(画像:NET MONEY編集部)

中小企業の経営者にとって、税理士は単なる「計算の代行者」ではありません。資金繰りから親族間の相続まで、複雑な課題を解決するには高度な専門知と深い共感力が不可欠です。

東京・横浜を拠点に税理士・行政書士として多角的な支援を行う留目津(とどめ・しん)氏は、自らの組織を「町の掛かりつけ医」と定義します。それは経営全般を身近に相談できる存在を目指す、原点回帰の決意でもあります。

数百億規模の財務構築から、顧客の遺志を守るための金融機関との対峙まで。現場主義と最先端のDXを融合させる留目津氏の戦略と、その揺るぎないビジョンを伺いました。

今回お話をお伺いした方
留目 津(とどめ しん)氏
代表社員 税理士・行政書士
宮城県生まれ。大手会計事務所にて相続税や不動産関連の税務を中心に、相続税対策・申告実務を数多く手がける。現在は東京、横浜、新横浜に拠点を構える士業グループを牽引。税務の枠を超え、不動産コンサルティングや仕組み化支援、CSR活動など、その活動領域は多岐にわたる。

「町の掛かりつけ医」としての矜持

―― 留目先生は、事務所のミッションとして「町の掛かりつけ医」というコンセプトを掲げていらっしゃいます。この言葉に込めた真意とは、どのようなものでしょうか。

留目氏: 私たちのお客様は、中小企業の中でも特にご夫婦やご家族で経営されている「ファミリービジネス」の方々がメインです。

彼らにとって、会社の問題は家族の問題でもあります。経営全般のことを、いつでも、どんなことでも身近に相談できる存在でありたい。その思いを、地域の人々に親しまれる「掛かりつけ医」という言葉に託しました。

―― 「税理士」という言葉から受ける硬い印象とは対照的に、非常に人間味を感じる言葉です。実際、どのような相談が寄せられるのですか。

留目氏: 経営者が抱える悩みは、実は「数字」そのものよりも、その周辺にある「人」や「仕組み」のことの方が多いんです。採用がうまくいかない、社会保険の手続きが分からない、あるいは弁護士に依頼するほどではないけれど法的なトラブルに頭を抱えている……。

本来、これらは社労士さんや弁護士さんの専門領域かもしれません。しかし、右も左も分からない不安な状況下で、お客様は「まずは一番身近で信頼できる留目さんに聞いてみよう」と、真っ先に私たちを頼ってくださいます。その期待に応え続けることが、私たちの本質的な業務だと思っています。

―― なかでも「相続」に関する記述に熱量を感じます。やはり「掛かりつけ医」として、資産の承継は避けて通れないテーマなのですね。

留目氏: その通りです。税制の中でも「法人税」「所得税」「資産税」と分かれているように、本来、これらは非常に高い専門性を要する異なる分野です。一人の担当者がすべてを1から10まで完璧にこなそうとすれば、必ずどこかに綻びが出る。

特に複雑化する現代の税法下では、法人税を担当する人間が片手間でミスのない相続税申告書の作成まで行うのは限界があります。

だからこそ私たちは、あえて「総合病院」のように部門を分ける道を選びました。資産税に特化した拠点、法人税に特化した拠点、そして企画やコンサルを担う本社機能。専門性を高めたプロフェッショナルがそれぞれの立場で関わることで、初めてお客様の大切な資産を真に守ることができるのです。

画像:アミエル税理士法人より引用

「個」の限界を突破する専門特化の戦略

―― 具体的にはどのような体制で、多様化する経営課題に対応されているのでしょうか。

留目氏: 現在、私たちは東京(自由が丘)、横浜、新横浜の3つに拠点を展開し、それぞれに明確な機能を持たせています。まず横浜駅前オフィスは、相続や贈与などの「資産税」のスペシャリストが集う拠点。新横浜オフィスは、事業を営むお客様をメインとした「法人税」の拠点です。

そして東京オフィスは、不動産コンサルティングや企画、そしてグループ全体のバックオフィスを担う本社機能として位置づけています。

―― なぜ、一つの事務所に集約するのではなく、あえて「拠点ごと」に役割を分散させたのですか。

留目氏: 最大の理由は、税法の複雑化にあります。一人の人間が法人の決算も、個人の確定申告も、そして極めて高度な専門判断が求められる相続税の申告もすべて完璧にこなすというのは、今の時代、物理的にも知識的にも困難です。無理に一人が抱え込めば、それは必ず申告ミスや、お客様への提案不足という形で跳ね返ってしまいます。

であれば、思い切って組織そのものを分業化し、専門性を研ぎ澄ませるべきだと判断しました。「何でも屋」ではなく、それぞれの分野における「プロフェッショナル」が連携する。この体制こそが、お客様の多角的な悩みを解決する最短距離なのです。

