ブロードマインド株式会社
(画像=ブロードマインド株式会社様)
伊藤 清(いとう きよし) ―― ブロードマインド株式会社 代表取締役社長
1965年生まれ。大学卒業後、日本電気にソフトウェアエンジニアとして就職。その後、スポーツインストラクターを経てソニー生命に転職。最年少で同社のエグゼクティブライフプランナーとなり、成績優秀エージェントの世界指標である「MDRT」にも登録され、2007年には終身会員に。2002年1月にブロードマインドを設立、代表取締役社長に就任し現在に至る。
ブロードマインド株式会社
ブロードマインドは「金融の力を解き放つ」をパーパスに掲げ、生命保険・損害保険、投資信託・債券、住宅ローンなど国内60社ほどの幅広い金融商品を横断的に取り扱い。主に個人のお客様に対してライフプランを実現するために、保険の見直し・家計相談・相続対策、法人の財務基盤強化など、様々なお金に関するニーズにワンストップでお応えする「フィナンシャルパートナー」としてサービスを提供。

目次

  1. 保険会社(共済)立ち上げへの思いは「日本の保険料に価格破壊を起こす」こと
  2. 当時の保険業界で珍しい給与制を採用、コンサルティングに集中・成長できる環境を実現
  3. 教えあう文化が根付いているので、離職率が低い ―― 風通しが良い社風が定着
  4. 上場の背景「日本人の金融リテラシーはスピード感をもって上げなければならない」
  5. ターゲット戦略の根幹は「LTV向上」顧客のライフイベントにあわせ、柔軟な提案をすること
  6. 「財産は人」今後のファイナンス計画はDX投資やM&A ―― 投資家さんに配当性向をしっかりと発表していきたい
  7. ZUU onlineユーザーに一言

保険会社(共済)立ち上げへの思いは「日本の保険料に価格破壊を起こす」こと

――最初に、御社のこれまでの事業展開について詳しくお聞かせいただけますか?

ブロードマインド株式会社 代表取締役社長・伊藤 清(以下、社名・氏名略)

伊藤:最初に私が業界に入ったのはソニー生命でした。当時の生命保険は、ある種の義理人情のようなものでした。今でもそのようなイメージがあるかどうかはわかりませんが。その中でもソニー生命は顧客のニーズをしっかりと聞き出してプランニングする、という形式をとっていて、これはすごくいい仕事だと思いました。

この仕事に素晴らしい可能性を感じたんです。その後、さまざまな学びを得て、幸運にもトップ営業マンとして成功を収めることができました。

最初に保険業界に入った当時は、一社専属型の保険会社が主流であり、電化製品の販売も同様でした。しかし、現在では山田電気やビックカメラのような量販店が一般的になっています。そこで私は、保険業界でも同様の量販店的な形態を模索したいと考えました。また、保険会社を自ら立ち上げることも検討していました。

――なぜ保険会社を立ち上げようと思ったのか、具体的なきっかけみたいなものはあったのでしょうか?

伊藤:保険業界で有名なロンドンのロイズとの出会いが、私が保険会社を立ち上げるきっかけとなりました。日本の保険会社で保険料1万円の商品を、再保険(保険会社が自社の事業リスクを回避するために加入する保険)でロイズに出したら、2,000円ぐらいになりました。

簡単に言うと「2,000円で仕入れて1万円で売る」という仕組みがあるのです。

この仕組みを知り、日本の保険料が高額であることを知り、価格破壊を起こしたいという思いが芽生えました。しかし、保険会社を立ち上げるには認可が必要ですし、資金調達が困難です。

ですから、当時は任意の共済事業を始めることにしたんです。その後、保険業界の価格破壊と保険の量販店を両立させることを目指し、私はこの会社を立ち上げることになりました。

――共済事業では、具体的にどのような取り組みを行ってきたのですか?

伊藤:たとえば、日本ゲートボール連合会の保険を担当していたある損害保険会社の保険料が1,600円であったものが、ロイズに数理計算等も提示し再保険にかけたところ、200~300円に引き下げることができたんです。最終的には事務費用や利益をいれて約600円で提供できるようになりました。

それにより、そのゲートボールの保険に加入していたご老人30万人が一気にうちの共済に加入することとなりました。ほかにも、早稲田大学専用の体育会系の保険会社がやってた保険もすべてうちが引き受けることができました。

もう一つの事業では今では当たり前となった、いろんな保険会社の情報を提供する「代理店事業」を行っていました。この2つが事業の柱だったわけです。

――しかし、その後は代理店事業にしぼられたということですが、どのような経緯があったのでしょうか?

