投資家を志す者ならば誰もが夢見る“億り人”。大荒れのコロナ相場で見事、資産1億円超えを達成したのが兼業トレーダーの余弦氏だ。ドル/円の売り、日経先物&ダウ先物の売りで資産を倍増させたトレードを振り返りながら、これから“億り人”を目指す人へのアドバイスをもらった。
※2020年8月25日に配信した記事を再配信しております。
Twitter:@ygnfx
ブログ:Moving Average FX Blog ~MAFXB~ 移動平均 de 外国為替取引
留学先の米国を追い出され、沖縄でホームレス生活に
――余弦さんが投資をはじめたきっかけは?
私は1999年から2001年までアメリカに留学していました。そのときに、貯金をドルに換えて持っていったら、1ドル=100円だったのが120円まで円安が進んで、知らぬ間に資産が20%近く増えていた。それで、FXに興味を持ったんです。1998年に改正外為法が施行されて個人でも為替取引ができるようになったこともあって、ちょうどFXが注目され始めた時期でもありましたね。
――2001年から20年近くもFXを続けているということですか?
実際に口座を開設したのは2002年です。実は、帰国してから一時期ホームレス生活を送っていて……。
――ホームレス⁉
詳しくは話せませんが……、込み入った事情で帰国を余儀なくされたんです。それで、実家を頼るわけにはいかないと思い、日本に到着してすぐに沖縄便のチケットを購入したのがそもそも間違いでした。「沖縄に行けば、なんとかなる」と、そのときは思っていたんです(苦笑)。
当時の私の沖縄に対するイメージはサトウキビ畑。一面サトウキビ畑が広がる沖縄に行けば、アメリカを追い出された自分でも「なんくるないさ~」と雇ってくれる農家ぐらいあるだろうと思っていたんです。
ところが、那覇空港を降りたら、一面アスファルトの道路で、日本の地方都市と変わらない光景……。サトウキビ畑なんてありゃしない(笑)。これはアテが外れたなと思いつつ、職探しを始めたんですけど、やっぱり住所不定の人間なんて雇ってくれない。無職の人に家を貸してくれる不動産会社もなかったので、2カ月近くホームレス生活を送ったんです。
――どうやって、その状況から抜け出したんですか⁉
親戚のおばさんのように親切にしてくれる人と出会って、「とりあえず家賃はいいから、ここに住みなさい」って言ってくれたんです。「住所不定」を脱出できたら、すぐに仕事は見つかりました。留学経験のおかげで英語がしゃべれたので、新たにできた免税店で働くことができたんです。
――それで、仕事で得た稼ぎを元手にFXを始めた?
そういうことです。数十万円を元手に始めて、最初は深夜までチャートに張り付いてトレードしていました。初心者がやりがちなトレードで勝っては負けての繰り返し。でも、それを続けるなかで、「体がもたない……」と感じて、スタイルを変更したんです。
大きなトレンドを捕らえて、長期で大きな値幅を狙うスタイルに。それからは大負けすることがなくなりましたね。トレードの枚数を抑えていたので、含み損を抱えても焦りはありませんでした。
不確実な短期投資に見切りをつけ、長期で値幅を狙う戦略に変更
――スウイングトレードに切り替えただけで稼げるようになった?
相場に恵まれた面もあったでしょうね。私は典型的なショーター(売り屋)なのですが、2002年以降はアメリカの低金利政策の影響で、ドル/円は130円台から100円台へ、2008年のリーマンショック後には90円割れまで下げ続けた。そのおかげで大きく資産を増やすことに成功したんです。
トレードを続けるなかで、アナリストや相場のプロが総じて「買い」と言い出すと、天井をつける傾向にあることもわかったので、リーマンショックのときも直前から売り浴びせることができました(笑)。
一方で、2013年以降のアベノミクス相場では徹底的にドル/円を買い続けました。2014年10月にはちょうど投資信託を解約したお金が手元に有ったので、それでドル/円を100枚(約1億円のポジション)買ったんです。日銀の量的緩和というアベノミクス第1の矢が成功すれば円安は確実。仮に失敗しても、日本売りで“悪い円安”になるだろうと予想したんです。
そうしたら、10月末に日銀の追加緩和が発表されて円安が加速。あっという間に含み益が500万円に膨らみました。その含み益で最終的には160枚まで買いポジションを増やして、利益がちょうど1000万円になる1ドル=113円台半ばに利益確定の指値を入れて一撃1000万円を達成しました。
――具体的にどのようにエントリーして、利益確定するのですか?
私のトレードは非常にシンプルです。チャートに表示しているのは25日移動平均線と75日移動平均線ぐらいもの。実は、最初に口座を開設したオリエントトラディション(現・外為どっとコム)チャートに初期設定で表示されていた移動平均線です(笑)。株や先物取引もやるので、今はあらゆる金融商品を網羅していて資金移動がラクなSBI証券を使っていますが……。
エントリーの見極めもシンプルです。日足と週足チャートをチェックして、25日移動平均線に支えられながら上昇していたら、移動平均線にタッチしたところで買い。下抜けるようなら損切りです。加えて直前の高値・安値や支持線・抵抗線をチェックする程度。25日移動平均線と直近の高値・安値や支持線・抵抗線が重なるポイントでは節目になりやすいので、ブレイクしたらその方向についていく。そんなトレードで200~300pips以上の利幅を狙うのが私のスタイルです。
――大負けした経験はないんですか?