税務の枠を超えた「実務」の完遂

―― 留目先生は行政書士法人も別に立ち上げられています。税理士と行政書士、このダブルライセンスはお客様にとってどのようなメリットに繋がるのでしょうか。

留目氏: 税理士の主な仕事は、あくまで「税金の計算と申告」です。しかし、相続の現場で実際に起きているのは、預貯金の名義変更、遺言書の作成、遺産分割協議の調整といった、税務とは別次元の「お手続」の数々です。

お客様からすれば、税理士に相談して「それは別の専門家に聞いてください」と言われるのは、掛かりつけ医に診察を拒まれるようなものです。私たちは行政書士法人を併設することで、税務申告の裏側にある煩雑な遺言執行や相続実務まで、ワンストップでお手伝いできる体制を整えました。

この「入り口から出口まで」をトータルでサポートできる機動力が、ファミリービジネスのお客様には非常に喜ばれています。

―― スタッフ28名、各拠点に10名弱という規模感も、その専門性を維持するための戦略的な配置と言えますか。

留目氏: ええ。拠点ごとに「誰が何の専門家であるか」を明確にすることで、属人的なスキルに頼るのではなく、組織としてのナレッジを蓄積しています。不動産実務には不動産専任の担当を置き、法務には法務のプロを置く。

こうした各分野の尖った人材が融合することで、単なる税務顧問の枠を超えた「経営コンサルティング」に近い付加価値を提供する。これが、私たちが目指す新しい士業組織の形です。

仕組み化で成長を加速させる「コンサル」

―― 「単なる税理士の枠を超えたサポート」という点において、象徴的な事例を教えていただけますか。

留目氏: 法人のお客様で、最も手応えを感じたのは、年商数百億円規模まで成長された車関連の企業様のケースです。当初は資金繰りに苦しまれ、いわば「大赤字」の状態からのスタートでした。

私たちが最初に取り組んだのは、経理業務の改善というよりも、販売管理や在庫管理といった「仕組み化」の支援です。月に4,000台もの仕入れと売上が発生する中古車販売の現場では、数字の動きをリアルタイムで把握できなければ経営判断は下せません。

私たちはアウトソーシングとして入り込みながら、同時にコンサルタントとして、無駄のない仕組みを構築していきました。

―― そこまで踏み込んだ支援は、一般的な税理士業務の範疇を大きく超えています。

留目氏: 私たちの根底にあるのは「お客様に寄り添う」という姿勢です。状況に合わせて必要な支援の形は変わります。

たとえば、当初は年商数億円だったグループ会社が、M&Aなども経て最終的には年商40億、700億と成長を遂げられた会社さんもあります。銀行交渉の場にも同席し、資金繰りの改善を共に勝ち取っていく。お客様の成長の軌道に深くコミットできたことは、私たちにとっても大きな誇りです。

「数字の損得」よりも「家族の暮らし」を守る

―― 一方で、個人のお客様の相続案件において、非常に困難な状況を打開されたこともあると伺いました。

留目氏: あるメガバンクさんで遺言書を作成されていたお客様の事例ですね。私たちはその方の確定申告を長年お手伝いしており、ご自宅で療養されている奥様を抱えるご主人から「自分に何かあった時は、留目くんにお願いしたい」と託されていたんです。

ご主人が亡くなられた後、遺言書通りに奥様の老後資金を優先した分割を進めようとしたところ、金融機関の方が「これでは二次相続の際の税金が大変なことになる。遺産分割協議に切り替えるべきだ」と横槍を入れてきました。

―― 確かに、税務上の合理性を見れば、金融機関側の主張にも一理あるように聞こえます。

留目氏: しかし、私たちが守るべきは「数字の得」ではなく「お客様の想い」です。ご主人の一番の願いは、残された奥様が不自由なく暮らせることでした。私は、まずは奥様の生活を守るための承継を貫きました。その上で、並行して資産の組み換えなど高度な対策を打つことで相続税を抑えることができた。

結果として、ご主人の遺志を守り、かつ大幅な節税も実現して、お孫さんたちへ資産を繋ぐことができました。

DX認定事務所への脱皮

―― こうした高度な判断を支えるためには、事務所内の効率化も欠かせないはずです。DXの推進にも非常に力を入れていらっしゃいますね。

留目氏: DXに舵を切った大きなきっかけは、ある他事務所から引き継いだ案件でした。過去の資料を請求したところ「火事で燃えてしまった」と言われ、データ保存の重要性を痛感したんです。 そこからは、まずサーバーを廃止してすべてをクラウド(BoxやDropbox)へ移行しました。

