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渡辺 健太郎(わたなべ けんたろう)
株式会社マイクロアド代表取締役 社長執行役員 渡辺 健太郎
1997年大塚商会入社。1999年に株式会社サイバーエージェントに入社。同社にて大阪支社を立ち上げるとともに 支社長に就任、その後「Amebaブログ(アメブロ)」開始に伴い事業責任者として立ち上げを担当する。2006年に 株式会社サイバーエージェント取締役就任後、2007年に株式会社マイクロアドを設立。
株式会社マイクロアド
マイクロアドは、消費者のオンライン・オフラインの膨大な消費行動データを集約したデータプラットフォーム「UNIVERSE」を軸に、業界業種に特化した様々なマーケティングプロダクトを展開しております。また、屋外ビジョンや各種施設内のデジタルサイネージのネットワーク化を行うデジタルサイネージ事業や、アジア圏を中心とした海外でのマーケティングコンサルティング事業を行っております。

これまでの事業の変遷やターニングポイントについて教えてください。

私自身は1999年に上場前のサイバーエージェントへ中途入社し、2007年7月にマイクロアドを設立すると同時に代表取締役に就任しました。

事業の変遷の中では、今のビジネスを作ったことが大きなターニングポイントとなりました。サイバーエージェントに在籍していた当時、数多くの新規事業を立ち上げてきましたが、どれもぱっと生まれて、トレンドに乗って、しばらくすると無くなる、「事業の大量生産、大量廃棄」をしているような状況でした。いい経験ではありましたが、そろそろ腰を落ち着けて長く取り組めることをやりたいと思っていた時に今のビジネスに出会い、10年単位でやれるテーマだと思いました。

2022年6月の東京証券取引所グロース市場への上場も、1つのターニングポイントです。色々クリアしなければいけないこともあり、だいぶ時間はかかりましたが、元々上場は目指していました。やはり会社をやる以上は、成長していくべきだと思っています。そうでなければ、個人で事業を行えばいいと思うので、ビジョンを語っている限りは成長し続けなければいけないなと思っています。

株式会社マイクロアド
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一番感銘を受けた書籍とその理由は?

これまで読んできた中で感銘を受けた書籍は、『サピエンス全史(ユヴァル・ノア・ハラリ著)』です。私は元々進化論や脳科学、DNAなどの話にとても興味があるのですが、この書籍で印象的だったのは、ホモサピエンスが生物の進化の中で生き残り、ここまでの繁栄ができたのは、 脳の「認知革命」が重要だったという説です。より具体的にいうと、「虚構を構築し、それを信じる力」が生まれて、それが、ホモサピエンスだけが持っている重要な能力だったということです。例えば宗教だったり、通貨や貨幣もそれ自体は実態が無い虚構ですよね。ですが、多くの人が信じるから成り立っています。

この書籍を読むまでは「虚構」を、どこかでよくないものと捉えていた部分があったのですが、それこそがホモサピエンスの本質であり、ホモサピエンスならではの力だということを知り、なるほどな、これでいいんだと、腹落ちしました。事業では、投資家に対してはもちろん、社員やクライアントに対してビジョンや戦略を語る中で「ストーリーに共感してもらえるか」が、資金を集められるか、会社や商品を選んでくれるかどうかにおいて重要です。ホモサピエンスの基本能力であるストーリーや物語を構築する能力はやはり重要で、それをより強化しなければいけない、もっとエネルギーをかけてクオリティを上げていかなければいけないと、この書籍を読んで強く思いました。

経営において重要としている考え方を教えてください。

あまり箇条書きにできるような軸などはないのですが、やはりある種の「ストーリー」に沿って考えています。例えば、会社のカルチャーやビジョンにおいて、どういうスタイルでありたいかを、ストーリーに沿って考えた際に、筋としておかしくないかを考察することが、立体的な判断になると思い、重視しています。

少し時間軸を短くして経営判断の観点でいうと、「誰がどういうフォーメーションでやるのが最適か」を軸に考えています。ここのラインだと良くない、こうしたらこうなる、といった部分はしっかりイメージしています。あまり軸に厳密な基準を設けていないのは、例えば新規事業では最初はロジカルに戦略などを立てて進んでいきますが、結果当初の前提は間違っていることが多いと思うからです。世の中だったり、人々はロジカルに物事を考える場面ばかりではないですよね。例えば、クライアントの理想はもちろん売上や利益が伸びることだと思います。ただし、担当者は違うかもしれない。単純に自分の保身を大事にしているかもしれないし、売上が伸びることよりも、新しいことをやりたくないという人や業界もあります。このように合理的じゃない部分も多いと思っているため、物事の本質的な部分を読み取ることの方を重視しています。

最後に、従業員への期待について教えてください。

当社は「アドテクノロジーの企業から、総合データカンパニーへ」というスローガンのもとに、データ活用を軸として成長していこうと考えています。現在はデータを駆使したマーケティング事業がほとんどですが、データのポテンシャルはもっとあり、マーケティング以外にも活用できると思っています。

その上で従業員へ期待したいのは、その構想に向けて、それぞれの持ち分で何かしらの拡張をしてもらいたいと思っています。新しいチャレンジでも、既存の拡張でもどちらでもいいです。例えば、 今のマーケティングの分野でエリアや拠点を広げていくことをやりがいに思う人もいれば、もう少しエンジニアリング寄りで機械学習をフルで活用していきたい人もいるかと思いますが、どちらもいいです。いろいろなバックグラウンドを持った人たちがいて、その総和で会社が大きくなって、「総合データカンパニー」に近づいていきたいです。

組織的にはだいぶ整っており、既存事業は伸ばせる状況にあります。これから新しい部分を拡大していく上では、もう少し非連続的な成長が必要で、能力的にも別なものが必要になってきます。そこをどうやっていくかが、これからの課題やテーマになってくると考えています。