを株に費やすこと6年、ついに大台を達成したその手法とは?

あーる
あーる
兼業投資家。2008年に元手50万円でFX投資を開始。その後、リーマンショックでマイナス120万円の損失を出した。さらに2011年に証券口座を開設して株式投資をはじめたものの、東日本大震災の影響でまたも大幅マイナス。三度目の正直とばかりに2013年から再スタートを切ると、アベノミクス相場の好影響もあって着実に資産が増加。給料の大半を2017年まで株に振り分け続けた結果、約1000万円の元手で“億り人”に。現在の資産は1億4000万円程度。
Twitter:@kr_kabu
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マーケットから2度も退場させられた苦い経験も

株価,上昇,
(画像=PIXTA)

――昨年、資産1億円の大台を突破したようですが、投資をはじめたきっかけは?

社会人になった当初から投資に興味を持っていました。ただ、リスクは取りたくなかった。そこで、最初にはじめたのはFXのキャッシュバックキャンペーンを利用して稼ぐことでした。2008年3月当時は、口座を開くだけで5000円もらえて、1回取引するだけで1万円をキャッシュバックするキャンペーンがいくらでもありました。それで15社ぐらいのFX会社で口座を開設して10万円前後のキャッシュバックをもらいましたね。

――株でなくFXから投資をはじめたのですね?

そうなんですけど、ご存じのように2008年はリーマンショックのあった年。キャシュバックに加えて50万円ほど入金してトレードを開始し、少しずつ追加入金していったのですが、リーマンショックで120万円の損失を出してしまいました。当時は、ニュースもチェックしてないし、ファンダメンタルズの分析もしてなかったから、リーマンショックが何なのかもわかっていなかった。勉強もせずに投資で稼ごうなんてムシがよすぎたと思って、すぐにFXをやめたんです。

――手痛い投資デビューでしたね。

それだけではありません、再デビューにも失敗したんですよ。3年ほどのブランクがあって2011年から株式投資をはじめたのですが、「値下がりリスクが小さいディフェンシブ銘柄で配当利回りが高い」と投資雑誌で紹介されていた東京電力を買ってしまったんです。その直後に東日本大震災が起きて、福島第一原発事故が発生。値下がりリスクが小さいはずの東電株は、2000円台から100円台まで急落してしまいました。僕は500円台で損切りしましたが、原資は4分の1に。またも躓いてしまって、再び充電期間に入りました(笑)。

3度目の正直でつかんだ「丸パクリ投資術」

――それは不運としかいいようがありませんね。3度目の正直はあった?

3回目のチャレンジは、すでにアベノミクス相場がはじまっていた2013年のこと。2012年に安倍政権が発足してから株価が上昇しはじめて、投資ブームが巻き起こっていたので、「もう1回だけやってみよう」と50万円ほど入金してはじめたのです。ただ、3回連続で失敗するわけにはいかない。ちゃんと勉強してから投資しようと思って、有名投資家さんのブログを読み漁りました。なかでも読み込んだのは、割安な成長株投資で着実に資産を増やし続けている「すぽ」さんのブログ。勉強させてもらったというより、丸パクリといったほうが正しいのですが……。

――どのように丸パクリしたんですか?

彼はブログで保有銘柄を公開していたので、その銘柄を買っていったんです(笑)。ブログの「相談コーナー」も参考にしていましたね。彼を頼って多くの個人投資家が「〇〇の株はどうでしょうか?」といった相談していたのですが、彼は丁寧に5点満点で評価してくれるんです。そのなかで評価の高い銘柄を新規で購入したりもしました。

――著名投資家に便乗するイナゴ投資法ですね。

2013~2015年は徹底して“すぽさん銘柄”に乗っかりましたね。そうすることで、自分の投資スタイルの骨組みができあがった。彼はビジネスモデルを分析して持続的に成長するポテンシャルがあればPER30倍以上でも気にせず買っていきました。そのスタイルに倣って、私も株価でなく成長性を重視。具体的には売上高の成長率を特に重視するようになりました。利益は一時的に先行投資がかさむとマイナスになることもありますが、企業が成長していれば売上高は増え続けるもの。毎年、売上高が伸びている企業にのみ絞って投資するようになっていったんです。

――今後も成長が続くかどうかはどう判断するのですか?

一番わかりやすのはビジネスモデルですね。ストック型のビジネスほど持続的な成長を達成しやすい。売り切り型ではなく、月額利用料を徴収してクラウドサーバ上のソフトをインターネット経由で提供するSaaS(Software as a Service)は、その代表格。このSaaS系銘柄に注目するようになったのは、すぽさん同様、著名投資家として知られる井村俊哉さんの影響ですが。

――複数の著名投資家の手法や注目銘柄をフュージョンさせていった?

