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(画像=株式会社マクロミル)
橋元 伸太郎(はしもと しんたろう)
株式会社マクロミル執行役 CFO 兼 CGO
米国ダートマス大学 経営学修士課程修了。 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、株式会社ディー・エヌ・エーにて、グローバルオペレーション、IT戦略、経営戦略、M&A、アライアンス等に従事。2019年9月に株式会社マクロミル入社。2020年7月より執行役員・経営戦略室長に就任し、経営戦略、投資戦略、アライアンス、新規事業支援、各種改善プロジェクト等を推進。2022年4月、CFOに就任。2023年9月より現職。
株式会社マクロミル
マクロミルは、国内オンラインリサーチ業界のリーディングカンパニーです。豊富なリサーチ実績とノウハウ、90以上の国と地域でリサーチが可能なグローバルネットワーク、消費者パネルから得られる多様なデータを活用し、マーケティング課題の解決に向けて最適なソリューションを提供します。サステナビリティに関する取り組みも積極的に行っており、レポートや特設サイトを公開し、「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄にも選定されています。

ESGにおけるこれまでの取り組み

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(画像=株式会社マクロミル)

まず、当社の事業モデルについてご説明します。マーケティングリサーチ業界には様々な事業モデルがありますが、当社の場合は、あらゆる層の一般消費者の方の中から、データの取得および利活用の許諾をいただいている消費者パネルを構築しており、その消費者パネルがどのような意識で、どのような行動をされているのかという情報を取得・分析し、その結果を消費者インサイトとしてクライアントにご提供をしています。

1990年代は対面や電話などで質問する調査が主流でしたが、インターネットの普及に伴い、当社は業界に先駆けてオンラインで情報収集を行うオンラインリサーチを主力にビジネスを展開してきました。 現在、マクロミルグループの消費者パネル総数は国内最大級(※)の約3,600万人におよびます。 消費者が求める商品やサービスの正確な情報をクライアントに提供することで、クライアントの「より良い意思決定」の積み重ねにつながり、良質な商品やサービスの実現に貢献しており、当社の事業を推進していくことが、顧客企業、消費者ひいては社会全体への貢献になると考えています。

※2023年8月マクロミル調べ。マクロミルグループのアンケート配信可能数の合計値。他社データについては、国内リサーチ企業の主要4社が、2023年8月時点で開示している情報に基づく

 

環境の面においては、スコープ2ではテナントとして入居するビルにおける電気使用に伴う二酸化炭素排出、スコープ3ではデータ管理のためのクラウドサービス提供事業者における二酸化炭素排出が大きく、排出量削減のためには当社だけではなく、サプライチェーン全体としての最適化が必要です。そのため、協力会社と連携しながら、クライアントも含めたディスカッションを行い、二酸化炭素削減の対応を行っています。

社会領域においては、当社の消費者パネルから1週間の消費金額、消費カテゴリー、消費マインド、景況感などの指標を週次で取得しており、そのデータを「Macromill Weekly Index」として公表しています。

即時性高く公表しており、信憑性も高いことから、内閣府での採用実績があり、景気の判断材料としても使われています。また、当社は様々なアンケートツールを提供しているのですが、特定非営利活動法人(NPO法人)、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)を対象に、セルフアンケートツール「Questant(クエスタント)」とアイデア収集ツール「ミルトーク」を無償で提供する活動も行っています。

ガバナンスに関して、企業として透明性と公正さの確保は絶対的な基準です。委員会等設置会社としての立場を確立し、企業経営の監視という観点から社外取締役で構成された指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設けています。これらの組織は経営の公正性を保証し、ステークホルダーからの信頼を獲得しています。

さらに、内部監査室を設置しており、この組織は一定の監査計画に基づき活動を行い、経営層の意志決定を適切に行うための客観的な情報を提供しています。さらに、内部通報制度を導入しており、社員が任意のタイミングで問題を報告でき、組織全体で早期に対処することが可能になっています。

また、人材こそが当社グループの事業を支える最も大切な資産だと考えています。 クライアントに多様な示唆を提供する上では、当社自体も多様なマインドが集結している必要があり、会社内の多様性を推進することを重要視しています。

