学生投資連合USICは各大学にある投資サークルが集まった連合体で「学生の金融リテラシー向上」を目指して、投資のための勉強会や独自イベントを開催している。6月段階で28大学が加盟し、その活動はなお広がりを見せている。そして、現在のUSIC代表を務めているのが慶應義塾大学法学部政治学科2年の八田潤一郎さん。

投資分野は株式にとどまらず、デリバティブ、コモディティなどに広がっているという。大学生といっても投資実績と投資手法はセミプロの領域にある。そんな八田さんの投資歴や手法について話を聞いた。

八田潤一郎(はった・じゅんいちろう)
八田潤一郎(はった・じゅんいちろう)
慶應義塾大学 法学部政治学科2年 学生投資連合USIC代表 小学生のときに株式投資をはじめ、アベノミクス相場で大きく資産を増やすも、2015年、2016年チャイナショック、2018年、2019年米中貿易摩擦を経て、機関投資家や地合いの影響を比較的受けにくいニッチな小型銘柄の長期投資にシフト。2020年のコロナショックで分散投資とリスクヘッジの重要性を認識し、FX(外国為替証拠金取引)、不動産(REIT)、仮想通貨、コモディティ、デリバティブを新たに運用しながら、毎日勉強中。金融を学ぶ「おもしろさ」、投資の「楽しさ」を多くの人に知ってほしいと願う。
【学生投資連合USIC】
「日本を学生から金融大国に」というビジョンのもと「学生の金融リテラシー向上」のための活動を行う。全国28大学1000人以上で構成される日本最大の金融系学生団体。企業団体・官公庁との勉強会開催、IRコンテストの運営、金融情報誌SPOCKの発行を行う。現在、大学生対抗IRプレゼンコンテストに参加する上場企業を募集中。

新興企業投資を5年以上のタームで狙い撃ち

中長期投資
(画像=PIXTA)

八田さんが投資をはじめたきっかけは、小学生にさかのぼるという。単純に「お金を稼いでみたい」という発想が原点にあった。しかし、小学生ではアルバイトもできないために、株式投資の勉強をはじめたという。幸い、両親も株式投資の経験があったようで、投資に対して寛容な家庭環境にあったことは好都合だったようだ。ただ、両親の投資成果はお世辞にもよかったとはいえずに、投資の勉強は独学で進めたという。最初の投資原資はお年玉を貯めた数十万円から、株式投資ではじまった。

その八田さんの現在の投資スタイルは、新興企業の銘柄で5年以上の中長期投資が基本となっている。銘柄選定のうえで重視しているのは、時価総額と営業利益率の2点。「時価総額がアンダー100億円の事業規模がまだ小さい銘柄で、かつ営業利益率が目安として20%以上の企業がターゲット」という。その場合、「売上高が右肩上がりの成長を見ている企業がベース」とも付け加える。こうした企業の株価は5、6年間上昇を続けるトレンドを持っているそうだ。

成功例は「アイ・アールジャパンホールディングス」

IR,企業分析
(画像=PIXTA)

この視点で成功体験を満喫できたのが「アイ・アールジャパンホールディングス」(6035)だった。アイ・アールジャパンホールディングスは、株主・投資家等のマーケットに関する情報提供・戦略立案・実行支援を専門としたコンサルティング会社で、企業の株主判明調査や議決権行使の支援業務で国内トップシェアを持つ企業でもある。2015年にジャスダックにIPO(新規上場)、2017年に東証2部に、2018年には東証1部に市場変更と、トントン拍子に成長した企業でもある。

「初めて投資したのは6年くらい前。買った当時は事業規模も小さな銘柄でしたが、安いときにまとまった株数を買っていました。その後、適当に利益確定を交えて、まだ一部は保有しています」という。また、八田さんによると、成功銘柄でも買い増しは基本的に行わない。新しい資金は新しい銘柄の投資に振り分けるという。

また、5年以上の投資期間についてだが、「新興市場の銘柄は、市場の需給に惑わされて、材料出尽くしで急落したりします。こうした短期のアクシデントに振り回されたくないために5年間じっくりと保有するスタンスを貫いています。基本的にいい会社は伸びるという信念があるので、買ったら放置しています」という。

もちろん、失敗銘柄もある。利益率が高くて時価総額が低かった条件を持つ電子商取引サイト運営の銘柄を数年前に買ったが、あまりにも動かなかったために、手仕舞ってほかの銘柄に乗り換えた。ところが、昨年のコロナショックがあってから株価はにわかに上昇。「新興企業銘柄の場合は、本格的な株価上昇のタイミングが読みにくいことを経験しました」と振り返る。

現在のイチ押しは物流テック企業のロジザード

物流
(画像=PIXTA)

そして今は、注目銘柄のひとつとして、通販向け在庫管理システムをクラウドで提供するマザーズのロジザード(4391)に注目しているという。アパレル向けに強く、ネット通販や3PL(サード・パーティー・ロジスティックス)向けが拡大している物流テック企業。

「この会社のシステムから発送している出荷件数は年々上昇しているものの、国内の宅配便の総取扱数に占める割合は、まだ1.9%程度にとどまっていて、まだまだ無限大の成長余地があるとみています」(八田さん)

EC(電子商取引)への支出が加速してくる時代の流れにも関わらず、物流現場では人手不足が深刻化するので自動化、省力化のニーズはまだまだ進むとみている。また、ロジザードはサブスクリプションモデルのビジネスを持ち、安定した業績成長を見込めることも魅力だそうだ。

また、八田さんは株式以外にも投資の領域が広がっている。現在は株式以外だとコモディティ関連のデリバティブがメインになっており、昨年から国際商品市況が上がっている流れを上手くとらえることができたという。買いだけでなくコモディティの中でも大豆、コーン、小麦など割高なコモディティをカラ売りして、農産物の中でも割安なものを新規に買っている。コーヒーや砂糖はまだ上がる余地があるとみている。「少額からはじめてまずは経験を積むことが大切」だと考えている。

スマートフォンの操作性を重視

スマホ,投資
(画像=PIXTA)

さて、こうした八田さんが利用している証券会社はSBI証券。その理由は2つあり、手数料無料化など証券界の先駆け的な施策を推進しているところに魅力を持っているという。2番目はスマートフォンアプリが使いやすいということを挙げる。ほかの証券会社の取引口座はいろいろと持っているが、大学生は行動圏が広く、家でパソコンを立ち上げてという時間は少ない。そのため、気軽に売買できるスマートフォンの操作性は重要なポイントだという。

新興企業銘柄の中長期投資を基本スタンスとして、投資領域を株式以外にも広げている八田さん。投資初心者へのアドバイスとして、株式以外でも儲かるチャンスが広がっていることを知ってほしいと語る。

「中央銀行が政策を出すと、債券、コモディティなど様々な金融商品が動きます。投資の成果の材料はつながっているのです。これがわかれば、おのずとニュースをチェックするようになります。電子版ニュースや、ブルームバーグやロイターなど速報性を重視したニュースには、常に気を配っておきたいものです」(八田さん)

そして、八田さんの夢はアクティビスト。日本企業のROE(自己資本利益率)はまだまだ低い。「内部留保や利益剰余金が、日本企業には半端なく溜まっているので、こうした資金をイノベーションにつなげる努力が必要です。企業に働きかけることができる仕事に就くのが希望」だという。日本最年少のアクティビストの誕生が近い将来みられるかもしれない。