わずか3年余りで5億円の大台を突破するなど株式相場に彗星のごとく現れたかぶとーきょーさん。いまではその一挙手一投足が注目されるが、株式投資をはじめた2017年の資金はわずか50万円――。ここでは、かぶとーきょーさんがどうやってその驚異的な資産増加を成し遂げたのか。その手法や理由に迫ります。

かぶとーきょー
かぶとーきょー
2017年2月、友人に触発されて50万円を元手に株式投資を再スタート。同年12月に5000万円、2020年には総資産が5億円の大台に到達。自らの得意分野であるゲーム株を中心に徹底した調査を行い、投資銘柄を絞り込む手法を武器に驚異的なペースで資産の拡大を続けている。会社員として働くかたわら、これと決めた数銘柄を年に何回かトレードする投資スタイル。現在は社会貢献を念頭に置きつつ、株式以外にも投資の幅を広げている。GMOクリック証券主催のトレードアイランドでは、月間収益歴代3位を記録。30代。
Twitter:@kabukautokyo

徹底分析と集中投資で資産は急拡大

チャート,投資
(画像=PIXTA)

――50万円の元手を数年で5億円まで増やし、株式投資の世界に彗星のごとくあらわれたかぶとーきょーさんですが、そもそも株式投資を始められたきっかけはなんですか?

実は新卒として会社員になった頃から、ちょいちょい同僚と一緒に株を触っていました。当初は、株式投資は運の要素が強いもので、一種のギャンブル感覚でしたね。他人から得た情報などを参考に、年に1度くらい買ったり売ったり。当然、それでは大きく勝てるわけもなく、割と大きな損をしてしまったので取引をストップしていました。

2017年に友人が株でかなり勝っているという話を聞き、彼に教えてもらいながらやれば自分も勝てるだろうと思い、投資を再開しました。彼は「株価がストップ安した銘柄を逆張りで狙う」手法を得意としていたのですが、そんな時、スマホゲーム会社のアエリアが特損を発表して、ストップ安したんです。

細かいことは言えませんが、私はゲーム業界に携わったことがあるので、ゲーム業界であれば自分の知識を生かして勝負できるなと考えました。それで、アエリアやオルトプラス、エニッシュといったスマホゲーム株の売買をしたら、一気に1000万円くらいまで資産を増やすことができたんです。

――ちょうど2017年はスマホゲーム株がブームになっている時でしたね。とはいえ、50万円が一気に1000万円というのは、かなりリスクを負った取引をされたのではないでしょうか。

信用取引を活用して買えるだけ買っていましたね。友人が「企業のIR(情報開示)の意味を読み取れれば勝てる」と言っていたので、助言通りアエリアのIRを読み解いてみたところ、その特損はヒットしなかったゲームや買収した会社に関する損失、いわば“過去”を清算するためのものだったんです。

その当時、アエリアは「A3!」というスマホゲームの発売を控えていたのですが、そのゲームは事前登録者が50万人を超えるなどヒットの予感がありました。つまり、会社は過去を清算する一方で、未来への布石を打っていたわけです。これは買いだなと。

――アエリアの成功トレードで、まずは最初の資産急増となったわけですね。その後はどういう取引をされたのでしょうか。

アエリアのトレードではIRの分析など調査はしましたが、ギャンブル的な要素がなかったとは言えません。その後はリスク管理を意識するようになり、自分が勝てると確信した銘柄に集中して投資するようにしました。いまでも、1年のうち大きなポジションを持つのは2、3カ月程度です。その分、勝てると確信を持てるようになるまで、その銘柄を徹底的に調べ上げるようになりました。

次に大きく勝てたのは、やはりスマホゲーム会社のモブキャストです。スマホゲームのヒットは、そのゲームに何のIP(マンガやアニメ、ゲーム内で登場するキャラクターなどの知的財産権)が使われるかに大きく影響されますが、モブキャストが開発しているゲームで使われる可能性があるIPをリストアップして、どのIPならどのくらいの売り上げになるかを予想しました。

それぞれのIPによる売り上げの予想は、マンガの発行部数や過去のゲームの売れ行きなどを総合的に判断して立てたのですが、これも自分がゲーム業界に携わった経験があるからできたと思います。

結局、モブキャストのIPは人気作品の「キングダム」でした。私のリストの中に入ってはいましたが、すでにゲーム化されたことのあるIPで、爆発的な売上増加は見込めなかったため、発売開始を前に利食いしました。利食いや損切りのルールは特に決めておらず、その銘柄に対して考えていた自分のストーリーが崩れた時などに売るようにしています。