会計事務所特有の「書類の山」を解消し、徹底したペーパーレス化を断行したのです。実は、ベテランのスタッフたちからは当初、紙文化から離れることへの強い抵抗もありました。

―― その抵抗を、どのようにして乗り越えたのでしょうか。

留目氏: 国が定める「DX認定」を取得するという明確な目標を掲げました。認定要件に沿って、個人情報の保護や情報セキュリティの基準を一つずつクリアしていく。今では完全フリーアドレスとなり、3つの拠点のどこにいても、あるいは自宅からでも、瞬時にお客様の資料へアクセスし、同じクオリティで仕事ができる体制が整っています。

ITリテラシーの格差があるお客様に対しては、無理強いせず紙での対応も残していますが、私たちの側がデジタルで武装しているからこそ、迅速な業績把握とスピーディーな提案が可能になります。DXは単なるツールではなく、お客様との信頼関係を深めるための「土台」なのです。

画像:アミエル税理士法人より引用

寄付の「透明性」にこだわるCSR活動の原点

―― 貴社ではCSR(企業の社会的責任)にも注力されていますが、士業としては珍しいほど多岐にわたる活動を展開されています。そもそも、なぜこれほど熱心に取り組まれているのでしょうか。

留目氏: 最大の理由は、組織の「若返り」です。意欲ある若い世代に、私たちの事務所を魅力的な場として知ってもらいたいという思いがスタートでした。そして一歩踏み出したきっかけは、ルーム・トゥ・リードというNGOの団体との出会いです。

実はかつて、私は寄付に対して冷ややかな視点を持っていました。「投じた一万円のうち、いくらが現地に届くのか」と、間接経費の多さに疑問を抱いていたんです。

しかし、ルーム・トゥ・リードは事務所も広告もすべてボランティアで賄い、寄付金の100%を直接支援に回す仕組みを徹底していました。数字の専門家として、その圧倒的な「透明性」に深く納得し、カンボジアでの図書室建設への支援を決めました。

―― そこから「こどもホスピス」や「スペシャルオリンピックス」など、活動が広がっていったのですね。

留目氏: ええ。信頼できる仲間との繋がりの中で、横浜の「こどもホスピス」の設立前から支援を続け、知的障害者の方々を支える活動などにも加わりました。こうした利他的な活動を続けるうちに、実際、こうした活動を続けてきた成果は出ていますね。

最近では中途採用でも若い方の応募が増えており、「(CSR活動を見て)御社に入りたい」と言っていただけるようになりました。単なる税務の枠を超えた取り組みが、意欲ある若手人材が集まるきっかけになっていると感じます。

誰もが最高品質を届けられる組織へ

―― 今後の事業展望として、「5年後に売上倍増」という具体的な目標を掲げられています。この拡大戦略の意図を教えてください。

留目氏: 単に規模を大きくして私が威張りたいわけではありません(笑)。売上を伸ばすことは、働くスタッフの給与や福利厚生を充実させるための「原資」を確保することに直結します。

今、私たちが取り組んでいるのは「業務の標準化」です。これまでの士業は、どうしても「あの先生だからできる」という属人性に頼りすぎていました。しかし、それではお客様を守り続けることはできません。

誰が担当になっても変わらない高品質なサービスを提供できる体制を確立する。そのために、若手を採用し、AIや最新のテクノロジーを活用できる「DX事業部門」の育成にも動いています。

―― ベテランの知見と、若手のデジタル感性を融合させていくのですね。

留目氏: ええ。当たり前のことを、当たり前に、高い精度でやり抜くだけです。現在、再生紙を利用した名刺への切り替えなど、今できる環境面での取り組みも進めていますが、士業という職業が持つ可能性をどこまで広げていけるか。私たちの挑戦は、まだ始まったばかりです。

―― その挑戦の積み重ねが、まさに「町の掛かりつけ医」としての信頼を形作っていくのだと感じます。留目さんのように、経営者に寄り添い、家族の絆までをも守り抜こうとする誠実な歩みの先にこそ、新しいビジネスの景色が広がっているのかもしれません。

今回お話を伺った企業
アミエル税理士法人
  • 所在地:東京都世田谷区奥沢5-33-13 サロン・ド・テ 自由が丘1F
  • 連絡先:03-5726-8839
  • 公式サイト:https://amiel.or.jp/
この記事のインタビュアー
竹澤 佳
著者NET MONEY編集部 編集長
詳細はこちら 立教大学大学院修了。流通業界専門の出版社で編集長を務めた後、IT企業のメディア部門に転職。現在は金融ジャンルに特化し、クレジットカード・カードローン・証券などの取材、編集執筆に従事。与信審査や金融商品比較など専門性の高いテーマを多数手がける。自身でも5枚のクレジットカードを使い分け、暗号資産・株式投資・外貨投資で資産運用中。

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