
深刻化する人手不足、先行き不透明な経済状況、そして後継者不在による事業承継問題。特に地方経済の現場では、企業の存続そのものが大きな経営課題となっています。
こうした根深い課題に対し、組織力で向き合う士業集団があります。企業のあらゆるライフステージを支える「ベストファームグループ」です。福島県を拠点としながら東京にも店舗を構え、グループ11社・総勢280名という確かな組織力を誇ります。
今回は同社に、地方企業が未来を切り拓くためのヒントを伺いました。
ベストファーム税理士法人 社員税理士
東京の監査法人勤務を経て、2011年に故郷である福島県へUターンし、県内最大級の士業グループ「ベストファームグループ」に参画。
税務顧問や事業承継支援、M&A支援、バックオフィスのIT化支援など、企業の経営課題に幅広く対応。
転換点は「士業モール」の設立
ーー貴社はグループ総勢280名という大きな組織ですが、ここに至るまでの歩みの中で、特に大きなターニングポイントとなった転換点についてお聞かせください。
比佐 善宣氏(以下、比佐氏):ベストファームグループは司法書士・土地家屋調査士の斎藤(浩一)が1984年に司法書士事務所を開業したのが始まりです。その後、各種士業を加えてグループ化していきました。
私は東京の監査法人勤務を経て、2011年にUターンで福島に戻りグループに参加。2013年にベストファーム税理士法人を設立しました。
大きな転機は2014年、郡山にベストファームモールという約100~120人が入る自社ビルを建て、点在していた拠点を統合したことです。
以降、司法書士・行政書士・税理士などが同じ場所で連携し、ワンストップのサービス提供が可能になったことが大きなターニングポイントですね。
画像引用:ベストファーム
顧客の課題に応えるワンストップ体制
ーー点在していた拠点を一つに集約した、一番の狙いは何だったのでしょうか。
比佐氏:お客様へのサービス品質を最大化するためです。以前は拠点が離れており、税務相談中に登記の話が出ても「では後日、改めて...」とお時間をいただく必要がありました。
それが一つの場所に集約したことで、その場で「司法書士や行政書士を呼ぶ」といった対応ができるようになりました。
ーー「ワンストップで相談したい」というお客様のニーズは、やはり大きかったのでしょうか。
比佐氏:はい。特に地方ではそうした複合事務所が少なく、「どうせなら一つの場所で全部お願いしたい」というニーズは非常に強かったですね。実際に「ベストファームさんならまとめて相談できるから助かる」といったお声も多くいただいています。
また、当時は士業の「縦割り」が今以上に顕著で、税金は税理士、登記は司法書士、と専門家が分断されていました。そうした中で、あらゆる相談ができる私たちの存在は、県内では珍しかったのだと思います。
画像引用:ベストファーム
弱みを強みに変えたクラウド戦略
ーーワンストップという「ハード面」の整備だけでなく、「ソフト面」、つまり業務の進め方においても、クラウド化には早期から取り組まれている印象です。
比佐氏: おっしゃる通りです。税理士法人としては2013年設立と後発でしたので、既存の事務所と同じやり方では差別化できないという強い危機感がありました。そこで、当時まだ珍しかったクラウド会計(マネーフォワード)を早期に導入し、それを軸にサービスを組み立てることにしたのです。
ーー社内から反対意見が出そうですが...。
比佐氏:もちろん、最初は職員からの抵抗もありました。初期の不具合に「これだから新しいものは...」という声も出ましたが、粘り強く活用を続けました。ネットバンキングとの連携による入力作業の劇的な効率化などを実感するうちに徐々に浸透し、今ではベテランの職員が率先して活用する「社内の第一人者」になっています。
世間的にはクラウド会計が主流になりつつありますが、地方ではまだ従来型ソフトも根強いです。しかし、移行後のデータ連携のスピード感は圧倒的で、タイムリーな月次報告や、社長とリアルタイムで将来の数字を考える「未来会計」が可能になります。この価値は非常に大きいと考えています。
画像引用:ベストファーム
「感覚経営」から「数字で考える経営」へ
ーー実際に、クラウド化の支援を通してお客様が大きく成長された、象徴的な事例があればお聞かせいただけますか。
比佐氏:私が会社設立から支援してきた郡山市の企業様がその好例です。創業当初、その社長は数字にあまり強くない方でした。そこで私たちは、損益分岐点や目標売上といった数値を、クラウド会計を使いながら毎月共有し続けたのです。
すると会社は着実に成長し、数年前には「福島の同業者をM&Aで買収したい」とご相談をいただくまでになりました。その際もクラウドツールですぐに買収後の収益予測を立て、資金繰りをシミュレーションし、社長の意思決定を後押ししました。
ーーまさに伴走支援ですね。設立当初と今とで、社長の経営に対する考え方は、どのように変わったのでしょうか。
比佐氏: 最も大きな変化は、経営者が「感覚」だけでなく「数値」で考えるようになったことです。 月次で自社の正確な数字を確認し続けることで、肌感覚とのズレを修正し、次の一手を的確に打てるようになります。
肌感覚ももちろん重要ですが、そこに数字という客観的な根拠が加わる。 結果として、月次報告を導入しているお客様のほうが、明らかに業績の伸びが早いという印象です。
二人三脚で導く成長の共通点
