特集『Hidden Unicorn~隠れユニコーン企業の野望~』では、新しい資本主義の担い手であるベンチャー企業のトップにインタビューを実施している。経営者たちは何を思い描き事業を運営し、どこにビジネスチャンスを見出しているのだろうか。これまでの変遷を踏まえ、経営戦略についてさまざまな角度からメスを入れていく。

株式会社Regrit Partners(リグリットパートナーズ)は、DXを中心としたコンサルティング事業や自社サービス・新規事業開発を手がけている企業だ。1,000名のCxO(各領域の最高責任者)をクライアントや自社、関連会社から輩出することを目指している。本稿では、代表取締役CEOの山木智史氏に今日までの変遷や事業の特長、将来の展望などについてうかがった。

(取材・執筆・構成=大正谷成晴)

山木 智史(やまき さとし)――株式会社Regrit Partners 代表取締役CEO
1984年生まれ。神奈川県出身。大学時代に起業を経験し、営業先であった大手総合コンサルファームに新卒として入社。その後、アビームコンサルティング、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングでのコンサルティング業務を経て大手グローバルファームグループの日本法人立ち上げに参画。

2017年8月に独立し、株式会社Regrit Partnersを設立。代表取締役CEOに就任した。エンタープライズ企業の変革プロジェクトに取り組みながら、コンサルティング業界の人材輩出企業を目指している。
株式会社Regrit Partners
2017年8月、東京都新宿区で外資系コンサルティングファームやSler出身者を中心に設立された企業。Issue Driven(テクノロジーありきではない)、Scopeless(必要なことは全てやる)、Anti-Parasite(成果を根付かせ、出ていく)といった3つの支援スタイルでコンサルティングサービスを提供している。2022年10月、東京都千代田区の東京ガーデンテラス紀尾井町に移転。

パーパス「個の変革により、世界に変革をもたらす」、ミッション「新時代へ導く」を掲げ、1,000人のCxOを輩出する企業を目指す。GPTW(働きがいのある会社ランキング)では、2020~2022年に働きがい認定企業に選定された。

目次

  1. 業界の問題点・課題を解決するために起業
  2. エンタープライズを中心に経営改善や業務効率化を支援
  3. 「CxO Firm」として1,000名の経営人材を輩出することが目標

業界の問題点・課題を解決するために起業

―― 株式会社Regrit Partners株式会社の事業内容や創業の経緯をお聞かせください。

株式会社Regrit Partners代表取締役CEO・山木智史氏(以下、社名・氏名略):弊社は、CX(コーポレートトランスフォーメーション:企業の根幹からの変革)に関わるコンサルティング、プロフェッショナルのマッチングシェアリングを提案するキャリアフロンティアの2つの事業を展開しています。

(画像提供=株式会社Regrit Partners

創業の背景ですが、私は大学時代に学生起業家として活動し、ここでご縁をいただいたコンサルティングファームに入社しコンサルティングについて学びました。その後は、アビームコンサルティングやEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングで業務に携わるなか、2015年には外資系コンサルティングファームの日本法人立ち上げに参画。

当時の上司と2人で立ち上げ、2年で売上10億円規模に成長させました。しかし同時に業界の問題点・課題に気づくことになり「自分たちならそれを解決できる」「理想のファームを作りたい」と思いたち、2017年8月に弊社を立ち上げ今日に至ります。

―― 業界の問題点・課題とは具体的に何を指しますか?

1つは、コンサルティングファームの高額なフィーとパフォーマンスが比例していないケースがあることです。またSAPなど、導入が前提のコンサルティングになっていて、クライアントに製品がフィットしなくてもプッシュしないといけない矛盾も感じていました。

エンタープライズを中心に経営改善や業務効率化を支援

―― 同業他社との差別化や、特長をお教えください。

課題の裏返しになりますが、大きく3つあります。1つは、弊社が「ISAP(アイサップ)」と呼んでいる独自のサービスポリシーです。これは、テクノロジー・製品ありきではなく課題ありきのコンサルティング「Issue Driven」、必要なことはすべてやる「Scopeless」、保守や運用ビジネスは提供しないで改革を終わらせたら出ていく「Anti-Parasite」の頭文字を取った略語を指します。

このISAPを提供できることが、弊社の強みです。例えばIssueDrivenでは、課題にフォーカスをします。しかし、フィットするプロダクトやソリューションをレコメンドすることはあっても特定のものを売ることはしません。製品側と代理店契約を結ぶことも一切なく、中立性を保ち顧客に寄り添ったコンサルティングを徹底しています。

