ユアマイスター株式会社
(画像=株式会社ラクーンホールディングス)
小方 功(おがた いさお)
株式会社ラクーンホールディングス代表取締役社長
1963年札幌生まれ。北海道大学卒業後、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。
独立準備のために29歳で会社を辞め、1年間中国に留学。
帰国後、お金・人脈・経験もないところから100万円でラクーン創業。
02年には主力事業となるメーカーと小売店が利用する卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」をスタート。06年にマザーズ上場、16年に東証一部(現:東証プライム)に上場。現在はこれまで培ってきたITや金融のノウハウを活かし、企業間取引を効率化するサービスを複数展開。
株式会社ラクーンホールディングス
販路開拓で流通業者が直面する悩みを代表自らが体験し「商品を扱ってくれる小売店を効率よく全国から探し出し、スムーズに流通させ、確実に決済できる仕組みはないか」と考えたことが、当社のビジネスの原点です。
"企業活動を効率化し便利にする"を理念に、問屋が担っていた「情報」「決済」「物流」に代わる、効率的で新しい流通の仕組みを業界に先駆けて生み出し成長を続けてきました。現在は「スーパーデリバリー」「SD export」「COREC」「Paid」「URIHO」を提供しています。

目次

  1. 社⻑のこれまでの変遷について
  2. 社⻑の⼀番感銘を受けた書籍とその理由
  3. 読んだ書籍をどう仕事に⽣かしてきたのか
  4. 社⻑が経営において重要としている考え⽅
  5. 思い描いている未来構想や従業員への期待について

社⻑のこれまでの変遷について

—— これまでの経緯について教えていただけますか?

株式会社ラクーンホールディングス 代表取締役・小方 功氏(以下、社名・氏名略) 私は普通のサラリーマン家庭で育ちましたが、起業への興味は常にありました。将来、留学して起業したいという漠然とした夢はあったものの、具体的な計画はありませんでした。そのため、大学卒業後は一度コンサル会社に就職しました。

—— 起業を決意したのはなぜですか?

小方 自分の中で整理がつかず、一度会社を辞めてから考えることにしました。やりたいことが決まってから退職するのが普通ですが、私はまず辞めてから考えようというスタンスでした。当時、「ベンチャー」や「アントレプレナー」という言葉は一般的ではなく、「商売をする」という表現が主流でした。父に起業の意向を伝えた際も「ついにクビになったのか?」と驚かれました。大企業に勤めて出世することが成功とされていた時代です。

留学と起業の両方をやりたかったため、自分なりに説明がつけば良いと考え、行動に移しました。資金は車を売って約300万円を作り、資本金100万円で中国貿易の会社を立ち上げ、残りの資金で中国に留学しました。中国では華僑のビジネスに触れる機会があり、人間関係を大切にする考え方に影響を受けました。約束を守り、相手の人生観を理解する姿勢は、日本の企業文化とは異なり、新鮮で学びが多かったです。私も誠実にビジネスを進め、中国語で企画書を作りプレゼンをおこないました。ある商材では7社の競合を押し退けて契約を獲得し、大変印象に残っています。

社⻑の⼀番感銘を受けた書籍とその理由

—— 社長が一番感銘を受けた書籍とその理由についてお聞かせください。

小方 私がもっとも影響を受けた作品は、イギリスの作家ジェフリー・アーチャーの『ケインとアベル』です。この作品はドラマ化や映画化もされています。

ケインはアメリカのエリート家庭で育ち銀行王になります。一方、アベルは王室の隠し子として内戦を経てアメリカに渡り、ゼロから這い上がってホテル王になるまでの物語です。権威に立ち向かい、成功をつかむ過程が描かれていて、非常に魅力的です。

韓国ドラマ『梨泰院クラス』の本格版とも言えるほど、ゼロからの成功がリアルに描かれており、知識量も豊富です。『ケインとアベル』は前編・後編に分かれた長編で、壮大なドラマです。

読んだ書籍をどう仕事に⽣かしてきたのか

—— 今まで読んできた書籍をどのように仕事に生かしてきたのか教えていただけますか?