ーー御社は、具体的にどのような規模や業種の企業を支援されることが多いのでしょうか。
比佐氏:年商1億~5億円の企業様が、私たちのサービスを最も活用してくださっているボリュームゾーンですね。
業種については、福島県内ということもあり建設関連が多いですが、小売や飲食など、本当に幅広く支援させていただいています。会計の基本ルールは普遍的ですので、業種ごとの特性に合わせて指標を調整しながらサポートしています。
ーーそうした成長段階にある企業に対して、特に重要だと考えている支援は何ですか。
比佐氏: タイムリーな現状把握、これに尽きます。もちろんお客様のご予算に応じて四半期や半期に一度の報告となる場合もありますが、それでは手遅れになるリスクがあります。
実際に「半年ぶりに実態が判明して『こんなに赤字だったのか』と驚く」というケースも少なくありません。月次で状況を把握し、早期に軌道修正できる体制こそが、結果的に企業の成長を加速させると確信しています。
そして、その効果を最大化するために私たちが大切にしているのが、お客様との対話の仕方です。会社の規模にもよりますが、特に成長期の小さな会社ほど、社長と直接対話し、数字の背景にある課題まで一緒に考えることを重視しています。
画像引用:ベストファーム
創業期にこそ専門家が必要な理由
ーー次に、創業支援についてお伺いします。最近はご自身で情報を集めて起業される方も多いですが、それでも専門家に相談する方からは、どのようなお悩みが多く寄せられますか。
比佐氏: 個人事業から法人化される方、会社員から独立される方など様々ですが、「YouTubeなどで勉強したが、自分の場合はどうすれば最適なのか分からない」という方が多いですね。最終的な意思決定の段階で、専門家の裏付けが欲しくなるのだと思います。
私たちの強みは、「税理士」と「司法書士」が連携して、多角的なアドバイスができることです。例えば、司法書士だけに会社設立のご相談をされると、税金面での有利不利まではなかなか話が及びません。
私たちは、インボイス制度なども考慮し、事業特性に合わせて「何月決算にすれば消費税の免税期間を最大限活用できるか」といった税務戦略まで含めて、最適な会社設立を設計していきます。
ーー税務と法務を同時に相談できるのは心強いですね。やはり、創業期で一番の課題となるのは「資金面」かと思いますが、融資などのサポートも行っているのでしょうか。
比佐氏: はい。助成金や補助金については情報提供やアドバイスを行いますが、専門性が高いものについては提携している事務所をご紹介しています。
私たちが特に力を入れているのは、銀行からの創業融資の支援です。自己資金だけでは運転資金が不足することも多いですから、事業計画の策定から金融機関との面談まで、資金調達を成功させるためのお手伝いをさせていただいています。
画像引用:ベストファーム
人手不足と事業承継という課題への挑戦
ーー現在の社会は変化が早く、未来が見えづらい世の中です。こうした時代に、貴社はどのような未来を見据え、事業を展開していく方針でしょうか。
比佐氏:やはり、人口減少と高齢化という2つの大きな流れを無視することはできません。特に地方では採用難が深刻化しています。
私たちは、早期から取り組んできたクラウド会計やIT、そして最近ではAIをグループ内業務で活用推進しており、そこで得たノウハウをお客様にも展開したいと考えています。「人がいないから廃業する」という状況をなくしたいですね。
また重要なテーマとして、グループ全体で事業承継や相続の支援に注力しています。「後継者がいない」「会社の資産、社長個人の財産をどう引き継いでいけばいいか」といった、事業とプライベートが密接に絡み合う相談が、近年非常に増えています。こうした人口動態の変化に、専門家集団として的確に対応できるサービスをさらに拡充していく方針です。
ーーそれらの知見を、今後は新しいサービスとして提供していくことも視野に入れているのでしょうか。
比佐氏: はい。AIやDXツールの進化は凄まじく、私たち自身も驚いています。こうした最新技術を、お客様の業務効率化に直接活かせるような、新しいコンサルティングサービスとして提供できないか、現在検討を進めています。
地域社会・お客様へのメッセージ
ーー最後に、これからの時代に御社が果たしていきたい役割と、日々奮闘されている経営者の皆様へ、力強いメッセージをお願いいたします。
比佐氏: 経営者の方々から最も多くいただく声は、「相談できる相手が欲しい」というものです。孤独な決断を迫られる中で、利害関係なく話せる相手を求めていらっしゃいます。
私たちの原点は、まさにそこにあります。だからこそ、創業者は複数の士業を集めたグループを志しました。
これからも、深刻な人手不足や厳しい経営環境といったあらゆる課題に対して、お客様と共に悩み、共に乗り越えるパートナーでありたい。私たちは、経営者にとっての良きアドバイザー、そして「一番の相談相手」として、未来を一緒に創っていきたいと願っています。
ーーーーワンストップの組織力と、クラウドを駆使した先進性。そして何より、経営者にどこまでも寄り添うパートナーとしての姿勢が、ベストファームグループの強みといえますね。今後の成長が楽しみです。
- 所在地:福島県郡山市安積三丁目101番地 ベストファームモール内
- 連絡先:0120-165-246(グループ総合窓口)
- 公式サイト:https://www.bestfirmgroup.jp/
