FX取引を始めるにあたり、どの通貨の組み合わせを選べばよいのか迷ってしまう方は多いのではないでしょうか。FX取引における通貨の組み合わせは「通貨ペア」と呼ばれ、各証券会社の取り扱う複数の通貨から、自分が取引したい組み合わせを選びます。
そこで今回は、そもそも通貨ペアとはどのようなものなのかをはじめ、通貨ペアの関連用語や通貨ペアの選び方を解説します。初心者におすすめの通貨ペアや、取り扱いに注意したい通貨も見ていきましょう。
この記事で分かること
- FXの通貨ペアとは、取引する2種類の通貨の組み合わせのこと
- FXの通貨ペア選びでは取引量の多さやボラティリティ、スプレッドの小ささなどに注目する
- FX初心者におすすめの通貨ペアは「米ドル/円」「ユーロ/米ドル」「ユーロ/円」
- スワップ利益を狙うならトルコリラや南アフリカランドを選ぶのもあり
FXの通貨ペアとは?知っておきたい関連用語
まずは、FXの通貨ペアとはどのようなものを指すのかを確認しておきましょう。また、FX取引をするために知っておきたい通貨ペアに関する用語もご紹介します。
2種類の通貨の組み合わせを指す
通貨ペアとは、FX取引で売買する2種類の通貨の組み合わせのことを指します。
FX取引は、異なる2つの国の通貨を売買することで利益を狙う投資方法です。そのため、「米ドルだけ買う」「ユーロだけ売る」といった取引ではなく、「米ドル/円を買う」「ユーロ/米ドルを売る」というように、異なる通貨を組み合わせる必要があります。
FXの通貨ペアについて知っておきたい用語
FX取引の通貨ペアについては、いくつか知っておきたい用語があります。ここでは、通貨ペアに関してよく使われる主な用語の意味を見ていきましょう。
基軸通貨/決済通貨
FXの取引画面では、通貨ペアが「米ドル/円」や「ユーロ/米ドル」という形式で表示されます。このうち、左に表示される通貨が「基軸通貨」で、右の通貨が「決済通貨」です。
FX取引では、決済通貨を使って基軸通貨を売ったり買ったりします。例えば、「米ドル/円を買う」というFX取引の場合は、「円を売って米ドルを買う」という意味です。
メジャー通貨/マイナー通貨
FX取引で売買される通貨は「メジャー通貨」と「マイナー通貨」に分けられます。ここでは、代表的なメジャー通貨とマイナー通貨を確認しておきましょう。
■FX取引におけるメジャー通貨とマイナー通貨
メジャー通貨 | マイナー通貨 |
---|---|
米ドル(USD) ユーロ(EUR) 日本円(JPY) ポンド(GBP) スイスフラン(CHF) 豪ドル(AUD) カナダドル(CAD) ニュージーランドドル(NZD) |
トルコリラ(TRY) 南アフリカランド(ZAR) ブラジルレアル(BRL) メキシコペソ(MXN) 中国人民元(CNH) ロシアルーブル(RUB) 香港ドル(HKD) シンガポールドル(SGD) |
メジャー通貨は、国際的に見ても取引量が多く流動性も比較的高いという特徴があります。一方、マイナー通貨は取引量が少なく、流動性も低い傾向です。
ストレート通貨/クロス通貨
「ストレート通貨」とは、米ドルを使って直接取引する通貨ペアのことを指します。「米ドル/円」や「ユーロ/米ドル」、「ポンド/米ドル」などがストレート通貨です。
一方、「クロス通貨」は米ドルの含まれない通貨ペアで、「ユーロ/円」や「豪ドル/円」などが代表的です。これらの通貨ペアは、米ドルを介してレートが算出されるため、クロス通貨と呼ばれています。
FXの通貨ペアの選び方 5つのポイント
FX取引初心者が通貨ペアを選ぶ際は、いくつか着目すべきポイントがあります。慣れない取引で損失を出すリスクを少しでも低減させるためにも、通貨ペア選びで失敗しないコツを見ていきましょう。
1.FX取引初心者は通貨ペアを厳選する
FX取引初心者は、取引する通貨ペアをできるだけ少なくすることが大切です。ひとつの通貨ペアで取引をしても利益が出せない場合に、複数の通貨ペアで取引を行ってより高い利益を出すことは難しいでしょう。
最初は少数の通貨ペアに絞って取引を行い、安定した利益を出せるようになることを目指します。
2.取引量の多い通貨ペアを選ぶ
取引量が多く、流動性の高い通貨ペアは、より多くのトレーダーが注目しているため、チャートの動向も安定しやすい傾向です。初心者でも、取引の際にその通貨ペアの動きを把握しやすいでしょう。
メジャー通貨は取引量が多く、中でも米ドル、ユーロ、円は「世界三大通貨」と呼ばれる注目度の非常に高い先進国通貨です。相場の値動きが安定しており、情報収集もしやすいという特徴があります。
