インタビュイー
FPオフィス AndAsset代表 前田菜緒
ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。大手保険代理店に7年間勤務後、独立。子どもが寝た後でも相談可能、未就学児ママに配慮した体制にしている。経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたいとの想いを持ち、活動中。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方 」(翔泳社)また、AndAssetでは資産運用初心者のための無料メール講座も実施中。
HP:FPオフィス AndAsset代表
国民の資産所得倍増を目指す政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げるなか、資産形成や資産運用に取り組みたいと思いつつも何から始めればよいかわからない、という方も多いだろう。お金と上手に付き合うためにまず始めるべきことは何なのか。初心者がまず始めることは?今回はファイナンシャルプランナーの前田菜緒さんにお話を伺った。
資産運用はどれだけ早く始めるかが大切。そういったことを伝えていきたい
ー まず最初に前田さまの経歴とファイナンシャルプランナー(以下、FP)になられたきっかけを伺ってもよろしいでしょうか。
前田菜緒(以下、前田):元々保険代理店で勤務をしており、2回の産休育休を取得後、復帰して1年程でFPとして独立しました。FPになったきっかけは、資格自体は15年以上前に取得していたのですが、勉強する中でFPの分野は生きていくためには知っておかないといけないことばかりだということがわかり、これを世の中の知らない人に広めたい、いつかはFPの仕事をしたいと考えていて、最終的に開業しました。
― FPの仕事のやりがいを教えてください。
前田:FPの仕事のやりがいは、1人1人、バリエーションがさまざまなお客さんの相談内容に対して、経験があればあるほど有益なアドバイスができて、そこでお客さんに喜んでもらえるところですね。もちろん、何でも解決できる内容というわけではないのですが、それでも自分で調べたり専門家の友人に聞いたりすることで、知識や経験が積もり積もって新しいお客さんに対して役に立てるところにやりがいを感じます。
税金の知識などは知ってるか知らないかでは全然違いますし、資産運用もどれだけ早く始めるかが大切です。そういったことをお客さんのライフプランに沿った内容でお伝えすることができていて、すごく楽しく仕事をさせていただいています。
習うより慣れろ。勉強してから、ではなく実践しながら勉強するのがおすすめ
― 資産形成、資産運用に興味あるものの何から始めてみればいいか、まず何か手をつければいいのか悩んでいる若い方も多いかと思います。アドバイスをいただけますでしょうか。
前田:最初は金融の言葉自体がすごく難しいなと感じると思います。私自身もそうでした。でも何かやりたいと思い、最初は雑誌を読んでそこに書かれている内容を少しずつ実践しました。そうすると、資産運用ってこんなに楽しいんだってところが徐々に分かってきました。
当時、私は株から始めたのですが、今はNISAから入るのが手軽でおすすめかと思います。まずはとりあえず口座を開いてみて、わからないなりにもやりながら学んでいくっていうところがいいのかなと思います。
勉強してからやり始める方も結構いらっしゃいますが、実際に資産運用をしながら勉強していくのがいいのではないでしょうか。勉強って終わりがないので、「習うより慣れろ」ですね。
― まずは口座を開設して始めてみよう、ということですね。
前田:そうですね。つみたてNISAであれば金融庁の基準で商品選定されていますし、コストは高いがパフォーマンスは低いといった、あきらかに、やめた方がいいよねという商品はないから安心感があります。金融機関によっては100円からとかでもできるので、まずはちょっとやってみるというのが1番早いかなと思いますね。
― 来年から新NISAも始まりますが、それを待たずに今からでも始めたほうがいいのでしょうか?
前田:そうですね。制度がどう変わるかより、気持ちの面が大きいかなと思います。やってみようと気持ちが高ぶった時じゃないと行動しないので、興味を持ったタイミングで始めるのがいいと思います。
お金がないのに買おうとしない。借りて買おうとしない
― 逆に資産形成やお金を増やそう、と思っている方にこれは注意したほうがいいというものはありますでしょうか?
前田:これだけはみたいなところで言うと、やっぱりお金がないのにモノを買おうとしないということが大切かと思います。お金がないから借りて買うしかないと考える人って一定数います。親から借りるとかだったらまだいいものの、クレジットカードのキャッシングで買いました、というケースだと、借金のない生活に戻れない人をたくさん見てきました。
基本的には自分の手元でお金をつくって、そのお金から使うというのが、基本中の基本です。それが安全な家計をつくることにつながるのですが、それが意外にできていない、わかっていない人も多いと思います。
子どものためのお金は専用の教育資金用の口座を用意
― 子育て世代向けにライフプラン相談もされている前田さんですが、子どもが生まれてからのお金の管理をどのように変えていけばいいかアドバイスをいただけますでしょうか?
前田:子どものお金をどうしていくか考えてもらうのは、育休中がすごくいい機会かと思います。教育費準備の考え方はそこまで難しいものではなく、基本的に皆さん大学進学のためお金を貯めていかれると思うのですが、そこに向かっていくら貯めるか決めて、単純にそれを逆算して積み立てていけばいいわけで、それをするか、しないかだけなんですよね。
あとは、子ども用の教育資金用の口座をつくってそこでお金を貯めていってくださいっていうのは必ずお伝えしてますね。そうしないといくら貯まったか見えないですね。
― 必要な金額を明らかにして、その金額を目標に子どもの専用口座に貯めていくのが大切なんですね。最近は金融教育の推進も進んでいますが、子どもがいる家庭でできるおすすめの教育方法はありますでしょうか。
前田:まずは親子でお金についての会話をするのが1番いいかなと思います。 スーパーに行った時には、「これってこんなに高いんだね」という話だったり、「この前までこの金額で売ってたものが、こんなに高くなってる」という話でもいいでしょう。
お金の話をふだんからしていると、お金は使ったら無くなるものだから、ちゃんと優先順位をつけて使わないといけないんだっていうのがわかってくるんですよね。
習い事をするにしても月謝がこれだけかかるんだという話をしておくと、習い事するのにはお金がかかるんだっていうことが子どもにもわかります。
そういった普段の会話が大切です。また、会話が正しいかどうかよりも、お母さんやお父さんがどう考えているのか子どもに伝わればいいかなと思います。
― 何にどのくらいお金がかかっているかを伝えることが大切ということですね。
前田:そうです。小学校低学年くらいまでは、いくらだったら高いのか安いのか、お金の価値は分かりません。でも、何かしたいと子どもが言ったら、「毎月いくらかかるんだね、やりたいんだったらやってみる?それならお母さんお仕事頑張るよ」といった話をすることで、お父さん、お母さんが働いてお金を稼いでるからこそできるんだっていうことは、わかってもらえます。
― ありがとうございます。前田さんは12年で住宅ローンを完済したとブログで記載されていましたが、早期の完済を目指す際に意識されていたことはありますか?
前田:借りる時点で返済計画を立てることを意識していました。家庭によってできる、できないはあるかと思いますが、返していきたい年数とか、このくらいの期間で返せたらいいよねという理想はみなさんあるかと思うので、そのとおり返せるようにするには、どうすればいいのかをシミュレーションをしっかりするのが良いと思います。
― 最後にこれから資産形成を始めていこう、という読者に一言いただけますでしょうか?
前田:本やインターネットで調べるとたくさんの情報が出てくるかと思いますが、最低限情報を得た後はもうとりあえずやって大丈夫ですよ、と伝えたいです。資産形成、とくに積立の資産形成はとにかく時間が大切なので、始めるのは早いほうがいいと思います。