東京大学卒業。大手通信関連企業にて法人営業(金融機関担当)、財務、投資・M&A、新規事業開発を経て、2020年GMOペイメントゲートウェイへ入社。企業価値創造戦略統括本部グローバル管理企画部部長に就任。海外事業の会計・財務・人事等を担当。2021年よりESG推進業務を兼務。
ESGについてのこれまでのお取組みについて教えてください。
我々は「社会の進歩発展に貢献する事で、同志の心物両面の豊かさを追求する」という経営理念を掲げています。私たちの事業の中心は決済代行事業ですが、現金決済をオンライン化し、キャッシュレス化を進めるという側面があります。事業を通じて、社会の進歩発展、脱炭素化に貢献していると考えています。
また、私たちはお客様へのサービスのご提供を通じて、紙の削減にも力を入れてきました。具体的な例として、東京電力エナジーパートナー様の電気料金の振込用紙をペーパーレス化した取り組みや、ZOZOTOWN様の後払い決済の際に送付する紙請求書をスマートフォン上に電子バーコードを表示する仕組みへと変える取り組みをご支援させていただくなど、数多くの実績を持っています。 これらのご支援を通して、私たちは日常生活における紙の使用を削減し、環境負荷の軽減に貢献してきました。
さらに、ESGにおける情報開示も積極的に行なってきました。Scope2、Scope3の排出量の開示も行なっています。また、我々がサービスを提供するにあたって、Scope2を排出していますので、環境負荷削減の一環として、脱炭素化を進めることにも力を入れています。
ESGの取り組みや事業の強み、実績
元々弊社ではESGチームがあったわけではなく、2021年の8月にプロジェクトを立ち上げました。副社長の村松が管掌となり、ESGの取り組みに力を入れてきました。 立ち上げ早々、「2023年9月にScope2を0にする」という目標を掲げました。
当初、2021年9月期には1,883トンのScope2があったのですが、2022年の9月期には308トンになり、80%超と大幅な削減を実現しました。 弊社の強みとしては決済処理における大きなプレゼンスがあることです。2022年度の実績では、連結で年間約14兆円の決済処理を行っています。我々の事業はオンラインがメインです。この決済処理を行うにあたってデータセンターを利用します。データセンターで使われる電力に由来する二酸化炭素の排出がScope2の大きな原因となっていました。そこでデータセンターの電力供給を再生可能エネルギーに切り替えました。 事業の成長と排出量の削減の両立が課題でしたが、目標を掲げ、取り組みを行うことによって大幅な削減を達成できました。
また、Scope3(間接排出-サプライチェーン)については、2021年9月期には24,015トンありました。削減の取り組みを行い、2022年9月期には22,462トンまで減らすことができました。Scope3の多くは、グループ会社であるGMOフィナンシャルゲートが提供している、対面で決済処理を行う機器の製造から流通、お使いいただくまでの一連のプロセスの中で生じています。現状はこの部分を減らしていくことが課題です。そのため、端末メーカー様にLCA(ライフサイクルアセスメント)に取り組んでいただき、排出量を定量化していただくアプローチを行なっています。
これらの取り組みの成果として、2023年の6月にFTSE Russell社様のESG指数において5点中、3.7点の評価をいただきました。その結果、FTSE4GoodやFTSE Blossom Japanといった著名な株価インデックスにも選定いただけました。企業価値の向上に大きく繋がっていると考えています。
社内の人的資本への取り組みについて教えてください
働きやすい環境を作ることは日々意識しています。我々は営業利益の継続的な成長を目標に掲げていますが、そのためには優秀な人材が必要になりますので、採用や育成に力を入れています。 さらに、多様性を意識して誰もが働きやすい環境を作ることも目標としています。 人的資本の開示に関してはより強く求められていることもありますので、さらに力を入れて取り組む必要があると考えています。
弊社では年功序列は採用しておらず、やる気があるメンバーに積極的にやってもらっています。「全員が社長」という考え方を持ってもらうということを社内で浸透させています。
さらに、優秀な人材が入社後のマイナスなギャップを感じないで適材適所で働けるような環境づくりに関しても意識して行っています。社内の中でキャリアの可能性を見つけてほしいという思いがあって配属異動やジョブローテーションの希望を申請できる「キャリアデザイン制度」やキャリアチェンジ体験・成長機会の提供を目的にした「社内留学制度」を整備しています。
これから目指しているESGにおける取り組み
今後、私たちは環境への貢献活動の一環として、キャッシュレス化の推進に、より力を注いでいきたいと考えています。
2023年8月に、キャッシュレス推進協議会様から、キャッシュレス決済と現金決済をCO2排出量の観点で比較されたレポートが発行されました。1,000円あたり、現金決済の場合1.06gのCO2が排出されますが、キャッシュレス決済の場合0.34gしか排出がなく、約1/3のCO2排出量に抑えることができるという試算結果です。
私たちは、これまでも、キャッシュレス決済には環境貢献の価値があると考えておりましたが、この考えに一定の裏付けをいただいたと感じています。キャッシュレス事業を通じて、利便性をご提供することに加えて、社会全体の脱炭素化に貢献するとともに、キャッシュレスの環境価値への認知向上にも一層取り組みたいと考えています。
上場企業としての姿勢と投資家へのメッセージ
私たちはESGにおける情報開示にも力を入れています。適時・適切な情報提供を行うことで、投資家様やステークホルダーの方々に理解を深めていただき、ESG評価を向上させることを目指しています。今後もマテリアリティを含め、開示を充実させてまいりたいと思いますし、これにより、透明性を確保し、経営の信頼性を高めて頂くとともに、社会課題の解決を通じた当社事業の持続的な成長性を評価して頂くことで、企業価値の向上に寄与できると考えています。
私たちは常に未来を見据え、未来のために投資を続けます。ESGは未来への投資であり、私たちはその取り組みの一環として、我々とお取引をいただいている事業パートナー様とも協働して、CO2排出を削減する方法を探求しています。これからも私たちは、事業の成長とともにESGへの取り組みを進め、社会と環境への更なる貢献と、企業価値向上の両立を目指していきます。