ごく一般的な会社員でも、投資によってお金にも働いてもらうことで資産1億円の大台達成が不可能でないことを証明したまーしーさん。

試行錯誤を繰り返した結果、最も大きなリターンを追求できる投資対象として、彼が辿り着いたのが米国市場のグロース株だった。具体的にどういった視点からどんな銘柄に的を絞ったのかについて、詳しく話を聞いた。

まーしー
まーしー氏
年収400万円未満の会社員だが、紆余曲折を経て米国市場のグロース株に投資し、投資歴8年目にして1億円の大台達成。FIREをめざし、新たな目標を掲げてさらなる資産拡大のために現在も米国株の運用を継続中。
Twitter:@maasi_kabuo
note:https://note.com/maasi_kabuo/

2015年にチャイナショックを機に米国株に注目

画像=PIXTA


−−まずは、まーしーさんが米国株への投資を始めたきっかけについて教えてください。

私が新卒で就活したのが2009年で、前年の9月にリーマンショックが発生したため、まさに氷河期という状況でした。その結果、非常に苦戦を強いられて就職浪人(1年間の進学)を余儀なくされました。

また、翌年に決まった就職先では経理部に配属されたことから、将来の自分の総収入を知ってしまい、かなり悲観的になりました。これらのエピソードを機にお金に対して大きな不安を抱くようになり、自分自身でしっかり運用しなければならないと考えるようになった次第です。

最初はネットで収集した情報をもとに、「全世界株式インデックス」への投資を選択しました。安定的に4~5%のリターンを供給するというスタンスです。

ところが、2015年にチャイナショックが発生し、中国株の大暴落が国内外の株式市場に連鎖しました。こうした中で、目の当たりにしたのが米国株の急反発です。

他国の株式市場がなかなか下げ止まらない中で、ニューヨークダウ(ダウ平均株価)だけが大きく切り返したのです。その瞬間、「米国株に資金を集中させよう!」と私は考えました。順調に右肩上がりを描いていれば「全世界株式インデックス」でも差し支えないのですが、市場に紆余曲折はつきものですし、広く分散している分だけリカバリーが緩慢になってくるので、資金効率が悪いと感じたからです。

−−その後、どういった経緯で米国市場の個別株にフォーカスするようになったのですか?

当初は、米国市場の個別銘柄にターゲットを絞ろうと考えていたわけではありません。ニューヨークダウなどのインデックス投資を考えていたのですが、「株式投資の未来(ジェレミー・J.シーゲル著) 」という書籍を読み、その中に書かれていた高配当株に関心を抱いたのです。

米国市場には、何十期にもわたって連続増配を実施している銘柄が少なくありませんでした。そこで、配当も合わせればインデックスを超えるリターンを期待できそうだと思って2017年に10銘柄に分散投資を行ったのですが、期待に反して2019年頃まではアンダーパフォームが続きました。

その背景には、ちょうど2017年後半から米中貿易戦争が勃発し、両国が互いに高い関税を課し合ったことがあります。以来、米国市場は何度となく急落に見舞われ、私は結果的に高値づかみをしてしまったわけです。

連続増配株からグロース株へ

画像=PIXTA


−−しかし、そこからまーしーさんの“大逆転劇”が始まるわけですね。

ええ。自分のポートフォリオが悲惨な状況に陥っているのを尻目に、相場全体の低迷に逆行して上昇し続けるFAANG(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル)の株価に、私は大きな衝撃を受けました。そして、高配当株とは決別し、FAANGのようなグロース株にターゲットを変更したのです。

その結果、私のポートフォリオは様々なインデックスに対して大幅なアウトパフォームを達成し、資産を大きく増やすことに成功しました。特にハイパフォーマンスをもたらしたのは、リボンゴヘルス(LVGO)というベンチャー企業です。

同社は糖尿病やうつ病などといった慢性疾患の病状をネット経由でモニタリングできるデバイスを手掛けています。いわゆる「遠隔医療」に関連しており、コロナ禍では慢性疾患にかかっている患者が気軽に病院まで足を運べないわけですから、需要が拡大するのは必至だと思い、安心して仕込めた銘柄でした。

同社が開発したデバイスを使えば、血糖値などの推移を離れた場所から24時間にわたってモニタリングできるだけでなく、必要に応じて医師などからアドバイスも得られます。その後にLVGOは、オンライン診療プラットフォームを提供するテラドック(TDOC)によって買収されました(2020年10月30日に合併完了)。それに伴って上場廃止となり、現在はTDOC株として保有しています。

−−当初の目標だった1億円の大台達成はいつ頃でしたか? また、まーしーさんがグロース株を選び抜く際に、注目しているポイントとはどういったところでしょうか?