格好よくいえば、そうですね(笑)。井村さんのおかげで、SaaSないしサブスクリプション(月額課金制ビジネス)銘柄を見るうえで、PSR(=時価総額÷売上高)という指標が重要だと学びました。サブスクリプションモデルの企業は利益を再投資して事業規模を拡大していくのでPERが高くなりがち。だから、利益よりも売上高に注目したPSRで見るんです。一般に7~13倍が平均値と言われているので、これを大きく超える場合には割高と見なすんです

――そのような投資法の成績はどうでしたか?

実は毎月の給料から生活費を差し引いたほとんどのお金を株につぎ込んでいったので、正確な成績は把握していません。ただ、相場が好調なこともあって、少なくとも毎年倍々で資産は増えていったはずです。

――イナゴ投資をはじめてから大失敗はありませんか?

2回だけ大きな負けがありました。あるインフルエンサーがSNSで推奨していたウェッジホールディングスを2017年に買ったら、3月になって海外子会社の決算内容に疑義がついて暴落したんです。2回目は、2018年のクリスマス。米中貿易摩擦に加えて「トランプ大統領がFRB議長の解任を検討している」といった報道が流れてNY市場が暴落して、東京市場にも飛び火し、リーマン級の下げ幅を記録して損失が膨らみました。実はこの暴落をきっかけに、ファンダメンタルズ分析の勉強にも力を入れるようになった。これは、「成長株アナリスト」として知られる投資家の朝香友博さんの影響です。

有名投資家がつぶやいた銘柄から大化けの3条件で厳選

――いろんな投資家の手法を勉強して、「あーる式」の投資法ができあがった?

著名投資家の注目する成長株に乗っかるのが私のスタイル。今では「凄腕投資家」としてツイッター上の有名投資家50~100人をリスト化しており、その方たちが呟いた銘柄のなかから投資先を絞り込むようにしています。私にはまだ値上がりする銘柄を発掘する力はあまりありません。だから、代わりに著名投資家にスクリーニングしてもらっているようなかたちです。そこで絞り込まれた銘柄が毎年成長を続けていて、さらに時価総額が100億円前後と小型で、注目度の低い銘柄だったりしたら大化けの3条件を満たしている有望株。すぐに買っていきます。

――大化けの3条件を満たした銘柄とは、たとえばどんなものですか?

昨年3月に買ったのはグループウェアのサイボウズ。これは井村さんがSNS上で推していた銘柄で、私自身「コロナが続いてテレワークが広まると情報共有ソフトを作るサイボウズにとってプラス」と感じた。けど、私が投資家仲間との交流の場としてつくったLINEのオープンチャットでネタにしてみたら、「テレワークなんて定着しない」という意見が大半だった。このときに「まだテレワーク銘柄は注目度が低くて狙い目だ」と感じて、すぐにサイボウズを買ったら3カ月で2倍以上に値上がりましたね。

――有名投資家のSNSでスクリーニングして、一般投資家の声を逆張り指標にしているということですか?

その通りです。だから、コロナショックでSNS上の人たちがみんな悲観的になったタイミングで買い場を探しはじめました。サイボウズを手仕舞いしたあとには接骨院向けコンサルティング事業を展開するリグアという銘柄を買いましたが、これも有名投資家さんがSNS上で買い煽っていた割に、注目度が低かった点が魅力的でした。

2020年3月という最悪のタイミングで新規上場を果たして、初値が安くついたのと、そのニッチなビジネスのせいでしょう。SNSを検索しても、リグアに言及している個人投資家が非常に少なかったんです。ただ、チャートを見ると綺麗に押し目をつくりながら右肩上がりで上昇していました。そういう特に材料がないのにジワジワ値上がりし続けている銘柄を私は「誰が買ってんだ銘柄」と呼んでいます。

その株の魅力を知る一部の投資家が押し目で着実に拾ってくるため、値崩れしにくい。私は「コンサルならコロナで経営が悪化した接骨院からのニーズが高まりそう」と考えて、資産の7割をリグアにつぎ込んだんです。その直後に2021年3月期第1四半期決算で好調が伝わり急騰。数カ月で3倍に値上がりしました。

――最後に初心者に向けたアドバイスをください。

「失敗は成功のもと」だと考えて、試行錯誤を続けていかないと勝ち続けるのは難しいと思っています。そのためにも株仲間や師匠的存在の投資家を見つけるといいでしょう。いろんな投資家の意見を参考にしたほうが成長は早い。私の場合は、彼らを逆張り指標にするときもありますが(笑)。