もちろんあります(笑)。忘れもしない、三菱重工株です。リーマンショック以降、FX以外に株の取引も始めてたのですが、自分の中で必勝パターンと言えるものがありました。それは「不祥事銘柄」を買うこと。2008年に上場してすぐに不正会計問題で暴落したビックカメラや同じく不正会計事件を2011年に起こしたオリンパスなどが、その典型例。急落局面でナンピン買いを続ければ、必ずリバウンドして大きなリターンが得られたんです。
その必勝パターンに倣って、2016年にアメリカで起きた原発事故を巡って巨額賠償訴訟を起こされた三菱重工を買っていったんです。現物で6000万円分仕込んで、さらにそれを担保に信用取引で買い続けました。おそらくピーク時には2億円近いポジションになっていたはずです。賠償請求訴訟はだいたい、最初に莫大な賠償金を請求して、日が経つほど賠償金が下がっていく傾向にあります。実際、三菱重工は8300億円もの賠償を請求されましたが、「契約上の責任上限は150億円程度」と言い続けていました。
でも、このときは株価が持ち直す前に私のほうがパンクしてしまいました……。当時の資産は8000万円程度だったので、含み損が4000万円を超えて強制ロスカット間近のところで泣く泣く損切り。それ以降は、個別の材料で大きく変動する個別株にはあまり手を出さず、日経先物やダウ先物、FXに注力するようになりました。
誰もが円安を予想、そこが逆張りのタイミング
――コロナ相場の成績はいかがですか?
今年、ついに1億円出金しました(笑)。長年、超えられずにいた“億の壁”を突破することができたんです。今や資産2億円超えもそう遠くなさそうです。
――コロナ相場で大勝したということですか?
ドル/円と日経先物、ダウ先物のおかげですね。ドル/円は今年の2月下旬の110円台から売り上がっていきました。2019年2~4月にかけて112円台をトライしながら下に跳ね返されていたので、上昇しても112円が天井になるだろうと予想していたんです。コロナ騒動が本格化する前のことだったので、NYダウとともにドル/円も上がり続けていた時期。多くのアナリストが米大統領選に向けて円安が続くと予想していたので、リーマンショックのときと同様に「逆張りの売りサイン」だと判断したんです。
110円台から30銭刻みで113年台後半まで売りの指値を入れて置いたら、ちょうど112円台にタッチした直後に暴落が始まった。あとは大きく下げたところで一部、利益確定して、反発したら売り直しです。
コロナショックでアナリストが「100円割れの可能性も!」なんて言い出したところで、「これは底打ちサインだな」と判断して、すべてのポジションを102円台で決済。10円幅を抜いて、1000万円近く稼ぐことができました。
――10円幅を取ったトレーダーはそうそういないでしょうね。日経先物やダウ先物ではどんなトレードを?
これは正直、かなりムキになって保有し続けたポジションですね。昨秋から日経先物やダウ先物を売り上がっていたんです。根拠は、トランプ大統領就任以降、上がり続けているから「そろそろ暴落があるはず」というかなりあやふやなものでした(苦笑)。
実際、売りポジションを持ったとツイートしたら、いろんなフォロワーから根拠は?とツッコまれたり、バカにされたりしました。それでムキになって、ひたすら売り上がっていったんです。
――相当な含み損を抱えたのでは……?
日経先物は2万3000円台から本格的に売り始めて、2万4000円まで踏み上げられましたね。ダウ先物と合わせて当初のポジション量は数百万円だったので、含み損が1000万円に膨らんだときは結構焦りました。
でも、資産の20%程度、2000万円の含み損までは耐えようと決めて売り続けたら、3月に入ってコロナショック到来。日経先物では8000円近い値幅が抜けて、3500万円の利益に。同じタイミングで売り上がったダウ先物でも3000万円近くの利益をあげることができました。
――億越えを達成した立場から、これから投資を始めようという人にアドバイスをするとしたら?
できることなら、投資に手を出さないほうがいい(笑)。特に、専業投資家になってやろうと思わないこと。毎月決まった時期に決まった額の収入が得られる仕事のありがたさを噛みしめることです。
実際、私も一時期、専業投資家を経験しましたが、トレードに熱くなるばかりで、まったくいいことはありませんでした。だから今も会社経営の傍ら、週末にはアルバイトもしています。専業を続けると世間の常識からズレていくからです。人と触れ合わず、仙人みたいな暮らしを送るんだから当然ですよね。すると、相場に対する認識もズレていく。
トレードとは別に仕事を続けることには、金銭的余裕をもたらしてくれると同時に、相場を俯瞰して見られるようになるというメリットもあると思います。チャートに張り付いていられないので、限られた時間で効率よく相場を見極めようという意識が働きやすい。仕事があるから、負けが込んでも熱くなったりしない。絶対に仕事は続けるように!と言いたいですね。