1億円達成は2021年2月です。実はツイッターで情報発信を始めたのは、1億円の目標を達成するまでの紆余曲折を日記風に綴って自分に言い聞かせるためでした。

高成長銘柄を探すうえでは、日頃からウォールストリートジャーナルやブルームバーグ、ロイターなどの情報をこまめにチェックし、伸びている業界やその中核的プレイヤーを把握するように心掛けています。私自身は数字に弱い典型的な文系人間で、英語にも強くありません。しかし、それでもきちんと決算書を読めるようになりましたし、日本語版の記事やグーグル翻訳などによってしっかりと情報収集を行っています。

こうして有望な分野や企業に目星をつけたら、四半期決算ごとにで売上高が前年同期比で2ケタの伸びを示し、前年比では最低でも40%増が見込まれることを選別の前提条件に定めています。そして、この条件をクリアした銘柄をまだ大半の投資家が気づいていないタイミング(割安水準)で仕込んでおき、成長が続く限りホールドし続けます。

結局、日々の株価変動には大きな意味がなく、企業が成長を続けるなら、それに伴って株主も利益を享受できるはずです。だから、株価を毎日追いかける必要はないのですが、私の場合はアフター5のプライベート時間を確保しやすい仕事だし、フルインベストに(全力買い)しているので、起きている限り、米国市場の動きは毎晩チェックしていますね。

労働収入によって2000万円を稼ぐのは難しい

画像=PIXTA


−−“億り人”は一時的だったとのことですが、足元の状況はいかがでしょうか?

2021年だけの数字を見ると、私が所有している成長株はアンダーパーフォームとなっています。概して成長株は、市場環境が悪化している局面に強いからです。大掛かりな金融緩和と財政出動によってもたらされた現在の相場では、自らの成長力は乏しくて割安圏に放置されていたバリュー株がもっぱら物色されています。

成長株は将来の利益拡大を期待して先んじて上昇してきたため、現在のような局面は“値固め”のフェーズにあると言えるでしょう。こうしたことから、今後も成長株を根気強くホールドし続けるというのが基本的なスタンスです。

ただ、長期金利の先行きを読みづらいのも確かで、状況次第では成長株一辺倒のポートフォリオを見直す必要が生じるかもしれません。税引き後の総資産が1億2000万円程度まで増えたタイミングでは、インデックス投資へのシフトも検討したいと思っています。その規模で米国株のインデックスに投資すれば、FIREは夢ではなくなってきそうです。

具体的に私が掲げている目標は、とりあえず40代になるまでに資産2億円を達成すること。もっとも、これもあくまで通過点にすぎず、クリアすれば新たな目標を設定することになるでしょう。

−−これから米国株に投資する人は、まだFAANGを追いかけてもいいのでしょうか? それとも、成長を始めたばかりの新興企業に注目すべきですか?

私が米国株投資を始めた頃にアマゾンの株価は1000ドル未満でしたが、その時点でPER(株価収益率)は200倍に達していました。PERから判断すればなかなか手を出しづらかったはずですが、現在の株価は3000ドルを突破しています。

「さすがに今から追いかけるのは遅い」と思うかもしれませんが、個人的に依然としてFAANGの株価は割安だと私は思っています。1970年代の米国市場では、「ニフティ・フィフティ相場」と呼ばれた現象が発生しました。「ニフティ・フィフティ」は「イケている50銘柄」といった意味合いで、特定の優良銘柄が市場全体の平均的なバリュエーションと大幅にかい離する水準まで高騰したのです。

現在のFAANGにも似たようなことが言えるかもしれません。たとえば、アップルのiPhoneは競合品と比べて高価ですが、世界的に中流層が増えていくのに伴って、その市場規模は拡大していくでしょう。顧客満足度が98%にまで達しているだけに、所得水準がキャッチアップすれば、より多くの人が欲しがるはずです。

一方で、次のアップルとなりうる有望銘柄は、新興企業の中に数多く存在しているでしょう。しかしながら、そういった銘柄は株価の値動きが荒くなりがちで、今のうちから買っておくと、20~30%の急落局面に遭遇する確率が高いと言えます。

それでも平気だというなら話は別ですが、大半の初心者は素直にFAANGを買っておくのが無難かと思われます。私自身はリスク許容度が高く、お金持ちになりたいと思っているので例外的で、一般的にはむやみに高いリスクを取る必要がなく、FAANGで安定的に年率13~14%を享受できれば十分ではないでしょうか?

−−最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。

以前、「公的年金では2000万円不足」問題が世間を騒がせましたが、「米国株なら不足分を補うのはさほど難しいことではない」と実際に投資してみて痛感しました。対照的に、労働収入によって2000万円を稼ぐのはかなり難しいのが現実です。

米国市場がここまで上昇するのは、国力そのものが強いからでしょう。今のところ、日本はまだ先進国に属しているものの、人口減少に伴って働き手が減り、経済が衰退していくわけですから、いずれは離脱してしまうかもしれません。

そうなると、労働収入で不足分を稼ぐのはいっそう難しくなります。しかし、別で稼ぐ手段(米国株投資)を確立できていれば、年金など将来の金銭的不安は解消されます。

ただし、「誰かが有望だと言っていたから」という理由だけで買うのだけは、くれぐれも止めたほうがいいでしょう。自分自身できちんと分析して選ぶことが大前提です。