またコンサルティング会社は、士業から発展したところがあるので先生商売な一面があることが特徴です。ただ、今はクライアントのニーズがどんどん変わり、アドバイザリーをするだけなら多様なサービスが登場しています。そうしたなかアドバイスや構想を練るだけではなく、実際に伴走して支援することを重視していて、その際に支援範囲(スコープ)を定めることが重要になるのです。

ただし新規事業だとスコープは日々変わっていくので、臨機応変に対応していかないといけません。弊社では、Scopelessとして成功のために必要なことはすべてやるようにしています。Anti-Parasiteは「クライアントに寄生しない」という意味です。簡単にいうと保守や運用ビジネスは提供せずに改革が終われば出ていき、クライアントの自立を支援します。

もう1つの強みは、ベンチャーとは思えないほどの実績があることです。弊社のクライアントは、業種業界を問わず、売上3,000億円以上、平均すると売上5,000億円以上のエンタープライズ企業で下請けではないプライム案件が100%。こういった企業は、すでに同業他社をお使いになっていて割って入るのは難しいのですが、弊社の価値観に共鳴いただき採用いただいております。

―― どういった案件が多いのですか?

CXには「Strategy(経営戦略・事業構想策定)」「Operation(オペレーション改革)」「Technology(テクノロジーを活用した変革)」と大きく3つのセグメントがあり、これらに携わっています。例えばStrategyのなかには、新規事業開発やファンドによる事業買収などが含まれるといった具合です。

後者であれば買収後の企業価値を上げるためのPMI(Post-Merger Integration:買収後の統合プロセス)から事業改革などを行います。一方、Operation(オペレーション改革)では事業構造改革や省力化、効率化、テクノロジー領域ではレガシーシステムの刷新、大規模システム開発、AI導入、業務自動化などを支援しています。

―― キャリアフロンティア事業の概要もお聞かせください。

戦略ファームやリクルートなどを卒業したプロ人材やフリーランス、経営者など約600名にご登録いただきエンドユーザーにお届けしています。ここでは「プロの仕事に正当な報酬を」というビジョンを掲げたフリーランスの人材プラットフォーム「ReMotion(リモーション)」やプロフェッショナル紹介サービス「foRPro(フォープロ)」を運営しています。

▼foRProの利用フロー

(画像提供=株式会社Regrit Partners

「CxO Firm」として1,000名の経営人材を輩出することが目標

―― さらなる成長を実現するための目標や5年後、10年後に目指すべき姿をお聞かせください。

2023年度は、売上45億円を見据えていますが、2025年までに売上120億円、社員600名を目指しています。弊社は、これまでCAGR(年平均成長率)170%で成長してきたので、その傾きを少し緩めても届く想定です。なぜそこを目指すかというと、国内の大手一流企業に関わるコンサルティングファームは残念ながらほぼ外資系で、彼らと伍して戦うためにも強い組織を作る必要があるからです。

弊社では「CxO Firm」というビジョンを掲げ、その過程において1,000人のCxOをクライアントや弊社、関連会社から輩出することも目指しています。コンサルティングファームに入社する人材は、高学歴な傾向です。しかしファームから輩出される優秀な経営者や経営陣の割合は少なく、現在は「コンサルティング+1」として経営人材に必要な能力開発にも力を入れています。

―― 目標達成に対する課題はありますか?

弊社の存在をエンタープライズクライアントにより知っていただくことが課題です。現状では、中途採用したコンサルタントのリレーション、既存クライアントからのご紹介をメインに40社ほどお付き合いがありますが、お客様との接点を持ち、さらに増やしたいと思っています。弊社サービスのリピート率は、9割を超えていて一度お使いいただくと必ず恩返しができると考えています。

―― 話題は変わりますが、日々のニュースのなかで興味のあるテーマはありますか?

リスキリングに関心があります。労働人口が減り、求められる仕事が変わるなか、もう1度学び直して時代やトレンドにフィットしたスキルを獲得することは、弊社もクライアントも同じです。これは、すべてのホワイトカラーにとって重要といえるでしょう。ただし「ITが必要なのでスキルを身につけろ」というのは前時代的です。

全体的な考え方やマインドセットも含めて、より体系化され定着することが、日本のためにもなるでしょう。

―― 最後に読者の皆様へにメッセージをお願いします。

労働人口が減っていくなか、経営を最適化するうえでコンサルティングのアウトソーシングは重要だと思っています。ただしうまく活用できていないケースもあり、そういった方々を少しでも救いたいという考えで事業を展開してきました。読者の皆様とも、今後何かの機会に接点があればうれしく思います。