中国人にインタビューして情報を収集

スマホ,
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――一般の投資家でそこまで調査している人は少ないと思います。

他の投資家がすでに知っている情報で勝負するのでは、自分だけ先行して動くことはできません。そのため、大きく勝つのは難しいでしょう。「他の人が気付いていない部分に果実がある」ということです。

次に大勝できたエクストリームは、ヒットしそうなゲームを出す予定なのに、その可能性にマーケットが気付いておらず、時価総額は30億円程度と過小評価されていました。ゲームがヒットし続ければ、時価総額が数百億円レベルまで増えても不思議はないと思ったんです。

――その「過小評価」にどうやって気付いたのですか?

エクストリームは「ラングリッサー」というIPを使ったゲームの続編を中国で配信する予定でした。私自身はそのIPを知らなかったのですが、実は中国ではスクウェア・エニックスのファイナルファンタジーやドラクエと同じくらい知名度があることがわかりました。どうしてそれがわかったのかというと、実際に何人もの中国人に「ラングリッサーって知ってる?売れそう?」と聞いてみたんです。

ほかにも、事前登録サイトで日々どれくらい登録者が増えているのかを見たり、翻訳サイトを使って中国のテスト配信の状況などを調べたりしました。中国のゲーム市場は日本よりずっと大きいですし、もし中国市場で成功すれば、エクストリームの業績は急拡大します。

そのゲームがリリースされ、セールスランキングがぐんぐん上がっていくのを見ると、さすがに興奮しましたね。そういえばアエリアを買った時も、池袋にある「乙女ロード※」に実際に出向いて、どんなマンガやアニメが流行っているのかを聞きました。

※サンシャインシティの向かい側にある、マンガやアニメショップが立ち並ぶ場所。女性向けマンガやアニメの聖地として知られる。

――エクストリームの株価は2018年に1000円以下から6290円まで暴騰しています。この時、エクストリームだけで3億円以上稼がれたとか・・・。資産が一気に増えたことで、投資スタイルや手法に変化はありましたか?

いまでも集中投資というスタイルに変わりはありませんが、先ほど少し触れたように、資産が1000万円台に乗ったあたりから徐々にリスク管理を意識するようになりました。それ以前は一度に5銘柄を保有していたりしたのですが、複数の銘柄を保有していると、相場の地合いがいい時は資産が増える一方、地合いが悪い時はどうしても減ってしまいます。それなら、勝てると確信をもった銘柄に集中して投資したほうが、リスク管理の観点からもいいと考えたわけです。

教科を絞って早稲田大学の合格を狙う

株式市場,値動き
(画像=PIXTA)

――コロナショックがあった昨年も、前年比プラスを維持されたそうですね。

2020年は、トータルで1億円から2億円の間くらいのプラスになりました。コロナショックの時は、2月がプラス、3月がほぼトントンでしたね。これは、やはり「全体相場の地合いや世界経済などマクロ情勢の影響がない銘柄に絞った投資」をしているからだと思います。

世界経済がどうなるとか、コロナのワクチン接種が経済にどう影響するのかを予想するのは非常に難しいですよね。マクロになればなるほど、色々な要素が絡み合って予想が難しくなります。同じように、全体相場の値動きを予想するのは困難ですが、1つの個別銘柄の値動きは徹底的に調べれば割とできるようになるんです。また、「この会社のゲームはヒットするのか」「どのタイミングで増資しそうか」「いつ好材料の発表があるのか」といったことも予測できるようになってきます。

――確かに、マクロ経済や為替相場の動向をピタリと当て続けられる人はいません。

考える要素をできるだけ減らして、1つの銘柄にだけフォーカスすれば、その銘柄で勝つ確率が上がります。これは大学受験と似ていて、5教科7科目で東大を狙うのと、2、3教科を集中的に勉強して早稲田大学を狙うのでは、どちらが合格率が高いか。私は前者ではなく、後者の「英語と世界史に絞って早稲田大学の合格を狙う」方法を選んでいるわけです。

日々、世界経済や日米の指標をチェックをする必要はなく、週末に1銘柄に絞ってひたすら掘り下げればいいんです。株式投資は、相場全体が急落している時に勝負してもなかなか勝てませんが、この手法なら下げトレンドでも勝つことができます。

もちろん、マクロ経済について全く知らなくていいわけではありませんが、ぼんやりと流れだけつかんでおけばOKでしょう。私は、個人投資家、特に会社員など時間に余裕がない人は、ぜひこのスタイルで臨んで欲しいと思っているんです。

