慶應義塾大学在学中の1998年にWebソリューション事業を行なう有限会社ブイキューブインターネット(現:株式会社ブイキューブ)を設立。2013年12月に東証マザーズへ上場、2015年7月に東証第一部へ市場変更(現:プライム市場)。2022年3月より代表取締役会長グループCEO。経済同友会副代表幹事。
ESGにおける考え方
我々ブイキューブはESGについて様々な取り組みをおこなっていますが、その中でもE(環境)とS(社会)について特に注力してきました。そもそも、我々の事業自体が、ESGの考え方に資すると考えています。というのも、オンラインでコミュニケーションが取れるサービスを提供することで、環境負荷のかかる移動を減らしてE(環境)に寄与し、働き方の柔軟性を高めることでS(社会)に貢献しています。
当社は、ESGという言葉が世に出る前から、このような取り組みを行ってきました。例えば、東京ではないから仕事や医療、教育がないといった、都市部と地方の格差による機会の不平等を解決するために、テクノロジーを活用したコミュニケーションツールを提供しています。これが、私たちが目指す平等な社会の実現に繋がっているのです。
具体的に実践していること
E(環境)の観点においては、私たちのツールを活用することによって、自動車や電車をはじめとする移動が減り、環境への負荷を減らすことができます。これは、大きなイベントが開催される際にも同様で、多くの人が移動しなくても済むようになります。もちろん、必要なときには移動すべきだと思いますが、無駄な移動を減らすことで、排気ガスの排出や電力消費を抑えることができます。
また我々の提供する「グリーンメーター」というサービスでは、移動していた場合の環境負荷の大きさと費用を計算することができます。このサービスを使うことによって、移動の際のCO2の発生や環境負荷があることをユーザーが認識することができ、環境に対する意識を芽生えさせることが可能となっています。
S(社会)の観点では我々のサービスが広がること自体が社会課題解決につながっていると考えています。例えば、大都市一極集中問題や、地方の過疎化や少子化、介護や教育、医療のアンバランスなど土地や場所によって格差が生まれてしまった課題が多くあります。これらに対して、我々のサービスが拡大することで、日本の地方格差における社会課題の解決に繋がると確信しています。
G(ガバナンス)においては、多様性を意識した経営陣の採用をしています。女性の役職者比率を上げたり、経営陣に外国人や女性を含めたり、さらには社外取締役として僧侶の方を任命しています。このように、経営や組織構築において、様々な視点を取り入れることによって、多角的な成長を実現することができると考えています。
サービス提供の背景
当社のサービスは多様な働き方を実現したいという思いからスタートしました。創業時の1998年からグローバルに展開する上で、対面でのコミュニケーションに限界を感じており、テレワークを実施していました。当時は今のようなウェブ会議はなく、常時接続型のインターネット回線もなかったので、今とは違うタイプのテレワークで、さまざまな不便さや苦労がありました。ただ、当社の目指す多様な働き方の実現のためには、リモート勤務であっても、オフライン勤務と遜色なく働ける環境づくりの実現が必要不可欠で、そのためにサービス拡大や周辺事業の関連会社化を進めてきました。最近はテクノロジーや時代環境が追いついてきて、多くのサービスを提供できるようになってきています。
創業以来、日本のオフライン文化を変えるために、啓蒙活動を続けてきましたが、なかなかリモートワークは普及しませんでした。そんな中コロナ禍がきっかけとなり、一気に働き方の常識が変わったことで、我々が目指す世界に日本が近づいたと思います。実際に、オンラインイベントの普及により、2022年は年間約1,150tのCO2削減効果がありました。移動コストやCO2排出量の削減を実現しているのです。
ESGの取り組みでこれから目指すところ
2025年までに、当社のサービス提供やオペレーションにかかる全消費電力の、100%再生可能エネルギー化を実現することが目標です。また、幅広い分野で環境に対して取り組んでいることをさらに進化させ、現実的なものにしていくことが重要だと考えています。
現在の日本では、働き方や規制が変化の兆しを見せていることから、これからは規制改革についても取り組んでいきたいと考えています。私自身も経済同友会の規制改革委員会や政府の規制改革推進会議に参加し、働き方や雇用、教育などの分野で規制改革を進める座長を務めている他、健康や医療のテーマやライドシェアやスタートアップに関連する規制について取り組んでいます。これらの取り組みを通じて、より良い社会の実現につなげていくことを目指しています。
また、コロナ禍を経験して、日本国内での働き方や経済状況が大きく変わるフェーズに来ていると考えています。今までは多くの人が現状維持を望んでおり、改革を求められる人たちでさえ、本心では変わりたくないという気持ちが強いと感じていました。しかし、コロナ禍によって社会環境が変わり、働き手の考え方に変化が起きました。これによって、企業も変わらざるを得ない状況になっています。長年なかった賃上げが実現したり、長年のデフレから脱却したりするなど、日本経済に新しい状況が訪れています。
ブイキューブは、自社や日本だけでなく、世界中で働く環境を変えていくことを目指しています。現在、文化やインフラ、技術が揃ってきており、大きな変化が期待できるフェーズに入っています。今後も、当社の取り組みを通じて、世界中の働く環境をより良いものに変えていくことを目指していきます。
投資家ユーザーへのメッセージ
当社は2013年に上場し、2020年から始まったコロナ禍により市場が劇的に変化したことによって、大幅な成長を実現してきました。この変化をベースに、当社は引き続き成長していきます。株価の動きは激しいものの、2019年までの変わらない日本社会の中でなかなか先行きが見えない時期と比べると、成長できる要素が増えています。日本の働き方やデジタル活用の観点から、我々は社会に貢献できる企業として、引き続き成長していきます。今後も当社にご注目ください。