ただし、メジャー通貨はマイナー通貨と比べて値動きが小さい分、変動率(ボラティリティ)が低めです。そのため、大きな利益を狙うのであれば、取引量を増やさなければなりません。
3.適度に値動き(ボラティリティ)のある通貨ペアを選ぶ
FX取引における「ボラティリティ」とは、「変動率」「値動き」という意味です。ボラティリティの低い通貨は値動きが緩やかですが、値動きがあまりないため大きな利益を出しにくい側面もあります。したがって、通貨ペア選びではある程度ボラティリティのある通貨ペアを選ぶこともポイントです。
ただし、利益の出しやすさを狙ってボラティリティが極端に高い通貨ペアを選ぶと、短期間ですぐに損失が出てしまうリスクもあります。そのため、通貨ペアの値動きを予測する際は、比較的ボラティリティが安定しやすい「ユーロ/米ドル」を基準にして、通貨ペアの変動率の高さを考えるとよいでしょう。
4.スプレッド(取引コスト)の小さい通貨ペアを選ぶ
FX取引では、通貨ペアを買うときと売るときの値段に差があります。この差額が「スプレッド」です。スプレッドによって取引で生じるコストが変わってくるため、なるべく多くの利益を出すにはスプレッドの幅の小さい通貨ペアを選ぶ必要があります。
また、スプレッドは一定ではなく変動するものです。例えば、急激に相場が変動した際や、新たな経済指標が発表されたとき、また世界的なニュースが出た場合などにスプレッドは変動しやすい傾向があります。このようなスプレッドの変化は、情報収集をしやすい国の通貨を選ぶことで把握できるようになるでしょう。
5.情報収集しやすい通貨ペアを選ぶ
「スプレッドの小さい通貨ペアを選ぶ」でも述べたように、外国為替相場は世界的なニュースの報道や、経済指標や金融政策の発表などによって大きく変動することがあります。
そのため、FX取引をする際は取引通貨の国の動向に関する情報をこまめにチェックすることが大切です。より多くの関連情報を入手できる国の通貨なら、情報を生かした取引もしやすくなるでしょう。
代表的な通貨の特徴
ここでは、FX取引での代表的な通貨の特徴をご紹介します。それぞれの特徴はあくまで傾向ではありますが、通貨ペアを選ぶ際の参考となるでしょう。
米ドル(USD)
世界各国の金融取引で使われる米ドルは特に取引量が多く、比較的値動きも安定しています。米国は日本人にもなじみ深く情報収集もしやすいため、FX取引でも人気の通貨です。
なお、米ドル相場は米国の経済指標や金融政策の発表などの他にも、政治経済関連のイベントや戦争、紛争などの際に大きく変動することがあります。
円(JPY)
2022年現在、日本は31年連続で世界最大の純債権国となっています(2022/5/27時点)。純債権国とは、対外資産が対外債務を上回る国のことです。このことから、日本円は値動きや債務不履行などで元本が目減りするリスクが低い「安全資産」とも呼ばれています。また、日本円は金利が低く、流動性が高い傾向がある点も特徴的です。
なお、日本円は日本銀行の金融政策が要因となって変動しやすい傾向にあります。
ユーロ(EUR)
ユーロは、欧州の国々で単一通貨として使われている通貨です。取引量が米ドルに次いで多く、比較的値動きも安定しています。
ユーロは、米ドルと同様に金融政策や経済指標などが要因で変動しやすい通貨です。欧州中央銀行(ECB)の動向や、ユーロ圏の主要国であるドイツ、フランス、イタリアの経済動向に注目すると情報を得やすいでしょう。
ポンド(GBP)
イギリスの通貨であるポンドは、ユーロや円と比較すると流動性が低く、その分値動きも荒い傾向です。また、イギリスは欧州経済の影響も受けやすいことから、ユーロと似た値動きをすることもあります。
豪ドル(AUD)
オーストラリアで使われる豪ドルは、資源輸出への経済的依存度が高い「資源国通貨」に該当します。最大の貿易相手国の中国や、輸出資源の大半を占める鉄鉱石や石炭などのコモディティ市場の影響を強く受ける傾向があるため、取引の際は中国の経済指標やコモディティ市場にも注目すると情報を得やすいでしょう。
また、日本との時差がほとんどないため、リアルタイムで情報入手しやすい点も特徴です。
カナダドル(CAD)
カナダは米国の北側に位置していることもあり、米国との経済連動性が高い点が特徴的です。また、世界的に見ても原油輸出量の多い国でもあるため、カナダドルは原油価格の影響を強く受けやすいという側面もあります。 原油価格が上昇するとカナダドルも上昇しやすく、逆に原油価格が下落するとカナダドルも下落しやすくなる傾向です。