――ただ、このやり方は銘柄選びのセンスが必要になりそうですね。

銘柄の絞り込みにはセンスが必要かもしれませんし、最初はうまくいかないかもしれません。ただ、選んだ銘柄がヒットすれば、爆発的に資産を増やすことができるのがこの手法の魅力です。それに、1つの銘柄の研究を続けると、「大化けまではいかないな」「この投資タイミングなら勝てそうだ」といった状況が見えてくるようになるんです。研究してその銘柄がダメだと思ったら、次の銘柄に切り替えればいいわけです。分散投資で資産を多くの銘柄に振り分けると、その1銘柄を徹底的に研究している人には勝てないですよね。

資産増加で投資の意義を考えるように変化

ベンチャー,投資
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――ある程度資産が増えると、自分の売り買いだけで株価が大きく動いてしまったり、同じやり方が通用しなくなったりするという話をよく耳にします。

増えた資産をそのまま再投資していれば、同じやり方を続けるのは難しいかもしれません。

――では、その問題にどう対応されているのでしょうか。

実は、私はその年に勝った金額は全て出金し、年初に2、3000万円を元手にリスタートしているんです。

――そうなんですか! 利益を再投資する「複利運用」がブームになっているなか、珍しいやり方ですね。

複利運用で利益を積み立てていても、リーマンショックのような大暴落がくれば、コツコツ稼いだ利益も一瞬で失ってしまいます。私は、2000万円を1億円にすることはできると思うのですが、5億円を何十億円にまで増やすことは、今のままではできないでしょう。

資産が1億円を超えた時、流動性のある銘柄に投資したり、投資する銘柄数を増やす投資家もいますが、その人に合っているやり方であるならそれはそれで問題ないと思います。ただ、多くの銘柄を一度に保有するやり方は自分には難しい。自分の能力を考え、いまの方法を取っているだけです。

――稼いだお金は使っているわけでしょうか・・・?

自分や周りの人のために使うべきお金はしっかり使い、少しでも経済を回すように意識はしています。その一方で、これまで稼いだ資金を使って、コロナで困っている会社やスタートアップ企業への投資を始めました。上場企業の株式を売買しても、サヤ取りをしているだけで社会的意義はあまりないですし、株を売買する人は私である必要はないですよね。

でも、そうした会社に出資をすることで「この出資のおかげでやりなおすことができた」と言われると、投資の意義を深く感じることができます。これからは、こうした社会的な意義を考えながら投資をしていきたいと思っています。

自分がその銘柄に投資をして「勝てる理由」を考える

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――いま、どの証券会社を使っていますか?

もともとはGMOクリック証券を使っていましたが、GMOだと名証(名古屋証券取引所)など地方市場に上場している銘柄が買えなかったので、いまはSBI証券を使っています。トレードツールも充実していますし、スマホひとつで欲しい情報が得られるので便利です。

――最後に、読者に向けて一言、アドバイスがあればお願いします。

「自分がその銘柄で勝てる理由」を考えながら投資したほうがいいと思います。たとえば、自分が医者で医薬や医療機器に詳しいからとか、ゲームが大好きで他人よりゲームの売れ行きに詳しいからとか、あるいはコミュニケーション能力が高くて情報を大勢の人から取れるからとか、何でもいいんです。

最初は手探りになるでしょうが、それを見つけることができたら、あとはそれを続けるだけ。漠然と企業を分析するだけではなく、まずは自分の分析から始めるべきでしょう。

また、株式投資の世界は日々少しずつ変わっています。去年まで勝てた手法が、今年も通用するとは限りません。同じ手法を続けていると周りに似たような手法をする人達が増え、それによって勝てなくなることもあります。株式投資は日々ルールが変わるゲームのようなもの。ルールの変化に適応できるよう、自分の投資スタイルもアップデートしていく必要があると思います。

いまはコロナの問題で社会や経済が変わっている最中ですし、マーケットにも新しい人がどんどん流入しているので、徐々にマーケットのルールも変わっていくでしょう。個人投資家1人では正解にたどりつくのは難しいですが、「何かが変わる」という感覚は常に持っておく必要があると思います。

株式投資では簡単にお金を稼げるのと同時に、簡単にお金を失います。100人の投資家がいて99人が本気で投資をしているとすると、自分1人だけ適当にやっても勝てるわけがありませんよね。実際には本気で株式投資をやっている人は少数で、大半の人は他人に勧められた銘柄を買ったり、人の意見をうのみにしたりしている人の方が多いでしょう。つまり、本気で努力すれば勝てる世界ということです。