IPOと略される「新規公開株式」は、有望な銘柄になると上場直後に大幅値上がりし、初値で売るだけで利益を上げられることも多い。
このため大きな注目を集めるIPOなのだが、この記事を読んでいるみなさんは、IPO株の多くは抽選によって投資家たちに分配されること、そしてその抽選がどのように行われているかをご存じだろうか? 今回は、大注目のIPO抽選について解説したい。
目次
IPOの仕組み
まずはIPOの手順を、新規株式公開する企業の側から解説しよう。企業の株式が証券取引所に上場される際には、厳しい審査基準が課される。
それをクリアするためには社内管理体制や資本政策などが適正でなければならず、もちろんそれについての書類作成も必要だ。この時点から、ノウハウを駆使して企業と二人三脚でIPOを実現させるために活躍するのが、「主幹事」となる証券会社である。
主幹事の証券会社は、証券取引所が企業の上場を認めた後、株式公開価格の「仮条件」を決定する。この仮条件は、例えば「2000円~2400円」のように値幅を持って設定されるのが一般的だ。
この後、主幹事や幹事の証券会社に口座を持つ投資家によって「ブックビルディング」が行われる。公開株を仮条件の範囲内で、何円で何株購入したいのかを意思表示するのだ。このブックビルディングで最も多かった株価が、その銘柄の公開株価となる。
そして、ブックビルディングに参加した投資家のうち抽選で選ばれ、購入した者が、新規上場直前の株主となるのだ。
IPO株の抽選を受ける方法
次に、今度は投資家の側からIPOの手続きを確認したい。
【口座を開設】
まずIPOに参加したい投資家は、そのIPOを取り扱う主幹事または幹事の証券会社に口座を持っていなければならない。口座を持つ証券会社が主幹事または幹事になれば、その証券会社を通じてブックビルディングに参加することができる。
【ブックブルデングに申し込む】
ブックビルディングに申込できる期間は、おおよそ1週間となるので、機を逸してしまわないように注意したい。この期間中に、仮条件の範囲内で、何円で何株の購入意思があるのかを申し込むのだ。
なお、公開価格以上でブックビルディングした投資家にのみ、この後に行われる抽選への参加権が与えられるので、こちらも注意したい。人気の銘柄は仮条件の上限で公開価格が決定されるので、迷わず上限値でブックビルディングしておこう。
【購入手続きを行う】
そして公開価格が決定したところで、誰にその株式が販売されるかの抽選が行われ、発表される。ここで気をつけなければならないのは、当選後には改めて購入の手続きを取る必要があり、当選だけでは新規公開株を購入したことにはならないことだ。
この購入期間も1週間弱と短いので、せっかくの当選を無駄にしてしまわないよう、ブックビルディング時にスケジュールを確認しておこう。
IPOの完全平等抽選をとる証券会社
ところで、IPOの抽選方式は、証券各社によって一様ではない。まずは完全平等抽選を採用している証券会社を紹介しよう。
この方式では、ブックビルディングの申し込み口数にかかわらず、一人(一口座)につき抽選権が一票となる。このため、資金量の多い投資家が何本も当選してしまう、といった事態は起こらない。
「一人一票制」とも呼ばれるこの方式を採用するのは、 マネックス証券 、 auカブコム証券 、 松井証券 、 GMOクリック証券 、 岡三オンライン証券 の5社である。
少額投資家(=個人投資家)にとって有利な方式であるので、IPO取引を狙っているならば、ぜひ上記証券会社に口座開設しておきたい。
IPOの当選確率が異なる抽選をとる証券会社
次は反対に、IPOの当選確率が投資家によって異なる抽選方法を採用している証券会社を紹介しよう。ネット証券では 楽天証券 と SBI証券 がその代表となる。
【楽天証券】
楽天証券のIPO抽選は一人につき一票ではなく、一申し込み口数につき一票という方式だ。IPO申し込みのためには、当然それだけの買付余力が口座に残っていないといけない。
一口分の資金しかない人は一口しか申し込めないのだ。このため楽天証券のIPO抽選は、運用資金が多い人にそれだけチャンスが与えられる方式だと言える。
しかも、これだけではないのだ。楽天証券の口座開設者は、過去の取引量に応じて「ゴールド」「シルバー」「レギュラー」の3つのカテゴリーに分類される。
そしてIPOの当選確率は、「レギュラー」に対して「シルバー」は約2倍、「ゴールド」は約5倍となるのだ。楽天証券のIPO抽選は、これによってよりいっそう、運用資金が多い人が有利な抽選方式だと言える。
【SBI証券】
SBI証券のIPO抽選方式だが、こちらは楽天証券の抽選方式の前半部分に等しい。つまり、一申込み口数につき一票ということだ。
ただし、SBI証券でこの方式で抽選されるのは全体の約70%である。残りの約30%は、初心者や少額投資家にとって嬉しい独特の方式を採用している。それを次の項で紹介しよう。
SBI証券のIPOチャレンジポイントについて
SBI証券では、割り当て株式数の約30%については「IPOチャレンジポイント」と名付けられたポイント制を採用している。一人につき一申し込みに限り、このポイントを使用してIPOに申し込むことができる。
そして、使用ポイントが多い人から順に当選していくという簡単なしくみだ。この手続きにおいて、抽選は一切ない。多くのポイントを持っている人がそれだけ有利になる制度だ。
【IPOチャレンジポイントの入手方法】
それならどうすればポイントを入手できるのかだが、これも簡単で、IPO抽選に落選すれば1ポイントが得られる。つまり、SBI証券でIPO抽選に申し込み続ければ、当選できなくても自動的にIPOチャレンジポイントがたまっていき、やがて約30%の枠で当選できるということだ。