ニュージーランドドル(NZD)
ニュージーランドは政治的にも経済的にもオーストラリアとの結びつきが強く、豪ドルに連動した動きをとる傾向があります。また、最大の輸出先国の中国の経済の影響も受けやすい通貨です。
さらに、主要輸出産業が酪農業ということもあり、乳製品などの農産物価格の影響も強く受けやすいです。したがって、ニュージーランドドル取引をする場合は、原油や金だけでなく乳製品の価格の動向にも注目する必要があるでしょう。
スイスフラン(CHF)
スイスは永世中立国という立場にあるため、日本円と同じく値動きが大きく変動しにくい「安全通貨」という位置付けとなっています。金利も非常に低いです。
なお、スイスはEU加盟国に囲まれているため、ユーロ圏の政治や経済の影響を受けやすい傾向です。
トルコリラ(TRY)
トルコの通貨のトルコリラは、高金利通貨として人気があります。
ただしトルコは新興国であり、先進国と比べると政治や経済面で不安定な側面もあります。そのため、トルコリラは流動性も低く値動きが荒い傾向です。FX取引の初心者が扱うには、メジャー通貨と比べてリスクが高いため注意しなければなりません。
FX初心者におすすめの通貨ペア
FX取引初心者におすすめの通貨ペアは、「米ドル/円」「ユーロ/米ドル」「ユーロ/円」の3つです。それぞれの通貨ペアがなぜおすすめなのか、特徴と併せて見ていきましょう。
米ドル/円
「米ドル/円」は、FX初心者が最も取引しやすい通貨ペアといえるでしょう。日本人にとって米国は特に情報を入手しやすい国です。また、ユーロやポンドといった欧州の通貨よりも値動きが緩やかでありながら、適度にボラティリティもあります。取引量も多いため、初心者でも取引しやすい通貨ペアです。
また、「米ドル/円」ならアジア時間だけでなく、欧州/米国時間でも活発に取引されているため、好きなタイミングで取引がしやすい点もメリットです。
「米ドル/円」は多くのFX取引を扱う証券会社でスプレッドの幅が小さく設定されているため、コストを抑えて取引ができます。
ユーロ/円
「ユーロ/円」も、比較的取引量が多く、スプレッドの幅が小さい通貨ペアです。「米ドル/円」の他に日本円を含む組み合わせを選びたい場合におすすめといえるでしょう。
ユーロは米ドルに次いで世界的に取引量が多く、「ユーロ/円」も「米ドル/円」と同様に値動きが安定しやすい通貨ペアです。ただし、ボラティリティはやや低い傾向があります。
情報収集をするには、欧州と日本のほか、政治経済の影響を受けやすい米国の経済動向をチェックすることが必要です。値動きを予想する際は、ユーロ圏の中でも経済を牽引するドイツやフランスの経済指標に注目するとよいでしょう。
FX初心者には不向きな通貨および通貨ペア
FX取引では、初心者では利益を出しにくかったり、値動きを予測しづらかったりする傾向のある通貨ペアもあります。なぜ初心者には不向きなのか、その理由や取引する際の注意点を見ていきましょう。
ポンド系の通貨ペア
ポンドはユーロや円と比べて流動性が低く、その分値動きも荒いという側面があります。つまり、「ポンド/円」や「ポンド/米ドル」などのポンド系の通貨ペアは価格の変動率に注意が必要で、初心者が取引するにはややリスクが高いといえるでしょう。取引内容によっては、大きな利益を得ることもありますが、大きな損失につながる恐れもあります。
ポンド系の通貨ペアで取引をしたい場合は、取引経験やスキルを積み、安定した利益を出せるようになった上でチャレンジした方がよいでしょう。
トルコリラ系の通貨ペア
トルコリラは高金利で新興国の通貨ということもあり、米ドルやユーロなどと比べると値動きが不安定な傾向です。米ドルやユーロと比べて流動性も高くないため、メジャー通貨よりもリスクがあるといえるでしょう。
南アフリカランド系の通貨ペア
南アフリカランドは、トルコリラと同様に高金利な値動きの大きい通貨です。また、先進国や中国の影響を受けやすい上、南アフリカ共和国内の政治経済の動向次第で価格が大きく変動します。国内の失業率が高いことをはじめ、値下がりの要因が複数あるため、取引には十分に注意する必要があるでしょう。
スワップ利益狙いならトルコリラや南アフリカランドはあり