小方 私は部下にビジネス本、特に新書や流行のものは勧めません。これらは高価で、長く残るかもわからず、話題にしても受け売りの知識は人の心を動かしにくいからです。知識は断片的なままではなく、心に溶け込んで自分のポリシーとなるべきです。リーダーが話すときは、100%自分の言葉であるべきです。流行の知識をそのまま使うのは安っぽく見え、好ましくありません。

私は逆に、駅のワゴンセールやブックオフの激安コーナーで適当に本を選び、10ページ読んで興味がなければ手放すことを繰り返します。そうすると、時に意外な発見があります。たとえば、禅の本で「心を無にすることの難しさ」や「忘れる努力」が重要だと知り、非常に興味を持ちました。これは20年ほど前にグーグルで試され、後にマインドフルネスとして逆輸入されています。

流行していない本だからこそ新鮮で、誰かに話すと「へえ」と感心されます。どんな本からでも一つは学びがあり、それで十分です。

—— 会社の従業員やご家族にも浸透させているのでしょうか?

小方 私の人生観としては、古いもの新しいものを問わず、さまざまな本をランダムに読んでいます。妻は英語が堪能で、世界中のユニークな本を楽しんでいます。娘もまだ幼いですが、同じように本に親しんでいます。

社⻑が経営において重要としている考え⽅

—— 経営において、一番重要視している考え方を教えていただけますか?

小方 会社で働くことは目的ではなく、幸せを実現するための手段です。幸せとは、誰かに役立ち、社会に必要とされていると感じることだと思います。

周りの社外の友人は、年収1,000万円を超える人たちが長時間働き続けています。一流企業に勤める30代後半の人でも、土曜の夜に仕事で遅れてくることがあります。これでは本当の豊かさとは言えません。友達や家族を大切にすることが重要です。私たちの会社では、全社員の平均残業時間を一日一時間以下に抑え、休日の出社もありません。それでも売上の成長率は維持しています。

頑張らないという意味ではなく、努力の質を高めることが大切です。昭和の時代は量的な努力が重視されましたが、今は質が求められています。よいアイデアを出すには、生活習慣の改善や読書、人との交流が必要です。

趣味を持ち、友達と交流し、家族との時間を大切にすることで人生は充実します。充実した生活があってこそ、よいアイデアが生まれるものです。従業員が魅力的でなければ、上司としても魅力が伝わりません。質的な努力を重視し、量的な努力と区別することで、よりよい成果が得られます。

会社は、人が魅力的になり、本当の幸せを感じられる場所であるべきです。特に30代から40代の中堅社員には、この考え方を大切にしてほしいとよくアドバイスしています。

思い描いている未来構想や従業員への期待について

—— 御社の未来構想や従業員への期待についてお聞かせいただけますか?

小方 幸いなことに、私たちの会社は成長を続けています。100万円から始めた会社がここまで大きくなり、私のビジョンに共鳴する人々が集まってきたのは非常に嬉しいです。現在、取引先は40万社に及びます。全ての取引先と直接会うことは難しいですが、上場企業はその中でも数少ない存在です。

だからこそ、私たちは取引先にとって見本となるよう事業を展開する必要があります。「ラクーンホールディングスはどうしているのか?」と注目される企業であり続けることが重要です。

—— 具体的にはどのようなことを心がけているのでしょうか?

小方 私は、従業員の幸せと会社の業績向上を同じテーマとして捉えています。具体的な「幸せ」を箇条書きにして共有し、全員で目指すことが大切です。これからも、好循環を生むために、従業員の幸せと会社の成長を同時に追求していきたいと考えています。

氏名
小方 功(おがた いさお)
会社名
株式会社ラクーンホールディングス
役職
代表取締役社長