
2020年 晴美台ナーサリー、かがやきの森保育園あいおい 開園
2021年 ゆめの樹こども園さかい 開園
2022年 垂水せんしん保育園、かがやきの森保育園おおとり 開園
就任以降園児増加数 254名
就任以降売上増加金額 5億9000万円
これまでの事業変遷について
—— 事業の変遷や理事長にご就任されてからの経緯についてお話いただければと思います。
亀山 私たちの学校法人は、もともと幼稚園事業からスタートし、今年で52年目を迎えます。初めは「晴美台幼稚園」という名前で始まり、その後「三石しろやま幼稚園」へと改名され、現在は「みついしこども園」という名称で運営しています。
私は元々、社会福祉法人フィロスに所属しており、これまでに約28園の幼稚園や3箇所の特別養護老人ホームを立ち上げてきました。当学園が幼稚園からこども園へ移行する過程で、これまでの経験を買われて「事業を継承してほしい」とのお話をいただきました。そして、6年前から泉新学園に理事として参加し、その後、正式に事業を継承しました。
当学園は50年の歴史を持ち、現在では8つの園を運営しています。事業の拡大を最優先にするのではなく、多くの優秀な人材をどのように活かしていくかを主な課題と考えています。
現在は関西地区を中心に運営を行っていますが、来年の4月からは千葉で新たに事業譲渡された保育園も運営する予定です。また、行政からの要請により、困っている保育法人のサポートを進めています。
自社事業の強みについて
—— これまでどのように事業を拡大してきたのか、その背景にある秘訣を教えていただけますか?
亀山 事業拡大の背景には、まず「ご縁」が大きく関わっています。保育は一人では成り立たず、多くの人との出会いやつながりが非常に重要だと感じています。
また、組織としての基盤がしっかりしていることも成功の要因だと考えています。私たちは保育施設を運営する中で、少子化問題の解決にも貢献することを使命と捉えています。そのためには、誰もが通いたくなるような魅力的な保育園や幼稚園を作ることが不可欠です。
ここまで発展してこれたのは、私たちの理念に共感してくれる仲間や、金融機関及び行政からの支援があったおかげだと考えています。
—— 金融機関や行政との関係を活用する発想は、一般的な保育ビジネスではなかなか出てこないと思いますが、その発想はどこから得られたのでしょうか?
亀山 私がこれまでに学んできたことの多くは、周りにいる友人や先輩、ビジネスをされている方々から得たものです。その方々は常に「人との縁やつながりが大切だ」と教えてくださいました。そして、その考え方を私自身も取り入れることができました。
重要なのは、人を利用するという考え方ではなく、私たちの理念に共感し、共に力を貸してくれる人が増えたことだと思っています。
ぶつかった壁やその乗り越え方
—— これまで困難だったことと、それをどう乗り越えてきたかについてお伺いできればと思います。
亀山 採用が大きな課題です。保育領域であれば、皆さんも同じように採用の壁を感じたことがあると思います。人を集めること自体はできても、保育理念や企業理念を共有できる人材を見つけるのが難しく、今でも苦労しています。さらに、採用した後は人材を育てる必要がありますが、これもまた大きな挑戦です。
現在、保育士以外のさまざまなビジネスパートナーとともに「クレドカフェ」という取り組みを行っています。法人の運営する園に来てもらい、職員との交流を通じて、皆さんの考えをカフェのようなリラックスした場で聞く機会を設けています。
この交流を通して、職員が抱える疑問や保育に対する悩みなどを共有できる場を作っています。また、参加者が自分のバックグラウンドや「なぜ今この場所にいるのか」という振り返りを話すことで、お互いの理解が深まります。例えば「命とは何か」といったテーマを設定し、月に一度、クレドカフェを開催しています。職員同士の交流を促進し、泉新学園が目指す法人理念や保育理念を深めていくことを目標としており、徐々に活動の芽がでてきました。
—— そこから芽が出てきたとおっしゃいましたが、どのような変化がありましたか?
亀山 皆さんが非常に明るくなり、以前は退職者が多かった園でも、ほぼ退職者が出なくなりました。やはり業界ごとに抱えている課題や思いは異なります。保育業界の方々は、とても優しい気持ちを持っています。もちろん給与や待遇も大切ですが、「ここで働く充実感が欲しい」という声が特に多く聞かれました。
そこで、「皆で一緒に園を作っていこう」という方針を掲げ、この取り組みがスタートしました。これまでのカリキュラムもすべて見直し、一つひとつ皆で協力しながら作り上げていこうとしています。
今後の経営・事業の展望
—— 今後の学校法人泉新学園の拡大方向についてお聞かせください。
亀山 私たちは、子供たちの未来を直接変えることはできませんが、未来を担う子供たちを育てています。だからこそ、子供たちのために何ができるのかを常に考え、真摯に保育に向き合うことが大切だと感じています。まずは幼児教育の場で「人を傷つけない」「ものを盗まない」「嘘をつかない」といった価値観をしっかりと子供たちに浸透させたいと考えています。
また、来年からは泉新学園でオーガニック給食を導入する予定です。これは、日本の食料自給率が低いという問題に対する一つの解決策として、美味しい野菜やお肉に興味を持ってもらい、将来的には食糧自給率を上げる役割を担ってもらうことを目指しています。そのためにも、美味しい食材を適正な価格で提供するシステムを作り、子供たちが「美味しい!」と感じる食体験を提供したいと思っています。
—— 事業拡大やパートナーシップを組むことについてはどのように考えていますか?
亀山 事業の拡大については、ご縁があり、一緒にやりたいという仲間がいれば、協業することも考えています。また、別の方とパートナーシップを結ぶ可能性もあります。素晴らしいご縁があれば、子供たちのために良い環境を提供したいと考えています。
一方で、行政の仕組みも変えていく必要があると思っています。最近、知人の国会議員に、保育料を経費として認めるように働きかけをお願いしましたが、答弁では「不公平感が生まれるため、難しい」と返されました。しかし、その答弁には納得できません。これからも行政に対して積極的に働きかけを続けていくつもりです。
—— 行政に働きかけることで、日本の危機感を共有し、国民全員が子育てに関心を持つようになることが重要だということですね。
亀山 そうです。経済学者も言っていますが、「子供たちに投資することが一番効率の良い公共投資だ」と言われています。納税者をしっかりと育てるためには、幼児教育にお金をかけることが必要ですし、国がもっと積極的に子育てを支援すべきだと思います。
僕は今、地元で付き合っている若い世代の議員たちと交流を持っていて、彼らが作る政策が実態に即したものになるように働きかけています。そういった議員たちが増えれば、もっと効率的な幼児教育政策が実現できると思います。
ZUU onlineユーザーへ一言
—— 読者の方にメッセージをお願いできますか?
亀山 私たちは賃貸型保育園を運営しています。この事業は、土地や建物をオーナーの方に購入していただき、行政の家賃補助を受けながら保育園を運営するという仕組みです。私は、オーナーの方々と一緒に、幼児教育に貢献していきたいと考えています。
この事業は「利回りが良い」と評価されていますが、重要なのは利回りだけではなく、日本の幼児教育に少しでも貢献したいという強い思いです。こうした志を共有する投資家の方々と一緒に仕事ができれば、非常に嬉しいです。
—— 本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
- 氏名
- 亀山 理
- 社名
- 学校法人泉新学園
- 役職
- 理事長