伊藤:事業をしぼったのは共済事業で認可を取得しなければならなくなったからです。要するに「不特定多数の集団を共済化するには、認可をとりなさい」ということです。

これは今でいう「小規模短期保険」といわれるものです。

認可を受けると、再保険先に海外の保険会社を利用することができなくなるというルールが導入されました。そのため、ロイズだったら200~300円だった保険料が、日本の保険会社に再保険をかけることで、600円くらいになり、価格破壊が不可能となりました。

この事態を受けて、一度保険会社を立ち上げるというアイデアを断念し、現在の事業に専念することに決めたんです。

――今後、再び保険会社を立ち上げることは考えていますか?

伊藤:はい、いずれまたやりたいなとは思っています。

当時の保険業界で珍しい給与制を採用、コンサルティングに集中・成長できる環境を実現

――保険業界のお話について詳しくお聞かせいただけますか?

伊藤:当時、保険業界ではコミッションセールスが主流でした。私の同期は98人いましたが、3年から5年で約5人にまで減少しました。なぜやめてしまうのかというと、自ら見込み客を開拓できなくなるからです。食べられなくなるからです。

――現在の代理店さんも、売上の何パーセントかを事務費としてピンハネする(一部を取って自分のものとする)形で、残りを全部払っているのですね。

伊藤:そうなんです。これは事業ではなく、預り金であると感じました。「事業として面白くないな」と。

この業界の見られ方、社会的地位を変えたいなと思いました。要するに契約する時だけ「一生付き合いますよ」と言って、3年後ぐらいでやめちゃうわけじゃないですか。こういった立ち位置を変えたいと思ったんです。

私は、保険業界を単なる仕事ではなく、より意義あるものにしたいと考えていました。ただ単にお金を預かるだけでは面白みを感じませんでした。結局、自分で顧客を獲得できなければ、この業界で成功することは難しいという現実があります。これが業界全体の社会的地位や評価にも影響を与えています。

そこで、私が創った会社の1つのルールとして、「コミッションセールスの営業マンを置かない給与制でやろう」ということを定めました。組織でお客様を守りたいと考えたんです。

当時そんなことを考えてる人間はいなかったので、「本当にうまくいくのか」といわれました。

けれど私はマーケットを会社で作って、安定した給与体制のもとコンサルティングに集中し成長できる環境をつくろうと考えたんです。これは創業時の思いであり、後のビジネスモデルになっていきました。ですから創業当時は中途採用でしたが、その中途の方もすべて、未経験者を採用しました。

――私の認識では金融業界は知識量が必要じゃないですか。だからこそ、経験豊富な中途の方々を雇うというケースが多いと考えていたので非常にびっくりしました。

伊藤:最近もいろんな方がいらっしゃいますが、「新卒で、給与制でやってますよ」と言うとびっくりされる方が多いですね。マーケットを会社で用意するという、今の1つのビジネスモデルになったんです。「提携先ビジネスモデル」と私は言わせてもらってます。

当時で言うとセシールさんや「ベルメゾンネット」を運営する千趣会さんなど、通販が非常に厳しい時代がありました。会員はこれだけいるのに、やっぱりなかなか売り上げが伸びていかないという状況です。

そんな中で、当時たまたま社会保険庁の年金の問題が出たんです。「保険金不払い問題」です。セシールさんでも「今入ってる保険は、ちゃんと保険金出るのかな」という疑問・不安を抱える会員様が増えたようでした。

その時セシールさんに、「コミッションセールス系の保険会社ではなく、我々みたいな純粋な給与制でやってるメーカーと組んで、お客様の不安を取り除くサービスをテストでやりませんか?と提案し、5件から10件やってみたところセシールさんが「めちゃくちゃ良かった、変えて良かった」と言ってくださりました。

そこからいろんな通販会社さんに広がり、JCBさんや、クレディセゾンさん、高島屋カードさんなどに広がりができたんです。

私が保険を提案するときは、何のためにお金を貯めるのか、いつ家を買いたいのかなど、必ずライフプランを立てます。そのためにいつまでにいくら用意しよう、万が一のことがあったとき保険金でカバーしようと言った風に、何のためにやるのか、目的をお客様にも理解してもらう必要があると思っています。

たとえば住宅ローンについても、「こちらの銀行に変えたら金利が下がります、その分積立貯金に回せます」といった提案をしていました。これをちゃんと収益にできたらいいと思ったんです。