理論上、SBI証券でのIPO抽選は、いつかは必ず報われるとも言える。なお、ポイントは使用して当選すれば無くなるが、落選した場合には使用したポイントはすべて戻ってくるので、ねらい目のIPO銘柄には安心して使用しよう。
【IPOチャレンジポイントを使用するポイント】
最後に、SBI証券のIPOチャレンジポイントを使う際のアドバイスを2つ挙げておく。まず、初値上昇があまり期待できない、人気のない銘柄のIPOにはポイントを使用するべきではない。通常の抽選でも当選する可能性が高いからだ。
次に、当選したなら、それが補欠当選でも必ず購入手続きをしよう。繰り上げ当選も当選扱いとなり、ポイントは返ってこない。
IPOの当選確率を上げる方法
最後に、IPOの当選確率を上げる方法をまとめておこう。
【できるだけ多くの口座から申し込む】
まず、多くの証券会社に口座を作ることだ。どの証券会社が主幹事(幹事)になるのかは企業によってまちまちだ。
そのため、口座開設している証券会社数は、IPO挑戦権を得られる確率に直結する。また、幹事となる証券会社のうち複数に口座を持っていれば、それだけその銘柄の当選確率が上がるのだ。
次に、家族がいるならその家族名義でも口座を作りたい。こうすることで、完全平等抽選の証券会社においては、家族全体での当選確率は口座数に比例することになる。
口座開設の際は、平等抽選によってIPOを配分するネット証券がおすすめだ。ネット証券からIPO株を申し込むことで、投資初心者でもIPOの当選確率を上げることが可能になる。
実際に、金融経済メディア『ZUU online』等を運営する株式会社ZUUの代表取締役 冨田和成氏は著書『プライベートバンクは、富裕層に何を教えているのか?』にて "IPO株が欲しいならネット証券が狙い目" と解説している。
もし主幹事がネット証券なら、個人投資家としてはラッキーです。なぜなら、店頭販売をしないネット証券なら割り当てられるIPO株をそのまま抽選に出してくれからです。仮に主幹事がネット証券ではない場合にも、委託幹事にネット証券があれば狙う価値はあります。
最近では、 SBI証券を中心にネット証券も主幹事の引き受け部門を強化しています。また企業も多くの個人投資家に株を持ってほしいという思惑があるため、ネット証券を主幹事に使うケースが増えています。 この「思惑」の理由は主に2つで、 1つは小口でいろいろな人に自社の株を持ってもらうことでファンを増やしたいという意図があります。また、特定の大口の投資家に依存すると、その投資家が売却する際のリスクが大きく株価の上下動が激しくなるので、株主を分散させることで、それを防ぎたいというねらいもあります。
【時間差を利用する】
そして、IPO抽選のタイミングの時間差も利用したい。通常はIPO抽選後に購入申し込みをするが、中には購入申し込み後に抽選を行う証券会社もある。
2社に同時に申し込むほどの投資資金がないという場合、この時間差を利用して、IPO申し込みのための買付資金を移動させ、抽選回数を増やすという手もあるのだ。 松井証券 、 GMOクリック証券 、 楽天証券 が後期抽選型のネット証券である。併せて口座を開設しておくとよいだろう。
IPO抽選はリターンが大きい
IPO取引では、大きなものであれば1取引だけで100万円以上の利益が上がることもある。しかもそのために必要なのは、口座開設や情報収集、地道な申込みなどの労力コストのみだ。
IPO取引の直近2年の勝率は8割を超える。個人投資家諸氏には、ぜひこの記事を参考にして利益をつかんでもらいたい。
最後は、これがもっとも大切なことなのだが、とにかく何度も当選するまで抽選に申し込むことである。有望な銘柄にはなかなか当選できるものではない。落選してもめげずに次のIPOに申し込もう。SBI証券のように、いつかは必ず当選できる証券会社もあるのだから。
<IPOを取り扱っている証券会社>
証券口座名 | IPO取り扱い数 | IPO抽選方法 | 証券会社の特徴 | |
---|---|---|---|---|
2018年 | 2019年 | |||
SBI証券 | 86社 | 84社 | 70% 完全抽選(資金) 30% IPOチャレンジP (店頭配分あり) | 口座開設数・人気No.1 |
マネックス証券 | 50社 | 48社 | 100% 完全平等抽選 | 米国株の取扱銘柄数1位 |
松井証券 | 9社 | 21社 | 70%完全平等抽選 | 売買手数料無料「一日信用取引」が魅力 |
au カブコム証券 | 23社 | 24社 | 100% 完全平等抽選 | 専門家によるセミナー 動画を無料で配信 |
岡三オンライン証券 | 47社 | 35社 | 100% 完全平等抽選 (2013年IPOスタート) | 独自の分析を活かした投資ツール |
楽天証券 | 11社 | 28社 | 100% 完全抽選 (資金力が影響) | 楽天会員メリット大 投資ツールが充実 |
GMOクリック証券 | 1社 | 0社 | 100% 完全平等抽選 | 業界最安値水準の手数料 |
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個人投資家 Q.利用している証券会社と選んだ理由、評価しているポイントについて教えてください。
もっぱら利用しているのは楽天証券です。その理由は、貸株サービスが便利だから。貸株サービスとは、保有中の株式を証券会社へ貸し出し、その見返りに貸株金利を得られるというものです。 ほかのネット証券にも同様のサービスがありますが、100株単位で自分が貸したい株数を選択できるというのは楽天証券だけですね。それに、確定申告の際に必要な貸株で得た利益の証明書も作成してもらえるのも助かります。いろいろな証券会社の口座を試してみたうえで、現在は楽天証券がメインの証券会社になっていますね。
響煇嚆矢さんのインタビュー記事はこちら