今年3月のコロナショックでは相場が大変動。大きく資産を減らす投資家が増える一方で、資産を増やすことに成功した投資家もいた。同時に、今が絶好の投資チャンスとばかりに、FX会社には口座開設の申し込みが殺到。暴落相場が投資初初心者の呼び水となったのだ。
そんな初心者はアフターコロナ相場とどう向き合っていくべきか?FXで2億円を超える資産を築いたトレーダーの三平氏に話を聞いた。
※2020年8月24日に配信した記事を再配信しております。
ツイッター(@FXman_yen)では毎日、エントリーや利確・損切りについて発信中。
株式投資の失敗を豪ドルの放置プレーで挽回
――三平さんはいつ投資を始めたのですか?
ライブドアショック(2006年1月)の前年の2005年です。小泉構造改革への期待感やライブドアを始めとしたベンチャー企業ブームで、非常に相場が賑わっていた年ですね。
「貯蓄から投資へ」という政府の方針を真に受けて、私も株式投資を始めたわけです。投資雑誌で「投資で企業を応援しよう」という専門家の意見も真に受けて、長期投資を前提に始めました。買ったのはオリエンタルランド、日本航空、吉野家ホールディングスなどの”優待銘柄“。振り返ると、実に初心者らしい投資先ですね(苦笑)。
――ライブドアショックの影響は?
100万円の元手ではじめた資金が、60万円まで減りました。オリエンタルランドは今も持ち続けていたら10倍以上に化けたんですけどね……。当時は、どんどん目減りしていくのが怖くなって、全部まとめて損切りしてしまいました。
その後、日本航空は2010年に会社更生法の適用を申請して上場廃止になったし、吉野家ホールディングスは2008年のリーマンショックで暴落したので、仮に持ち続けていても大損は免れなかったと思います。
――今の三平さんの主戦場は株よりもFXですよね。FXを始めたのはいつ頃ですか?
株を始めたのと、だいたい同じ時期ですね。当時手にした投資雑誌で「これからは豪ドルのスワップ投資だ!」と書かれていたのを真に受けてしまって(苦笑)。だから、株と同じように長期投資のスタンスで、豪ドル/円を買ってほぼ放置。それだけで、スワップ金利(保有する通貨に対して発生する金利)が稼げて、値上がり益も期待できたんです。
2003年にゴールドマンサックスが「2039年にはBRICs4カ国のGDPがG6の合計を抜く」というレポートを出して以来、新興国投資ブームが巻き起こり、豪ドルも上昇を続けていたから。私が80円台で買った豪ドル/円は2007年に100円を突破。150万円の元手が330万円にまで増えて、「倍になったぜ!」と会社の人間に自慢していた記憶があります。
「チロリーン」というアラームとともに240万円が強制ロスカット
――でも、2007年にはサブプライムショックがあったのでは……?
そうなんです(苦笑)。サブプライムショックで資産の70%を溶かしました。私はプラント系の会社を経営しているのですが、ちょうど配管のなかで仕事をしているときに「チロリーン」と携帯のアラームが鳴ったんです。240万円の強制ロスカットがされたという通知でした。あの音は今でも忘れられません……。
――その後、投資スタイルはどう変えていったのですか?
FXを始めた当初からいろんなテクニカル分析を試して勉強を続けていました。その中で、あるFX系ブロガーさんが「RCI」というオシレーター(相場の買われすぎ・売られすぎを示すテクニカル)を使って、トレンドの底からてっぺんまで取るトレードで稼ぎまくっていると書いていたんです。
その人はトレード成績を公表していませんでしたが、検証してみると、確かにRCIはトレンドの転換点を見事に当てていた。それで、私もRCIを使い始めたのですが、サブプライムショックまでは予見できませんでした。
鉄板技は、RCIの「満タンパターン」
――「RCI」は当時、あまりメジャーなテクニカルではなかったのでは?
オシレーター系テクニカルでは、「RSI」や「ストキャスティクス」などがポピュラーですよね。私も試してみたんですけど、RCIほどピタリと相場の転換点を示してくれませんでした。RCIはほかのオシレーターと異なり、短期・中期・長期の3本の線が上下に変動して、買われすぎや売られすぎのサインを示してくれます。3本あるから、ほかのオシレーターよりも多くの情報を提供してくれるのです。
たとえば、トレンドが出ていないレンジ相場でもRCIやストキャスティクスのラインは上下にうねりますよね。でもRCIだと中期や長期の線が真ん中あたりで方向感なくさまようので、一目でレンジ相場だとわかります。
一方で、上昇トレンドのときは、中期・長期の線が右肩上がりを続けて、短期線だけが上下にうねっていたりする。この短期線が下げて再び上昇に転じたポイントは絶好の押し目買いのチャンスとなるわけです。さらに、強い上昇トレンドが発生しているときは、短期・中期・長期の線が天井に張り付きます。しばらくして、短期線が下げ始め、中期線も追随するようならトレンド転換のサイン。
私はこれを「満タンパターン」と呼んでいます。3本の線が天井ないし大底で満タンになるまでエネルギーを蓄えたのち、一気に逆方向に転じるからです。この満タンパターンでは、トレンド転換にのって大きな利ざやを稼ぐことも可能です。
――そのRCIを使ったトレード方法を確立できたのはいつ頃ですか?