前項では、FX初心者には不向きな通貨ペアとして、トルコリラや南アフリカランドを含む組み合わせを挙げました。しかし、「スワップポイント」による利益を狙うのであれば、これらの通貨ペアも選択肢のひとつといえるでしょう。
FX取引は2ヵ国間の通貨ペアを売買して利益を得ることを目的としていますが、この他にも通貨を保有することで得られる利益が「スワップポイント」です。スワップポイントとは2ヵ国間の金利差によって発生する利益のことで、「金利差調整分」とも呼ばれます。なお、スワップポイントは各証券会社が独自に決めるため、会社ごとに異なります。
一般的には、金利の低い通貨を売り、金利の高い通貨を買うことで、2つの通貨間の金利差からその差額を受け取るという仕組みです。ただし、金利の低い通貨を買って、金利の高い通貨を売る場合は、金利差分のスワップポイントを支払う必要があります。
高金利通貨として代表的なのは、トルコリラや南アフリカランド、メキシコペソなどです。つまり、スワップポイントによる利益を目的として取引する方には、これらの通貨を含む通貨ペアもありということになります。ただし、これらの高金利通貨は、値動きが激しく大きな損失を出すリスクがあることに注意が必要です。こまめに値動きをチェックしましょう。
初心者はリスクを抑えられる通貨ペアでFX取引に慣れることが大切
FX初心者の場合は、最初はわからない点の多い状態でスタートすることも珍しくありません。そのため、通貨ペアはリスクの少ないものに絞り込み、少しずつ慣れていくことが大切です。まずは通貨ペアを厳選してから取引を始めて、安定した利益を出せるようになった段階で、他の通貨ペアにもチャレンジすることをおすすめします。
FX初心者には、取引量が多く、適度にボラティリティもあり、スプレッドの小さい通貨ペアが向いています。その通貨が使われている国の政治経済の情報を入手しやすいかどうかも含めて検討し、FX取引をスタートしましょう。
FXの通貨ペアに関するQ&A
- FXの通貨ペアとは?
- 通貨ペアとは、FX取引で売買する2種類の通貨の組み合わせのことです。FX取引では、異なる2つの国の通貨を売買して利益または損失が生じます。そのため、「円だけを買う」「米ドルだけを売る」という取引はなく、「米ドル/円を売る」「ユーロ/米ドルを買う」など、2つの異なる通貨を組み合わせるのです。
- FXの通貨ペア選びのポイントは?
- まず押さえておきたいポイントは、FX取引初心者は、取引する通貨ペアをできるだけ絞る、ということです。
その上で、「取引量が多い(流動性の高い)通貨ペア」「適度に値動き(ボラティリティ)のある通貨ペア」「スプレッドの幅の小さい通貨ペア」「情報収集しやすい通貨ペア」を選びましょう。そうすれば、取引のリスクを低く抑えることができます。
- FX取引における主な通貨の特徴は?
- 国際的な金融取引で最も取引量が多いのは米ドルで、値動きも比較的安定しています。日本人にとって米国はなじみ深く情報収集もしやすいため、FX取引でも特に人気の高い通貨です。
また、日本円は「安全資産」とも呼ばれる通貨で、金利も低く流動性が高い傾向があります。
ユーロは欧州の国々で使われる単一通貨で、取引量が米ドルに次いで多い通貨です。比較的値動きも安定しています。
各通貨の値動きは、各国の政治経済の動向や、その国との結びつきが強い国の情勢の影響を受けやすいです。
- FX取引初心者におすすめの通貨ペアは?
- FX取引初心者におすすめの通貨ペアは、「米ドル/円」「ユーロ/米ドル」「ユーロ/円」の3つです。特に「米ドル/円」は取引量が多く、ユーロやポンドなどの通貨よりも値動きが安定しやすい傾向があります。ある程度のボラティリティもあることから、初心者でも比較的取引しやすい通貨ペアです。スプレッドの幅が小さく設定されているため、コストも抑えやすいでしょう。
さらに、アジア時間だけでなく欧州/米国時間でも活発に取引されているため、好きな時間帯に取引しやすい点も魅力です。
- FX初心者には扱いにくい通貨ペアはある?
- ポンド系の通貨ペアはユーロや円と比べて流動性が低く、その分値動きも荒いために初心者には適していません。また、高金利で値動きが不安定なトルコリラや南アフリカランドを含む通貨ペアも、初心者にはリスクがあるため注意が必要です。
ただし、スワップポイントによる利益を狙うのであれば、トルコリラや南アフリカランドを含む通貨ペアは選択肢のひとつといえるでしょう。通貨ペアの金利差によって金額が変わるスワップポイントで利益を出すには、低金利通貨と高金利通貨を組み合わせる必要があるためです。