今年度は、最大週3日のリモートを可能とし、ハイブリットなワークスタイルになっています。また、育休取得後の復職率は96%という比較的高い水準を保っており、5人に1人は子育て世代であるため、小学校四年生になるまでの間は6~7時間の時短勤務が可能となっています。 短いスパンで働き方を変えたい方もいるので、三ヶ月おきに勤務時間を見直す体制も整えています。

当社は短期で様々な経験をして成長ができる機会があると考えています。例えば実績があれば、新卒でも5年でマネージャーになり、30代前半で執行役員になる方もいます。平均年齢33歳と若く、営業やリサーチャー、データアナリスト、データコンサルタントなどの専門性の高い多くの職種があるため、多様なキャリアパスが志向でき、長く勤めてもらえる環境があると考えています。

我々はデータを扱う会社であるため、データを活用できる「データネイティブな人材 」の育成にも力を入れています。データの重要性は年々増していますが、データでマネタイズして事業として展開できている企業は少ないと考えています。

我々は20年以上データを扱ってビジネスを行っているので、データに対するリテラシーや専門知識の習得が可能で、これまで培った知見を活かした社員教育、クライアントへのサービス提供を実施しています。

修制度も充実しており、リサーチャーであれば三年間、データアナリストは新卒の際に必ずアナリスト基礎研修を受ける必要があり、その後も希望に応じて自社で開発したアナリティクス研修プログラムを受講することができます。また、より上流の学びを提供するために「マクロミル・コンソーシアム」という形でパートナー企業への出向や産学連携の取り組みも行っています。

多種多様な人材にいかに長く働いていただけるか、活躍いただける環境をいかに提供できるかを重要視しており、引き続き人材育成を強化していきたいと考えています。

 

ESGの取り組みや事業の強み、実績

9つのマテリアリティを掲げており、SDGs目標としては「作る責任・使う責任」への貢献が大きいと考えています。サステナブルな社会を創るためには消費者の動向を正確に捉える必要があります。

昨今では、使う側である消費者において、健康や環境に対する意識が高まっていますが、そうした消費者の声を伝える責任があると考えています。

当社が提供するデータはタイムリーで信憑性が高く、前述したように「Macromill Weekly Index」は内閣府などでも景気判断の材料として使われています。

また、国内2,500社を超えるクライアントにおいて当社のリサーチデータが活用されているという事実は、我々の事業の強みと具体的な実績と言えます。消費者の動向を正確に読み取り分析することで、クライアントの経営戦略や商品開発等に重要なインプットを提供しています。

現状だけではなくESGの取り組みでこれから目指すところ

現状に満足せず、我々は常に前を向いています。私たちはデータを活用した新しい価値提供を目指し、そのためにタイムリーで精度の高いデータ提供を行うことが重要と考えています。

また、データの取り扱いの難易度も高まっており、セキュリティやプライバシーの意識も高まっています。個人情報の取り扱いの安全性が非常に重要視されており、当社はデータを扱う企業として、PマークやISMSを取得するなど、データの安全対策にも力を注いでいます。GDPRや個人情報保護等の規制が厳しくなる中で、情報の安全性は当社の重要な競争力となっています。

今後の上場企業の意義や投資家ユーザーへのメッセージ

投資家や社員、クライアントなど全てのステークホルダーから、サステナビリティに関する質問は年々増えており、以前よりもサステナブルな社会の実現を意識した行動が企業にも個人にも求められていると感じています。

そのため、我々はステークホルダーやサプライチェーン全体として行動していく必要があると考えています。

今後、我々は更なる進化を遂げていくために、サステナビリティ委員会を通じて情報開示を充実化させるとともに、サステナビリティに関する取り組みも積極的に推進していきます。新たな取り組みに優先度を高く置くことは日々の業務が忙しい中で難しいですが、積極的に社内外への発信を行っていきたいと考えています。

これからもビジネスを通じて社会貢献を行い、社会全体の成長に寄与し続けていきます。

(執筆・構成=川村 真史)