5~6年前のことですね。サブプライムショックを経験してからは、買って放置するようなトレードはしなくなり、デイトレードでコツコツ利益を積み重ねていくスタイルに変えました。
日足チャートのRCIで大きなトレンドを確認して、5分足や1時間足などの短い足のRCIでエントリーポイントを探す。朝30分だけチャートを見て、指値を入れるというスタイルにしてから大負けすることはなくなりましたね。それで、5~6年前から1トレードで200枚(200万通貨・ドル/円200枚なら約2億円のポジション)までロットを増やしたんです。
そこからは毎年2000万~4000万円の利益をあげられるようになりました。ただ、昨年も1回だけ800万円の損切りを経験しています(苦笑)。ちょうど上海出張のときに、米中貿易戦争のリスクが高まり、ドル/円の400枚の買いポジションが、飛行機を降りた途端に数百万円のマイナスになっていて……。
1トレードで2000万円、4カ月で4200万円の利益を叩き出した
――コロナ相場での成績はいかがでしょうか?
4月までは絶好調でした。4カ月で4200万円の利益でしたから。狙ったのはユーロ/豪ドルの売りです。オーストラリアは中国に対する貿易依存度が高いため、中国の株式市場が崩れると豪ドルが売られる傾向にあります。一方で、コロナ相場の初期には欧州での感染報告がなかったので、ユーロは変われやすい状況でした。
だから、豪ドル売りのユーロ買いで、ユーロ/豪ドルは急騰。2月から3月にかけて1カ月ほどで20%以上も上昇したのです。ただ、私は必ず欧州でも感染が拡大すると予想していました。震源地とされる中国はいち早く立ち直って、豪ドルが買われるのも時間の問題だと。だから、ユーロ/豪ドルを売り上がっていったのです。想像以上の急騰で、一時、含み損は1000万円を超えました。
一度ポジションを整理して、上昇したところで売り直すということもしました。その結果、最初に売りを入れてから10日目にピークから半値まで下落。この勢いならば61.8%戻しまで行けると踏んで、売り持ちした結果、1トレードで2000万円稼ぐことができました。
――1トレードで2000万円の利益はデカイですね。でも、「4月まで」ということは、その後は……?
4~6月にかけて、1500万円減らしました……。何度か数百万円単位の損切りを経験してから、熱くなってしまったのが敗因ですね。それで3日間だけ、トレードを休んでリフレッシュしました。それからは枚数を減らしてトレードするなど、今も半ばリハビリ中です。
――その教訓を、これから投資を始める人に伝えるとすれば?
実は、私は有料サロンを運営しています。生徒には投資の初心者も少なくありません。その生徒を見ていると、「相場に勝てる」という妙な自信を持っている人がいるんです。相場はプロが集う弱肉強食の世界です。初心者なんて、そうそう生き残れません。
だから、まずは稼ぐことよりも、「生き残る」ことを学ぶべき。つまり、負けないことが重要なんです。3年も相場で生き残れば、負けないための方法論が自然と身に付きます。まずは、みっちり3年相場に向き合うこと。そのなかで、負けた時の自分を振り返って、同じミスを繰り返さないようにするべきでしょう。私も同じミスを繰り返してしまいますが……大負けしたときはきっちり切り替えられるようにはなってきたと思います。今年も今のところ2000万円以上の利益は確保できているし。
――FX会社はどのように選ぶべきですかね?
私はYJFXとJFXを使い続けています。YJFXは旧サイバーエージェントFXで、いち早くトレードアプリにRCIを取り入れた会社です。ネット系企業だけあって、当初からアプリは抜群に使いやすかった。
今でこそ、どのFX会社のスマホアプリでもトレンドラインが引けたり、オシレーター系テクニカルのパラメーター設定をイジれるようになっていますが、私がFXを始めた当初はサイバーエージェントFXのアプリが断トツに使いやすかったんです。
JFXは完全にスキャルピング向けのFX会社といっていいでしょう。というのも、ほかのFX会社と比較して付与されるスワップ金利が小さい傾向にあるんです。私のようにスワップ金利を期待せず、スキャルやデイトレードに徹するトレーダーからするとスプレッド(買いと売りの差)が狭く使いやすい。
同じように短時間で売り買いを繰り返すトレードスタイルを目指すならば、「〇〇ショック」などの大相場でもスプレッドが広がりにくいFX会社を選ぶべきです。FX界隈の大御所であるFX界隈の大御所である「羊飼い」さんのブログでは、相場が急変したときの各社のスプレッドをまとめていますので、それをチェックしてみるといいでしょう。