そこから生命保険、損害保険、IFA、銀行代理業といった具合に最終的には不動産という風になりました。今は大体月に約1,500件くらい相談が来る仕組みができてます。

教えあう文化が根付いているので、離職率が低い ―― 風通しが良い社風が定着

2011年から新卒を採用しています。新卒の何が大変かというと、自分で営業して顧客開拓することです。まずは集中できる環境でちゃんと知識をつける必要があります。

2011年、うまくいかなければ新卒採用を検討しようと思っていました。しかし意外とこれがうまくいったんです。帰属意識も高く。ですから今弊社は、8割、9割近くが新卒採用です。

これについては先日のIRでご説明したとおりですが、弊社の新卒採用枠は、同業他社の平均に比べて2倍から2.5倍あります。

私も新卒から案件相談を受けたり、一緒に同行したりすることがあるんです。そのように教えあう文化が根付いてるので、離職率が低いです。業界では80%~90%のところ、我々は大体10%前後です(3年以内の離職率)。

――金融商材は不要不急というところがあるので、営業マンのスキルやライフプランに関する会話・提案を通して、少しずつナーチャリングをして、購入につなげるステップだと思います。

ですから、人材は重要なポイントになると思うんです。新卒を増やすとなると仕組みが大事になります。「あとは人数を増やせば自然と売上が上がっていく」という状態まで仕込まれたんだと思いますが、この仕組について、どんな点を工夫されたのか、御社ならではの強みについて教えていただきたいです。

伊藤:今の人事を担当しているのは、2011年新卒、12年新卒の人間がメインです。「新卒として我が社に入社しコンサルタント経験もある人間が人事をやっていること」採用のポイントとして、ここがまず1つ大きいです。

あと弊社は採用するにあたっても、いろんな役職、部署の人間が協力的なんです。学生さんが入社前に、弊社のいろんな人と話す機会があるので、社風など、明確なイメージをもって、私との最終面接に来られる方が多いです。

「最終面接での私との会話と、今まで聞いてきた弊社の人間たちとの話がリンクしている」ということを理解されるようです。

いい商材や手法を共有しあえる、質問しやすい・風通しが良い社風が定着しています。他社さんが真似しようとしても難しい、弊社の文化といえます。

――そこは金融業界の課題ですね。

上場の背景「日本人の金融リテラシーはスピード感をもって上げなければならない」

――御社は2021年3月、3年前に上場されたわけですが、背景についてお聞かせください。

伊藤:もともと「保険会社を作ろう」というテーマで上場しようと考えていました。しかし、先ほど申し上げたとおり、海外にふれなくなり利益をとれなくなったことが原因で延期しています。ただしその当時から、いつでも上場できる雰囲気をつくっておこうと思っていました。

今回の上場の大きなきっかけは、日本人の金融リテラシーを上げなければならない、スピード感をもって上げるには上場する必要があると考えたことです。

高齢化社会で、長生きするとなると、しっかりお金のリテラシーを備える必要があります。FX詐欺とか、金融でだまされる人が多いですよね。「スピード感を持って日本人の金融リテラシーを上げるには、もっと仲間が必要だな」と考えたことが上場の大きなきっかけとなりました。

上場してから提携先ともやりやすくなりました。また、新卒採用も以前15人前後だったのが去年は35人、今年も40人、来年も40人と増加しています。

――ブロードマインド様の未来の構想について、お聞かせください。

未来の構想としてあるのは金融教育とDX系システムの拡散です。

弊社には、右も左もわからない新卒を2年、3年で生産性を高く上げる実績があります。それは、我々に育成のノウハウがあるからです。お客さんとお会いして、仮説を立てライフプランを作り、解決法として金融商品を提供し、それに対する手数料を受け取るのが我々の主流なビジネスモデルなわけです。

今、この育成ノウハウをもとにした金融教育的なモデルも動き始めています。

金融教育には2つあります。1つは一般の人向け、もう1つはプロ向けです。

一般向けでは、「ブロっこり」という金融教育商材があります。社員さん向けの福利厚生サービスです。「scsk」さんとかも導入していただいています。オンラインで学べるようになっています。

プロ向けでは「マネパス」と、「ブロードトーク」というシステムを使って教育までしてあげるサービスの展開が始まっています。

マネパスとはライフプランシミュレーターのことです。保険や投資、資産形成に関するプランをいっぺんに出せる仕組みになっています。実際にうちの新卒も、これを使って生産性を上げています。

ブロードトークとは、独自で開発したオンライン面談システムです。これを使えば対面だと1日3件しか対応できないのが、6件から7件をこなせるんですよね。コロナ時代も大活躍でした。

――ツールをうまく活用されているのですね。

伊藤:独自で作ったノウハウを、DX系のシステムや教育を交えて広げていくやり方です。これは人海戦術ではないので、非常に利益率が高いです。DX系とともに本当のコンサルタントを同時に走らせます。

コンサルティングの方は人数を増やしながらDX系の部分のサブスクリクション的なものも考えており、これからもう1つ柱になるかなという風に思ってます。昨今、セブンフィナンシャルさんの保険ショップもM&Aしましたし。

ここもですね、我々のいまある1店舗・パイロット店(小売り店舗)でやらしたところ、生産性が非常に高く上がったんです。これは、ただの保険ショップじゃなくて、FPショップにしました。

NISAや住宅ローンなど金融商品についてあらゆる相談ができるショップです。ここで結果を出していきながら、フランチャイズ化も考えています。ほかにも、「オンラインFPショップ」も検討しています。FPで食べていけない人たちの教育も含めて、アポイントもこっちで供給、お客様も提供、というサービスを展開したいです。

また、いずれは金融スクールも視野に入れています。基本コース、プロコースを設け、プロコースでは主婦の方とか副業したい方などが、やりがいを持って、感謝されながら仕事できる環境を創れたらいいと思います。

そこを卒業した人はうちのFC(コンサルタント)になっていただいて、週に1回や3回それぞれの働き方で仕事する、ということも考えられます。それに対応したアポイントの提供をするなど、多様な働き方にこたえることでFCを増やしていく、というイメージはしています。

――金融スクールは、今後の社会の需要に応えるサービスだと思います。

ターゲット戦略の根幹は「LTV向上」顧客のライフイベントにあわせ、柔軟な提案をすること

――御社の既存事業で、メインのターゲットはファミリー層や、30代から40代の方々が多いと聞きましたが、少子高齢化の波を受けて、今後ターゲット層を変えていくことはありますか?

伊藤:そうですね、やはりお客様は歳をとるじゃないですか。新しい契約者がきても、その契約者は高年齢になるので、最終的には全年代になっていくイメージです。

当然、「どのように保証するか」から、「どういう風にお金を増やしていくか」というテーマになってきたり、相続がテーマになってきたり、テーマは変わるので。

うちには、60歳になる人たちをターゲットにしたマーケットもあります。たとえば、東京都の教職員さんの退職時期になると、退職金セミナーを開催しています。

しかしライフイベントが多いファミリー層の方が、子供の教育費や住宅購入などテーマが多いので、ライフプランニングとしては長く付き合えて、LTVが向上する、というのはありますね。

「財産は人」今後のファイナンス計画はDX投資やM&A ―― 投資家さんに配当性向をしっかりと発表していきたい

――上場されて大幅に、資金を活用するタイミングが増えたのではないでしょうか。今後のファイナンスの計画についてお聞かせいただけますか?

伊藤:幸いにも我々は無形財産の会社です。「在庫」という言い方をするんですけど、財産は要するに人なんです。なので、キャッシュフロー的な資金もあります。M&Aではライフイベントにかかわる事業者が視野に入ります。

たとえば、結婚相談所の場合、結婚したら貯蓄や保険を考えるようになりますね。実際、提携先でブライダル事業者がいて、お客様が結婚されるとお金に関する相談が来る仕組みがあるんですよ。

最近で言うと、お子さんが生まれた方たちを会員化してて、子育てについてのいろんな情報を提供するIT系の会社がありますね。そういう事業者さんは、M&Aでいいお話があれば我々も積極的にやっていきたいなと思っています。

そして、株主さんに還元するためにも、もっと弊社を知ってもらいたいです。今回、配当性向100%とさせていただきました。

新卒もこのペースで採用を行い数年後、50人、60人と採用する可能性もあるので、そういった部分での人材投資は大事にしていきたいです。

また先ほどお話しました、マネパス、ブロードトークなど、DX系の投資にお金を使っていくこと、M&Aと配当性向をしっかりと発表させていただいて、もう少し弊社のサービスを投資家さんにも知っていただきたいなというところだと思います。

ZUU onlineユーザーに一言

――弊社が運営するZUU onlineは、投資家の方も多いです。ユーザーさんに向け、一言いただけますでしょうか。

伊藤:保険業というと、いわゆる「代理店」というイメージを持たれる方が多いと思います。ただし弊社の場合は金融教育もやります。

生命保険、損害保険、それから証券、銀行、不動産等、全てを網羅してる会社はないので、保険代理業というか、金融サービス業というか新しい業態だと思っています。

その意味で急激な伸びはないかもしれません。しかし着実に増収増益はさせていただきますし、人材育成も、M&Aもやっていこうと思っています。拡大路線にありますし、いきなり急激な赤字になるわけではありません。

1人の投資家さんとして、ポートフォリオの1つとして弊社を考えていただければ非常にありがたいなと思ってます。よろしくお願いいたします。